孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

英米で急騰する家賃 増加するホームレス

2023-12-27 23:38:01 | 欧州情勢

(【12月26日 NHK】 急騰するイギリス・ロンドンの家賃)

【1人当たり名目GDPでG7最下位になった日本だが・・・】
日本経済が低迷を続けていることは今更の話です。

****日本の1人当たりGDPがG7最下位に、OECD加盟国中でも過去最低順位に―台湾メディア****
2023年12月26日、台湾メディア・信伝媒は、日本の1人当たり国内総生産(GDP)が先進7カ国(G7)中で最下位になったことを報じた。

記事は、内閣府が25日に22年の1人当たり名目GDP(ドル建て)が3万4064ドルだったと発表したことを紹介。G7中で最も少なく、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中でも21位と比較可能な1980年以降で最も低い順位になったとした。

また、日本のGDPが世界に占める割合も2021年の5.1%から4.2%に減少したと伝えた。

そして、日本の1人当たりGDPは台湾の3万2625ドル、韓国の3万2423ドル、中国の1万2732ドルと周辺のアジア諸国・地域に比べると依然として高いものの、米国の7万6291ドルをはじめ、欧米の先進国に比べるとはるかに少なかったと指摘。日本がG7の中で最下位になるのは08年以来のことで、大幅な円安と日本の経済地位の後退が大きく影響しているとの見方を紹介した。

また、日本の22年の名目GDPは4兆2600億ドルで世界3位をキープしたものの、米国の25兆4400億ドル、中国の17兆9600億ドルに大きく水を開けられたとし、国際通貨基金(IMF)の予測によると23年にはドイツに抜かれて世界3大経済大国の座から転落する見込みだと伝えている。【12月27日 レコードチャイナ】
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もちろん、生活の質とか暮らしやすさというのは決して経済指標だけで決まるものでもなく、社会・文化といった総合的環境のなかで決まるものでしょう。

経済的側面だけをとっても、単に“1人当たりGDP”といった数字だけは把握できないものもあります。

別に、だから「日本はやっぱり素晴らしい」と言うつもりもありませんし、上記の事実は真摯に向かい合う必要がありますが、必要以上に卑下する必要もないのかも。(ただし、“ジリ貧”という言葉から連想するように、今のような状況が続けが、やがては経済以外のいろんな面で、今はうまくいっているような面でも問題が表面化してくることはあるでしょう)

【イギリス 高騰する家賃 増加するホームレス】
イギリスでは昨年後半から今年前半にかけて、二桁を超える消費者物価上昇が続いていましたが、今年後半、ようやく落ち着いてきたようです。

****イギリス11月の消費者物価3.9%上昇 2年2か月ぶりの低水準****
イギリスの11月の消費者物価指数は去年の同じ月と比べ3.9%の上昇となり、伸び率は2年2か月ぶりの低水準となりました。

イギリス統計局が20日に発表した11月の消費者物価指数は、去年の同じ月と比べ3.9%の上昇となりました。伸び率は前の月の4.6%から0.7ポイント縮小し、2021年9月以来、2年2か月ぶりの低い水準となりました。

エネルギー価格の下落で燃料費などを含む「輸送」が前の月から2ポイント下がりマイナス1.5%となったほか、「食品や飲料」が0.9ポイント下がり9.2%の上昇となったことなどが影響しました。

イギリスの中央銀行、イングランド銀行は3回連続で政策金利を5.25%に据え置くと発表していて、2%の物価目標を達成するため当面は現在の高い金利水準を維持する姿勢を示しています。【12月21日 TBS NEWS DIG】
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もちろん、上昇率が小幅になったということで、物価が下がった訳でもありませんので生活苦は続いています。
ハント財務相はインフレ率の発表を受けて「健全で持続可能な成長への道筋が戻りつつあるが多くの家庭は依然として物価高に苦しんでいる」とコメントし、引き続きインフレ対策に優先して取り組むと強調しました。

すべてが値上がりしたなかでも、生活を直撃しているのが家賃の上昇。

****家賃が47万円!? ロンドンで「家が借りられない」 いま何が?****
「えっ、1か月の家賃が平均およそ47万円!?」 これはイギリスの首都、ロンドンの実際の話です。今、ロンドンでは家を借りられないだけでなく、住まいを追われる人も急増しています。「賃貸クライシス」に揺れる霧の都。いったい何が起きているのでしょうか。

1人暮らしなんて無理!さらに…
「家賃が高すぎて、1人暮らしなんて、手が届きません…」 こう嘆くのは、ロンドン中心部に住むジョセフ・スパナーリさん(31)です。

ジョセフ・スパナーリさん医療機関に勤めるスパナーリさん。緊急時に病院に駆けつける必要があるため、職場の近くで4人暮らしのシェアルームを借りています。

1人部屋の広さは6.5畳ほど。それでも家賃は日本円で月およそ14万円(1ポンド=180円 / 2023年12月22日時点)です。4人で割っていることを考えれば、単純計算でこの物件の家賃は56万円にもなります。

