孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

コロナ「追跡アプリ」はコロナ後の監視社会への扉を開くのか?

2020-05-31 23:02:39 | IT AI

(【5月26日 CNN】中国で入場時にチェックされる「健康コード」)

【中国・杭州 市民の病歴や生活習慣を点数化し、「健康スコア」としてスマホ表示】
中国が「幸せな監視社会」とも言われるような超監視社会であることはこれまでもしばしば取り上げてきました。

新型コロナ感染拡大阻止を目的として更に監視体制は強化され、スマホ上に表示される緑、黄、赤の3段階が至る所でチャックされる「デジタル通行手形」となっていることも、よく報道されています。
(問題は、この3段階表示の基準がブラックボックスで、当局に都合が悪い人物は「要注意」とされて、日常生活がままならない状況に追い込まれることもあり得るというところです)

そうした中国の状況を前提にしたうえでも、「そこまでやるか・・・」と唸ってしまったのが下記記事。

****市民の健康状態を点数化しスマホにコード表示、中国・杭州市がシステム導入を検討****
中国浙江省の杭州市で、市民の病歴や生活習慣を点数化し、「健康スコア」としてスマートフォン上のQRコードで表示するシステムの導入が検討されている、と米CNNが報じた。個人情報の管理が進む中国だが、この案についてはSNS上でプライバシーの侵害だと批判が相次いでいるという。 

コード表示は新型コロナウイルスの感染拡大防止対策として2月に杭州市で始まり、中国各地に拡大した「健康コード」の進化形。

健康コードは利用者が「アリペイ(支付宝)」や「ウィーチャット(微信)」といったスマホのアプリに身分証番号などの個人情報を登録すると、その人が感染しているリスクが緑、黄、赤の3段階で示される。 

細かい定義は地域によって異なる部分があるが、緑は基本的に健康に問題がないこと、黄はコロナ感染者との濃厚接触や入国直後といった理由による隔離期間中など、赤は感染者であることなどを示している。

判断の基準は明確に説明されていないが、家族関係や移動履歴などのデータから、感染者との濃厚接触の可能性や感染地域への出入などをはじき出す仕組みとみられる。中国各地のさまざまな施設や公共交通機関で健康コードを確認することが当たり前になり、「デジタル通行手形」として機能している。 

CNNによると、健康スコアは健康コードをヒントにした恒久的なシステム。個人の病歴や健康診断結果、生活習慣のデータに基づいて算出される。杭州市保健委員会の公式サイトに掲載された案によると、0から100までのスコアが赤から緑のグラデーションで色付けされる。 

1日に歩いた距離が1万5000歩に達したら5点、睡眠時間が7.5時間あれば1点が追加される。減点の例としては、蒸留酒の「白酒」200ミリリットルを飲んだらマイナス1.5点、たばこ5本を吸えばマイナス3点などがある。 

さらに企業や町内会にも、メンバーの運動や睡眠、健診などの状況に応じてグループ単位のスコアを付ける案も検討中。市保健委員会はデータの収集方法や、スコア取得を義務化する可能性、市民生活や企業活動への具体的な影響には現段階で特に触れていないという。 

杭州市の案に対して中国のSNSには、プライバシーの侵害だと問題視する書き込みが多く寄せられている。データが保険会社やマーケティング会社の手に渡ったり、雇用差別につながったりする可能性も懸念される。CNNは「技術面の問題として健康状態を点数化すること自体の難しさを指摘する声も上がっている」とも伝えた。【5月31日 レコードチャイナ】
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現在でもアリババが提供する『芝麻信用(セサミクレジット)』は、中国でインフラとも言えるほど、社会に定着したサービスとなっていますので、その健康面を更に詳しくしたものと考えれば、こういうものが出てくるのは「必然」なのかも。

****中国で「信用スコア」が社会インフラに*****
「信用スコア」とは、個人に紐づくデータをもとに信用度を分析し、スコア化する仕組み。学歴、職業、年収、さらには購買履歴などの膨大な個人データからAIが分析し、数値を弾き出す。可視化された信用度は、融資・ローンなどの可否判断といったサービスに展開される。(中略)

