孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ケニアのテロで起きたある「出来事」 アメリカで高まる排外主義、その結果を喜ぶのは・・・

2015-12-22 23:05:37 | アメリカ

(「イスラム教徒入国禁止」発言後も支持率を伸ばすトランプ氏 【12月14日 ロイター】)

【「殺すなら一緒に殺せ。そうでないなら放っておけ」】
一時は、ウガンダ軍とブルンジ軍からなるアフリカ連合ソマリア平和維持部隊(AMISOM)がかろうじて死守する首都モガディシオの一部を除いて、ソマリア中南部を広く支配したイスラム過激派「アル・シャバブ」ですが、2011年頃から、大干ばつに対応できず民心が離反したこと、リビアのカダフィ政権が崩壊し支援が途絶えたこと、米無人機の攻撃で幹部が次々暗殺されたことなどから急速に弱体化、2011年8月には首都モガディシオから撤退しました。

こうした形勢を見たかのように隣国ケニアが2011年10月にアル・シャバブ掃討のためソマリアへ侵攻し、アル・シャバブはソマリアにおける拠点都市はすべて失うまでに縮小しています。

しかし、面的支配が縮小した一方で、テロ攻撃を強めており、掃討作戦の中核となったケニアに対しても頻繁にテロをしかけています。
67人が犠牲になった2013年のケニアの首都ナイロビの「ショッピングモール襲撃事件」は、アル・シャバブの名を世界に知らしめることにもなりました。

特に、ケニア北東部にはソマリア系住民が多く、アル・シャバブはこの地区を頻繁に攻撃しています。

今年4月にはケニア北東部ガリッサのガリッサ大学をアル・シャバブが襲撃し148人を殺害しましたが、その際、発砲する前に信仰する宗教を尋ね、ムスリムを多く解放する一方で、キリスト教徒を射殺したとされています。

2014年12月にはマンデラ近くでアル・シャバブがクリスマスのためナイロビへ向かっていたバスを襲撃し、ムスリムではない乗客28人を殺害しています。

そうしたアル・シャバブによるテロが頻発しているケニア北東部での出来事です。

****ケニアで襲撃 ムスリム、キリスト教徒をかばう****
ケニア北東部マンデラ県のソマリア国境付近で21日、イスラム過激派勢力がバスを襲撃したところ、ムスリム(イスラム教)の乗客たちがキリスト教徒たちをかばったという。バス会社がBBCに確認した。襲撃では少なくとも2人が死亡したという。

マンデラ県のアリ・ロバ知事が地元メディアに話したところによると、国境沿いのエルワク村近くで、ソマリアを拠点とする過激派勢力アル・シャバブの兵士がバスを襲った。アル・シャバブは犯行を認めている。バスは首都ナイロビからマンデラ町へ向かっていた。

知事は「地元住民は愛国心と仲間意識を示した」と述べ、乗客たちの団結を目にしたから武装勢力は立ち去ったのだと話した。

報道によると、ムスリムの乗客は兵士らに「殺すなら一緒に殺せ。そうでないなら放っておけ」と告げ、キリスト教徒たちと分けられることを拒否したという。

バス会社「マカー」社員は襲われたバスの運転手の話として、ムスリムの乗客たちがキリスト教徒たちと離れることを拒否したとBBCの取材に確認した。

バスを降ろされた乗客のひとりが走って逃げようとしたところ撃たれ、死亡したという。(中略)

BBCニュースのバシュカス・ジャグソダーイ記者によると、キリスト教徒が殺された昨年の事件の影響で他の地域からマンデラ県へ来て働いていた教師や医療関係者2000人以上が、県を退去してしまったことなどから、地域のムスリム系住民も相次ぐ襲撃による打撃を強く受けている。

