孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

顔認識技術  不可避の流れとして進む活用拡大 認識のミス、顔は交換できないこと、監視社会への懸念も

2019-12-20 21:57:04 | IT AI

(顔画像の共同利用を始めた書店では「お知らせ」を貼って周知を図っている=東京都渋谷区【1027日 朝日】)

 

【日本 知らぬ間に取得・追跡され、漏洩のリスクも】

顔認証技術は、スマホのセキュリティーロック解除、万引き防止、省人店舗での入店・決済、空港での輸入国手続きなど多方面で活用されており、今後ますますその利用は拡大するものと思われます。

 

利便性の一方で、知らぬ間に個人情報が集められ、場合によっては漏洩するリスクも。

 

****(シンギュラリティーにっぽん)第2部・見えないルーラー(支配者):8 顔認証、知らぬ間に追跡・監視****

一瞬で個人を識別する顔認証システムが、身近な生活に溶け込んできた。ターゲティング広告だったり防犯だったりだけではない。知らぬ間に追跡され、監視されることが新たな「支配」につながると、あらがう動きも出始めた。

 

東京都心でタクシーに乗り込むと、座席の前に備えつけられたタブレット端末から動画広告が流れてきた。内容は覚えていないけど、印象的なフレーズは頭に残っている、という人は多いかもしれない。それは、偶然ではない。

 

タブレットにはカメラも搭載されている。乗客の顔写真を撮り、瞬時に男女を推定。流れる広告を変える。男性なら企業の人事管理システム、女性なら雑誌のCMといったように。

 

こうしたサービスを提供する会社の一つが、日本交通(東京)グループでタクシー配車アプリを運営する「ジャパンタクシー」。1年足らずの間に2度も、個人情報保護委員会から行政指導を受けてもいる。

 

発端は昨年11月。乗客にカメラの存在や個人情報の取得、さらには利用目的を分かりやすく説明するよう、保護委は指導した。同社は指導を受け、タブレットにカメラの存在や利用目的を表示した。

 

しかし、その対応が今年4月と遅れたことを保護委は問題視。9月には2度目の指導に踏み切った。

 

そこまでしたのには、訳がある。「タクシーは公共交通機関。誰もが個人情報をとられていると考えてよいからだ」と保護委の担当者は話す。

 

顔認証システムは身近なところに入り込んできている。さまざまな人が出入りする書店もその一つ。

 

丸善ジュンク堂書店は2014年から、全国の店舗に顔認証システムを順次導入し、今は60店舗を超える。警察に被害届を出した人物や、カメラ映像から犯罪に及んでいることが確実な人だけに絞って顔画像を登録しているという。

 

ただ、店で顔認証システムの存在を知らせているとはいえ、エスカレーターの乗降口付近に小さな文字で掲示されるなど、気づきにくい。どのようにシステムを運用しているのかや、犯人と疑う基準がどうなっているのか、内規はあるものの周知はしていない。

 

今年7月からは、同社も含むJR渋谷駅周辺の3書店で、万引き犯とみられる人物の顔画像を共有する取り組みが始まった。ネット転売などで換金しようとする万引きの手口は巧妙化し、被害も高額化しているためだ。こちらは、画像の利用目的や共同利用することを入り口のガラスなど目立つように掲示。事前に記者会見も開いて透明性をアピールする。

 

個人情報を取り扱えば漏洩(ろうえい)などのリスクもある。「そこまでして導入する必要性を感じない」という声も業界内にはある。

 

プロジェクトの事務局長を務める阿部信行さんは、「問題が起きないように、できる限りの情報を開示して周知している。信頼をされるには実績を重ねていくしかない」と話す。(後略)【1027日 朝日】

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【中国で進すすむ顔認識技術活用 ミスや永遠に交換できないリスクの指摘も】

顔認証のようなIT技術を大胆に実生活に取り入れているのが中国。

現在はスマホ決済が主流ですが、今後は顔認証でスマホも不要に・・・。

 

