孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア・モスクワの空港に留まるスノーデン容疑者 出国・亡命受入れを巡る各国の思惑は?

2013-07-08 23:11:07 | ラテンアメリカ

(2001年 カストロ前議長と故チャベス前大統領 スノーデン容疑者の問題は、両者のあとを継ぐ中南米の反米諸国のリーダーは誰か?という問題でもあるようです。 写真は【3月4日 WSJ】http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323994204578339310496921042.html)

【「招かれざる客」】
アメリカの情報収集プログラムを暴露した元CIA職員のスノーデン容疑者が香港からロシア・モスクワの空港にやってきてからすでに2週間が経過しています。

この間、ロシア・プーチン大統領が亡命受入を容認する意向を発表しましたが、その際「ここに残りたいのならば、アメリカに害を与えるような活動を停止することが条件となる」と、あえてスノーデン容疑者が受け入れられない条件を付けて、事実上“どこか他へ行ってくれ”との意向表明でした。
スノーデン容疑者側もロシアへの亡命申請を取り下げています。

スノーデン容疑者受入はアメリカの非道を暴くという痛快な政治カードですが、アメリカとの関係悪化を招きます。もともとアメリカと敵対している中南米の小国ならともかく、国際関係で重きをなそうとするロシアにとっては、あまりに大きな代償です。

そもそも国内での人権活動家を弾圧しているロシア・プーチン政権と国家の人権侵害を訴えるスノーデン容疑者の活動は相入れないものがあります。

中国は同じような理由から、香港からモスクワへとうまく厄介払いしましたが、ロシアも早く厄介払いしたいところでしょう。

****ロシアが元CIA職員に離国促す、対米関係悪化を懸念か****
米情報収集プログラムを暴露した中央情報局(CIA)の元職員エドワード・スノーデン容疑者(30)について、ロシアのリャブコフ外務次官は4日、避難先として別の国を探すべきだと述べ、同国から早急に離れるよう促した。

スノーデン容疑者は先月23日に香港からロシアに渡って以降、モスクワのシェレメチェボ空港の乗り換えエリアに滞在している。

リャブコフ次官はロイターに対し、スノーデン容疑者から政治亡命の申請はないとし、「行き先を選ぶ必要がある」とコメント。また、イタル・タス通信には、問題を解決するために「ロシアは何もできない」と語り、同容疑者を突き放した。

プーチン大統領は米国へのスノーデン容疑者引き渡しを拒否しているものの、滞在が長引けば、米国との外交的対立のリスクが増すことから、ロシア側は同容疑者について「招かれざる客」との態度を強めている。

スノーデン容疑者はこれまで、ロシアを含む計21カ国に亡命申請を行ったとされているが、ベネズエラ以外は受け入れを拒否するか、消極的な姿勢を示している。【7月5日 ロイター】
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【「口では反米主義を唱えながらも、米国との密接な経済関係に悪影響が出ることを懸念している」】
現在は、ベネズエラ以外に、ボリビア、ニカラグアも受入を認めています。
いずれも反米色の強い中南米にあっても、強硬な反米を看板としている国で、アメリカの国家犯罪を暴露するスノーデン容疑者の受入は国内的にはプラスとなります。

しかし、これらの国にしてもアメリカ経済との関係は無視できず、口先の威勢の良さと本音はまた違うのではないか・・・との指摘もあります。

****スノーデン事件、対米交渉カードに…でも経済影響心配 ジレンマ中南米諸国****
南米ベネズエラのマドゥロ大統領が5日、米当局から訴追されている米中央情報局(CIA)元職員、エドワード・スノーデン容疑者(30)の亡命受け入れを表明するなど、中南米の反米左派政権が容疑者受け入れに前向きな姿勢を見せている。

大半の国々が対米交渉の重要な“カード”として容疑者を利用したい意向だが、経済面に深刻な影響を及ぼしかねないジレンマも抱えている。

マドゥロ大統領は5日、独立記念日を祝うテレビ演説で、「(スノーデン容疑者はCIAの活動について)真実を語ったまでだ」と述べた上で、「人道的な観点から、亡命を認めることを決めた」と語った。

容疑者は現在、モスクワの空港の乗り継ぎ区域にとどまっているとされる。在露ベネズエラ大使館が渡航許可証を発行すれば、航空機への搭乗が可能になるとみられているが、マドゥロ大統領は具体的な措置については言及しなかった。

