孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ジンバブエ  ウィキリークス、ムガベ大統領のがんに関する公電を公表

2011-09-06 21:52:19 | アフリカ

(歴史家に“アフリカの真の歴史”(恐らく、欧州列国の植民地支配を批判する内容でしょう)を語るように訴えるムガベ大統領 ごく最近の様子のようですが、意気軒昂のようにも見えます。 “がん”云々はどうなのでしょうか? “flickr”より By Pan-African News Wire File Photos http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/6118979957/in/photostream

余命は3年から5年
アフリカ南部のジンバブエでは、自らの失政で歴史的ハーパーインフエーション・経済崩壊を招いたムガベ大統領が、強権支配によって権力の座を維持しています。

08年3月の大統領選挙では、野党対立候補であるモーガン・ツァンギライ氏(現在は、ムガベ大統領との大連立により首相)が独自集計で勝利宣言をしたものの、1か月以上にわたって選挙結果が公表されず、結局両者とも過半数に達していなかったとの選管決定により決選投票に持ち込まれました。
更に、大統領支持派の暴力行為によってツァンギライ氏は決選投票撤退を余儀なくされ、ムガベ大統領ひとりが決選投票に進み、大統領として再選される・・・という、実にすっきりしない結果となっています。

こうした露骨な強権支配体制への強い国際批判もあって、ツァンギライ氏を首相とする大連立がその後成立はしましたが、大統領派による圧力は続いています。

その強権支配の象徴とも見られるムガベ大統領(87)が、2008年に前立腺がんで余命5年以下と宣告されていたことが、内部告発サイト「ウィキリークス」が前週、公開した米外交公電で明らかになっています。

****ジンバブエのムガベ大統領、08年にがんで余命5年以下の宣告 ウィキリークス****
・・・・公電は、当時のジェームズ・マクギー駐ジンバブエ米大使が、ジンバブエ準備銀行のギデオン・ゴノ総裁との会談内容を報告したもの。
公電によれば、ゴノ氏は2008年6月4日、ムガベ大統領は前立腺がんで既に転移しており、医師に余命は3年から5年と言われていると、マクギー大使に伝えていた。また、ムガベ氏は医師から公務を減らすよう勧められていたという。

当時のジンバブエは、ムガベ大統領とモーガン・ツァンギライ現首相との大統領選決選投票を控え、暴力的な選挙戦が展開していた。結局、ムガベ大統領陣営によって支持者が襲撃されたツァンギライ氏が決戦投票からの撤退を表明し、ムガベ大統領が再選している。

別の公電によると、ゴノ氏は2008年7月1日にも、「ムガベ氏は体が弱っている。公には強い顔を見せているが、実際は椅子から立ち上がることも困難だ」とマクギー大使に語ったという。

■シンガポールで治療か
ジンバブエが独立した1980年以来、同国を支配してきたムガベ大統領は、自身の病気の噂を一蹴してきた。ムガベ大統領は、今年になってからしばしばシンガポールを訪れている。ムガベ氏の報道官は白内障の手術のためと説明しているが、各メディアはムガベ氏ががんを発症していると繰り返し伝えていた。
ムガベ大統領の妻、グレース夫人も、腰の負傷が伝えられたあと、診察のためにシンガポールを訪れている。

一方、ゴノ氏は5日、ジンバブエのメディアに対し、ムガベ大統領が前立腺がんなどと話したことはないと、ウィキリークスが公開した公電の内容を否定した。【9月6日 AFP】
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08年時点で“余命は3年から5年”ということになると、失礼な表現ではありますが、そろそろ・・・ということにもなります。
まあ、87歳という年齢を考えると、何があっても不思議ではないところでもあります。

本人の意思だけでは決められない退任
前述のように、暴力を伴う強権支配によって権力に固執している・・・というムガベ大統領ですが、08年当時、敗北を認めるような報道、あるいは、家族は退任を望んでいるが、側近が権力維持を主張しているといった報道も一部にありました。
下記は、ツァンギライ氏が勝利したと見られた大統領選挙第1回投票後のものです。

****ジンバブエ、ムガベ氏が辞任に同意か****
前月29日に大統領選と議会選の投票が行われたジンバブエで1日、28年に及ぶロバート・ムガベ大統領(84)の時代が終わりを告げ、長年にわたる政敵モーガン・ツァンギライ氏が政権を握る見通しが強まってきた。
ムガベ氏からの敗北宣言はないものの、外交官や与党幹部までもがムガベ氏が辞任に基本合意したと話している。

ツァンギライ氏が議長を務める民主変革運動(MDC)は勝利宣言したが、ツァンギライ氏自身は勝利宣言せず、交渉が行われていることも認めていない。
選管の正式発表を待つとしながらもツァンギライ氏は記者団に対し変革への明確な委任状を受け取ったと述べている。ツァンギライ氏は同日、投票後初めて記者会見を開き、「選管が結果を承認するまで待つ用意がある」と述べた。自らが正当な大統領かどうかとの質問への回答は避けつつも、大統領就任には疑念の余地はなさそうだ。

