孤帆の遠影碧空に尽き

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イスラエル  ガザの惨状にもかかわらず攻撃を続ける背景には、惨状を伝えていないメディアの責任も

2023-12-26 22:51:33 | パレスチナ

(パレスチナ自治区ガザ地区で展開するイスラエル国防軍の部隊と面会したイスラエルのネタニヤフ首相【12月26日 BBC】)

【ガザ地区「悲惨な状況」 飢え死にするより、殉教者として家で死ぬ方がまし】
パレスチナ・ガザ地区の惨状については多くの報道がなされています。
24日のクリスマスイブの夜、難民キャンがイスラエル軍に空爆され70人ほどが死亡したとのこと。

****ガザ難民キャンプ空爆、WHO「悲惨な」状況確認****
世界保健機関の職員が25日、パレスチナ自治区ガザ地区の病院を訪問し、イスラエルによる空爆の被害者らが置かれた「悲惨な」状況について確認した。

WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長はX(旧ツイッター)に「WHOのチームは、医療従事者や被害者から、爆発による被害に関する悲惨な証言を得た」と投稿。「ある子どもはキャンプへの攻撃で家族全員を失った。同病院の看護師も同じ目に遭った」とつづった。

ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスの保健当局は、24日夜にマガジ難民キャンプ内の建物3棟がイスラエルによる空爆を受け、少なくとも70人が死亡したと発表した。AFPは死者数について独自に確認できていない。

ガザ中部デイルアルバラのアクサ殉教者病院の敷地には、白い袋に入れられた犠牲者の遺体が多数並べられていた。病院職員は、キャンプへの攻撃の負傷者約100人が病院に搬送されてきたと報告している。

テドロス氏は、病院の処理能力を超えており「治療が間に合わず、多くが命を落とすだろう」とし、「24日のガザへの爆撃は、直ちに停戦すべき理由をはっきりと示している」と語気を強めた。

WHOによると、ガザ地区の病院36施設のうち現在でも稼働しているのは、限定稼働の施設を含む9施設のみとなっている。 【12月26日 AFP】
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食糧事情も深刻化し、餓死の脅威が現実のものとなっています。

****配給頼るガザ住民、わずかな食料に長蛇の列 餓死の恐れも*****
パレスチナ自治区ガザ南部のラファで避難民のための食料配給に連日、ボランティアとして参加するバクル・ナジさんは、子どもたちの胃袋を満たすには量が足りないことが分かった瞬間に、毎回、やるせない気持ちになる。

ラファの食料配給所で取材に応じたナジさんは、わずかな食料を求め、無数の人が列をつくると話す。自身もガザ市の自宅から逃れてきた避難民だが、同じ境遇にある人々のために、炊き出しのボランティアをしている。

AFPに対し、「一番つらいのは、食料を配る時だ」と述べ、「食べ物が尽き、子どもたちに『おなかがすいた』『もうないの』と言われると、とても心苦しくなる」と説明した。

そのような状況に直面すると、ボランティアたちの多くは、自らの食料を差し出す。

21日に公表された国連の総合的食料安全保障レベル分類報告書は、12月初め時点までにガザでは200万人以上が危機的な飢餓状態にあり、37万8000人超は「壊滅的な飢餓」に直面していると指摘した。

イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が繰り広げられているガザには、わずかの人道支援物資しか搬入されない。

ラファの食料配給所では、フェンスで囲われたエリアで炊き出しが行われている。大人も大勢の子どもも、プラスチック製のボウルや小さな鍋を手にフェンスの外で辛抱強く待つのだ。

1日当たり約1万人分の食料を配っている慈善団体の職員、ハレド・シェイク・エイドさんは、「レンズ豆もブルガー小麦も市場からなくなった。エンドウ豆も白インゲン豆も消えた」と話す。

エイドさんによると、配給所は寄付とボランティアの参加で運営できているが、常に乏しい物資でやりくりせざるを得ないという。

■「餓死より殉教の方がまし」
ナジさんは、「豆の缶詰の値段は1シェケル(約40円)から6シェケルに跳ね上がった」と語る。
「戦争前も人々は貧しく、職を持つ人でも子どもに十分食べさせられなかった。それなのに、この状況にどう対処すればいいのか」と述べ、「餓死者が出るのではないかと恐れている」と続けた。