ニカラグアのオルテガ大統領も同日、「状況が許せば、喜んで引き受ける」と強調。ボリビアのモラレス大統領やエクアドルのコレア大統領も受け入れに前向きで、キューバも同調する姿勢を見せている。

中南米で反米のリーダーだったチャベス前ベネズエラ大統領亡き後、反米勢力の支持をバックに、域内の新たな指導者に躍り出ようというそれぞれの思惑も絡んでいるとみられる。

ただ、こうした国々の多くは、「口では反米主義を唱えながらも、米国との密接な経済関係に悪影響が出ることを懸念している」(外交筋)のが実情だ。

例えば、ベネズエラにとって米国は主要な石油輸出先で、最大の貿易相手国。エクアドルもスノーデン容疑者を受け入れた場合、マグロやバラなど対米輸出品計247品を無関税、もしくは低税率で輸出できる米国の関税優遇措置が打ち切られる可能性もある。

容疑者を支援する内部告発サイト「ウィキリークス」は5日、容疑者が約20カ国に加え、新たに6カ国に亡命申請したと発表した。国名は分かっていない。【7月6日 産経】
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ベネズエラ・マドゥロ大統領なども出席したモスクワでのガス輸出国フォーラム(GECF)首脳会議に絡んで、スノーデン容疑者の出国があるのでは・・・との見方もありましたが、結局それもありませんでした。
ベネズエラ・チャベス前大統領が存命なら、違った展開もあったかもしれませんが・・・・。

キューバはこの問題をめぐって、一貫して口を閉ざしたまま
受入に伴うアメリカとの関係という政治的問題以外にも、もっと直接的な“どうやって出国させるか?”という問題もあるようです。

****CIA元職員のロシア出国を難しくしている「ある事情****
米国家安全保障局(NSA)による極秘の個人情報収集プログラムを内部告発した米中央情報局(CIA)元職員エドワード・スノーデン容疑者(30)が、ロシア首都モスクワの空港のトランジット(乗り継ぎ)区域で潜伏を始めてから半月が経過した──。ボリビア、ベネズエラ、ニカラグアの3か国が亡命の受け入れを表明しているが、目的地への経路模索は非常に難しいものとなりそうだ。

米露は犯罪人引き渡し条約を結んでいないため、米政府はロシア側に対し、「善意の行為」としてのスノーデン容疑者の引き渡しを求めている。しかし、ウラジーミル・プーチン露大統領はこれを拒否しており、スノーデン容疑者に対しては、早く渡航先を決めるべきと述べている。

またロシアのベテラン国会議員の1人は、スノーデン容疑者にベネズエラへの亡命を決めるべきとしている。ただ潜伏しているシェレメチェボ空港から中南米へ向かう便は、全てキューバ経由となっており、そのキューバはこの問題をめぐって、一貫して口を閉ざしたままだ。

もしスノーデン容疑者が航空機に搭乗した場合、欧州の国による妨害行為を受ける可能性がある。先週、ボリビアのエボ・モラレス(Evo Morales)大統領を乗せた航空機に同容疑者が搭乗していると疑った欧州の複数の国は、航空機の領空内通過を拒否している。【7月8日 AFP】
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キューバ・ハバナはアメリカ・フロリダの目と鼻の先です。ハバナに向かうロシア・アエロフロートの定期便はアメリカ領空を通過します。
スノーデン容疑者が搭乗していることがわかった場合、アメリカはロシアの通常旅客機を強制着陸させるのでしょうか?

もし、通常の定期便ではなく、プライベートジェットで直行する場合は、16時間程度の給油なしの飛行が必要になるそうで、これも難しい話です。

アメリカ領空に入らなくても、他の国がアメリカからの要請、あるいはアメリカへの配慮から通過を拒否する場合も考えられます。

ハリウッド映画並みの緊迫した場面にもなりそうです。

それにしても、一番興味深いのは“キューバはこの問題をめぐって、一貫して口を閉ざしたままだ”というところです。
引退したフィデル・カストロ前議長は、この問題をどのように考えているのでしょうか?

現在のキューバはアメリカとの関係改善を目指しています。
特に、これまでキューバ経済を支援してきたベネズエラのチャベス前大統領が亡くなって、ベネズエラの支援をこれまで同様に期待することにも不安が出てきています。

カストロが引退し、チャベスが亡くなり、中南米反米諸国もアメリカを相手に大立ち回りできるような役者が不足している感があります。

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