芝麻信用がユニークなのは、提携サービスの利用状況などから膨大なデータを収集し、スコアを算出している点。たとえば、評価軸としてECモール「天猫(Tmall)」、決済サービス「アリペイ」の利用履歴、さらにはSNSにおける交友関係なども用いていると言われている。スコアに応じて、さまざまなサービスで特典を享受できるのも特徴だ。

さらに注目したいのは、中国でこうした「信用スコア」をもとに社会基盤がつくられつつあるということ。たとえば、一定スコア以上で空港の専用レーンをつかえたり、ビザ申請手続きが簡易化されたりと、公共機関で優遇を受けられる仕組みもはじまっている。【2019年11月25日 HUFFPOST】
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「健康スコア」が一般化されれば、スコアが悪い者は就職も結婚もできない、保険にも入れない・・・ということにも。

【各国で導入が進む「追跡アプリ」】
こうした「監視社会」が他人事でないのは、日本などでも新型コロナの関係で「追跡アプリ」開発が進められており、こうした「追跡アプリ」の使用・普及が中国のような「監視社会」への第1歩となるのでは・・・という懸念があるからです。

****コロナ追跡アプリ、政府主導で グーグルとアップル要求****
政府は8日、官民共同で進めていた新型コロナウイルスの感染追跡アプリの開発について、今後は厚生労働省が主導すると決めた。運用も厚労省が担う。

米グーグルと米アップルが、追跡アプリ用共通規格の利用などは政府が主体となることを求めたため、方針転換を迫られた。アプリの運用開始は予定していた今月上旬からずれこみ、早くて今月下旬の見通しだ。
 
このアプリは、スマホの近距離無線通信「ブルートゥース」を使い、一定時間近距離にあったスマホ端末を記録する仕組み。アプリの利用者に新型コロナの陽性が判明すると、記録された端末に「濃厚接触の可能性」を通知し、持ち主に注意を促す。情報は匿名化され、個人は特定できない。(後略)【5月12日 朝日】
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同様のアプリ運用はイギリスでも6月から開始されます。

****英、コロナ追跡システムが6月1日稼働開始=首相****
英国のジョンソン首相は20日、新型コロナウイルス検査で陽性反応を示した人と接触した可能性がある人を追跡するシステムが6月1日に稼働開始すると明らかにした。 

来月初めまでに検査実施件数は1日当たり20万件に達し、追跡システムにより毎日1万件の追跡が可能になるとの見通しを議会で示した。【5月21日 ロイター】
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“NHSX(NHS(イギリス国民保険サービス)のデジタル部門)によると、アプリの利用は義務ではなく希望者のみ。また、アプリ内に蓄積される個人情報は最初に登録する郵便番号の一部のみで、位置情報などは利用者の許可がないと収集できないようになっているという。
また、「デジタル握手」の記録や分析もアプリ内では行わず、イギリス国内のサーバーに送られる。”【5月5日 BBC】

もっとも、ハッキングなどの意図せざる事態、あるいは、政府の隠された意図なども可能性としては皆無ではありません。

フランスでも6月から稼働するとのことですが、警戒感が強いようです。
利用者は相当割合いないと、このシステムはあまり意味がなくなります。

****感染者との接触通知アプリ不人気 仏、55%が「使用しない」****
30日付のフランス紙フィガロは、新型コロナウイルスの感染再拡大防止策の一つとして国が開発した、感染者と濃厚接触した可能性を知らせるスマートフォン向けアプリに関し、世論調査で55%が使用しないと答えたと伝えた。
 
同様のアプリは日本を含め各国で導入や準備が進んでいる。フランスでは6月2日に行う2段階目の制限緩和に合わせて稼働。政府はプライバシーは侵害しないと訴えて任意での使用を促しているが、公権力への警戒心の強い国民性が普及を抑制する可能性もある。
 
千人を対象に行った世論調査で「確実に使用する」と回答したのは19%。「たぶん使う」は26%だった。【5月31日 共同】
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【何に怒って何に笑うのかが、把握されていく】
当然ながら、こうした「追跡アプリ」のメリットは大きなものがあります。
いっぽうで、コロナ後の社会の監視システムにつながっていくのでは・・・との懸念も。

