孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

コンゴ民主共和国  武装勢力、エボラ出血熱、さらには「はしか」「マラリア」 そして先進国の「無関心」

2020-01-11 23:43:12 | アフリカ

(コンゴ紛争を戦った子ども兵達【2016年05月31日 原貫太氏 HUFFPOST】)

【武装勢力による暴力が日常化 国連は「人道に対する罪」にあたるとする報告書】
アフリカ中央部に位置するコンゴ民主共和国(旧ザイール)では、1996年には大虐殺で知られる隣国ルワンダの混乱と連動する形で第1次コンゴ戦争が、1998年から2003年にかけてはツチとフツの民族対立や資源獲得競争を原因とするアフリカ周辺国を巻き込んだ「アフリカ大戦」とも呼ばれる第2次コンゴ戦争(死者600万人!)が戦われましたが、内戦終結後も主に東部中心に反政府武装勢力が跋扈して極度に治安が悪い状況が続いています。

****武装勢力構成員と疑われた2人、群衆にリンチされ死亡 コンゴ****
コンゴ民主共和国東部ベニで11月30日、過去1か月間に100人超の市民を殺害した武装勢力の構成員と疑われた2人が、群衆にリンチ(私刑)を受け死亡した。AFP記者が明らかにした。
 
殺害されたのは男性1人と女性1人。民間人の服装をしていたが、所持していたかばんの中からは弾薬が見つかった。

AFP記者によると、2人は数十人の群衆から、ウガンダのイスラム過激派とつながりを持つ武装勢力「民主勢力同盟」の構成員と糾弾され、私的制裁を加えられたという。(後略)【2019年12月1日 AFP】
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****コンゴ東部で住民22人殺害 反政府勢力か、エボラ熱流行地****
エボラ出血熱が流行するコンゴ(旧ザイール)東部のベニ周辺で14〜15日、武装勢力が村を襲撃し女性や子どもを含む少なくとも22人を殺害した。反政府勢力「民主同盟軍」(ADF)の犯行とみられている。ロイター通信が15日、地元当局者の話として報じた。
 
ADFはコンゴ軍が掃討作戦を本格化した10月末以降、報復攻撃を繰り返している。治安が急速に悪化し、計約180人の住民が殺害されたとの情報もある。

エボラ熱の流行は昨年8月に始まり2200人以上が死亡。ADFの攻撃で医療活動が妨げられ、感染者は増加傾向に転じている。【12月16日 共同】
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こうした犠牲者が絶えない状況に、国連も「人道に対する罪」にあたるとする報告書をまとめています。

****コンゴで「人道に対する罪」2年で700人余殺害 国連報告書**** 
民族対立が長年続くアフリカ中部のコンゴ民主共和国で、特定の民族を標的に2年間で少なくとも700人余りが殺害されたとして、国連はこうした行為が「人道に対する罪」にあたるとする報告書をまとめました。

アフリカ中部のコンゴ民主共和国では豊富な地下資源をめぐる利権や民族対立などを背景に、長年にわたって紛争が続いています。

こうした中、OHCHR=国連人権高等弁務官事務所は10日、報告書をまとめ、コンゴ民主共和国の北東部では特定の民族が迫害を受けていて、去年までの2年間に700人余りが殺害され、およそ140人が性的暴行を受けたとしています。

また報告書では民家に火が放たれたり、幼い子どもたちが攻撃の標的にされたりしていて、迫害は計画的かつ広範囲に行われていることなどから、「人道に対する罪」にあたると警鐘を鳴らしています。

こうした迫害によって2018年以降、およそ5万7000人が隣国ウガンダに難民として避難したほか、55万人以上が国内での避難生活を余儀なくされています。

OHCHRはコンゴ民主共和国の政府などに対して民族間の融和政策を推し進めると同時に、すべての国民が安心して暮らせるよう治安当局の強化を行い、迫害を行った当事者に対する捜査を実施することを求めています。【1月11日 NHK】
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コンゴで性暴力の被害に苦しむ人々の治療に当たってきたデニ・ムクウェゲ医師に対し、2018年のノーベル平和賞が授与されましたが、性暴力が日常ともなっているコンゴにあっては、“140人が性的暴行”という数字は、桁違いの“氷山の一角”にすぎないでしょう。

