孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ベネズエラ  健康・治安・経済に問題を抱えるチャベス大統領 来年の再選は?

2011-12-30 21:16:54 | ラテンアメリカ

(9月17日 ボリビアのモラレス大統領歓迎式典でのベネズエラ・チャベス大統領 ガン治療のため髪が抜け、顔はむくんでいます。 “flickr”より By Pan-African News Wire File Photos http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/6157454738/

南米首脳に相次ぐガン発症はアメリカの陰謀?】
ユニークな反米言動などで話題を提供することも多い南米ベネズエラのチャベス大統領ですが、ガン治療中ということで、後述Newsweek記事に“化学療法で髪が抜け、顔がむくんだチャベスに以前のような威勢の良さは感じられない”とあるように、ここのところは言動ではなく、その生存自体が話題になる状態でした。

そんなチャベス大統領が、久しぶりに“彼らしい”発言をしています。
****米国が「敵をガン患者にする」新技術を開発?ベネズエラ・チャベス大統領****
ベネズエラのウゴ・チャベス大統領は28日、南米の首脳に相次いでガンが見つかっているのは、米国が狙った相手にガン細胞を植え付ける技術を開発したためではないかとの見方を示した。

自身も癌で摘出手術を受けたチャべス大統領は、国営メディアで中継された国軍の式典での演説で、「南米の首脳たちの身に起きていることは、確率の法則をもってしても説明できない。不思議だ。極めて不思議だ」と述べ、米国が「(標的に)こっそりガン細胞を導入する技術を開発していたとしても、不思議ではないのではないか」との見解を披露した。ただし、そうした技術が存在するという証拠は提示しなかった。

27日には、アルゼンチンのクリスティナ・フェルナンデス・デ・キルチネル大統領に甲状腺ガンが見つかり、来月4日に手術を受けると発表されたばかり。チャべス氏は演説でキルチネル大統領との「結束」も強調したが、キルチネル氏は28日、南米首脳の中ではチャべス氏がいち早く見舞いの電話をかけ、助力を申し出てきたことを明かしている。
 
近年では、ブラジルのジルマ・ルセフ大統領、同ルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ前大統領、パラグアイのフェルナンド・ルゴ大統領がガンと診断されている。ルセフ、ルゴ両大統領は「克服した」と述べているが、ルラ氏は現在も闘病中だ。【12月29日 AFP】
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1日53人が殺害
確かに、南米要人のガンが多いようですが、アメリカ云々より、南米式生活習慣を先ず再検討するのがいいかも。
それはともかく、10年以上チャベス大統領が政権を握るベネズエラについては、治安悪化が報じられています。

****殺人発生率、南米で最悪=ベネズエラ****
南米ベネズエラの犯罪監視団体によると、今年同国で殺害された人は、27日までに過去最悪の1万9336人に達した。1日53人が殺害された計算で、年間の殺人発生率は南米最悪の10万人当たり67人という。
ベネズエラでは暴力犯罪が深刻な社会問題となっており、内務相も今年2月、昨年の殺人発生率が同48人に上ったと認めていた。【12月29日 時事】
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ベネズエラの人口は、日本の約4分の1といったところです。
なお、日本の殺人犠牲者数は、人口動態統計の“他殺”で見ると、2010年が437人(1日に1人強)で、1998年の808人から一貫して減少しつつあります。
経済的にはよくないにもかかわらず、殺人が減少していく・・・日本の治安のよさとして誇るべき点でしょう。
ただし、自殺が3万人レベルで推移していることは、周知のところでもありますが。

南米は全体的に治安がよくない地域ですが、ひところはコロンビアの殺人・誘拐が抜きんでてきました。
そのコロンビアは、チャベス大統領の宿敵ウリベ前大統領(個人的には親しいとも聞きましたが・・・)のもとで、治安改善が大幅に進んでおり、ベネズエラが“最悪”の座を奪ったようです。

「麻薬戦争」で再三取り上げているメキシコは、大統領府によると、治安部隊と麻薬組織の戦闘や組織同士の抗争などによる「麻薬戦争」死者数は2010年は1万5273人とされています。ベネズエラと十分勝負出来そうな数字ですが、上記【時事】の統計数字は“南米”ということで、メキシコは含んでいないのでしょうか。