****新型コロナ「追跡アプリ」がもたらす恐ろしい未来****
世界的ベストセラー『サピエンス全史』(河出書房新社)の著者ユヴァル・ノア・ハラリは、世界で蔓延している新型コロナウイルス対策について、『アルジャジーラ』にこう語っている。
「感染症の大流行とそれによる経済的な危機を軽減するために、使えるテクノロジーはすべて使うべきだ」
 
世界では現在、新型コロナの感染者を追跡するスマートフォンのアプリが30種類ほどシステム開発されており、各国で導入されている。
 
追跡アプリとは、PCR検査で陽性反応が出た人の行動を把握し、その人物と接近した人などを追跡することで、感染拡大を抑えようというものだ。
 
日本でも、官民共同で進めていた感染者追跡アプリを厚生労働省が主導して開発・運用することが決まっている。ただ、グーグル社とアップル社の規格を利用するため、導入は6月以降になりそうだ。(中略)

ハラリは、先のコメントにこう付け加えている。「ただ、慎重に使うべきなのです」
 
追跡アプリに対する警戒感は根強い。人の行動を追うだけに、プライバシーの侵害に繋がったり、政府による監視に使われたりするのではないかという懸念が議論になっているのだ。
 
新型コロナが収束した後も、引き続きそうした技術が使われる可能性も否定できず、そうなれば新型コロナが私たちのプライバシーの概念を変えてしまいかねない、と見る向きもある。そしてその先には、恐ろしい世界が広がる可能性も考えられる。
 
では、既に導入されている国で、そもそも追跡アプリはどんな形で使われているのだろうか。

強硬なアプローチを採用する韓国
まずは日本でも追跡アプリが話題になった韓国だ。
 
韓国の追跡システムは、言うなれば、犯罪者を追跡するように、感染者と感染の可能性がある接触者を追いかけるものだ。
 
スマホの位置情報で彼らがどこにいるのかを把握し、さらにクレジットカートなどの情報を紐付け、誰がどこで食事や買い物をしたのかがわかるようにもなっている。各地に張り巡らされた監視カメラの情報とも繋がれ、行動が追跡される。これによって、感染後の行動だけでなく、感染前の行動も把握する。 
 
自分がどこで何をしていたのかすべて調べられると考えると、気持ちが悪いが、韓国に国外から入国する際には、政府系の追跡アプリのダウンロードが義務付けられている。(中略)

監視の度合いが強まっている中国
プライバシー上の懸念を無視して追跡アプリなどによる新型コロナ対策に乗り出しているのは、韓国だけではない。韓国以上に徹底監視しているのは中国だ。
 
中国では、大手IT企業の「アリババ」と「テンセント」がそれぞれアプリを開発。ユーザーはアプリをダウンロードし、個人情報だけでなく、体温や健康状態なども入力して監視される。過去14日間の移動履歴や、感染者などに接近した記録も残される。
 
また、人口比で世界で最も監視カメラの数が多い中国だけに、監視カメラによる監視も行われているという。
 
そして外出して公共交通機関を使ったり、店舗に入ったりする際には、健康状態を示す色分けされた「ヘルスコード」(QRコード)を提示する必要がある。
 
グリーンなら安全で移動が許されるが、レッドならどこにも出歩けない。店舗や職場などにも行けない状態で、自主的に隔離生活を送る必要がある。
 
ちなみにこのサービスは政府が実施していると喧伝されているが、実際にアプリを調べてみると、個人のデータが警察にも送られていることが暴露されている。
 
普段からネット監視や検閲などが厳しく行われている中国なら、もはや驚きすらしないが、それでも新型コロナ対策によって、当局が国民の健康状態などさらなる個人情報を入手できてしまっていることは看過できない。監視の度合いが強まっているのである。(中略)
 
アジアのみならずヨーロッパでも
新型コロナ対策の成功国として評価されている台湾でも追跡アプリが導入されている。14日間の自主隔離をしなければならない人たちがアプリを利用し、少しでも家から離れたりすると警告が届くシステムだ。ちなみに違反者には罰金が科される。(中略)

