孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン・イラク  危機が拡大する中でも止まない紛争当事国の政治混乱

2014-09-09 22:45:13 | アフガン・パキスタン

(9月4日に開催されたアフガニスタンに関するNATO首脳会議の開会セレモニー 肝心のアフガニスタン新大統領は未だ決まらず出席できませんでした。 “flickr”より By Number 10 https://www.flickr.com/photos/number10gov/15144640331/in/photolist-p5heWt-p7cWWM-oMayzp-oMe7HN-p5YYsS-oPeQ76-oNaaAy-oLwjTR-p7Vhcz-p2wwsW-oLxbwY-p4n4Tt-p3Zrgy-oQ6gG7-oPuW7v-oNq5CC-oMmtBC-p4PnXy-p2Y35L-oJvNiy-oK45e8-p2xcKr-oZvnbC-oK45dr-p2xcK6-p2n2yk-oLY5KZ-oLY1sm-oLXQqB-oLXQFX-p26YSJ-p4urEL-p428iu-p531m1-oMngDC-p5yLf6-p3wMtL-p5wJQJ-oP6zWZ-p412WW-oMCgjM-p3QrQs-oNXMPG-oJqxbS-oMYZpD-p6A3VZ-p4J67c-p73rNV-p514SN-p4qQgW)

新設「行政長官」のポストの権限の配分を巡って対立
難航するアフガニスタン大統領選挙の再集計作業については、8月6日ブログ「アフガニスタン  難航する大統領選挙再集計 副大統領の不正指示疑惑も 政治にとどかぬ人々の思い」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140806)でも取り上げましたが、その後も事態は進展せず、6月の決選投票に臨んだアシュラフ・ガニ元財務相、アブドラ・アブドラ元外相の両者の対立は解消されていません。

6月の決選投票に関して、アブドラ元外相側が大規模な不正があったことを主張したことからアメリカが仲介に入り、一応は選挙で敗れた側も政権に加わるいわゆる「挙国一致政権」を樹立することで両候補が合意しています。

その後も、アメリカは両者に対し、早期に「挙国一致政権」を樹立することを求めています。

****挙国内閣樹立で合意を=オバマ米大統領、アフガン大統領選候補に促す****
オバマ米大統領は6日、アフガニスタン大統領選の候補者であるガニ元財務相とアブドラ元外相に電話し、決選投票の結果をめぐる混乱に終止符を打つため、できる限り早期に挙国一致内閣の樹立で合意するよう促した。ホワイトハウスが7日に発表した。(後略)【9月8日 時事】 
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再集計は4日に終了し、数日以内にも最終結果が発表される見通しでしたが、選挙での敗者が就任する首相にも相当する「行政長官」のポストの権限の配分を巡って、アブドラ陣営は、決選投票に敗れたことを想定し、「行政長官」が閣議の議長を務め、内閣を率いる立場になることを主張、一方、決選投票で優勢に立ち、大統領就任を念頭に置くガニ氏は「行政長官」の権限拡大に反対・・・という構図で、両者の交渉は行き詰まり状態にあります。

****アフガニスタン 新政権在り方巡りこう着状態****
混乱が続くアフガニスタンの大統領選挙で、2人の候補者の間で続けられてきた新しい政権の在り方を巡る協議は、権限の配分についての対立が解消されず、こう着状態に陥っていて、新たな大統領を選出できないまま、民族対立に発展するのではないかとの懸念が高まっています。

ことし6月にアブドラ元外相とガニ元財務相の間で行われたアフガニスタンの大統領選挙の決選投票は、不正疑惑が持ち上がったことからアメリカが仲介に入り、選挙で敗れた側も政権に加わるいわゆる「挙国一致政権」を樹立することで両候補が合意しています。

しかし、この「挙国一致政権」の在り方を巡る協議について8日、選挙の暫定結果で次点だったアブドラ元外相が首都カブールで会見し、「話し合いはこう着状態に陥った」と述べ、協議が暗礁に乗り上げたことを明らかにしました。