ツァンギライ氏の会談に先立ち複数の情報筋から両陣営の交渉は良好だとの見通しがささやかれていた。
与党ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)幹部は「ムガベ氏は決選投票に出馬することで恥をかきたくないので辞任する意向だ」と述べた。【08年4月2日 AFP】
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****ジンバブエ:大統領が生き残り策模索 周辺国と協議*****
大統領選(3月29日投開票)の結果発表が遅れ、ロバート・ムガベ大統領(84)の「不正工作」が指摘されるアフリカ南部・ジンバブエで与党幹部は4日、大統領が決選投票を受け入れるべきかどうか検討する会議を始めた。
また大統領は周辺諸国の首脳と善後策を協議し始めた。野党側が勝利宣言し、議会選挙でも与党が過半数割れして窮地に追い込まれているためで、大統領は生き残り策を必死に模索している模様だ。(中略)

一方、大統領は敗色濃厚な中でどう生き残るか画策している模様だ。外交筋によると大統領は3日、隣国・南アフリカのムベキ大統領と今後の対応を話し合った模様だ。ムガベ大統領自身や家族の身の安全、不正を追及する訴追の回避などが議題になったとみられる。一部の報道によると、大統領の家族が退任を勧め、居座りを主張する側近らと対立し始めているという。
大統領が選挙結果を無視して続投に固執すれば、反政府運動が高まり、非常事態宣言など強権を発動するのではないかとの観測も流れ始めている。【08年4月4日 毎日】
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90歳も近い高齢に加えて、今回ウィキリークスで公表された体調不良といった事情があれば、ムガベ大統領本人の気持ちや家族の気持ちとして、もう面倒なことは避けたい・・・といったものがあっても不思議ではありません。むしろ、そのほうが自然でしょう。

しかし、権力の放棄は、その権力に依存している多くの側近や関係者の運命を左右します。
権力者本人の気持ち以外の、側近・関係者の意向が強く反映されることも推測されます。
そうして見ると、圧倒的な国際批判のなかで権力をあくまでも維持する選択を行ったムガベ大統領は、そのような選択をせざるを得なかった“哀れな老人”という見方もできなくはありません。
実際のところはわかりませんが。

今後、ムガベ大統領の身に万一のことがあっても、ストレートにツァンギライ首相への権力移譲とはならない、大統領関係者・既得権益層の何らかの画策という事態も想定されます。

【「正義の遂行が必要」】
きょう目にした、もうひとつの“余命”の話題は、09年に、「余命3カ月の末期がん」を理由にリビアへの帰国を許されたパンナム機爆破実行犯が現在も生存しており、アメリカには身柄引き渡しを要求すべきだとの強硬論も出ているという話題です。

****パンナム機爆破実行犯、昏睡状態で生存 身柄引き渡し、米で強硬論****
リビアのカダフィ政権崩壊を受け、2009年に英スコットランド当局が釈放した米パンナム機爆破事件(1988年)の実行犯、アルメグラヒ元受刑者の再収監を求める声が米国で噴出している。「余命3カ月の末期がん」を理由にリビアへの帰国を許された元受刑者が現在も昏睡(こんすい)状態ながら生存していることが判明したためで、米政界からは元受刑者の身柄引き渡しを要求すべきだとの強硬論も出始めている。

クリントン国務長官は1日、訪問先のパリでリビアの反カダフィ派の代表組織「国民評議会」のアブドルジャリル議長と会談し、元受刑者は「獄中にあるべきだ」との考えを伝え、善処するよう求めた。

8月末に、米CNNテレビがトリポリ市内の高級住宅街にある元受刑者の自宅を訪問。酸素吸入器をつけ、ベッドに横たわる元受刑者の映像が放映され、「死期は近い」と報じられた。

英スコットランド上空を飛んでいたロンドン発ニューヨーク行きのパンナム機を爆破したとして有罪判決を受け、終身刑に服していた元受刑者は、リビア帰国時には英雄の扱いを受けた。7月には集会に参加する姿が伝えられ、米国人遺族らの強い反感を買っていた。
さらにスコットランド当局が当時の判断の正当性を主張し、再収監に否定的な見解を示すと、米国で刑事責任追及のための身柄引き渡しを求める声が強くなった。

2012年大統領選の共和党の有力候補、ミット・ロムニー氏は「正義の遂行が必要」とこれに加勢、民主党のチャック・シューマー上院議員は、身柄引き渡しを米国が凍結するカダフィ政権の資産解除の条件にすべきだと訴えた。
ただ、米国とリビアには犯罪人引き渡し条約がなく、国民評議会も元受刑者の身柄を引き渡す可能性を否定している。【9月6日 産経】
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個人的には、昏睡状態というのであれば、今更再収監を求めるというのもいかがなものか・・・という感もします。ただ、被害者としてのアメリカ側の感情はまた別のものがあるのでしょう。
国民評議会が身柄引き渡しを認めるとは思えませんが、それにしても“余命”というのはわからないものです。

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