孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

北朝鮮・韓国  軍事偵察衛星打ち上げを受けて高まる緊張 伊政権「抑止は力によって達成される」

2023-11-28 22:59:31 | 東アジア

(北朝鮮が南北軍事合意に基づき撤去した境界線付近の監視所を復元【11月28日 TBS NEWS DIG】 軍事偵察衛星とか無人機による偵察・監視とかに比べると、木造の簡単な監視所ということで時代が違うような感もありますが、境界線付近という場所が場所だけに緊張を高めるものではあります。)

【韓国 南北合意の一部効力停止】
北朝鮮が21日夜、軍事偵察衛星「万里鏡1号」を打ち上げたことを受けて、これに反発する韓国、その韓国に反発する北朝鮮の間で緊張が俄かに高まっています。

北朝鮮への強硬姿勢をとる韓国・尹錫悦(ユンソンニョル)政権は南北軍事合意の一部効力停止の方針を決めました。

****南北軍事合意、一部停止へ=「衛星」に対抗、監視活動強化―韓国****
韓国政府は北朝鮮の「軍事偵察衛星」打ち上げを受け、国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開き、南北軍事合意の一部効力停止の方針を決めた。大統領府が22日に常任委の声明を発表した。会議はオンラインで行われ、英国訪問中の尹錫悦大統領が主宰した。

南北軍事合意は文在寅前政権下の2018年に締結され、南北の軍事的緊張緩和などを掲げた。韓国政府が効力を停止するのは、軍事境界線上空付近に飛行禁止区域を設けた項目。

朝鮮半島の東部では境界線から40キロ、西部では20キロが禁止区域に設定され、韓国軍の監視活動が制限されているとの指摘が出ていた。韓国軍は、飛行禁止区域での北朝鮮に対する偵察・監視活動を再開させる。

 尹氏は、北朝鮮による偵察衛星の打ち上げを「成功かどうかにかかわらず、われわれに対する監視・偵察能力強化と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の性能向上が目的だ」と非難し、対抗措置を指示した。【11月22日 時事】
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上記記事にもあるように、韓国軍は軍事境界線付近に偵察機を投入して偵察・監視活動を再開させました。

****韓国軍 軍事境界線付近に偵察機投入=南北合意の一部効力停止直後に*****
韓国軍当局は22日、北朝鮮が前夜に軍事偵察衛星を打ち上げたことを受けて韓国政府が南北軍事合意のうち飛行禁止区域の設定に関する効力を停止した直後から、最前線での対北朝鮮偵察に乗り出した。

韓国軍の消息筋によると、軍は飛行禁止区域の設定に関する効力が停止した同日午後3時以降、無人機「ソンゴルメ(はやぶさ)」や偵察機「金剛」「白頭」などの監視偵察資産を南北の軍事境界線(MDL)付近に投入した。

軍関係者は「昼夜を問わず対北偵察を行っている」として、南北軍事合意を締結した2018年9月19日以前の偵察レベルを回復したと説明した。 

飛行禁止区域を設定した南北軍事合意の第1条第3項により、韓国軍はMDL周辺で対北朝鮮偵察作戦を展開できず、北朝鮮に対する監視に空白が生じるとして批判されていた。

申源湜(シン・ウォンシク)国防部長官もラジオ番組で「わが国の偵察機が北上できる、いわゆる飛行禁止線がわれわれの地域内から北側に上がることになった」と説明。北朝鮮の主要軍事標的が見えやすくなり、挑発を監視しやすくなるとして「われわれ自身を制限していた偵察監視能力に対する足かせを外したという意義がある」と述べた。【11月22日 聯合ニュース】
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【北朝鮮 事実上の軍事合意破棄を宣言】
これに対し、“北朝鮮の国防省は同日(23日)早朝に発表した声明で「北南(南北)軍事合意書はすでに死文化し、抜け殻となって久しい」としながら、韓国の故意、挑発的な策動によるものと非難。今後は南北軍事合意に縛られないと表明した。”【11月22日 聯合ニュース】と、北朝鮮は事実上の軍事合意破棄を宣言、軍事境界線地域に「強力な軍事力を前進配備する」とも発表しています。

****北朝鮮、軍事境界線地域に「強力な軍事力を前進配備」と宣言 南北の緊張高まる****
北朝鮮は軍事境界線地域に「強力な軍事力を前進配備する」と宣言し、南北間で緊張が急激に高まっています。

23日付の朝鮮労働党の機関紙によりますと、北朝鮮国防省が声明で「北南合意で中止した全軍事措置を即時復活させる。軍事境界線地域により強力な軍事力を前進配備する」と宣言したということです。

声明は合意の事実上の「破棄」とみられ、韓国が北朝鮮の衛星打ち上げに反発し、合意の効力を一部停止して境界地域で偵察活動を再開するとしたことへの対抗措置とみられます。

