(AI安全サミットで対談するスナク英首相(左)とイーロン・マスク氏(右)【11月8日 ロイター】)
【AI安全サミット 主催国の英、「AI大国の中国抜きに真剣な議論はできない」と中国も招く】
生成AIの開発で一気に加速した感があるAI(人工知能)が身近に存在する世界。
AIが今後の世界を大きく変えていくであろうこと、ただ、ある面では人間の能力を超えた存在にもなるAIに対し人間はどのように向き合っていけばいいのかというこれまで経験したことのない事態に世界は直面していること、そうした事態に大きな不安・懸念・困惑が存在すること・・・多くの者が感じているところです。
とかく技術開発が先行しがちなこの問題に、国家主導であるべきルールを設定する必要があるという認識で、今月1日~2日、AIのリスク管理に関する世界初の「AI安全サミット」がロンドンで開催されました。
会議には欧米・日本だけでなく、「AI大国の中国抜きに真剣な議論はできない」との主催国イギリスの意向を受けて中国も参加。また、オープンAICEOやイーロン・マスク氏らの民間からの参加者も。
****AI安全へ国際連携宣言 英で初のサミット、日米中含む28カ国参加*****
人工知能(AI)の安全管理やリスクへの対応策を協議する世界初の「AI安全サミット」が1日、英ロンドン郊外のブレッチリー・パークで2日間の日程で始まった
。英政府が主催し、初日は日米英や中国など参加28カ国がAIの安全確保に向けた国際連携をうたった「ブレッチリー宣言」を発表した。
英政府によると宣言は、AIのリスクや将来性に関する理解と責任の共有に向けて各国が協調的に取り組むための指針となる。AIが生物テロやサイバー攻撃に悪用されたり、自律型のAIが制御不能に陥ったりすることなどの危険性を念頭に、AI開発に携わる全当事者に「透明性と説明責任の確保」を促した。
サミットにはスナク英首相の招待に応じてハリス米副大統領、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長ら首脳・閣僚級やAI開発企業の代表ら計百人以上が出席。日本からは岸田文雄首相が2日の会合にオンライン参加し、現地会合には小森卓郎総務政務官が出席する。
中国からは呉朝暉(ごちょうき)科学技術省次官が出席し、「AIの安全に関し各国と対話を強化したい」と述べた。
英政府は「AI大国の中国抜きに真剣な議論はできない」との立場をとるが、日米などは中国が知的財産の窃取や偽情報の拡散でAIを悪用することへの懸念を強めている。
対話型AI「チャットGPT」を開発した米オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)や、短文投稿サイトX(旧ツイッター)オーナーのイーロン・マスク氏らも出席者リストに名を連ねた。
2日目の日程終了後、英国が議論の成果を踏まえた議長総括を発表する。
ブレッチリー・パークは、第二次世界大戦中に英国の暗号解読の拠点施設となり、解読不能とされたナチス・ドイツのエニグマ暗号の解読で重要な貢献を果たした。【11月1日 産経】
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****AIサミットが閉幕 国家主導による新型AIの事前検証・評価で合意安全管理への連携強化うたう****
英ロンドン郊外で開かれた人工知能(AI)のリスク管理に関する世界初の「AI安全サミット」は2日、主催の英政府が最先端AIの安全な開発に向けた討議の成果をまとめた議長総括を発表して閉幕した。
最終日は日米英など同志国の首脳・閣僚級や国際機関、AI開発企業の代表らが会合を開き、企業が次世代AIモデルを公開するに際し、事前に国家主導の検証・評価を受けるようにすることで合意した。
AIのリスクと可能性に関する国際的な理解の共有に向け、複数の専門家らによる報告書を作成することも確認した。
スナク英首相は閉幕後の記者会見で国家主導の新型AIの検証・評価に関し「従来は開発企業自身がAIの安全性を検証していたところに問題があった」と指摘し、今回の合意は「画期的だ」と自賛した。
