(政治団体立ち上げを発表する学生運動リーダー【3月20日 NHK】 “あの”中国を相手にするには「大丈夫だろうか・・・」という感もありますが、力量は見た目ではわかりませんから。もっとも、相手は中国ではなく香港当局ということでしょうか。ただ、それはそれで「(当事者能力を欠いた香港当局相手で)効果があるのだろうか・・・」という感も。)
【「雨傘運動」の反省から、政治舞台への直接参加が必要と判断】
中国本土での禁書を扱う香港の書店関係者が中国当局に拉致拘束された事件が示すように、「一国二制度」の形骸化が進む香港で、政長官選挙の民主化を求めた「雨傘運動」の中心になった学生団体が解散し、一部メンバーは9月の立法会(議会)選挙に向けて政治団体を立ち上げるといのことです。
****「雨傘運動」の中心になった学生団体が解散 香港****
2014年秋に香港行政長官選挙の民主化を訴え、路上を占拠したデモ「雨傘運動」の中心になった学生団体の一つ、「学民思潮」が20日、解散を発表した。
学生組織として活動を続けたい人と、政界進出を目指す人で路線の違いが出てきたため、それぞれ別の組織をつくることにした。リーダーの黄之鋒さんらは来月、9月の立法会(議会)選挙に向けて政治団体を立ち上げるという。
会見した黄さんらは「やるべきことはやった。学民思潮としては活動をやめるが、今後は各メンバーが運動の精神を受け継いで、それぞれの立場で活動を続けていく」と話した。
学民思潮は11年、中国への愛国心を育てる「国民教育科」の導入に反対し、当時の中高生が中心になって結成。雨傘運動でも大学生の団体「学連」とともにデモの先頭に立った。【3月21日 朝日】
*******************
香港での民主派若者のこうした動きに中国側は警戒を強めるのでは・・・と思われます。
****民主派の香港学生グループが議会選に向け候補擁立へ 「一国二制度」形骸化狙う中国共産党ピリピリ****
香港で9月4日に投票される立法会(議会、定数70)選に向け、民主派の学生グループが政党を立ち上げ、候補者を擁立する方向で動き出した。
香港トップの行政長官選を来年3月に控え、香港の「一国二制度」をめぐる親中派と民主派の論争が激化する中、学生ら新党の動向に中国共産党政権側が神経をとがらせそうだ。(中略)
行政長官選から民主派候補が事実上排除されるという、中国側が決めた制度の撤回を求めた街頭占拠デモは、14年12月、香港警察に強制排除され、学生らの要求は何ひとつ実現しなかった。このため黄氏ら幹部は政治舞台への直接参加が必要と判断したという。
9月の立法会選は直接選挙枠(比例代表制、5選挙区)で35人、業界別の間接選挙枠で35人を選出する仕組み。7月に立候補を受け付ける。立法会選の結果は来年の行政長官選や「一国二制度」の形骸化を狙う中国との関係に影響する。
黄氏らが高校生だった11年に作った学民思潮は、香港の教育に中国人としての愛国心を植え付けようとした「道徳・国民教育」導入への反発がきっかけ。12年にデモで香港政府に導入を撤回させた経緯がある。【3月21日 産経】
*******************
成果を出せずに終わった「雨傘運動」は民主派若者に無力感を与え、民主化運動も漂流することが懸念されていましたが、そうした中からのひとつの答えが、「立法会」という政治舞台への直接参加の選択です。
前回2012年9月の立法会選挙では、選挙前は民主派への期待の低下などで、民主派の議席は重要法案を否決できる3分の1を割るのではないかと予想されていました。
しかし、9月の新学期からの導入が決まっていた「中国国民としての愛国心」を高めるための愛国教育科目「道徳・国民教育科」への抗議運動が拡大して選挙への関心が高まり、民主派の支持離れを食い止め、強いとされてきた直接選挙枠では18議席にとどまったものの、親中派が有利な職能代表枠で9議席を取り、3分の1を超える27議席確保にこぎつけました。【2012年09月10日 毎日より】
このように、立法会における民主派の勢力はきわどいところにあるとも言えます。
今回の民主派学生グループの参加が、こうした状況にどう影響するのか注目されます。
【もうひとつの「雨傘運動」反省が過激な「本土派」 補選で一定支持獲得】
一方、成果を出せずに終わった「雨傘運動」へのもうひとつの答えが、香港を中国の一部ととらえず、香港こそが「本土」だとして、時に暴力的な手段も辞さない「本土派」と呼ばれる過激な「反中派」若者たちです。
2月8日の夜、彼らが引きおこした「魚蛋革命」、あるいは「旺角騒乱」について、「暴徒」と呼ばれるようなその過激な姿勢への世論・メディアの反感が強く、民主化運動の足を引っ張る形になるのでは・・・・というような内容を、2月13日ブログ「香港 中国による出版関係者拘束でイギリスが中国批判 急進派の騒乱で民主化運動に更なる逆風」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160213で取り上げました。