今回、ムスリム教徒たちがキリスト教徒をかばったのは、そうした事態へのいら立ちも背景にあるのではないかと記者は指摘している。【12月22日 BBC】
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****過激派襲撃からキリスト教徒を守ったムスリムの勇気*****
・・・ソマリアのイスラム過激派「アルシャバブ」の武装グループは、ケニアのマンデラ郡でバスに発砲して停車させると、バスに乗り込んで乗客をイスラム教徒とキリスト教徒に分け、キリスト教徒の乗客を殺害しようとしたと、BBCは報じている。

「私たちは、イスラム教徒ではない乗客の何人かに、イスラム教徒の衣服を与えて、見分けがつきにくくした。そしてしっかりと体を寄せ合った」と乗客の1人だったイスラム教徒のアブディ・モハマド・アブディはロイター通信に語った。「最後は武装グループも諦め、また戻ってくるぞと悪態を付きながら降りていった」

マンデラ郡知事のアリ・ロバは、ケニアのデイリー・ネーション紙の取材で、この証言が正しいことを認めている。「乗客はイスラム教徒ではない人たちから離れるのを拒否し、皆殺しにするか、さもなくば立ち去れと武装グループに迫った」という。同紙によると、バスには62人の乗客が乗っていた。(後略)【12月22日 Newsweek】
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詳しい事情はわかりませんが、報道が伝えるような話であれば、宗教の違いを理由にした暴力が横行しているなかでは救われるような話でもあります。

共和党支持者の47%は、イスラム教徒がアメリカに切実かつ重大な脅威となっていると考えている
一方、大統領選の予備選挙に向けた選挙活動が行われているアメリカでは、イスラム過激派だけでなく、広くイスラム教徒全体への嫌悪感・反感が燃えさかっています。

****排外主義の暴走とテロの悪循環****
・・・これまで「イスラム過激派」の暴力を非難していた共和党政治家たちが最近イスラム教徒全体をやり玉に挙げ、
反イスラム的発言をたしなめる人たちを弱腰呼ばわりし始めているのは、危険な傾向だ。

しかも、そのたぐいの発言を支持する有権者がいる。

ブルームバーグ・ポリティクスの世論調査によれば、共和党予備選に投票するつもりだという回答者の3分の2近くは、イスラム教徒の一時入国禁止というトランプの主張を支持している。
この主張により、トランプに投票する可能性が高まったと答えた人も、3分の1余りいた。

共和党支持層のかなりの割合は、イスラム教徒(この点ではアメリカ国籍を持つイスラム教徒も例外でない)に強い警戒心を抱いている。

最近の世論調査によると、共和党支持者の47%は、イスラム教徒がアメリカに切実かつ重大な脅威となっていると考えている。

イスラム教の価値観はアメリカの価値観と相いれないと考える人は、76%。イスラム教徒のシリア難民の入国を認めるべきでないと考える人は、80%を超えている。(後略)【12月22日号 Newsweek日本版】
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社会全体に広がる恐怖心を煽る偏狭な差別主義
パリ同時多発テロやアメリカ・カリフォルニア州サンバーナディーノの福祉施設で12月2日に発生した銃乱射事件のような事件が起きているのは事実ですが、一方で、イスラム過激派の代表的存在となっているイスラム国(IS)は、徐々にではありますが、その支配を縮小させる方向にあります。

****IS支配地域、今年14%縮小 米シンクタンク****
イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の支配地域は2015年に14%縮小し、一方でシリアのクルド人が掌握する地域はほぼ3倍になったとの見解を、国際軍事情報企業IHSジェーンズ(IHS Jane's)が21日、明らかにした。

ISが失った要衝には、戦略的に重要なトルコと国境を接するシリアの町テルアビヤドやイラクのティクリート、バイジの石油精製施設などがある。

ISはさらに、同組織のシリアの拠点ラッカとイラク北部モスルを結ぶ高速道路を失い、物資の供給が難しくなっているとみられている。

「ISの石油生産設備を標的とした最近の空爆強化に先立ち、テルアビヤドの国境検問所の支配力を失ったことで、ISは財政的に悪影響を受けている」と、IHSジェーンズの中東部門の上級アナリストは述べている。