【治安の悪さと重なるエボラ出血熱の脅威 進むワクチン開発】
更に悪いことには、前出の記事も触れているように、この武装勢力が跋扈する地域はエボラ出血熱の感染拡大地域とも重なっています。

****エボラ出血熱と紛争 二重の命の危険にさらされる人たち 日本も知るべき不条理****
(中略)
■エボラ出血熱と武装闘争
エボラ出血熱の流行が続くコンゴ民主共和国の東部地域は、複数の武装勢力による紛争が長年続き、治安の悪化が著しい。

外国人への不信感も強く、感染の可能性があっても外国のNGOが設置した治療施設を頼らない住民も多い。

NGO職員らも武装勢力の標的となり、英BBCによると2019年1月以降、7人が死亡、58人が負傷した。こうした紛争がエボラ感染への対応に大きな影響を及ぼしていると問題になっている。

世界保健機関(WHO)によると、18年8月の発生から19年12月18日までに3351人が感染し、2211人が死亡。約3分の1が治療施設外の場所で亡くなっており、ほかの住民への感染リスクを高めているとされる。【1月11日 GLOBE+】
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上記にもあるように、NGO職員らも武装勢力の標的となる治安の悪さ、住民の外国人への不信感もあって、エボラ対策が十分に実施できない状況にもあります。

それに加え、WHOのワクチン供給に関する姿勢にも問題があると、国境なき医師団(MSF)は批判しています。

****コンゴ民主共和国のエボラワクチン「不十分」、国境なき医師団がWHOを非難****
緊急医療援助団体「国境なき医師団」は(2019年9月)23日、エボラ出血熱の流行で2100人以上が死亡したコンゴ民主共和国におけるワクチン支給が十分でないとして、世界保健機関を非難した。

MSFオペレーション事務局のイザベル・デフォーニ局長は、「現在抱えている主な問題の一つは、WHOによってワクチンが支給されているが、危機的な状況にある患者のほんの一部しか保護されていないという事実だ」と指摘した。
 
コンゴでは昨年8月8日以降、約22万5000人が独医薬品大手メルク製のエボラワクチンの接種を受けた。しかしMSFは「接種を受けた人数は依然少なすぎる」と指摘している。
 
デフォーニ氏は「現状では毎日ワクチン接種を受けているのは50人から1000人だが、最大2000人から2万5000人が受けられるはずだ」と訴えた。
 
さらにMSFは、「保健省と連携してワクチン接種の機会を拡大させようとMSFでは努力しているが、WHOによるワクチン供給の厳格な制限が立ちはだかっている」とし、「いまだこうした制限が課されている理由は不明だ」と述べ、現在のワクチンは「安全性と有効性が立証されている」と主張した。
 
一方、WHOはワクチン支給の制限について否定し、流行を止めるために「可能な措置は全て」とっていると主張している。 【2019年9月23日 AFP】
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なお、エボラワクチンに関しては、上記メルク社のものに加え、米製薬・日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)が開発した新たなエボラワクチンも昨年10月から投与が始まっています。

先行しているメルク社ワクチンとの関係については“差し替えではなく、これを補完するもの”(MSFのプロジェクト・リーダー)【2019年11月28日  国境なき医師団】とのことです。

J&J製の新ワクチン投与が遅れた背景には、エボラ熱対応への不信感がはびこる地域で新薬を導入するのはリスクを伴うとするコンゴの保健相の拒否があったようですが、保健相辞任で投与の道筋が開けたとのこと。【2019年9月24日 AFPより】

予防・治療法がないと恐れられたエボラ出血熱ですが、“WHOのテドロス事務局長は「エボラ出血熱はいまや、予防や治療が可能になってきている」とコメントしています。”【2019年11月16日 NHK】とのことです。

【エボラ以上の犠牲者を出している「はしか」や「マラリア」】
しかし、メディアに取り上げられる機会も少なくない上記エボラ出血熱より更に犠牲者が多いのが“はしか”だそうです。「世界最悪のはしか流行」(WHO)とも。

****はしかの死者6000人超に、「世界最悪の流行」 コンゴ****
中央アフリカのコンゴ民主共和国(旧ザイール)で、猛威を振るうはしかのために命を落とした人が6000人を超えたことが分かった。世界保健機関(WHO)が9日までに明らかにした。

