孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

日本社会で進行する人口減少 社会崩壊を回避するためには?

2014-05-13 22:55:39 | 人口問題

(【5月8日 FNN】より)

【「夕張は人口減少社会のフロントランナーになる」】
日本の抱える最大の問題のひとつが少子高齢化、その結果としての人口減少にあることは間違いないでしょう。
最近、人口減少に関する深刻ないくつかの報告がなされています。

2050年(わずか36年後の話です)には、いまよりも無人地域が2割近く広がるそうです。

****日本の6割、無人地域に 2050年、国交省試算****
国土交通省は28日、2050年になると、人口減少で日本の国土の約6割が無人になるという試算を発表した。いまよりも無人地域が2割近く広がる。こうした試算をするのは初めてで、国交省は今夏をめどに人口減少に備えた国土整備の基本方針をまとめる。日本の面積は約38万平方キロメートルある。国交省はこれを1平方キロメートルごとに約38万ブロックに分け、それぞれの人口推移を計算した。

その結果、今は約18万平方キロメートルに人が住んでいるが、50年にはその2割で人がいなくなり、6割で人口が半分に減るという。無人の地域は全体の約53%から約62%に広がる計算だ。国交省は試算に基づき、今後の国土整備の基本方針を示す「国土のグランドデザイン」の骨子をつくった。
地方などでは拠点となる地域に生活に必要な機能と住民を集めてコンパクトな町を作ることや、東京、大阪、名古屋をリニア新幹線でつないで国際競争力を高めることなどが柱だ。【3月29日 朝日】
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人口減少が一定段階まで進むと、例えば人口1万人を割ると、コミュニティのための公共施設が維持できなくなり、それらが放棄される、そのことによって生活が困難になり人口流出が更に進む・・・といった悪循環が加速度的に進むと言われています。

こうした日本の将来を先取りしているのが、財政破綻した北海道・夕張であるとも言えますが、夕張では街を集約化し効率的な暮らしを目指す「コンパクトシティー」の取り組みも行われているそうです。

****国家の危機、人口減少が止まらない…「夕張は日本の未来図****
社会基盤を根底から揺さぶる人口減少。2020年には首都・東京でさえ人口のピークを迎える。このまま手をこまねいていれば、日本は国家として成り立たなくなる。今後、われわれは何をすべきなのか。その処方箋を考える。

■街を集約、生き残り挑む
世界に先例のない急激な人口減少に向かう日本。われわれは、大胆な発想の転換を迫られる。(中略)

北海道夕張市。かつて“炭鉱の街”として栄えたが、40年ほど前から相次いで閉山、ピーク時には12万人近くいた人口も現在は1万人を割り込んだ。

高齢化も急速に進む。夕張市の高齢化率(総人口に占める65歳以上の比率)は全国の市でトップ。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)によると、2010(平成22)年に43・8%だった高齢化率は15年に49・0%、東京五輪が開かれる20年には52・6%と過半数を占める見通しだ。
 
◆税も下水も値上げ
夕張の姿は決して人ごとではない。07年から7年連続で人口が減少している日本の“未来図”でもある。

社人研は現在約1億2750万人の日本の総人口が、60年に8674万人まで減少すると推計。
2110年には4286万人と5千万人を割り込み、しかも65歳以上の人が4割を超える。
東京都でも、20年の1336万人を最後に減少に転じ、60年には1036万人に減少するという。

人口の減少は、税収が減り、行政サービスを維持できなくなることを意味する。夕張も、市民の生活は大きく変わった。

市民税や下水道使用料、軽自動車税などは軒並み値上げされ、ごみの収集も有料化。東京23区よりも広いにもかかわらず、小学校、中学校はそれぞれ1校に統合された。

図書館や美術館は休廃止され、5カ所あった市役所の出先機関もすべてなくなった。市立総合病院は診療所に縮小され、人工透析は隣の岩見沢市立総合病院などまで通わなければいけない。車を運転できない人にとっては、日に何本かのバスなどを使ってどれも一日仕事になってしまう。