AI開発で国家の関与を打ち出したのは、インターネットの発展を企業の自由に任せたことが悪用などの弊害を招き、政府や国際機関の対応が後手に回ったことへの反省がある。
検証・評価では、英米では両国がそれぞれ設置を決めた「AI安全研究所」が担当する。一方、報告書はAI研究の世界的権威であるカナダのヨシュア・ベンジオ氏が作成を主導し、半年後に韓国で開かれる次回サミットまでの完成を目指すとしている。
スナク氏はサミットに中国を招いて国内外の一部で反発を受けたことについて、中国の参加は「英国が(AI関連の主要な)関係者を結集する能力があることを示すものだ」と主張し、中国の参加は「長期的にみて正しい判断だ」と強調した。一方で中国は2日目の同志国による討議には参加せず、日米欧などの主要国との溝も改めて浮き彫りとなった。
スナク氏は記者会見後、サミットに参加した米企業家のイーロン・マスク氏とロンドン市内で会談した。両氏は米SF映画「ターミネーター」を引き合いに、自律型のAIが制御不能に陥り、人間に危害を加えたりすることのないよう、強制的に作動停止できる装置を設けることの必要性などで一致した。【11月3日 産経】
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【一定の合意形成の一方で、今後の主導権をめぐる争いも露呈】
AIの安全確保に向けた国際連携・・・それは当然必要なことではありますが、AIが今後の世界の主軸となる技術だけに、この分野で主導的な立場を確保したい、自国に有利な枠組みにしたいというアメリア、EU、イギリス、さらにはそうした欧米主導に対抗する中国・・・それぞれの思惑が絡みあいます。
****米欧がAI規制で主導権争い 中国は体制維持を重視****
英政府が1日、世界初の「人工知能(AI)安全サミット」を開催した。AIの規制を巡っては、民間の自主規制を重視する米国と、巨額の制裁金も含めた規制を目指す欧州連合(EU)が主導権を競っているほか、統制色の濃い規制を導入した中国もルールづくりのイニシアチブを取る構えだ。
バイデン米政権はAIを現代の最有力技術と位置づけ、プライバシー侵害やアルゴリズムによる差別を防ぐリスク管理を最優先課題に掲げる。10月30日の大統領令は軍事、経済、公衆衛生への影響が懸念されるAI技術の開発で、安全試験の結果などを政府に提供することを義務づけた。米企業が制度設計に参画した。
EUは理事会と欧州委員会、欧州議会の3機関が対話型AI「チャットGPT」などの生成AIを含む包括的なAI規制案の細部をめぐり交渉を進めている。規制案をめぐっては、EU欧州議会が6月に賛成多数で採択。法案成立には加盟27カ国の承認なども必要で、2026年ごろにも実施される見込みだ。
一方、中国は8月に「生成AIサービス管理暫定規則」を施行した。生成AIの提供者や利用者に「社会主義核心価値観」の堅持を求めるなど、共産党政権の安定維持に重点を置く統制型の規制が特徴だ。
国際的なルール作りをリードすることも狙う。習近平国家主席が10月に発表した「グローバルAI管理イニシアチブ」では、「イデオロギーによる線引き」などにより「他国のAIの発展を妨害すること」に反対すると明記した。中国企業への投資規制を進める米欧に対抗する狙いがあるとみられる。【11月1日 産経】
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****サミット主催の英国、「第3のAI大国」として主導権狙う 規制強化には慎重*****
スナク英首相が1日開幕した世界初の「人工知能(AI)安全サミット」を主催したのは、欧州連合(EU)や先進7カ国(G7)が生成AIの運用や規制に向けた共通の規範づくりで先行する中、世界のAI大国の一角を占める英国もAI活用をめぐる国際的な議論で主導権を確保したいとの思惑がある。
英国には現在、300社以上のAI関連企業が存在。官民を挙げてのAI研究への資金投資や、大学などでの研究者の育成も活発に行われ、「英国は米国、中国に続く第3のAI大国」(英政府高官)と見なされている。
英国は2020年のブレグジット(EUからの離脱)以降、当初の期待に反して経済の停滞傾向が目立っており、AI関連分野で存在感を示すことで雇用および投資の拡大の起爆剤としたい考えもある。