WHOは7日の声明で現状について、「世界最悪のはしか流行」と指摘。各国機関が連携して対策のための支援を強化するよう呼びかけた。

WHOによると昨年以降、はしかの疑いのある症例がおよそ31万件報告されている。ただ対策に充てる資金が依然として足りておらず、感染拡大を抑え込むうえでの「大きな障害」になっているという。

WHOは国際社会と連携して5歳未満の子ども1800万人にワクチンを接種したが、日常的に予防接種を実施している地域はまだ限られているのが実情だ。報告される患者の4分の1は、5歳未満の子どもが占める。

感染を食い止めるため、WHOはこれまで2760万ドル(約30億円)を拠出したとしているが、6〜14歳の子どもへのワクチンプログラムといった対策を実施するにはさらに4000万ドルの資金が必要だという。

はしかは感染力が強く、せきやくしゃみによって感染が広がる。コンゴではエボラ出血熱でも過去2番目の患者数・死者数を記録する被害が出た。
医療システムへの根強い不信感と一部地域での武装集団による争いなどが障害となり、各保健機関はこれらの感染症の対策に苦慮している。【1月9日 CNN】
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もっと言えば、エボラ出血熱やはしか以上に慢性的な犠牲者を出している感染症があります。マラリアです。

****エボラだけではない、コンゴの住民を苦しめる恐るべき感染症の数々****
(中略)
2歳以下の子どもの“最大のキラー”はマラリア
現地では熱が出ると、どのような疾患が考えられるか。その筆頭はマラリアである。

マラリアは蚊を媒介とする病気だが、首都のキンシャサにおいても、また地方の診療所でも、熱があると、まずはマラリアと診断される可能性が高い。本来ならば、確認のための検査をする必要があるが、そのためには患者が検査費用(約5ドル)を負担する必要がある。
 
多くの患者は、その費用を負担できないので薬だけを希望し、多くの医師もマラリアの薬を処方する。マラリアは、エイズ、結核とともに世界の3大感染症の1つである。
 
(中略)コンゴ民主共和国では、年間2500万人がこの病気にかかり、4万6000人が死亡している(推定2017, WHO Malaria Report)。
 
(中略)マラリアは2000年までは、世界で年間100万人から200万人もの死亡者が出るということで“世界の課題”であったが、2003年に開始された3大感染症対策のための基金(グローバルファンド)による世界規模の対策により激減している。
 
アフリカにおいても、特に住友化学が開発した薬を浸透させた蚊帳の普及が対策として進められるようになるとともに、簡易検査により早期診断がつけやすくなったこともあり、マラリアにかかる人、死亡者が減少している。

熱帯熱マラリアの場合には、手遅れになる前に薬を飲むこともやむを得ない。大人は何度でもマラリアにかかり、症状も軽いことが多いが、2歳以下の子どもの場合、最初にかかったときの死亡率が高い。(中略)

「感染症の宝庫」と呼ばれるコンゴ民主共和国 エボラの終結に向けてもう一歩
コンゴ民主共和国は「感染症の宝庫」と呼ばれ、新たな感染症が出てくる地域であるとともに、これまでも人類の多くの人々が苦しめられてきた感染症であるマラリア、エイズ、結核、はしか、コレラなどの疾患が、まだ解決されていない国である。
 
広大な国土、熱帯雨林が広がる地域、医療サービスがまばらで不十分である中、エボラという致死的な疾患の流行が襲った国、その中でも、地域、地方の医療従事者は、懸命に子どもたちの命を救おうと診療にあたっている。

国際社会としても、そのようなコンゴ民主共和国への支援は必須であろう。【2019年12月20日 コンゴ民主共和国保健次官付顧問・JICA・国立国際医療研究センター医師 仲佐 保氏 DIAMOND online】
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【武装勢力の資金源、児童労働などを支える先進国の消費行動と「無関心」】
医療体制の拡充を阻んでいる大きな要因が最初にとりあげた武装勢力跋扈による治安の悪さですが、そもそも武装勢力が存在するのは豊富な地下資源の故であり、この地下資源は日本の市民生活と密接に関連しています。

****死者540万人以上-日本のメディアは報じない、コンゴ紛争とハイテク産業の繋がり****
世界最大とも言われるコンゴ民主共和国の紛争の大きな要因を担っているのが、現代の私たちの生活に欠かせない存在となったスマートフォンを始めとする電子機器だ。