50代後半の男性は「何もかも変わってしまい、不便になった。でも、夕張に住み続けるためには耐えるしかない」とあきらめの表情だ。

ピーク時には260人いた市職員も100人に減った。給料は平均で4割削減された。「最初は勧奨退職だったが、最近では給料の安さや将来を悲観して、自ら辞職するケースもある」と職員の一人は話した。

行政の在り方も大きく変わった。行政サービスをくまなく届けることが難しくなったからだ。キーワードは、街を集約化し効率的な暮らしを目指す「コンパクトシティー」だ。

「前は1DKで狭かったが、ここは2LDKで風呂もある。今年の正月は孫たちを泊められた」
市中心部の清水沢地区で、近隣から新築の市営住宅「歩(あゆみ)」に移った自治会長の柳原清さん(94)はこう笑顔を見せた。

◆住民の同意100%
夕張は炭鉱の坑口ごとに集落が点在する。閉山後、炭鉱会社の社宅や病院などの多くを市が引き継いだ。
だが、分散した約4千戸の市営住宅は老朽化し、しかも約4割は空き家。維持費など行政コストがかさむ非効率な構造が続いてきた。

このため、市営住宅を市中心部に集約することを決断。5億4千万円を投じ12年に完成した「歩」はその第1弾だ。同様の取り組みは市内各地区で進んでいる。

コンパクトシティーの成否は住民の理解が鍵を握る。東日本大震災で壊滅的な打撃を受けた岩手県陸前高田市などでも導入が進むが、他の自治体では集約が進まなかったり、再び郊外に流出したりする失敗もみられた。

このため、夕張では市の将来像について市民から聞き取り調査を実施。それを基に市民の代表と一緒に集約の結論を出し、65歳以上の住民が6割超の真谷地(まやち)地区でも移転に100%の同意を取った。
鈴木直道市長はこう言い切った。「夕張は人口減少社会のフロントランナーになる」【3月25日 産経】
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【「人口減少社会は避けられないが、『急減社会』は回避しなければならない」】
人口減少を裏付ける報告は、その後も続きます。
4月に発表された総務省の人口推計によれば、生産年齢人口が32年ぶりに8千万人を下回ったそうです。

****生産年齢人口8千万人割れ 32年ぶり、総人口21万7千人減****
総務省が15日に発表した平成25年10月1日時点の人口推計によると、外国人を含む総人口は前年に比べ21万7千人減の1億2729万8千人で、減少幅は3年連続で20万人を超えた。

このうち15~64歳の生産年齢人口は、116万5千人減の7901万人で、32年ぶりに8千万人を下回った。

昭和22~24年ごろのベビーブームに生まれた団塊の世代が続々と65歳に達し、高齢化が加速。働き手の減少により、現役世代の社会保障費負担増や経済の成長力低下が懸念される。

65歳以上の人口は3189万8千人で、前年比110万5千人増となり、総人口の4人に1人を超える25・1%に初めて達した。

一方、0~14歳の年少人口は15万7千人減の1639万人となり、総人口に占める割合は過去最低を更新し、12・9%だった。(後略)【4月15日 産経】
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5月には、有識者らでつくる民間研究機関「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)の報告が話題になりました。

かつては、子供や若者が減少して高齢者ばかりになるということが言われていましたが、その高齢者すら減り始めているそうです。
そうなると、高齢者の購買力に支えられてきた地域経済は破綻します。

これまで常に満床だった高齢者施設では、部屋に空きが出るようになります。
介護産業は、高齢者を求め東京に進出することになりますが、それによって地方における有力な雇用機会が失われていきます。

こうした雇用機会の減少が、若い女性の地方から東京への移動・流出を加速させます。
地方では、高齢者だけでなく、次世代を生み育てる若い女性が大きく減少していきます。
“限界集落”ではなく、“消滅集落”が問題となってきています。