南部ハンユニスから逃れてきた、妊娠5か月のヌール・バルバクさんは、食料配給所が開く何時間も前から列に並んでいた。

トマト3個と2シェケル(約80円)を握り締めたバルバクさんは、「12歳の長男にときどき来させているが、暴力を振るわれるだけで何ももらえずに泣きながら帰ってくる」と話し、「ここがなければ、私たちは何も入手できない」と訴えた。
子どもたちはやせ細り、空腹のため夜中に起きる」と厳しい状況を説明し、激戦地となっているハンユニスの自宅に戻ろうと考えたこともあると打ち明けた。「飢え死にするより、殉教者として家で死ぬ方がましだから」 【12月24日 AFP】AFPBB News
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“国連世界食糧計画(WFP)などは21日、パレスチナ自治区ガザ地区のおよそ6人に1人が「壊滅的」な飢餓状態にあるとする報告書を発表した。WFPのマケイン事務局長は「安全かつ安定した支援がなければ状況は絶望的だ。ガザで飢餓から逃れられる人はいない」と警告した。”【12月22日 毎日】

【攻撃の手を緩めないイスラエル エジプト停戦案もハマス拒否 イスラエルは“落としどころ”が見つからず苦慮している面も】
こうした状況でもイスラエル軍の攻撃は熾烈を極めています。ガザ地区の死亡者は2万人を超えています。

****パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍の攻撃続く 24時間で200人超死亡 拘束の人質も死亡か****
パレスチナ自治区ガザでは、イスラエル軍による攻撃が続いていて、1日の死者が200人を超えています。

ガザ保健当局は23日、過去24時間で201人が死亡し、戦闘開始以降の死者数は合わせて2万258人になったと発表しました。

これに先立ち、イスラエル軍の報道官は22日、ガザ北部での戦闘について「最終段階に近づいている」としたうえで、南部での作戦を継続しつつ、範囲をさらに拡大させる考えを示しています。

一方、イスラム組織ハマスは攻撃によって人質5人を担当していたグループとの連絡が途絶え、人質は死亡したとみられると発表しました。

こうした中、アメリカのバイデン大統領は23日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話会談し、民間人保護の重要性を改めて伝えた一方で、戦闘の一時停止については「求めなかった」としています。【12月24日 TBS NEWS DIG】
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ようやくと言うか、エジプト仲介で停戦案も提示されています。

****エジプトが3段階のガザ停戦案提示…第1段階で2週間の戦闘停止、人質40人解放****
サウジアラビアのニュースサイト「アシャルクニュース」は24日、イスラエルとイスラム主義組織ハマスの交渉を仲介するエジプトが、2週間の戦闘停止や人質解放などを第1段階とする3段階の停戦案を提案していると報じた。

同サイトによると、停戦案は先週、ハマスの最高幹部イスマイル・ハニヤ氏らがエジプトを訪問した際に提示された。ハニヤ氏らは組織内で協議するため、23日に滞在先のカタールに戻った。地元紙タイムズ・オブ・イスラエルによると、複数のイスラエル高官が提案があったと認め、交渉につながる可能性を示唆したという。

停戦案の第1段階では、戦闘を2週間停止し、ハマスが人質40人を解放するのと引き換えに、イスラエルはパレスチナ人収監者120人を釈放する。

第2段階では、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸とガザの分断を解消するため、エジプト主導で「パレスチナ国民協議」を開き、ガザの再建を監督する実務者中心の政権を樹立する。

第3段階では、包括的な停戦や残りの人質と収監者の交換を取り決め、イスラエル軍がガザから撤退することを想定している。【12月25日 読売】
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“25日のイスラエル公共放送カンによるとイスラエル当局者は停戦案について「完全にまとまったものではないが、数回の協議を経て合意に至る可能性がある」と述べた。”【12月25日 読売】という前向きの反応も報じられていますが、“イスラム組織ハマスはエジプトが仲介する人質解放や戦闘終結についての提案を拒否したと、ロイター通信が報じました。”【12月26日 日テレNEWS】とも。