スパナーリさんが借りているシェアルームそれでもロンドン中心部にある立地の良さをみれば、家賃は“手ごろ”とも言えるそうです。以前、1部屋空きが出たときには、なんと220人から内覧の申し込みがあったといいます。

シェアルームを出て本当の1人暮らしを夢見て、スパナーリさんは節約の日々を送っています。料理は週末に作り置き。外食もほぼしません。土曜日も仕事をしてお金をためています。

しかし、スパナーリさんはため息まじりに打ち明けてくれました。 最近、1人暮らしができる部屋を探したところ、1500ポンド(日本円でおよそ27万円)以下の物件は、まったく見つからなかったといいます。

さらに、今住んでいる所も、いつまで住めるのか分からないといいます。「シェアルームの大家からは、近く『家賃を値上げする』と言われています。賃料がどのくらい上がるか分からず、不安でいっぱいです」

賃貸物件の不足、コロナ明けで拍車
もともと慢性的な住宅不足問題を抱えるロンドン。なかでも今、深刻化しているのが賃貸物件の不足です。

根強いインフレが続くイギリスでは金利が上昇しています。その結果、銀行から資金を借りている賃貸物件のオーナーが返済に困り、物件を手放すケースが相次いでいるのです。

また、コロナ禍が収束したことで、住宅の“都心回帰”ともいえる動きが拍車をかけました。ロンドン中心部の住宅への需要が高まり、2023年10月の時点で、賃貸が可能な物件の数は、コロナ禍前と比べて3割以上減少。手ごろな部屋を見つけることは、より困難な状況になっているのです。

この結果、何が起きているのか。
こちら(冒頭グラフ)は、ロンドンの賃貸住宅の家賃の推移について変化率で示したものです。2021年以降、急上昇しています。

また、イギリスの不動産会社によりますと、ことし7月から9月の賃貸住宅の家賃の平均は月2627ポンド、日本円でおよそ47万円。2022年の同じ時期より、12%値上がりしたとしています。(中略)

“家がない”ホームレス17万人!?
家賃の高騰が続くロンドン。賃貸物件を借りられるだけましともいえる状況にまでなっています。コロナ禍、そして長引くインフレで、ホームレス※が急増しているのです。

その1人だった、キラーン・オブライアンさんです。
キラーン・オブライアンさんいまでこそ、慈善団体の支援をうけて住まいをみつけ、バリスタとして働けるようになりましたが、かつては路上生活を余儀なくされていました。仕事もなく、部屋を探すことなんて夢のまた夢だったといいます。

「住宅の数が少ないので競争が激しく、何度も挑戦しましたが借りられませんでした。失業している場合、シェアルームを含め選択肢は市場の5%に限られ、競争が激しいのです。サポートを得られなければ、私はまだホームレスだったでしょう」

キラーンさんを支援したロンドンにある慈善団体では経営するカフェでホームレスの人たちに職業訓練を行い、一時的な住まいの手配も行っています。

ホームレスの人たちに職業訓練を行うカフェ現在、生活に困窮していると相談を寄せてきた人は、およそ1500人。2年前に比べると、3倍になっているといいます。

「これまでホームレスでなかった人たちが、生活費の高騰やインフレなどが重なって、ホームレスになってしまう。今、私たちはホームレスになって間もない人たちを見つけ、仕事を通じてホームレス状態から立ち直る手助けをしています。しかし市場に出回る物件が減って、ホームレスが利用できる住宅が少なくなっています。今のような状況は見たことがありません」

ロンドンの自治体などを取りまとめる団体「ロンドン・カウンシルズ」はことし8月、家がなく、一時宿泊施設に入るなどの支援を受けている人は、推定で子ども8万人を含めておよそ17万人にのぼると発表しました。

政治や行政はどう対処?政党間の対立も
家賃の記録的な高騰に、ホームレスの急増…。 こうした現状を悪化させている理由の1つに、ある法律の存在が指摘されています。

この法律は「セクション21」と呼ばれるもので、大家が「賃貸契約を終了する」と借り手に正式に通知すれば、家賃滞納などの問題がなくても、立ち退かせることができるというものです。言ってしまえば借り手側の都合は関係なく、貸し手側の大家の事情が優先されるというわけです。

ロンドン市は、週に平均して290人が立ち退き通知を受けているとしています。政治や行政はこうした現状にどう対処しようとしているのでしょうか。

この法律を廃止しようという改正案はことし中に、議会に提出される見込みでしたが、10月に提出の延期が決まりました。支持者に大家が多い与党・保守党の議員の反発を受けたことが理由の一つだと伝えられています。

ロンドン市長は、法律の改正が来年に延期された場合、さらに数千人がホームレスになるおそれがあるとして、一刻も早い改正を訴えています。

住宅を無償提供 企業から支援の手も
(中略)

解決策は?どうする
解決策はあるのでしょうか。
その1つの動きとして、民間企業による賃貸住宅の建設の取り組みがあります。ロンドンの不動産会社「Savills」のアナリストによりますと、過去10年で4万2000戸の賃貸住宅が新たに建設され、すでに市民が入居を始めているということです。