一方、東京に集中した若い女性の東京での暮らしは厳しく、子供を産み育てるとことへの抑制が強く働き、人口減少が更に加速していきます。

****896自治体 消滅危機 日本創成会議 2040年 若年女性流出で****
2040(平成52)年に若年女性の流出により全国の896市区町村が「消滅」の危機に直面する-。有識者らでつくる政策発信組織「日本創成会議」の人口減少問題検討分科会(座長・増田寛也元総務相)が8日、こんな試算結果を発表した。

分科会は地域崩壊や自治体運営が行き詰まる懸念があるとして、東京一極集中の是正や魅力ある地方の拠点都市づくりなどを提言した。

分科会は、国立社会保障・人口問題研究所が昨年3月にまとめた将来推計人口のデータを基に、最近の都市間の人口移動の状況を加味して40年の20~30代の女性の数を試算。

その結果、10年と比較して若年女性が半分以下に減る自治体「消滅可能性都市」は全国の49・8%に当たる896市区町村に上った。このうち523市町村は40年に人口が1万人を切る。

消滅可能性都市は、北海道や東北地方の山間部などに集中している。
ただ、大阪市の西成区(減少率55・3%)や大正区(同54・3%)、東京都豊島区(同50・8%)のように大都市部にも分布している。

都道府県別でみると、消滅可能性都市の割合が最も高かったのは96・0%の秋田県。次いで87・5%の青森県、84・2%の島根県、81・8%の岩手県の割合が高く、東北地方に目立っていた。和歌山県(76・7%)、徳島県(70・8%)、鹿児島県(69・8%)など、近畿以西にも割合の高い県が集中していた。

増田氏は8日、都内で記者会見し、試算結果について「若者が首都圏に集中するのは日本特有の現象だ。人口減少社会は避けられないが、『急減社会』は回避しなければならない」と述べ、早期の対策を取るよう政府に求めた。【5月9日 産経】
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従来の国の見通しより、かなり厳しい推計になっています。

****人口減 より実態反映 日本創成会議 国の見通し甘さ露呈****
「日本創成会議」の人口減少問題検討分科会が8日に発表した2040(平成52)年の人口試算は、若年女性の減少率という新たな指標を取り入れたことで、従来の国の見通しよりも厳しい予測が示された。

試算の特色は、20~30代女性が30年間で半分以下に減る自治体を「消滅可能性都市」と位置づけ、より実態を反映しようとしたことにある。

人口問題の指標では、1人の女性が生涯に産む子供の数を示す「合計特殊出生率」が用いられることが多い。だが、そもそも地域の女性数が減れば、出生実数は伸びないからだ。

分科会座長の増田寛也元総務相は「消滅可能性都市では人口が横ばいにすらならない。子供が極端に減って学校運営を維持できなくなるなど、自治体として機能していくことが難しくなる」と指摘する。

試算結果からは国の見通しの甘さも露呈した。国立社会保障・人口問題研究所が昨年まとめた将来推計人口で「消滅可能性都市」の基準に該当する自治体は373だった。今回の試算(896)は、その約2・4倍に膨れあがった。

国の予測は、毎年おおむね6万~8万人が大都市圏に流入しているという状況を加味していないためだ。(後略)【5月9日 産経】
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【「人口1億人程度を維持する」ためには劇的な変更が必要では?】
このような人口減少を警告する報告が相次ぐ中で、政府は「50年後(2060年代)に人口1億人程度を維持する」との政府目標を打ち出しています。

****人口減少:政府諮問会議委「50年後も人口1億人維持****
政府の経済財政諮問会議の下に設けた「選択する未来」委員会(会長・三村明夫日本商工会議所会頭)は13日午前、急激な人口減少に対応するため、「50年後(2060年代)に人口1億人程度を維持する」との政府目標を盛り込んだ中間報告を示した。

今後、集中的に対策を講じ、1人の女性が一生に産む子ども数に相当する合計特殊出生率(12年=1.41)を2.07以上に引き上げる。
政府が人口維持に向け具体的な目標値を提示するのは初めて。近く諮問会議に報告し、政府が6月に策定する経済財政運営の基本方針「骨太の方針」に盛り込む。