すぐに停戦・・・という状況ではないようです。
イスラエル・ネタニヤフ首相は戦闘継続姿勢を崩していません。

“ネタニヤフ首相は25日、与党の会合で、パレスチナ自治区ガザでのハマス掃討作戦を今後数日間のうちに強化すると述べた。「長期戦になるだろう。戦闘終結には近づいていない」と説明。国会演説では「軍事的な圧力」の必要性を強調し、戦闘休止や人質解放交渉に改めて慎重姿勢を示した。地元メディアが伝えた。”【12月26日 共同】

****イスラエル首相「われわれは止まらない 戦争は最後まで続く」****
イスラエルのネタニヤフ首相は25日、ガザ地区北部に展開する部隊を視察しました。
ネタニヤフ首相は兵士たちを前に「誰が停止について話そうとわれわれは止まらない。戦争は最後まで続くだろう」と述べ、ハマスを壊滅させるまで軍事作戦を継続する考えを改めて強調しました。【12月26日 NHK】
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そのうえで・・・

****イスラエル首相 和平実現の3条件 米紙に寄稿****
ネタニヤフ首相は25日、アメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿し、和平を実現するための条件として▽ハマスの壊滅、▽ガザ地区の非武装化、それに▽ガザ地区の脱過激化の3つを挙げました。

ネタニヤフ首相としてはアメリカなど関係国が戦闘休止に向けた働きかけを続けるなか、軍事作戦を継続する正当性を強調する狙いがあるとみられます。【12月26日 NHK】
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要するに、完全勝利するまで戦いをやめない・・・ということですが、そうした表向きの強気姿勢の一方で、人質の救出も進まず、ハマス指導者の確保・殺害も実現していない状況で、戦いを止めるに止められない、落としどころが見つからない状況で、戦闘の長期化に苦慮しているとも報じられています。【12月26日 NHKより】

【イスラエル国民の約7割がガザの民間人の苦境を考慮する必要がないと回答 しかし、メディアでガザの惨状に関する情報が正しく伝えられていない懸念も】
イスラエル軍のガザ猛攻に対して国際的には厳しい目が向けられていますが、イスラエル国内では人質救出を求める声はあるものの、ガザ攻撃を容認・支持する世論が続いています。

****ガザ苦境、国民の7割が考慮せず イスラエルの世論調査****
パレスチナ自治区ガザでのイスラム組織ハマスとイスラエル軍の戦闘を巡り、イスラエル国民の約7割がガザの民間人の苦境を考慮する必要がないと考えていることが26日までのシンクタンク「イスラエル民主主義研究所」の世論調査で分かった。約8割が、軍は国際法を順守しようと努力しているとも回答した。

深刻化するガザの人道危機を懸念する国際社会とイスラエル社会の差が浮き彫りになった。

「イスラエルは軍事作戦の継続を計画する際に、ガザ市民の苦境を考慮する必要があるか」との問いに対し、計69.3%が「全く考慮する必要はない」「ほとんど考慮する必要はない」と答えた。【12月26日 共同】
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こうした世論を生む背景には、ハマスの攻撃への怒りだけでなく、現在のガザ地区がどのような状況に陥っているのか、どれだけ多くの民間人が犠牲になり、飢え・病気に苦しんでいるのか・・・そうした情報が正しくイスラエル国民に伝わっていないのではないか・・・という疑念があります。

****「ガザ被害を報じたか?」TBS記者が聞くと取材中断…イスラエルメディアは“ガザ被害伝えてない”と批判の声も****
パレスチナ自治区ガザで、イスラエル軍の攻撃による甚大な被害が広がる一方、イスラエルメディアはガザの様子を伝えていないという批判の声が上がっています。