****旺角の騒乱事件****
繁華街・旺角(モンコック)で春節(旧正月、2月8日)の夜、当局が無免許の屋台を取り締まったことに端を発し、集まった本土派の市民らと警察が翌朝にかけて激しく衝突。暴徒化した一部の市民が投石や放火を繰り返し、警官ら130人以上が負傷、約80人が逮捕された。春節の屋台は市民に親しまれていて、本土派は「香港の伝統を守れ」と抵抗したとされる。【3月1日 朝日】
******************
しかし、2月末に行われた立法会補選では、「本土派」候補が予想以上の善戦を示し、一定の支持があることを明らかにしています。
****過激な反中「本土派」勢い 香港議会補選、得票15%超****
香港で「本土派」と呼ばれる反中国の過激なグループが勢いを伸ばしている。
香港を中国の一部ととらえず、香港こそが「本土」だとして、香港人の利益や文化を守ろうと訴える人たちだ。時に暴力的な手段も辞さない姿勢に批判も根強いが、「香港人」意識を高める若者を中心に支持を広げている。
28日にあった立法会(議会)の補選。民主派が約16万票を獲得して約15万票の親中派を破ったが、香港メディアの関心は、本土派のグループ「本土民主前線」の大学生候補、梁天キ氏(24)に集中した。
約6万6千票で3位。支持層が重なる民主派の票を崩せば、結果に影響を及ぼしかねない票数だ。梁氏は29日、「満足はできないが、悪くない結果だ。香港の政治は今後、親中派、民主派、本土派の3派で争いたい」と語った。
補選は当初、従来通り民主派と親中派が争うとみられたが、春節に旺角で起きた騒乱事件で逮捕された本土派の梁氏への支持がネット上で急速に広がった。
本土派の主張は、中国政府を批判し、民主を求める点では従来の民主派と重なる。だが、目的達成のためなら一定の実力行使も許されるとの主張が異なる点だ。
梁氏は選挙期間中も「弾圧に対抗するにはあらゆる手段が必要」「極悪な政府と戦うには、(非暴力という)限界をもうけてはいけない」などと語り、旺角事件での投石や放火行為を否定しなかった。
これに対し、中国・香港両政府や政党、主要メディアは暴力行為を否定し、本土派を「暴徒」などと批判してきた。それだけに15%を超す得票には驚きが広がる。
梁氏は「『暴徒』が6万6千人の支持を得た。我々は主流派でないが、絶対に支持する人はいる」と自信を見せた。
■高まる香港人意識、暴力辞さず
中国・香港政府や民主派政党から批判されながらも支持を広げる本土派。背景には、「雨傘運動」と呼ばれた民主化デモの挫折や中国との関係改善が見通せない現状がある。
行政長官選挙の民主化を求め、2カ月半続いた2014年の路上占拠デモは非暴力の対話路線を採った。だが、改革案を示した中国側が一歩も譲らず、要求は実現できなかった。
デモ参加者の間では中国への反発に加え、「対話路線で民主化は達成できない」と従来の民主派への不満が広まった。梁氏らの組織も、雨傘運動後に結成された組織の一つだ。
最近では、共産党を批判する本を出版していた書店関係者5人が失踪し、中国当局の関与が疑われている。言論の自由や高度な自治を保障した「一国二制度」が脅かされているという危機感が強まり、「香港人」意識が高まっている。
梁氏の選挙を支援した求職中の男性(26)は「返還後の19年間、民主派はデモをするだけで、結局何も勝ち取れなかった。対話で目標を達成できず、他に手段がなければ一定の暴力もやむを得ない」と話した。【同上】
******************
【決定権を有する中国の厚い壁】
中国側は当然にこうした過激な「本土派」を警戒し、香港への姿勢も厳しいものとなりつつあります。
******************
(中国の李克強首相は5日に行った全人代政府活動報告で)香港とマカオについては「1国2制度、高度な自治という方針を全面的かつ正確に貫徹する」と確認。
ただ2年連続で使われた「民主の推進、和諧(調和)の促進」との表現は消えた。香港では、香港を中国の一部とは考えない「本土派」が台頭しており、警戒感を示した可能性がある。【3月5日 毎日】
*******************
民主派学生主流派の政治参加、過激な「本土派」への一定の支持・・・といったことはあるものの、最終決定権が香港側でなく中国側にある以上、香港側の運動で目に見える成果をだせるか・・・・あまり期待はできません。
反中国的な行動が一定限度を超えれば、「天安門事件」のような事態も考えられます。
仮に、「天安門事件」のような悲劇が起きたとしても、中国の行為を諌める力は国際社会にはないのでは・・・とも危惧されます。
「天安門事件」はすでに過去のものともなり、当時中国を厳しく批判した国々も、中国の圧倒的な経済的・政治的影響力を許容するに至っています。
アメリカでは、「天安門事件」を「暴動」とみなす者が大統領候補になろうとしています。
当時と比較すると、中国の影響力は比較にならないほど強まっています。
中国本土における体制変化がないかぎり、香港の運命も変わらないのでは・・・と悲観的にもなります。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます