孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  ウルムチ南駅での自爆テロを受けて、習近平主席は「重要指示」

2014-05-02 21:55:43 | 中国

(事件のあったウルムチ南駅の様子を遠くから見守るウイグル族女性 【5月1日 Backchina.com】http://www.backchina.com/news/2014/05/01/295467.html)

高圧的な政策に噴出す暴力事件
中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチ市のウルムチ南駅前で4月30日夜に起きた爆発は、刃物を持った犯人2名が駅出口付近で無差別に人々に切り付けて殺害、爆発装置を起爆したとのことで、自爆した犯人2名を含む3人が死亡、79人が重軽傷を負っています。

今回事件は、“習近平国家主席の新疆訪問日程の最終日というタイミングを狙った計画的な犯行の可能性が高い。2013年3月に発足した習政権は少数民族に対し高圧的な政策を実施し、ウイグル独立勢力の動きを力で封じることを目指してきたが、逆に新たな暴力事件が次々と発生しており、裏目に出たことを印象づけている。”【5月2日 産経】

09年7月の大規模暴動以降も、新疆ウイグル自治区では以下のように事件が頻発しています。

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09年7月 ウルムチでウイグル族の大規模暴動。当局発表で197人が死亡、1600人以上が負傷
10年8月 アクス市で群衆に爆発物が投げ込まれ、7人が死亡
11年7月 ホータンでウイグル族が警察署襲撃。武装警察が容疑者14人を射殺
12年2月 カシュガルでウイグル族が13人を殺害。容疑者7人は射殺
13年4月 カシュガルで治安当局が民家で武装集団を発見。衝突で武装集団6人が射殺され、警官側も15人が死亡
   6月 トゥルファン地区でナイフを持った集団が警察署などを襲撃、警官ら24人死亡。警察側は容疑者11人を射殺
  11月 カシュガル地区で武装集団が警察派出所を襲撃し、警察関係者2人が死亡。武装集団9人も射殺される
  12月 カシュガル地区で9人の武装集団が警察署襲撃。うち8人は当局側に射殺される【5月1日 朝日】
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新疆以外のエリアでも、世間の注目を集める事件が起きています。

2013年10月28日には、中国共産党の象徴でもある天安門前に車が突入・炎上し、乗っていたウイグル人男女3人を含む5人の死者と数十人の負傷者を出しています。
事件の詳細は明らかではありませんが、当局はこの事件を「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」と呼ばれるグループの犯行と断定しています。

2014年3月1日には、雲南省昆明市の昆明駅広場や乗車券販売所などで、刃物を持った集団が通行人らを無差別に襲撃し、29人が死亡、140人が負傷。当局は新疆独立勢力による犯行としています。

習主席は今回の新疆訪問でテロ対策部門を激励すると同時に、学校や農村のウイグル族らと交流する習主席の姿をメディアでアピールし、「生活の改善」や「民族の団結」などウイグル族に配慮する立場も強調していましたが、今回事件で“習主席は完全にメンツをつぶされた形”【5月1日 毎日】ともなっています。

当然ながら、事件を受けて、ウルムチだけでなく、首都北京などでも厳しい警備体制がとられています。

個人的には、新疆ウイグル自治区はシルクロード観光で3回訪れたことがあり、特にかつてのトルファンはオアシスそのもで、お気に入りの街でもありました。

ウルムチについては、置き引きでパスポートや現金などすべてを盗まれるという、とんでもない体験をしたこともあってあまりいいイメージはありませんが、まったく個人的な話です。

ただ、そのウルムチでの体験を漢族中国人にすると、“ウイグル人が多いあそこは、そういうひどい所だ。連中はそういうやつらだ”といった反応が返ってきたことは記憶にあります。

新疆ウイグル自治区の概況については以下のとおりです。

****新疆ウイグル自治区****
中国に五つある自治区の一つで、総面積は約166万平方キロメートル。カザフスタンなどと国境を接し、希少金属など鉱物資源が豊富とされる。

住民はイスラム教を信じるトルコ系住民「ウイグル族」が多い。清朝時代に征服され、その後独立の動きもあったが、新中国成立を経て自治区となった。新疆とは「新しい土地」の意味。

