孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

硫酸をかけられた女性  パキスタン人女性監督オスカー獲得 イランでは同害報復刑回避

2012-03-02 23:04:23 | 女性問題

(バングラデシュの硫酸被害の子供たちとゲームに興じるイギリス国際開発大臣 バングラデシュでは被害者の4分の1が子供だそうです。 “flickr”より By DFID - UK Department for International Development http://www.flickr.com/photos/dfid/6395601343/

【「変革のために頑張っているパキスタンの女性のみなさん、諦めないで下さい。この賞はあなたたちのものです」】
アメリカ・アカデミー賞の短編ドキュメンタリー部門賞で、男性から硫酸をかけられた女性2人を中心にしたパキスタン人女性映画監督の作品がオスカーを獲得し話題となっています。

****アカデミー賞 パキスタン人、初の受賞 「女性への暴力」に焦点****
第84回米アカデミー賞の短編ドキュメンタリー部門賞に、夫や求婚を断った男性から硫酸をかけられた女性に焦点をあてたパキスタン人女性映画監督の作品「セービング・フェース」が選ばれた。パキスタン人の受賞は初めて。これを機に同国で関心が薄い女性に対する暴力への認識の高まりが期待される。

28日の地元各紙1面は、映画監督シャルミーン・オベイド・チノイさん(33)が受賞した写真を掲載し、快挙を祝った。チノイさんは、受賞のあいさつでパキスタン人女性の勇気と強さをたたえ、「夢をあきらめないで」と呼びかけた。

作品は、男性から硫酸をかけられた女性2人を中心に、彼女たちの奮闘や英国系パキスタン人男性の形成外科医の取り組みを描いた。こうした暴力は多くの場合、家庭内暴力や、求愛、求婚を断られて逆上した男性によるもので、同国だけでなく世界で起きている。

イスラマバードで被害者救済を支援する非政府組織(NGO)の代表バレリー・ハーンさんによると、女性に硫酸をかける暴力はパキスタンでは少なくとも年間200件起きており、拡大傾向にあるという。
犯罪として取り締まる法律は昨年成立したばかりで、被害者救済などの法整備はこれから。ハーンさんは「受賞を機に、法整備に向けた機運が高まることに期待したい」と語った。【2月29日 産経】
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パキスタンでは女性への暴力が許される差別的慣習が残っている地域もあり、司法に訴える被害者は少ないとされています。そうしたなかで昨年、硫酸をかけるなど女性に対して暴力を振るった人を厳罰に処す法が成立するなど、政府もようやく本格的な取り組みを始めています。

女性へ硫酸を浴びせる・・・ということはパキスタンだけでなく各地で見られますが、アフガニスタンでは学校に通う女子学生の顔に、女性教育に反対するタリバン関係者が硫酸を浴びせるといった、いたましい事件もありました。

祝い事の季節になると犠牲者が増える
アフリカのウガンダでも、同様の犯罪行為が多発しているようです。
被害者も女性に限らないようです。

****硫酸による復讐」が急増、遠い法整備 ウガンダ****
ウガンダの首都カンパラにあるムラゴ病院のやけど病棟の外で、ダーリソンさん(24)は注意深くヘッドスカーフの位置を調節する。ひたいから右ほおにかけてまだら模様を作った醜いやけどの跡をこれで隠しているのだ。

同じ病棟には、夫で地方議員のジョセフさんが全身に包帯を巻かれて横たわっている。激痛のため動くこともできない。夫婦は先月、何者かに硫酸を浴びせられた。「故郷の村に構えた小さな店の外で、夫と私は座っていました。すると突然、酸を浴びせられたんです。犯人は逃げました」とダーリソンさん。まだ犯人はつかまっていないが、彼女には心当たりがあるという。「きっと、夫の前妻です」

この国では、硫酸攻撃が急増している。過去10年間で、制裁を加えたり、仕事や私生活での恨みを晴らす手段として、安く入手できる硫酸を浴びせる事件が増えているという。

ムラゴ病院の医師によると、硫酸攻撃の件数は昨年12月のホリデーシーズンに従来の倍以上に増えた。地元メディアは、この期間に40人を超える犠牲者がカンパラ市内の病院に搬送されたと報じた。ある形成外科医は、祝い事の季節になると犠牲者が増えると話す。

■警察や法制度への不信感が背景に
社会学者らは、硫酸攻撃が増えている原因について、紛争処理における警察や法制度への不信感や、都市部への人口流入に伴い伝統的な家族構成が広く崩壊したことを挙げる。

硫酸攻撃の被害者を支援する地元NGO「Acid Survivors Foundation Uganda」の共同創設者で、自らも被害者であるPrudence Komujinya氏は、硫酸を浴びたことによる人生への影響は計り知れないと言う。「身体的にも、社会的にも、経済的にも、心理学的にも、大変な試練が待ち受けています。外観が損なわれると不名誉の烙印を押されることも多いのです」

警察と司法当局は硫酸攻撃に対して以前よりも厳しく対処するようになったが、有害な化学物質を規制する新しい法律の制定を求める市民の声は、実を結んでいないという。【2月4日 AFP】
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【「許しは報復より優れていると神は言った」】
イランでは、やはり硫酸の被害を受け失明した女性の訴えで、加害者男性を同様方法で失明させる「目には目を、歯には歯を」という同害報復刑が一旦は確定したものの、賠償金支払いによって刑の執行直前に中止されたという事件もありました。

****イラン:被害女性の決断で報復刑直前で中止 共感広がる*****
7年前、大学の同級生の男に硫酸を両目にかけられて失明したイラン人女性が、自分が受けた被害と同様の被害を相手に負わせるイスラム法の「同害報復刑(キサース刑)」の適用を求め、刑が確定。男の両目を失明させる刑の執行が7月31日に予定されたが、女性は実行寸前に中止を決断し、報復刑に疑問を抱く人々の間で共感が広がっている。
イスラム法を巡っては欧米を中心に「人権侵害」との批判があるが、今回の出来事にはイラン社会の「変化」が背景にある。

女性はアメネ・バフラミさん。04年11月に同級生のマジド・モハベディ元被告の求婚を拒否し、硫酸を浴びせられた。報復刑は最高裁で2年前に確定した。
イラン学生通信によると、バフラミさんは主治医らから翻意をうながされ、執行当日に「7年間報復ばかり考えてきたが、許しは報復より優れていると神は言った。これで、家族や彼の母親を幸せにできる」と決断。男はバフラミさんの前で号泣し、刑の代替措置として20億リアル(約1800万円)の賠償金を払うことになった。

テヘラン検察トップが「勇気ある決断」と称賛し、インターネット上でも「彼女は許しを与えることで満足を得た」などの声が広がっている。一方で「同様の犯罪を防ぐため権利を行使すべきだった」との意見もある。
 
★同害報復刑 古代メソポタミア文明のハンムラビ法典の「目には目を、歯には歯を」の規定が起源とされ、過剰な報復を防ぐのが狙い。イスラム法に従うサウジアラビアなどで採用されており、殺人など凶悪事件の被害者や遺族が報復か賠償金のいずれかを選ぶ。【11年8月2日 毎日】
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11年5月時点では、被害女性は、加害者男性が200万ユーロ(約2億円)の手術代を肩代わりするならば、刑執行に対する考えを見直す準備があることを明らかにしていました。
200万ユーロ(約2億円)では現実的に加害者側も負担できないこともあって、20億リアル(約1800万円)で決着したようです。

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