孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

エチオピア、エリトリア、そしてソマリア

2008-02-17 11:43:49 | 国際情勢
アフリカのエチオピア・エリトリア国境で緊張が高まっているというニュースがありました。

***PKO部隊が一時撤収=エリトリア****
国連は14日、エチオピア・エリトリア間の停戦を監視する平和維持活動(PKO)、国連エチオピア・エリトリア派遣団(UNMEE)の所属部隊がエリトリア領内の駐留地から国境を越えて移動を始めたと発表した。両国は国境付近に軍を集結させており、UNMEE撤収により、現地の緊張が一段と高まるのは必至だ。【2月15日 時事】
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国連によると、エリトリア軍はエチオピアへ向かう国連部隊に対し、越境を制限したり、食糧供給を中断させたりする妨害行為を繰り返しているそうです。
エリトリアの了解を得ないままの撤退や、エチオピア寄りの姿勢に不満を募らせて妨害行為に及んだとみられています。
停戦監視団が撤退するのですから、また紛争再開でしょうか。



エリトリアは30年間にわたるエチオピアからの独立闘争を経て、1993年に独立を達成しました。
しかし、エリトリアの独自通貨発行や内陸国となったエチオピアによるエリトリア港湾の使用料の交渉が難航したことなどで、両国の関係はふたたび険悪化。
やがて国境沿いにある都市バドメ周辺の所有をめぐり98年交戦状態にはいりました。

お互い経済的に苦しい国で、“身の丈にあわない戦争”が地域を破綻させるとして、国連・アフリカ統一機構が介入。
2000年には休戦が合意されました。
国連からPKOが派遣され、国境付近には、国連エチオピア・エリトリア派遣団(UNMEE)の管理下の暫定安全地帯として幅25kmの緩衝地帯が設置され、国連要員を除く全ての人間の立入りが禁止されていました。【ウィキペディア】

両国は国境付近での直接的な対立だけでなく、ソマリアにおいても互いの影響力を行使して衝突しており、ソマリアの内戦はエチオピア・エリトリアの代理戦争の側面もあると言われています。

以前も触れたように、エチオピアに隣接する“アフリカの角”と呼ばれるソマリアは、氏族間・イスラム原理主義勢力などの内戦、エチオピアの介入によって、“無政府状態”が17年間続いています。
8月13日 http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070813
7月19日 http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070719

06年にはイスラム原理主義勢力「イスラム法廷会議」が勢力を拡大して首都を制圧するまでになりましたが、これに危機感を持った隣国エチオピアが軍事介入して同勢力を一応駆逐しました。
これに対し、アルカイダはイスラム法廷会議を支援、更にエリトリアがこれら勢力に武器支援を行っていると言われています。
また、ブラックホークのトラウマを抱えるアメリカは、98年のケニアとタンザニアでの米大使館爆破テロの容疑者をソマリアのイスラム武装勢力がかくまっていると主張して、エチオピアの軍事介入を支援、エリトリアを非難しています。

エチオピアがソマリアに介入するのは、ひとつはエチオピアが港湾を利用できるように穏健な勢力がソマリアにできることを望んでいること、もうひとつはイスラム武装勢力がエチオピア国内のオガデン地方の反政府運動を刺激・支援しているためです。

オガデン地方にはソマリアと民族的に共通する住民が居住しており、以前からエチオピアからの独立志向があります。
1978年から88年には、エチオピアとソマリアの間でこのオガデン地方領有をめぐりオガデン戦争(アフリカの角戦争)が勃発しました。
この戦争は当時の東西冷戦の代理戦争でもありました。
当時社会主義路線をとっていたエチオピアをソ連、キューバが支援、一方、ソマリアをアメリカ、ソ連と対立する中国が支援。
戦争自体は、米ソ関係の修復、ソマリア国内の内紛によって収束しましたが、オガデン地方がエチオピアにとって、エリトリア国境と並ぶ火薬庫であることには今も変わりありません。

そんな経緯で、ソマリアの暫定政権を支援するエチオピア、アメリカ、これに対するイスラム武装勢力、エリトリア・・・という対立構図がソマリアにあり、ソマリアの再建が進みません。

このように、エチオピア・エリトリア国境対立、ソマリアの無政府状態、エチオピアのオガデン地方の内紛・・・この三者が連動して泥沼状態から抜け出せずにいます。
なんとも言いようのない状態ですので、最後に余談をひとつ。

この地域の地図を見ていて初めて気づいたのですが、エチオピア、エリトリア、ソマリアに囲まれる形で、この地域にはもうひとつ小さな国があります。
ジブチです。
冒頭の地図では小さすぎて名前も出てきません。エリトリアとソマリアにはさまれたイエメン対岸のポイントに位置します。
面積は四国よりひとまわり大きいくらいです。
昔、マラソンの選手で名前を聞きましたが、こんな場所にあるとは知りませんでした。
フランス軍が駐留しているようですが、それにしても、火薬庫に取り囲まれたようななんとも厄介な地域に存在する小国です。



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