同自治区の統計によると、総人口約2200万人(2011年末)のうち、漢族以外の少数民族が6割を占める。

新中国成立以降は漢民族の移住が増え、文化や宗教が抑圧されていると訴えるウイグル族との対立が激化。
1990年代以降はソ連崩壊に伴う中央アジア諸国の独立を受け、ウイグル族の独立運動も活発になった。

こうした動きに対し、中国政府は武装警察を投入するなどして締め付けを強めているが、不満を持つウイグル族による武器や爆薬を使った襲撃事件が後を絶たない。背景には、漢族との経済格差や就職差別も指摘される。

爆破事件のあったウルムチは、自治区中部に位置する最大都市(区都)で、人口の大半を漢族が占める。09年にはウイグル族の学生らと治安部隊が衝突する大規模な騒乱があり、2千人近い死傷者が出た。【5月2日 朝日】
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増加する東南アジアへ逃れるウイグル族
当局の力による封じ込めの限界云々は毎度の話ですが、興味深かったのは、新疆から近隣国へ不法入国する事例が多くなっているという下記記事です。

****国境越えるウイグル族 東南アジア密入国、銃撃戦も****
新疆ウイグル自治区で頻発する衝突事件の背景には、ウイグル族に対する中国当局の厳しい抑圧政策があると指摘されている。

宗教活動に対する制約や、経済格差など中国社会に絶望したウイグル族が、はるか中国南部の国境を越えて東南アジアへと逃れている実態が明らかになった。

ベトナムの首都ハノイから北東へ車で約7時間半。クアンニン省ハイハの山道を抜けた先に大きな「門」のような建物が現れる。中国南東部・広西チワン族自治区に通じる国境検問所だ。

「事件」は4月18日未明に起きた。車で検問所付近の国境線を越えようとしたウイグル族16人が国境警備隊に捕まった。4人の女性は頭に布を巻いていた。2人は子どもだった。

同省幹部によると、同日正午ごろ、警備隊員が送還手続きのため16人を建物内で移送中、数人が警備隊から自動小銃AK47を奪い、乱射を始めた。女性たちはナイフを振り回した。警備隊が応戦して発砲、2人が死亡した。

3人はビルから飛び降りて自殺。警備隊員も2人が撃たれて死んだ。ベトナム紙トイチェによると、生きて中国に送還された11人は「ベトナムを経由して第三国に逃れようとした」と供述したという。

タイでも、今年に入ってウイグル族とみられる不法入国が急増している。
同国東部、カンボジア国境の町アランヤプラテートでは4月24日夜、密林に隠れていた不法入国者が見つかった。拘束されたのは子ども6人を含む男女16人。入管警察はウイグル族と見ている。

この町でウイグル族と見られる不法入国者が発見されたのは今年4回目で、計70人にのぼる。タイではほかに、南部で約300人が見つかっている。

タイは人身売買などのネットワークの結節点として知られ、これまでも北朝鮮の脱北者らの逃避ルートとなってきた。だが、ウイグル族は昨年後半の事例が初で、「不明な点が多い」とタイ東部を管轄するサケーオ県の入管担当者は言う。

ただ、移動ルートの輪郭は見えてきている。
カンボジアと国境を接するサケーオ県が「入り口」だ。密林地帯で国境を越え、密林で2~3日過ごして迎えの車を待つ。
陸路でバンコクを経由して南部のマレーシア国境地帯まで移動する。幹線道路から離れたゴム農園などに潜んで迎えの車を待つ。
その後、陸路か船でマレーシアに密入国し、偽造トルコ旅券を入手。「トルコ人」になって空路トルコに向かうとみられる。【5月2日 朝日】
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上記記事にもある、“タイではほかに、南部で約300人が見つかっている”というのは、下記のことと思われます。

****人身売買の被害者?脱出ウイグル族? タイで不法入国者220人拘束****
AP通信によると、タイ南部ソンクラー県の山岳地帯で14日までに、子供82人を含む身元不明の不法入国者220人が拘束された。

人身売買の被害者とみられているが、米政府系放送局ラジオ自由アジアは、中国新疆ウイグル自治区を脱出したウイグル族だとしている。

タイ警察が13日未明、ゴム農園近くの秘密キャンプを捜索して、潜んでいた集団を発見した。不法入国者はトルコ系イスラム教徒を自称しているが、身元が確認できる書類は一切所持していなかった。