両候補は、新大統領と選挙の敗者が就任する「行政長官」のポストの権限の配分を巡って対立していて、このままでは選挙結果が公表できない状態が続くおそれもあります。

アフガニスタンの大統領選挙を巡っては、不正疑惑からすべての票の点検作業が行われ、最初の投票からすでに5か月以上が経過しました。

こうした状況が続けば、新たな大統領を選出できないまま、支持基盤が異なる2人の候補者の対立が民族対立に発展するのではないかとの懸念が高まっています。【9月9日 NHK】
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アブドラ元外相を支持する国内で2番目に多い北部のタジク人、ガニ元財務相を支持する南部に多い最大民族パシュトゥン人という民族対立が背景にあるだけに、政治混乱は容易に民族間の衝突につながります。

ISAF撤退スケジュールにも支障も
オバマ米大統領は、NATOが指揮する国際治安支援部隊(ISAF)を主導している米兵(現在約3万3千人)について、今年末までに戦闘部隊を撤収し、その後は訓練・助言部隊を残留させ、16年末までにはそれらを含めて完全撤退させる形で、01年の米同時多発テロ後、10年以上続くアフガン戦争を自身の任期中に終わらせる考えです。

ISAFに参加する他のNATO各国部隊も同様です。

しかし、訓練・助言部隊の残留については、兵士の治外法権を認める「安全保障協定」が必要としています。

ガニ、アブドラ両氏とも「安全保障協定」には同意していますが、新大統領が決まらないことには正式に協定合意することができません。

そうなると、今年末で完全撤退という話にもなりますが、タリバン勢力の抵抗が収まらない現状での完全撤退はイラクの二の舞になることも懸念されています。

なお、カルザイ現大統領は、国内反米感情を考慮して、今後に責任を伴うことになる「安全保障協定」合意を新大統領に任せる形で自身の責任を回避しています。

****<NATO首脳会議>アフガン展開に暗雲 大統領選混乱で****
北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議が4日、開幕した。

アフガニスタンに関する会合を日本など関連27カ国を招いて開き、NATOはアフガン国軍の訓練を担う部隊を来年から展開する方針を改めて確認した。

しかし、アフガンでは大統領選の開票を巡り政情が混乱。訓練部隊の受け入れ態勢は整わず、旧支配勢力タリバンが各地で攻勢を強める中、治安回復の糸口は見えない。アフガン政府とNATOには試練が続きそうだ。

NATOは大統領選の結果を待ち、アフガン軍の訓練・支援・助言にあたる1万2000人規模の部隊「決然たる支援」を展開する意向で、「数週間以内」(外交筋)に詳細の決定を目指す。

NATOは2003年から国連安保理決議に基づく国際治安支援部隊(ISAF)の任務を担っている。現在4万1000人規模だが、今年末で任務を終了し、大幅に縮小した訓練部隊に衣替えする。

しかし、NATOは訓練部隊の展開には、兵士の治外法権を認める「安全保障協定」が必要との立場だ。

アフガン大統領選の決選投票に残った両候補は締結に前向きだが、選挙が決着しないまま今年末にISAFの任務が終了してしまう可能性がある。

NATOはイラクで訓練部隊を展開していたが、イラク側が安保協定の締結を拒否したため、11年に中止した。イラクでは現在、イスラム過激派組織「イスラム国」の伸長に伴い一部のイラク軍が逃走するなど混乱が続いている。

NATOはこうしたイラクの例を強調し、アフガンで対立する両大統領候補にできるだけ早い対立解消や安保協定締結の必要性を説得している。ラスムセン事務総長は4日、「期限が迫っている。早期の締結を望む」と述べた。

一方、アフガンでは自爆テロや戦闘による市民の犠牲が甚大で、国民はいらだちを募らせている。

「治安は以前よりも悪化している。仕事もなくなり、強盗などの犯罪も増えた」。首都カブールの教員、ムハンマド・ジャワドさん(35)はこう嘆く。

大統領選は決選投票で不正疑惑が浮上。4月の1回目の投票から5カ月たった今も新大統領が決まっていない。
ジャワドさんは「選挙にうんざりしているのは私だけではない。誰でもいいから早く就任し、この状況を何とかしてほしい」と訴える。

地元メディアなどによると、タリバンは南部ヘルマンド州や北部クンドゥズ州で支配地域を維持しているほか、8月中旬にはカブールに隣接するロガール州で700人規模の部隊が攻勢を開始するなど、各地で戦闘が激化している。国連によると、今年上半期の民間人の死者数は前年同期比222人増の1564人に上った。