IHSジェーンズによれば、ISの支配地域は2015年1月から12月14日までの間に1万2800平方キロ縮小して7万8000平方キロになったという。

しかし、ISは今年、シリアの古代都市パルミラやイラク最大のアンバル州の州都ラマディなども制圧している。【12月22日 AFP】
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上記ラマディに関しても、イラク軍による制圧作戦が進行中です。(なかなか完全制圧に至らず、時間を要してはいますが)

****イラク対テロ部隊、IS制圧都市ラマディに進攻****
イラクの治安部隊は22日、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に今年5月以降、制圧されている同国中西部アンバル州の州都ラマディ中心部に進攻した。

イラクの対テロ当局の報道官は「ラマディの数か所から中心部へ進入し、住宅地域で掃討を開始した。72時間以内に一掃できるだろう」と語った。前夜から開始された新たな動きにより、ラマディ全体の奪還を目指している。

ラマディで戦闘を行っているのは対テロ精鋭部隊で、米軍主導の有志連合による空爆支援を受け、さらに警察、イラク軍、ISに対抗するスンニ派部族の部隊からも支援を受けているという。【12月22日 AFP】
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なかなか根絶できないにしても、イスラム過激派の勢いが強まっている訳ではありません。

しかし、アメリカ国内のテロへの不安感は9.11同時多発テロ後では最高にまで高まっています。
その背景には、そうした不安感を煽り立てるような大統領選挙候補者の差別主義的な言動があるように思われます。

****排外主義の暴走とテロの悪循環*****
アメリカは今、恐怖に取りつかれている。フランス・パリの同時多発テロとカリフォルニア州サンバーナディーノの銃乱射事件を受けて、テロに対する人々の危機意識は急激に高まった。

ニューヨークータイムズ紙とCBSテレビの共同世論調査によると、テロリズムは06年以降で初めて、経済を上
回る最重要課題となった。

回答者の44%が、今後数力月以内にアメリカは再びテロの標的になる可能性が非常に高いと考えている。01年の9.11同時多発テロ後では最高の比率だ。

テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)の「首都」とされるシリアのラッカは繰り返し空爆を受け、
彼らの「領土」は縮小しつつある。反ISISの戦いに参加する国々も増え続けている。

それでもアメリカ国民は、過去10年間で今が最も危険な状態だと感じている。まるで、イスラム過激派の戦闘員が目の前にいるかのようだ。

その理由はISISの攻撃が激化したからでも、彼らのプロパガンダがこれまで以上に効果を挙げているからで
もない。

個人と国家の安全に対する人々の懸念が、アメリカの政界で大きなうねりを巻き起こしている。
この点はヨーロッパも同様だ。フランスでは、極右・国民戦線が最も人気のある政党にのし上がった。(中略)

事件後に銃の販売数が急増
アメリカでは、社会全体に広がる恐怖心と共和党内部の偏狭な差別主義が結び付き、人々の不安をあおることに
しかならない極端な言動を生み出している。

その典型例が、共和党の大統領候補指名レースのトップを走る不動産王ドナルド・トランプだ。トランプは先週、一時的なイスラム教徒のアメリカ入国禁止を提案した。

扇動的かつとっぴで非現実的な案だが、このところ共和党の大統領候補たちは、この種のばかげた反イスラム的
発言を公然と口にしてきた。

元小児神経外科医のベン・カーソンは、以前からイスラム教徒はアメリカの大統領になるべきではないと繰り返している。だが合衆国憲法は、宗教に基づく公職就任への差別を明確に禁じている。

パリの同時テロ直後、トランプやジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事、テッド・クルーズ上院議員は、アメリカ入国を希望する難民に「宗教テスト」を実施するか、さもなければキリスト教徒のシリア人だけに入国を許可するという提案をそろって支持した。

全米各地の州知事(ほとんどが共和党出身)は、州内へのシリア難民の受け入れを拒否する声明を相次いで発表した。だが、実際には州知事に受け入れを拒否する権限はない。それに難民たちには、アメリカで起きたテロ事件の責任はない。