タイは人身売買の中継地として利用されており、昨年1月にはミャンマーのイスラム系少数民族800人以上が同県で発見されたという。警察当局は人身売買組織が第三国への移送を計画していたとみている。

一方、同ラジオは不法入国者の親族からの情報として、不法入国者はウイグル族で、中国への送還を恐れて「トルコ人」を装っているとしている。報道が事実ならば、雲南省の昆明駅で起きた無差別殺傷事件以降、同自治区内でのウイグル族への締め付けが強化されている可能性もある。

中国外務省の洪磊報道官は14日の定例記者会見で、「関連する状況について聞いていない」と事実確認を避けた。【3月14日 産経】
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3月の昆明駅での事件も、海外への出国を計画していた犯人グループが、計画が頓挫して犯行に至ったと説明されています。
一方で、国境近くに居住するウイグル人の当局による強制移住も行われているようです。

****中国・雲南省の町「消えた900人」 当局、新疆へ移住強要か****
雲南省昆明市の昆明駅で3月1日、170人以上が死傷する無差別殺傷事件が起きた。当局は「新疆の分裂主義勢力による犯行」と断定した。

雲南省の秦光栄・共産党委員会書記は、昆明の無差別殺傷事件のいきさつをこう語る。
容疑者らは、雲南省から第三国に逃れるのに失敗。広東省でも出国できず、ベトナムに接する雲南省紅河ハニ族イ族自治州に行き、出国できなければ昆明などで「聖戦を決行する」と計画していた。

自治区では今、漢族を中心とする共産党政権に対しかつてないほど反発や絶望が高まっており、それが東南アジアへの人の流れを加速させているとみられる。

一方、外交筋によると、東南アジアに抜けたウイグル族が最終的に向かう先は、パキスタンだという見方がある。中国政府は、ウイグル族がパキスタンで国際テロ組織と結びつく動きを懸念しているという。

多数のウイグル族が東南アジアに流出する中、国境近くではウイグル族を締め出す動きも出ている。

昆明の事件の容疑者たちが潜伏していた可能性のある紅河ハニ族イ族自治州の個旧市沙甸に4月30日、記者が入った。中国当局が、ウイグル族の東南アジア出国の中継点とみて警戒していた町だ。

沙甸には約900人のウイグル族がいたとみられる。沙甸の人口の約9割は回族。「イスラム教を信仰する回族が多く、同じくイスラム教を信じるウイグル族の宗教活動に寛容だから」。住民はウイグル族が住みついた理由をそう語る。しかし、この街から、ウイグル族の姿は消えていた。

昆明の事件を受け、沙甸の地元当局は「沙甸の住民の安全のため、新疆人を全面的に移住させる計画を進める」との文書をネット上に掲載した。

沙甸の住民によると、事件後の数日間、ウイグル族がイスラム礼拝所前の広場に集められ、バスに乗せられた。故郷の新疆ウイグル自治区に送られた模様だ。【5月2日 朝日】
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変わらぬ力による封じ込め
“微博では「(3月に起きた)昆明の事件と同じだ。政府は新疆ウイグル自治区に大量の軍を投入しているが、何の効果もない」「政府は反テロ闘争を叫ぶが、これは本当にテロ組織に打撃を与えれば解決する問題なのか。少数民族政策に過ちがあるから爆発は止まらないのではないのか」など少数民族政策に疑問を示す書き込みも出ている”【5月1日 毎日】とのことですが、中国当局の力による封じ込めは当分変わらないものと思われます。

****新疆ウイグル爆発事件「犯人を厳罰に****
・・・・新華社通信は1日未明、習近平国家主席の「重要指示」を伝えました。
この中で習主席は、「新疆の分裂と反分裂の闘争が、長期的で複雑で先鋭化していることを深く認識すべきだ」として、事件は、自治区の分離独立を目指す勢力によるテロだという見方を示しました。

そして、「反テロ闘争は片ときも揺るがせにしてはならない。果断な措置を取り、のさばるテロリストを断固、抑え込め」と述べ、捜査を迅速に行い、犯人を厳罰に処すよう命じました。(後略)【5月1日 NHK】
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