アフガン軍は「将校も若く、空軍との連携や情報収集などに問題がある」(元インド軍関係者)とされ、アフガンにとって外国軍の駐留継続は生命線だ。

アフガンのシンクタンク「地域研究センター」のガフォル・レワル氏は「アフガン軍は装備品が不足し、訓練も困難を極めているが、外国軍が撤退すれば状況悪化は避けられない」と話している。【9月4日 毎日】
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すでに、今後のアフガン支援策について話し合われた上記NATO首脳会議に、当事国であるアフガンの新大統領が出席できないという事態にもなっています。

イラク 国防相・内相は空席
挙国一致内閣の体制がなかなか構築できないのは。イスラム国の脅威が拡大しているイラクも同様です。

****<イラク>新政権発足 各派参加も国防、内相は空席****
イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」の侵攻が続くイラクで、シーア派のアバディ首相率いる新内閣が8日に発足した。

スンニ派やクルド人の有力指導者を重要ポストで処遇し、挙国一致政権の体裁は整えたが、イスラム国対策の鍵となる国防相や内相は空席のままだ。

イスラム国と同宗派のスンニ派勢力の懐柔や、クルド自治政府との対立解消など新政権の針路には困難が山積している。

「政府軍を立て直し、武装テロ勢力に勝利するまで戦い抜く」。8日に連邦議会で演説したアバディ首相は、イスラム国との対決姿勢を強調した。

対イスラム国で結束するため、新政権の人事は宗派・民族間のバランスが重視された。副首相にはシーア派、スンニ派、クルド人から1人ずつ起用。

続投に固執し、挙国一致体制確立の障壁となっていたマリキ前首相も、名誉職の意味合いが強い副大統領として政府内に取り込んだ。マリキ氏の長年の政敵であるナジャフィ前議長やアラウィ元首相も同じ副大統領とした。

一方、一時は首相候補と目されたシーア派のジャファリ元首相は外相、アブドルマハディ元副大統領は石油相に配置。地元政治記者のアンジャド・タリア氏は「実力者をそろえた強固な内閣だ」と評価した。

だが、スンニ派(人口の約20%)やクルド人(同15%)の間には、シーア派(同約60%)への警戒感が根強い。8日夜の連邦議会(定数328)本会議でも、新内閣の承認に賛成したのは定数の半数をわずかに超える177人にとどまった。

スンニ派が注視するのは、治安権限を担う国防相や内相のポストだ。

マリキ前政権では軍や警察の要職がシーア派で固められ、警察が法的手続きを経ずにスンニ派住民らを拘束する事件が頻発。スンニ派の一部がイスラム国に協力する土壌を作った。

さらにイスラム国の侵攻を前に、政府軍が無抵抗で逃亡したこともスンニ派の不信感を高めた。

スンニ派居住地域に根を張るイスラム国を撃退するには、政府の信頼感を取り戻すことが鍵になる。
議会関係者によると、アバディ首相は国防相か内相にスンニ派を起用する意向だが、人選は難航。10日の組閣期限までに調整できなかった。

一方、イスラム国対策では、北部に拠点を置くクルド人との協力も不可欠だ。

クルド人政党は8日、3カ月の期間限定でアバディ政権に参画すると表明するなど、当面は政権運営を見極める構え。アバディ首相は同日、「分権化を進める」としてクルド人との融和に意欲を示した。

クルド人は自治政府への予算配分が法定の「国家予算の17%」を下回っているとして、中央政府と対立してきた経緯がある。【9月9日 毎日】
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クルド人政党が“3カ月の期間限定でアバディ政権に参画すると表明”ということは、将来の離脱もありうると圧力をかける姿勢です。クルド人勢力としては、そもそも強い中央政府は望んでいないという実情もあるでしょう。

イスラム国がクルド領域に侵入しないなら、イラク、イスラム国、クルドで3分割するのも悪くないというところでしょうか。

アフガニスタンにしても、イラクにしても、タリバンやイスラム国の攻勢が差し迫るなかでの内輪のもめごとでもあり、アメリカならずとも、当事国としての自覚と責任はどこに・・・・とも言いたくもなります。

こうした政治の混乱による戦闘状態の拡大は、結局自国住民の犠牲で購うことになります。

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