****中国「顔認証」急拡大の実態 超監視社会への懸念は****

顔認証技術の実用化が進む中国。AI(人工知能)大国を目指す、さらなる政策とは。

 

中国南部の大都市・広東省広州市。

地下鉄の改札に20199月、新たなシステムが導入された。自動改札機の上にタブレットのような機械が付いていて、顔を近づけると「登録されていない顔」と表示された。

 

顔認証技術を使った、まさに「顔パス改札」。スマートフォンを使って、事前に顔を登録しておけば、あとは改札を通るだけ。ICカードやスマホをかざす必要もない。

 

顔パスはこんなところでも。コンビニのレジにも装置があり、顔認証で買い物をすることができる。

 

コンビニ大手「セブン‐イレブン」は、20195月から広東省のおよそ1,000店で顔認証決済を導入。客は、レジのタブレット端末に自分の顔を写せば、一瞬で支払いが完了する。

 

利用客は「(顔認証を)普段から使っている。ジョギングの時にスマホを出すのは不便だから」と話した。

 

中国の調査機関によると、顔認証決済の利用者は、2018年の6,100万人から、2019年は11,800万人に増加。2022年には76,000万人を超え、決済手段の主流になると推定している。

 

顔認証にこれだけ急速な拡大が見込まれる中、中国政府がある政策を進めている。

中国政府は121日から、携帯電話の契約時に「顔認証データ」の登録を義務化する。

 

街頭の監視カメラの数が2億台にのぼるなど、超監視社会と呼ばれる中国が、監視カメラを少数民族の弾圧に使っているとアメリカ政府などが批判を強めている。

 

顔認証システムの急速な拡大に市民は、「顔認証はあまり好きではない。顔認証のデータは盗まれても変えることができないので、安全面で改善する必要があると思う」、「(顔認証データの利用は嫌ではないのか?)いいえ、嫌ではない。国家標準だったら使う」、「心配はない。携帯で決済できるなら、顔認証で決済できるのも当たり前」などと話した。

 

利便性向上の一方で、国家による市民生活の監視。顔認証決済の向こうに広がる未来は。【1129日 FNN PRIME

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上記にもある“携帯電話の契約時に「顔認証データ」の登録を義務化”については、実名登録を厳格化し、サイバー空間の統制を進める狙いのようです。

 

****中国、電話契約に顔認証を義務化 プライバシーに懸念も****

中国当局は1日から通信事業者に対し、直販店で新しい電話番号を契約する顧客を登録する際、利用者の顔認証データを収集することを義務付けた。同国の工業情報省が明らかにした。中国政府は、サイバー空間における統制の厳格化を進めている。

 

工業情報省は今年9月、「国民のオンライン上での正当な権利と利益を保護する」とした通知で、実名登録を強化する規則を示した。これによると、通信事業者は、新たな電話番号を取得する顧客の身元確認に「人工知能などの技術手段」を用いるべきだとしている。

 

中国政府は2013年にはすでに身分証と新しい電話番号をリンクさせることによって、電話利用者に実名登録を行わせようと圧力を掛けていたが、その流れで顔認証技術としてのAIの活用に至っている。

 

AIによる顔認証技術は、スーパーマーケットでの支払いから監視カメラまで、中国全土のあらゆる場所で利用されている。研究者らは顔認証データ収集にまつわるプライバシー・リスクを警告しているが、消費者の間では広く受け入れられている。

 

ただし新携帯番号取得の際の顔認証の義務化を受けて、中国のソーシャルメディア利用者からは支持する声も上がる一方、生体認証データが漏出したり売却されたりする可能性があるのではないかとの懸念も上がっている。 【122日 AFP】

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一般的には、個人情報の扱いについて“おおらか”と思われている中国ですが、上記2本の記事にもあるように、全く懸念がない訳でもありません。

 

国営メディア人民日報のニュースサイト「人民網日本語版」でも、以下のような“リスク”に関する指摘がなされています。

 

****顔認証決済に隠された安全リスク*****

顔認証決済に使用できる3D顔認証カメラモジュールが21日、正式に発表された。

 