北朝鮮は21日の軍事衛星の打ち上げに続き、22日の夜遅くにも日本海に向けて弾道ミサイルを発射しましたが、韓国メディアは失敗したとみられると伝えています。(ANNニュース)【11月23日 ABEMA TIMES】
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“事実上の軍事合意破棄”であり、正式な「破棄」ではありません。このあたりについては、南北共に「先に破棄」したという責任を免れようとの意図が込められているとの指摘も。

****「効力停止」「無効化」…南北「破棄」ではない?****
9・19南北軍事合意の現状をめぐって、南北が神経戦を繰り広げている。南北の当局ともに、9・19軍事合意を「破棄する」との表現を口にしてはいない。9・19軍事合意を「先に破棄」したという責任を免れようとの意図が込められていると読み取れる。

北朝鮮国防省は23日午前に発表した声明で、「今この時刻から、我が軍は9・19北南軍事分野合意書に拘束されない」とし、同合意を守らないと宣言した。

声明のタイトルは「『大韓民国』の者どもは北南軍事分野合意書を破棄した責任から決して逃れられず、必ずや厳しい代価を支払わなければならない」というもの。9・19軍事合意を破棄したのは南側だとの主張だ。

北朝鮮国防省は、声明の本文では「破棄」という単語は使わず、「『大韓民国』の者どもの故意・挑発的策動で死文化され、抜け殻となって久しい」などの表現を使っている。

(韓国)統一部の当局者はこの日、記者団に対し、北朝鮮国防省の声明は「9・19軍事合意の事実上の無効化宣言」だと規定した。

この当局者は「破棄とは考えないという意味か」と記者団に繰り返し問われ、「通常の南北合意は、双方が破棄に同意してはじめて効力が発生すると考える」とし、「政府は破棄に同意していない」と述べた。北側が何と言おうと、9・19軍事合意の現在の地位は「破棄」状態ではない、との主張だ。当面は政府が効力を停止させた1条3項以外の9・19軍事合意の条項は守るという意味も込められている。

軍の複数の元高官も「双方の合意によって修正および補充できる」という9・19軍事合意6条1項をあげつつ、一方的な破棄は難しいと述べた。

可能性は低くても、将来的に南北関係が改善して9・19軍事合意が回復されるケースを想定し、韓国から「破棄」を宣言する必要はない、というのが外交安保専門家たちの見解だ。【11月24日 ハンギョレ】
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いずれにしても、北朝鮮が2018年に締結された南北軍事合意の「事実上」の破棄を宣言し、その責任を韓国に転嫁したことに関し、韓国側が更に反発。

****北朝鮮が事実上の軍事合意破棄宣言 韓国国防部「盗っ人たけだけしい」****
韓国国防部のチョン・ハギュ報道官は23日の定例記者会見で、北朝鮮が2018年に締結された南北軍事合意の事実上の破棄を宣言し、その責任を韓国に転嫁したことに関し「事実関係をごまかし、盗っ人たけだけしい振る舞いを見せることに厳重に警告する」と述べた。韓国軍として「北の措置を鋭意注視しながら韓国国民を保護するための対応措置を講じていく」と説明した。

北朝鮮の国防省は同日早朝に発表した声明で「北南(南北)軍事合意書はすでに死文化し、抜け殻となって久しい」としながら、韓国の故意、挑発的な策動によるものと非難。今後は南北軍事合意に縛られないと表明した。

北朝鮮が21日に軍事偵察衛星を打ち上げたことを受け、韓国は22日に南北軍事合意の効力を一部停止し、南北軍事境界線付近での監視・偵察活動を再開している。

チョン氏は南北軍事境界線付近で南北間の衝突が予想されるとの指摘に対し、「抑止は力によって達成される」と答え、韓国軍は万全の態勢を取っていると強調した。北朝鮮が挑発する場合には「韓米連合防衛体制と能力を基盤に即刻、強力に、最後まで懲らしめる」と警告した。

韓国統一部の当局者は記者団に、韓国による南北軍事合意の効力の一部停止は北朝鮮の核・ミサイル脅威に対する最小限かつ正当な防衛措置だと述べた。北朝鮮国防省の声明については「(南北軍事合意の)事実上の無効化宣言」との見方を示しつつも、「北が一方的に破棄を宣言したからといって、一方的に破棄されるものではない」とした。(後略)【11月23日 聯合ニュース】
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【韓国 「抑止は力によって達成される」】
「抑止は力によって達成される」・・・・韓国はアメリカとの軍事的協力体制で北朝鮮に圧力をかけています。
韓国・尹政権の強気姿勢は、来年4月の総選挙を控えて国内に対し「弱気」姿勢は見せられないという事情もあります。