サミットなどを通じた英国の取り組みで特徴的なのは、例えばEUが人権侵害といったAI乱用のリスクを低減させるため、罰則も含めた規制強化を前面に打ち出しているのに対し、英国はAIの活用に向けた基準づくりに軸足を置き、差別化を図っている点だ。
スナク首相は10月26日の演説でAI技術に関し「産業革命やインターネットの誕生と同等の変革をもたらすと確信している」と述べ、規制強化を急がない考えを表明した。
スナク氏は一方で「AIは新たな危険をもたらす」とも指摘し、AIのリスクなどを検証する世界初の研究機関を英国に設立する計画を明らかにしている。
英国としてはAIのリスクに関して政府や国際機関、関連企業の間で共通理解を深め、EUなどによる他のAI関連の枠組みとの相互補完を視野に国際的な運用基準やルールづくりを主導したい考えだ。【11月1日 産経】
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こうした各国の思惑を受けて、会議では主導権争い、対抗意識なども表面化したようです。
****米中「AI連携」宣言も角逐浮き彫り 英の橋渡しに限界も****
英ロンドン郊外で1日に開幕した「人工知能(AI)安全サミット」は、参加29カ国・地域がAIの安全確保に向けて国際連携をうたった宣言文書に署名する一方で、AI2大国の米中の角逐も改めて浮き彫りとなった。
英国は、AIの活用や規制を巡る主導権確保を目指す米中や欧州連合(EU)などの橋渡し役を演じることで存在感の発揮を目指したが、限界も目についた。
ハリス米副大統領は1日、サミット会場から離れたロンドンの米大使館で演説し、AIを使った顔認証システムの悪用による罪なき人々の投獄や偽情報、誤情報の流布は「民主主義の存亡に関わる脅威だ」と指摘し、これらの対処に向けた「地球規模の取り組みが必要だ」と訴えた。
ハリス氏の発言は、米欧などと対立する専制主義勢力、中でもAI大国の中国を念頭に置いたものであるのは明らかだ。
ハリス氏は「未来のAIは人権と人間の尊厳の向上、プライバシー保護、機会均等のために使われるべきだ。それにより民主主義は強化され、世界はより安全になる」と強調した。
一方、サミットに出席した中国の呉朝暉(ご・ちょうき)科学技術省次官は1日の演説で、バイデン米政権がAI向け先端半導体の対中輸出規制を強化したことを踏まえ、「私たちは相互尊重と平等、互恵を支持する。AI知識の共有と技術公開に向けた国際協力を求める」と述べ、米国の動きを牽制(けんせい)した。
スナク英首相は中国をあえてサミットに招待することで、AIの安全に関する国際協調の構築を図った。だが、英国内では身内の保守党からも「中国にとってAIは国家管理の手段であり国内治安維持の道具だ」(トラス前首相)などとして参加に批判的な意見が相次ぎ、思惑通りの成果を収めたとは言い難い。
また、ハリス氏はこの日の演説で、米国がAIの安全に関する指針策定などを主導する「AI安全研究所」を設立すると表明し、数日前に英国が同様の研究所を「世界初」として設置すると発表したのをかき消すような行動に出た。
スナク氏は1日にハリス氏と会談し、将来的に両研究所が連携することを確認したが、米英の力関係に照らせば、米国に主導権を握られる可能性は高い。
さらに、ハリス氏が米大使館で独自に演説を設定し、多数のサミット参加者が途中で会場を抜け出さざるを得なくなったため、英政府関係者の間では「米国の妨害行為だ」として不満の声が上がったという。【11月2日 産経】
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【独自の立場の中国 あくまでも“共産党統治の安定性を揺るがさない範囲での国際協力”】
中国をめぐってギクシャクした対応も。二日目、イギリスは中国抜きで欧米日の「同志グループ」で会合したと発表していますが、中国は参加していたと主張・・・よくわかりません。
****中国、2日目会合も出席と主張 AIサミット、英公表せず****
英政府が1〜2日に主催した「人工知能(AI)安全サミット」で、中国側は初日に続き2日目の会合に参加したと主張していることが3日、分かった。ロイター通信が報じた。英政府は2日目の参加者は日米欧など「同志」グループの代表者だとし、中国の参加について公表していなかった。