インターネットとスマホの普及により、微信(WeChat)や支付宝(アリペイ)のような決済方法が生まれ、外出中の消費者はキャッシュやカードを持たなくても便利に決済できるようになった。顔認証技術が最も広く使用されている顔認証決済は、全国各地で次第に実用化されている。科技日報が伝えた。

 

その他のインターネットサービスと同様、顔認証決済は誕生したばかりの頃から安全性が疑問視されてきた。

 

サイバーセキュリティ専門家、上海衆人網絡安全技術有限公司の談剣鋒会長は多くの場において、ネット上で顔認証を唯一の認証方法にすることを極力回避するよう呼びかけている。

 

人の生物的特性として、データには単独性がある。データをコンピュータに入力すると、これを盗まれ、再編成・再生される可能性があり、大きな安全リスクが存在する。

 

◆顔データが盗まれても交換不可

厦門遊仁情報科技有限公司の責任者である呉迪煒氏は長年にわたり画像などの識別の研究を行っている。呉氏は科技日報の独占インタビューに応じた際に、現在の技術だと、顔認証決済には大きな安全リスクがあると指摘した。

 

「顔認証には現在、2つの大きな問題がある。まずミスの確率が高いことで、ユーザーの使用体験を損ねる。アップルは早くから顔認証サービスを提供しているが、一定のミスが生じる。

 

次にデータを採取されネット上にアップされれば、暗号解読や窃盗のリスクが生まれる。ハッカーは当該ユーザーの預金規模など、データの価値に基づき盗むべき対象であるかを判断する」

 

専門家が顔認証決済を疑問視するのは、顔データの唯一性が理由だ。顔をネット上で使用する場合、1枚の写真や画像に過ぎないと思われるかもしれないが、実際には異なる。

 

誰もが一つだけの顔、2つの虹彩、10の指紋を持つ。顔、指紋、虹彩、筆跡、声、歩き方などはバイオメトリクスの認識項目であり、すべての人にとって唯一性を持っている。

 

談氏は「どのようなデータであってもコンピュータに入力されるとコード化されてしまう。生物的特性も例外ではない。これらのデータが復元され、ハッカーなどの犯罪者の手に渡れば、人々は唯一の身元証明データを失うことになる。しかもこれは永遠に交換できず、再生もできないため、リスクが大きい」と説明した。(後略)【「人民網日本語版」2019326日】

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さすがに国営メディアサイトなので、個人情報が国家によって恣意的に利用され監視が強化されるリスクについては触れていませんが、認識の際のミスの可能性、何かあったとき“顔は取り換えることができない”というリスクが指摘されています。

 

【アメリカ 出入国時の顔認証義務付け見送り】

アメリカでも顔認証技術の活用が広がっていますが、批判・警戒感も強いようです。

 

****米ITの街、「禁止」の条例も****

IT企業が数多く本拠を置く米サンフランシスコ市の議会は今年5月、市当局や警察などが顔認証技術を使うことを禁じる条例案を可決した。

 

条例によって利用や管理の報告が求められるのは、防犯カメラから生体認証システムまで幅広い。公共の場にあるカメラなども、誰がデータへのアクセス権を持ち、誰と共有したのか、市民の苦情がないかなど、毎年詳細な報告をするよう義務づけられた。

 

市は今のところ顔認証技術を使っておらず、条例は象徴的な意味合いも強い。では今作った理由は何か。

 

「技術を生んでいるIT企業の街だからこそ、技術の使われ方に高い倫理性を求めている」。制定を主導したアーロン・ペスキン市議はこう話し、続けた。

 

「政府に反対する人々やマイノリティー(少数派)を抑圧、監視する手段に使われかねないからだ」

 

ペスキン市議の両親はイスラエル出身で、親戚をホロコーストで亡くしている。「ナチス政権はテクノロジーを使い、ユダヤ人に関する大量の個人情報を集めていた」。知らぬ間に収集された情報が市民への迫害に使われてきた歴史を、身をもって知っている。

 