アメリカでは予想どおり、14人が死亡したサンバーナディーノの事件後、銃が飛ぶように売れ始めた。(後略)【12月22日号 Newsweek日本版】
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社会の恐怖心・不安感を煽りたてるようなトランプ氏の差別主義的な発言を、オバマ大統領は強く批判しています。

****米大統領がトランプ氏批判 「国民あおっている****
アメリカのオバマ大統領は、来年の大統領選挙に向けて野党・共和党で支持率トップのトランプ氏が過激な主張を繰り返していることについて、みずからの選挙戦を有利に運ぶため国民の不満や不安をあおっていると批判しました。

来年11月に行われるアメリカ大統領選挙に向けて、共和党で支持率がトップのトランプ氏は、隣国メキシコからの不法移民を強制送還する考えを示すとともに、イスラム教徒の入国を禁止すべきだなどと主張しています。

こうしたなかオバマ大統領は、21日に放送されたアメリカメディアのインタビューで、移民の増加をはじめとする人種構成の変化や賃金が上がらないといった経済状況が、労働者などの怒りや反発につながっていると指摘しました。

そのうえで、「トランプ氏のような人物は選挙戦でそこにつけ込み、食い物にしている」と述べ、トランプ氏がみずからの選挙戦を有利に運ぶため国民の不満や不安をあおっていると批判しました。

また、過激派組織IS=イスラミックステートへの対策を巡っては、「大統領選挙の討論会などで共和党の候補者は、われわれが現在行っている軍事作戦などを批判しているが、代わりに何をするのか尋ねると答えがない」と述べ、トランプ氏らの政権批判に反論しました。

オバマ大統領の発言はトランプ氏が過激な主張を繰り返すことで、アメリカ社会の分断が深まりかねないという、危機感を強めていることの表れだと受け止められています。【12月22日 NHK】
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欧米の被害妄想と極端な振る舞いがISの計画に手を貸す形になっている
トランプ氏のような排外主義に走ることは、社会の分断を深刻化し、結果的にイスラム過激派を利することになります。

****排外主義の暴走とテロの悪循環****
・・・・世論に押されて、アメリカとヨーロッパが「要塞化」して、部外者を締め出すようになる可能性がある。ヨーロッパでは既に、EU圏内の移動の自由を定めたシェングン協定の崩壊が危惧されている。これは、EUの設立理念
に関わる問題であり、EUを完全に変質させる事態だ。

一方、アメリカが反イスラムの偏見の牙城になれば、米政府が中東諸国と戦略を調整することが一層難しくなるだろう。

しかし、もっと切実な危険がある。欧米の態度がISISの望みをかなえてしまう可能性だ。
その望みとは、世界宗教戦争の開戦である。ISISの指導部は一貫して、真のイスラム教徒と異教徒の戦いを説いてきた。

ISISは、欧米の社会に亀裂と対立と恐怖を生み出すような標的を選んで攻撃している。欧米の反イスラム感情が高まれば、イスラム教徒への迫害や排除が格段に起きやすくなる。ISISに加わるイスラム教徒を増やす上で、これほど好都合なことはない。

支持者や戦闘員が増えれば、ISISは支配地を拡大させ、さらに多くのテロを実行できるようになる。

欧米にとっては悪循環だが、欧米の被害妄想と極端な振る舞いがISISの計画に手を貸す形になっている。アメリカやフランス、ハンガリー、チェコなどの国々の排外主義化かISISを強化するとすれば、地政学上の影響は計り知れない。

これが現実になったとき、私たちの恐怖は真に切実なものになる。【12月22日号 Newsweek日本版】
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現在横行している排外主義は共和党支持者内では多数派となりえても(そのことは重大な問題ですが)、本選挙の全体レベルでは抑止されると見られてはいますが・・・。

おそらく、過激な排外主義は、アメリカの得にならないアジア・アフリカのことなどにかかわる必要はないといった対外的無関心とも根底で通じるものがあると思われます。その点では日本にも影響する話でしょう。

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