死者540万人以上―。
アフリカ大陸中央部に位置するコンゴ民主共和国(Democratic Republic of the Congo/以下コンゴ)の紛争は、周辺国を巻き込みながら、15年以上に渡り、第二次大戦後に起きた紛争としては世界最多である540万人以上もの犠牲者を産み出している。

シリアやウクライナ、パレスチナなどの紛争が各種メディアによる報道を占める中、コンゴの紛争はこれほどの規模であるにもかかわらずメディアが取り上げることは極まれであり、特に日本においては、この紛争の存在すら十分に知られていないのが現状である。

この「無関心」が、同国の人道危機を更に深め、紛争下に暮らす人々を更なる不条理な苦痛へと追いやっている(関連記事:死者540万人以上―日本では報道されない、忘れられた世界最大の紛争(コンゴ民主共和国))。

その一方で、この世界最大とも言われる紛争の大きな要因を担っているのが、現代の私たちの生活に欠かせない存在となったスマートフォンを始めとする電子機器だ。

これら電子機器には、コルタンやタンタルなど大量のレアメタル(希少金属)が使用されている。このレアメタルがコンゴの武装勢力の資金源となっており、紛争の規模を広げ、そして長引かせている。

先進国の「豊かな生活」は、コンゴに生きる人々の犠牲の上に成り立っていると言えるだろう。(中略)
 
スマートフォンとコンゴ紛争
今日でも、コンゴの東部地域では豊富にレアメタルが採掘されている。例えば、電子回路のコンデンサに使われているタンタルという鉱石の推定埋蔵量の6割以上はコンゴに眠っていると考えられており、またコルタンの埋蔵量の6割から8割もコンゴに存在すると言われている。

近年では、スマートフォンやタブレットなどの情報電子機器が発達してきたことにより、世界的に需要が急増しているレアメタル。

先進国でこのレアメタルの需要が高まれば高まるほど、武装勢力により多くの資金が流れ込み、紛争による犠牲者が増え続けるという構造が出来てしまっている。(中略)

また、レアメタルを発掘する鉱山では、深刻な児童労働も報告されている。武装勢力は子供たちを勧誘、または誘拐し、崩落の危険性も高い狭い地下道の中で働かせている。7歳の子供までもが働かされているという報告も存在する。
 
(中略)UNICEF(国連児童基金/ユニセフ)の調査によると、コンゴ南部の鉱山での児童労働の人数は、2014年で約4万人と報告されている。(中略)
 
「紛争鉱物」問題改善に向けた取り組み
これまで述べてきたように、コンゴ紛争とハイテク産業、また我々が日々使う電子機器は密接に関係している。今あなたがこの記事を読むのに使用しているスマートフォンやタブレット、ノートパソコンが、コンゴの人々の犠牲によって製造されたものかもしれない。私たちも、コンゴ紛争と無関係ではないのだ。

いわゆる「紛争鉱物」問題の改善は、我々消費者の意識と行動が大きく関係している。例えば、可能な限り電子機器の使用期間を延ばし、レアメタルの需要を下げる事も、この問題改善に向けた第一歩となる。(中略)

「消費者の意識と行動」に関連する、実際の法的な動きも存在している。2010年7月には、アメリカでドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法(ドッド・フランク法)が成立。

このドッド・フランク法では紛争鉱物に関する特別な規定が儲けられており、アメリカの上場企業は自社製品に使っている鉱物が、コンゴ国内、またその周辺の武装勢力が管轄下に置く鉱山に由来するものかどうかを示さなければならないとされた。

一方で、(最悪の労働形態であったとしても)一連の取り組みが鉱山で働く人々の仕事を奪う事にも繋がるという見方もあり、仕事を失った人々への雇用機会創出など、国際機関・NGOなどによる包括的な取り組みもまた必要となってくる。
 
比較的欧米のニュースメディアはコンゴ紛争、また同国の政治や人道危機を取り上げることが多いが、日本のメディアが取り上げることは極稀だ。「グローバル」と声高々に叫んでおきながら、日本の産業とも関係するコンゴの危機が日本で報じられることはほとんど無い。

かつてノーベル平和賞受賞者のエリ・ヴィーゼル氏は、「愛の反対は憎しみではなく、無関心だ。」と言った。グローバル化が極度に進展した今日、地球の裏の出来事が、他人事では無くなってきている。【2016年05月31日 原貫太氏 HUFFPOST】
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