【“ミダス王の逆パターン” チャベス再選阻止に野党は統一候補
チャベス大統領は2013年初めに任期満了を迎えることを受け、12年10月7日に大統領選を実施することを決めています。
キューバでがん摘出手術を受けた後、国内外で断続的に化学療法を受けているチャベス大統領は「がんは再発しない」などと繰り返し述べて健康状態が良好なことをアピールしており、4選を目指して出馬する方針です。
一方、反チャベス派は統一候補擁立に向けて準備を進めています。【9月14日 毎日より】

チャベス大統領の健康問題に加え、国内的には上記のような治安悪化のほか、経済政策の失敗もあって、野党側が再選を阻止することも可能な状況です。
ただ、チャベス大統領はバラマキ政策で低所得者層の人気を得ていますので、選挙には自信を持っています。
もちろん。野党勢力が政権を奪取したとして、今の治安や経済問題、汚職・腐敗の政治が変わるのか?・・・と言えば、どうでしょうか。まあ、それを言ってしまうと・・・・。

****チャベス退場へのカウントダウン*****
癌の出術後に健康不安説が流れ、大統領選では野党候補にも勝ち目あり

99年に就任したウゴ・チャベス大統領が「21世紀型社会主義」の実験に着手してから、ベネズエラの人々はあらゆることを経験してきた。停電、犯罪の多発、食糧不足、バブル景気とその崩壊……。この激動の時代を通じて、ただ1つチャベスの支配だけは盤石だった。

それが揺らいだのは11年6月。癌が見つかり闘病中だと、チャベスは国民に語った。このニュースに中南米全体が色めき立った。回復は望み薄か?12年の大統領選には出馬できない?任期途中で辞任するのか?
チャベスは即座に噂を否定。政権の移譲はなく、「社会主義モデルヘの移行があるだけだ」と断言した。10月には「癌は完治」したと宣言。あと20年、大統領を続けると豪語した。

それでも化学療法で髪が抜け、顔がむくんだチャベスに以前のような威勢の良さは感じられない。現在、首都カラカスで話題になっているのは外国企業の接収でも、「ヤンキー」を罵るチャベスの悪口雑言でもない。今や「チャベスなきベネズエラ」が公然と語られている。

変化の可能性がほの見えると、ベネズエラ政界は深い眠りから覚めた。05年の議会選挙をボイコットし、一院制の議会がチャペス派ブ色に染まるのを許した主要野党も、寄せ集め所帯の連合「民主統一会議」を結成。12年2月には10月の大統領選挙に向けて予備選を実施する。

現時点で野党側の統一候補に名乗りを上げているのは5人。
本命視されているミランダ州のイケメン知事エンリケ・カプリレス・ラドンスキ(39)は、支持率ではチャベスと互角だ。穏健派のラドンスキは、貧困層への生活扶助や住宅補助など人気のあるチャベスの福祉政策を引き継ぐ一方、犯罪の撲滅と劣化した公的医療の再建、教育の「非政治化」に取り組むと公約している。

後継者なき体制の不安
だが野党にとって最大の追い風は、チャベス政権の機能不全かもしれない。肥沃な農地と豊富な石油に恵まれたベネズエラは経済大国になる可能性を秘めているが、失政と腐敗がたたってインフレ率は中南米で最悪の27%。カラカスは殺人事件の発生率が世界最悪レベルの危険な都市だ。チャベスの外国企業接収はナショナリズムを高揚させたが、おかげで外資の流入は途絶え、国内産業の生産性は低下。社会資本の老朽化も深刻だ。

ベネズエラ国営石油公社(PDVSA)はかつて高い生産性と競争力を誇ったが、チャベスの支配下で経営基盤が弱体化。産油量は10年前より減っている。「チャベスは(触れるものがすべて黄金になる)ミダス王の逆パターンだ」と、グスタボ・コロネル元総裁は言う。 

チャベスの政治生命はまだ終わったわけではない。メディア操作の達人だけあって、癌との闘いを巧みに人気回復に利用している。軍と大規模な民兵組織、多くの報道機関を支配下に置き、バラマキ政策で釣った何百万もの支持者を味方に付けている。
さらに彼は後継者の育成を意図的に避けてきた。「チャベスがつくり上げた不安定なベネズエラの安定軸は、チャベス自身だ」と、地元の政治学者ソッコロ・ラミレスは言う。
たとえ12年の大統領選で野党側が勝っても、既得権益を握り続けてきたチャベス派との融和に苦労することになりそうだ。  マック・マーゴリス(リオデジャネイロ) 【12年1月4日号 Newsweek日本版】
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