同じような条例はオークランド市、サマービル市などにも広がっている。しかし、条例で世界的な技術の広がりを止められるとは、ペスキン市議も思っていない。その上でこう訴える。

 

「本当にこうした技術が必要なのか、きちんと議論してほしい。疑問を持つことが健全なことなのです」【前出 1027日 朝日】

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トランプ政権が進めようとしていた“全ての旅行者が出入国時に顔認証を受けることを義務づける規則導入”は結局見送られることに。

 

トランプ政権は、顔認証義務化によって米国の渡航関連書類の偽造を防ぎ、犯罪者やテロ容疑者が特定しやすくなると主張していました。

 

*****出入国時の顔認証義務付け、トランプ米政権が導入見送り****

トランプ米政権は5日、米国市民を含めた全ての旅行者に対して出入国時に顔認証を受けることを義務づける規則の導入を見送ると明らかにした。

この規則は、トランプ政権の規制政策課題の一つとして税関・国境警備局(CBP)が7月に発令する予定だった。

ただ、CBPは、議会や個人情報分野の専門家と協議した結果、導入の取りやめを決めたと説明した。

顔認証の義務付けを巡っては、プライバシー保護団体から批判の声が上がっていた。米国自由人権協会(ACLU)のシニア政治アナリスト、ジェイ・スタンレー氏は2日付けの書面で「米国市民を含む旅行者は、憲法で保障された自由に旅行する権利を行使する条件として、一方的な生体認証システムに従うべきではない」と反対意見を記した。

民主党のエド・マーキー上院議員は今回の決定の背景には強い反対意見があると指摘し「飛行機で旅行する全ての米国人にとっての勝利だ」とコメントした。【126日 ロイター】

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【非白人の顔認識が非常に不完全】

今日、顔認証の話題を取り上げたのは、下記の記事を目にしたからです。

 

****顔認識システム、非白人の顔を正しく認識できず 米研究****

米国立標準技術研究所は19日、顔認識システムが特に非白人について、ひどく不正確な結果を出すとの研究結果を公表した。人工知能技術の導入が幅広く推進される中、新たな問題を投げ掛けることになりそうだ。

 

NISTによると、顔認識アルゴリズムには、異なる2人を同一人物と認識する「フォールスポジティブ(誤検知)」と、同一人物を認識できない「フォールスネガティブ(見逃し)」の双方がみられた。

 

多数のアルゴリズムで、アジア系とアフリカ系が「フォールスポジティブ」となる割合は白人の100倍超だった。

 

米国で開発されたアルゴリズムでは、アジア系、アフリカ系、先住民系で正しい結果が出ない割合が高いことが分かった。中でも「フォールスポジティブ」となる割合は、先住民系で最も高かった。

 

さらに、2つのアルゴリズムは、35%ほどの割合でアフリカ系の女性を男性と認識した。

 

空港や国境検問、金融機関、小売業界、学校向けの認証サービスからスマートフォンのロック解除といった個人使用まで、顔認識技術が幅広く導入される中、活動家や研究者らは、エラー発生のリスクが大きすぎると警告。

 

誤検知により無実の人間が刑務所に送られる恐れがあるほか、技術を悪用してデータベースが作られ、ハッキングや不正使用につながりかねないと指摘している。 【1220日 AFP】AFPBB News

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「人民網日本語版」も指摘しているように、顔認証での認識時のミスは常に指摘されています。

寝顔でロックが解除できて送金もできたとか、(当然のことでしょうが)双子が識別できないとか・・・。

 

ただ、上記記事は、それ以前の問題がまだ存在していることを示しています。

 

個人的な話をすれば、私は外国映画を観ていて、登場人物がなかなか識別できずに苦労します。日本映画ではまずそういうことはありません。

 

これは、人間の“パターン認識”に伴うもので、普段見慣れないものの識別は困難なんだろう・・・と思っています。

しかし、顔認識アルゴリズムは、そうした人間的な“パターン認識”とは異なるシステムだと思っていたのですが・・・。

 

技術を作成する人間の“不完全さ”がアルゴリズムに投影されているのでしょうか?

 

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