英政府は、AI大国の中国を交えた議論が重要だとして招待。初日の全体会合には中国科学技術省の呉朝暉次官が参加し、演説していた。ただ各国では中国のAI悪用に対する懸念が強く、2日目の公表を避けた可能性がある。
ロイターによると、中国科学技術省の関係者は2日目の会合にも呉氏がいたと明らかにした。【11月4日 共同】
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その中国の言う「各国と協力」というのは、あくまでも“共産党統治の安定性を揺るがさない範囲での国際協力”
****習主席、AIで国際協力表明 世界ネット大会、限定的か****
中国の習近平国家主席は8日、浙江省烏鎮で開幕した「世界インターネット大会」でビデオ演説し「各国と協力して人工知能(AI)の安全な発展を促進する」と述べた。ただ、中国政府はAIに独自の言論規制を敷いて海外勢を排除しており、共産党統治の安定性を揺るがさない範囲での国際協力にとどめるとみられる。
生成AIを巡り、中国政府は言論を統制する管理規則を8月に施行し、国家政権転覆を扇動したり、国家安全に危害を加えたりする内容が生成されてはならないと規定。政府方針に適合した国内のIT企業が開発したAIに許可を与えている。【11月8日 共同】
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今回の「AI安全サミット」については“AI規制の必要性については一定のコンセンサスが得られたものの、具体的な方法や、だれがその取り組みを主導するのかについては意見の相違が残っている。”“世界的なAI監視への道のりは、まだ長い。”【11月8日 ロイター「AI安全サミット、早くも米・欧・中が覇権争い 遠い合意到達」】とも。
【国連総会の第1委員会(軍縮) AIを使用した自律型致死兵器システムに関するルールづくりに着手】
生成AIを中心とする民生用AIの開発以上に現実先行で進むのがAIの軍事利用。映画「ターミネーター」の世界が現実となりつつあります。
AIを使って人間の判断に基づかず攻撃する自律型致死兵器システム(LAWS)は、“LAWSは実用化されれば火薬、核兵器に次ぐ「第3の軍事革命」になると注目を集める一方、武力行使の判断が瞬時に下され、一気に紛争に発展する恐れが指摘されている。”【11月2日 共同】との危険性も指摘されており、国連総会の第1委員会(軍縮)は11月1日、LAWSへの対応が急務だと強調する決議案を日本やアメリカなど164カ国の賛成で採択しました。
****AIが敵を殺害する兵器、国連のルール作り決議にロシアとインド反対・中国とイスラエル棄権****
人工知能(AI)が自律的判断で敵を殺害する「自律型致死兵器システム(LAWS)」に関する国際的なルール作りに向けた決議が1日、国連総会で軍縮問題を扱う第1委員会で賛成多数で採択された。LAWSに関する決議採択は初めて。12月の国連総会本会議でも採択の見込みだ。
LAWSについて規制する条約はない上、ロシアが侵略するウクライナの戦場がAI兵器の「実験場」となって飛躍的に技術が進展している。国際的なルール作りが急務となっていた。
決議はオーストリアが提案した。採決では、日米など先進7か国(G7)を含む164か国が賛成した。反対はインドやロシアなど5か国、棄権が中国やイスラエルなど8か国だった。
決議はAI兵器の使用について、国際人道法の適用の必要性、軍拡競争などの懸念も盛り込んだ。LAWSの規制に関する各国の見解を報告書にまとめ、来年9月に始まる国連総会に提出することも明記した。
米ニュースクール大学メディア研究学部のピーター・アサロ准教授は本紙に「決議採択によって法的拘束力のある条約作りに向かうことになる。今後、決議に反対したロシアなどの国をどのように巻き込んでいくかが課題となる」と語った。【11月3日 読売】
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