****韓国、北朝鮮に強硬姿勢 軍事合意の一部効力停止、高まる南北緊張****
(中略)北朝鮮が衛星の再打ち上げを予告する中、韓国軍は米軍との共同訓練を繰り返し、米韓同盟の結束ぶりを誇示してきた。

米軍も原子力潜水艦や戦略爆撃機を韓国に相次いで投入。22日には申源湜(シンウォンシク)国防相が釜山港に寄港する米海軍の原子力空母「カールビンソン」を訪問した。聯合ニュースは22日、今回の衛星発射を受けて、米韓両軍と日本の海上自衛隊が週末にも海上合同訓練を実施し、カールビンソンも参加する見通しだと報じた。

韓国では、来年4月に尹政権の政権運営を左右する総選挙を控える。尹氏を支える保守系の少数与党「国民の力」にとっては、過半数の議席の奪還が必須となっている。それだけに尹氏にとっては、核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮に安易に譲歩したというネガティブなイメージを国民に持たれることは何としても避けたいタイミングでもある。

競い合うかのように軍事力を誇示する北朝鮮と韓国。朝鮮半島情勢をめぐる軍事的な緊張の水位は今後、さらに高まりそうだ。【11月22日 毎日】
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【北朝鮮 共同警備区域(JSA)の非武装化も破棄 南北双方が監視所を復元】
北朝鮮は南北軍事境界線がある板門店の共同警備区域(JSA)の非武装化も破棄した模様です。

****北朝鮮、南北の共同警備区域非武装化破棄か****
韓国メディアは28日、南北軍事境界線がある板門店の共同警備区域(JSA)に配置された北朝鮮軍人らが拳銃を携帯していることが判明し、南北軍事合意で進めたJSAの非武装化を白紙化したもようだと伝えた。【11月28日 共同】
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更に、北朝鮮は軍事境界線付近の監視所の復元を開始、韓国も同様措置をとる方針です。

****軍事境界線付近で監視所を復元の北朝鮮に韓国も対抗 政府高官が明らかに 板門店では武装兵士を確認 高まる南北の緊張*****
北朝鮮が南北軍事合意に基づき撤去した境界線付近の監視所を復元させたことに対抗し、韓国も再び監視所を設置する方針であることが明らかになりました。

韓国政府は、北朝鮮による偵察衛星の発射を受けて軍事的な緊張緩和に向けた2018年の南北軍事合意の効力を一部停止すると発表。

これに反発した北朝鮮は合意の事実上の破棄を宣言し合意に基づき撤去した軍事境界線付近の監視所の復元に乗り出していることが確認されています。こうした事態を受け韓国政府の高官は27日、韓国も監視所を再び設置する方針だと出演したテレビ番組で明らかにしました。

一方、南北の軍事境界線がある板門店の共同警備区域では北朝鮮の兵士が武装していると報じられ韓国がさらなる対応に踏み切るのか注目されています。【11月28日 TBS NEWS DIG】
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【尹大統領「相手の善意に頼った平和は虚像」】
北朝鮮に対し、良く言えば「自制的」、悪く言えば「腰が引けた宥和的」だった前政権と違い、韓国・伊政権は前述のように「抑止は力によって達成される」という姿勢で、伊大統領は「相手の善意に頼った平和は夢であり虚像に過ぎない」とも語っています。

****尹大統領「相手の善意に頼った平和は虚像」 南北軍事合意の有名無実化に****
韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は28日、ソウル郊外の国際展示場KINTEX(京畿道高陽市)で開かれた大統領直属の諮問機関、民主平和統一諮問会議の全体会議で「真の平和は圧倒的で強力な力と、自分自身を守るためにいつでもそのような力を使うという断固たる意志によって構築されるもの」とし、「相手の善意に頼った平和は夢であり虚像に過ぎないということを人類の歴史が証明している」と述べた。

北朝鮮が軍事偵察衛星を打ち上げ、非武装地帯(DMZ)の監視所(GP)を復元して重火器を持ち込むなど脅威を高めている中、南北が2018年に結んだ軍事合意が名ばかりになってしまった状況を指摘したものと受け止められる。

尹大統領は「北の核とミサイルは政権擁護勢力を結集させる手段」とし「北の政権が核を放棄できないのは、核放棄が究極的には独裁権力を危険に陥れると考えるため」と指摘した。また「北の政権は核とミサイルで韓国の現代化した非核軍事力を相殺しようとし、核武力使用の脅威を加えて韓国国民の安保に対する意志を無力化し同盟との協力を瓦解させようとしている」として、「荒唐無稽」と批判した。

そのうえで、韓米同盟を基盤に北朝鮮に対する抑止力をさらに強固にすると強調した。【11月28日 聯合ニュース】
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朝鮮戦争は「終戦」した訳ではなく、「最終的な平和解決が成立するまで朝鮮における戦争行為とあらゆる武力行使の完全な停止を保証する」と規定した休戦協定が1953年7月27日に署名された「休戦」状態にあるという話はさて置いても、南北双方の強気姿勢が「想定外」「不測」の衝突を招き、それがエスカレートする危険性をはらんでいます。
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1 コメント

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平和主義は無力 (Unknown)
2023-11-30 11:19:42
「平和を守りたいなら、戦いに備えよ」
....永遠の金言

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