イスラエル軍による空爆で破壊された街並み。子どもの遺体を涙ながらに抱きかかえる女性の姿。私たちはガザの悲惨な光景を連日目にしますが、イスラエルでは違います。

イスラエルで優秀なジャーナリストに贈られる賞を受賞した経歴を持つ「ハーレツ」のギデオン・レヴィ氏は…
イスラエル紙「ハーレツ」 ギデオン・レヴィ氏「イスラエルのテレビや主流の新聞を読んでいる平均的なイスラエル人は、ガザでの残虐行為や恐ろしい光景に全く触れていません」

軍の行動を巡る世論調査では、ユダヤ系イスラエル人のおよそ8割がガザ市民の苦しみについて「ほとんど考えなくて良い」、または「あまり考えなくてよい」と答えました。この背景にはメディアの責任があるとレヴィ氏は主張します。

イスラエル紙「ハーレツ」 ギデオン・レヴィ氏「10月7日の蛮行のあと、イスラエルはどんなことをしても良いと思ってしまっているのです」

こうした批判をテレビ局はどう考えているか。取材に応じたのはイスラエル最大の民放放送局で、20年以上にわたり中東エリアの取材を担当するオハド・ヘモ氏。

イスラエルの民間放送局 オハド・ヘモ氏「ガザで起きたことというのは、ガザがイスラエルに対して宣戦布告したということです」

ヘモ氏は「ガザについて十分に報じている」と主張。ただ、軍に同行し、ガザで取材したことについて聞くと…
イスラエルの民間放送局 オハド・ヘモ氏「私たちが見たのは弾薬や武器が病院で見つかり、テロリストによって使われていたということです。それを見ました」

では、ガザの被害については…
記者 「ガザの街の破壊についても報じようとしましたか?」
ヘモ氏「もちろんです」
記者 「どのように報じましたか?」
ヘモ氏「すいません、このインタビューは嫌です。私の国は…攻撃されたんです」
記者 「もちろん分かっています」

インタビューは中断となりました。

戦闘開始から2か月半。停戦を求める国際社会の声が高まる一方、イスラエルでは戦闘継続を支持する声が根強いままです。【12月26日 TBS NEWS DIG】

情報が正確に伝えられていないのはパレスチナ側も同じです。
ガザ地区住民には、10月7日にハマスがイスラエルで行った蛮行についてはほとんど報じられていません。

正しい公平な情報が伝わらないところでは、また、憎しみを煽るような情報しか示されないところでは、合理的な判断も生まれません。メディアの役割の重要性を改めて感じます。

【ネタニヤフ首相 ガザ住民の「自発的移住」促す方針に言及 「民族浄化」との批判】
パレスチナについては、仮にイスラエルがハマスを壊滅させたとしても、「二国家共存」を否定するイスラエルには「ポスト・ハマス」の青写真がないという大きな問題があることは再三取り上げてきましたが、ネタニヤフ首相は「ザの住民を地区外へ自発的に移住」に言及しています。

****ネタニヤフ氏、ガザ住民の「自発的移住」促す方針…パレスチナ側は「民族浄化」と猛反発****
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は25日、党首を務める与党リクードの会合で、パレスチナ自治区ガザの住民を地区外へ自発的に移住するよう促す方針を示した。事実上ガザからのパレスチナ人追放につながりかねず、パレスチナ側は猛反発している。

主要紙ハアレツなどによると、ネタニヤフ氏は会合で「我々の問題は(ガザ住民の)退去を許可するということでなく、移民を受け入れようとする国があるかどうかだ」と述べた。

リクードの国会議員ダニー・ダノン元国連大使は25日夜、公共放送カンのインタビューで「イスラエルは様々な国からガザの難民を受け入れる用意があるとの照会を受けた」と言及した。具体的には南米やアフリカの国々だとし、「いくつかの国は金銭の支払いを求め、別のことを要求した国もある」と述べた。

パレスチナ自治政府は「イスラエルの目的がパレスチナ人の存在を消し去ることだと明らかになった」と反発し、国際社会に対し「民族浄化」をやめるよう求める声明を出した。【12月26日 読売】
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これは「アウト」でしょう。“自発的に移住するよう促す”と言ったところで、実際には様々な圧力がかけられ、出ていくしかないような状況がつくられるのでしょう。それは「民族浄化」に他なりません。
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