甘利明経済再生担当相は13日、選択する未来委員会であいさつし、中間報告について「日本をどういう未来にしていくか、我々の知恵と努力と意思で選択できるというメッセージを発信してもらった」と述べた。

日本の総人口(13年)は1億2730万人。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、48年には1億人を割り込み、60年には約3割減の8674万人になる。
65歳以上の占める割合も13年の25.1%から、60年に39.9%にまで拡大する。

中間報告は「社会・経済の抜本改革をしなければ国際的地位や国民生活の水準が低下し、社会保障給付が増加して財政破綻を招く」と指摘。
30年に出生率を2.07に引き上げ、同水準を維持することで60年人口を1億545万人程度にするとしている。65歳以上の割合も33%に抑えるという。

人口を維持するため、中間報告は出産・子育て支援策を拡充し、出生率を引き上げるよう提言。高齢者に手厚い社会保障の予算を見直して財源を捻出し、子育て世代に重点配分する。産業の新陳代謝をはかり、70歳まで働ける社会を目指すことも盛り込んだ。【5月13日 毎日】
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“急減社会”を回避できれば、冒頭の「コンパクトシティー」などの対応も可能になり、人口減少に対応した社会にソフトランディングすることもできるでしょう。

ただ、そのためにはドラスティックな政策・考え方の変更が必要になるのでないでしょうか。
単に、“出産・子育て支援策を拡充し・・・・”だけでは、“30年に出生率を2.07に引き上げ・・・”なんてできないのでは?

2月15日ブログ「少子化問題  事実婚・婚外子に関する日本の事情」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140215)で取り上げた、子供を産み・育てる女性が結婚以外の選択肢も可能な社会に整備していくことも、ひとつの方策でしょう。
伝統的な日本的価値観とはバッティングするでしょが・・・。

もうひとつの方策は移民受け入れです。
これも、ほぼ単一の民族からなるという日本社会の在り方の根幹を揺るがすことになります。

移民が多くの問題を派生させることは、実際に移民を多く受け入れている欧州社会などが抱える問題・現状をしばしば取り上げてきました。

ただ、副作用があるという認識と、だからそうした薬を使わないという判断は別物です。
副作用の激しい劇薬でも、生きるためには必要な場合も多々あります。
考慮すべきことは、どのように副作用を緩和できるかという方策を真剣に考えるということでしょう。

これまでの日本にしがみついて沈没・消滅していくよりは、新たな日本をつくる試みにチャレンジする方が賢明なように思えます。

なお、極右政党が台頭する欧州において、日本の移民を受け入れない対応は“お手本”とされているそうです。

****広がる「敵を作る政治」 お手本は日本****
高止まりする失業や、もたつく経済に妙手が見いだせない欧州で、「敵をつくる政治」が広がっている。
市民の間のいらだちを「EU」や「移民」に向けるやり方だ。

そうした右翼政党はしばしば、お手本として「日本」を口にする。
オランダ自由党のウィルダース党首は朝日新聞の取材に「移民規制は必要だ、日本のように。国境も予算も自分たちだけで決めたい」などと話した。

日本は、外国人労働者を研修や技能実習の制度で活用しているだけで、移民は受け入れていない。移民規制が強い日本を、まねるかのような動きだ。

「古代以来の偉大なギリシャの復活」を掲げる極右政党の幹部は「民族で団結している日本を尊敬している」と語った。移民へのヘイトスピーチや暴力事件を繰り返し、党首ら国会議員が逮捕された党だ。

敵を明確にする主張は、「左」にもある。
国家破綻(はたん)の手前までいったギリシャは4人に1人が失業中。EUなどの巨額支援で強いられた緊縮財政に猛烈な反発が続く。EUに矛先を向ける「急進左翼進歩連合」の人気は高い。欧州議会選では2割を超す得票が見込まれ、首位をうかがう勢いだ。

ヘイトスピーチや、サッカー場での差別的横断幕が問題になった日本と同様、内向きな視線や、「排外」が欧州でも支持を集める。【5月13日 朝日】
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