また、日本の大手住宅メーカー「大和ハウス」もことし8月、ロンドンで分譲マンションの開発に乗り出すと発表しています。

さらに政治にも動きが出てきています。この住宅問題は2024年にも行われる総選挙の争点の1つとして、与野党が公約でその解消策を打ち出しています。

このうち、与党・保守党は不満を抱える若い層の支持率の低下を防ごうと、スナク首相がことし7月、手頃な価格の住宅を新たに100万戸建設するという政策を発表しました。

これに対して最大野党・労働党も10月の大会で、市営・公営住宅に重点的に投資して、5年間で150万戸を建設することを公約に掲げました。

ただ、解決は簡単ではありません。背景として2020年のEU離脱の影響があります。離脱によって働くためのビザの要件が厳しくなり、経済を支えてきたEU各国の労働者が帰国したことから建設関連の労働力が不足しているのです。

さらに、イギリスの建設業界では長年生産性の向上が課題となっているほか、住宅の建設許可が煩雑であることなども指摘されています。

賃貸住宅の不足がこのまま続いた場合、国の経済へ影響が及ぶと懸念されています。その一つが、労働力の流動性の硬直化です。というのも、1人暮らしができず親と同居する若者が増えると、通勤できる範囲が限定され、企業側の人材採用も難しくなることなどが指摘されているのです。

すでに「賃貸住宅の不足がイギリス経済低迷の主な要因」だと指摘するシンクタンクもあるほどです。「衣食住」の1つで、生活に最も身近な住まいの問題に、具体的な解決策を見いだせるのか、ロンドン市民の1人として、注視していきます。(11月2日 キャッチ!世界のトップニュースで放送)【12月26日 NHK】
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賃借人の権利が一定に保護されている日本からすれば、「セクション21」というのは随分乱暴な法律に思えます。1988年に制定されたもののようですが、どういう経緯で出来たものでしょうか。

1人暮らしができず親と同居する若者が増えると、通勤できる範囲が限定され、労働力の流動性が硬直化するというのは「なるほど・・・」という指摘です。

またEU離脱の悪影響がここでも・・・という話のようです。

上記にもあるように、こうした家賃高騰によってホームレスが急増しています。

****英イングランド地方部でホームレス急増 生活費高騰などで****
英イングランドの地方部で、ホームレスの数が5年で40%増加したことが分かった。地方部で活動する慈善団体が26日、明らかにした。
 
英国では生活費の高騰が深刻化。食費、光熱費、家賃、住宅ローンの金利が上がる中、会計が苦しくなった人も多い。

2022年10月には、インフレ率が11%と過去41年で最高を記録した。今年11月には3.9%まで下がったが、主に10年前に比べ福祉手当が減額されていることや住宅不足などから、食料を買えない人やホームレスが増加している。

イングランドの地方部で手頃な住宅の供給を訴えている慈善団体CPREによると、地方のホームレスの数は2018年には1万7212人だったが、2023年には2万4143人に増加した。多くの自治体において賃金が上がっていないことと住居費の値上がりが背景にあるという。

同団体によると、イングランドで最もホームレス率が高い地方自治体は、ロンドンの北東に位置するボストンだった。10万人当たりのホームレスの数は全国平均では15人だが、最新データがある今年9月時点で、ボストンでは48人に上った。

次いで、ロンドン北部ベッドフォードが10万人当たり38人、イングランド南西部ノースデボンは29人となっている。

CPREは、「都市部と違い、地方のホームレスは目につかないことが多い。野山で野営したり、農場にある建物で雨露をしのいだりしている」としている。またこうした人々は「支援を受けていないことが多い」ため、実際の数は政府統計を利用した今回の分析を上回ることはほぼ間違いと指摘した。

同団体によると、イングランド地方部では30万人が公営住宅への入居を待っている。 【12月27日 AFP】
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【アメリカも同様】
状況はアメリカでも同様で、ロンドンが家賃47万円なら、ニューヨークの1DKの平均家賃は4,000ドル(約60万円)!【11月16日 Tokyo fm plus 「NYの1DKの平均家賃約60万円!物価高騰に苦しむニューヨークZ世代の節約法とは?」より】

しかも、外食費など全てが値上がりしていますので、“巷では「$100 bill is news $20 bill(今の100ドルは、ついこの間までの20ドル)」と言われ始めています。”【同上】という状況。 映画館の売店で、水1本が7ドル(約1000円)といった話も。

これでは最低賃金(最低時給は7ドル25セント(約1,000円)、ニューヨークは15ドル(約2,250円))では到底暮らせませんし、年収1000万円でもギリギリの生活になります。

結果、“米国のホームレス数が65万人に急増、コロナ対策支援の終了が背景に”【12月19日 Forbes】といった事態に。

(ロサンゼルス【同上】)

そうしたアメリカの状況はまた別機会に。

単に“1人当たりGDP”といった数字だけは把握できないものもあるという話でした。

また、自分が生活するのに精一杯という状況では、難民・移民など他者への配慮をする余裕がなくなり、とにかく自分第一主義になりやすいというのも無理からぬところがあります。
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