また香港では、隔離の際に行動をトラックするリストバンドをつけるよう義務付けられているし、シンガポール政府が開発した新型コロナ対策アプリも接近した人たちを記録するものだ。
インドでも、政府が開発したアプリのダウンロードが国民全員に実質強制され、利用されている。
 
アジアだけではない。
ドイツ政府も、睡眠時間や脈拍、体温を管理するスマートウォッチ用のアプリを提供している。
アイスランドではGPS(全地球測位システム)を利用した追跡アプリが使われた。

スマホユーザーの80%が参加しないと……
米国では、咳をしている人や熱のある人を把握し、屋外でソーシャル・ディスタンスが保たれているかをチェックできるドローンも開発されている。
 
当局はプライバシーなどの問題で追跡ドローンの採用には慎重になっている。つい先日も、導入を検討していたコネチカット州で人権団体から批判が起こり、中止に追い込まれている。ただ民間の遊園地や交通機関などから導入希望があるという。
 
米国のある調査によれば、世界でこうしたアプリのインストールを国民に強制している国としては、中国とインド、そしてトルコが確認されている。
 
これらの追跡アプリは、使う国によって効果が大きく違う。国民にインストールを強制する国のアプリは、プライバシーを無視してデータを集めるため、比較的、効果的に機能している。
 
その一方で、インストールが義務ではない国では、その効果は非常に限定的だと言われている。
英国では、「スマートフォンユーザーの80%が参加して協力しないと追跡アプリは効果がない」との声もある。(中略)

監視がニューノーマルになるコロナ後
それでも、個人の情報が新型コロナ対策という大義のもとに吸い上げられていることは事実である。
 
多くの国が、個人情報は記録しないと主張し、新型コロナが落ち着けば、追跡システムは作動させないとも言っている。だが、それを額面通りに受け止めるべきではないとの声もある。
 
ハーバード大学ケネディ行政大学院教授で国際政治学者のスティーヴン・ウォルトは、米誌『フォーリン・ポリシー』でこんな指摘をしている。

ニューノーマル(新しい常態)に向けて準備をしたほうがいい。政治的なご都合主義と、今後の新たなパンデミックへの不安によって、多くの政府がいま導入している新しい力をそのまま維持しようとするだろう。旅行に行けば、体温を測られたり、綿棒で鼻の奥の検体を採られたりすると考えたほうがいい。多くの国で、携帯電話をチェックされることにも慣れないといけないし、あなたの写真も撮られるし、位置情報で居場所を追われる。しかも、そうした情報が公衆衛生目的に限らない使い方をされることもあるだろう。コロナ後の世界では、ビッグ・ブラザー(政府)が監視をすることになるのだ」

「何に怒って何に笑うのか」も把握される
また冒頭のハラリも、さらなる懸念をこう示す。
「いまの焦点は感染症だけである。だがその監視システムには、身体の内部の情報が必要になる。体温や血圧、脈拍などだ。そして監視活動が『皮膚の内側』にまで及ぶと、他の数多くの目的で活用できるようになる」
 
例えば、私たちがどこで何をし、何を見ているかという客観的な情報だけでなく、何を感じているのかという主観的な情報まで取得されるようになっていくという。
「何に怒って何に笑うのかが、把握されていくのです」
 
そうなれば、私たちの政治的な意見や考え方などが監視システムに把握されてしまう可能性もある。
 
中国で習近平国家主席の発言を報じるニュースに、人々がどんな感情を抱いているのかが分かってしまうし、政府に怒りを抱いているとみなされた人は、「矯正」されるかもしれない。
 
現在の技術的進歩を考えれば、そう遠くない未来にそういったテクノロジーは現実になるだろう。
これを手にした権力者は、今以上に完全な独裁体制を築くこともできるかもしれない。追跡アプリは、恐ろしい未来への重要な「一歩」になるかもしれない――。そんな見方もある。
 
新型コロナ危機という人命に関わる状況において、人々のプライバシー侵害に対するハードルが下がり、厳しい監視システムを導入する機会を得た国々が、コロナ後にどのような変化を遂げていくのか、注視が必要である。【5月25日 山田敏弘氏 Foresight】
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冒頭の中国における「健康状態を点数化」は“監視活動が『皮膚の内側』にまで及ぶ”状況のかなり近くまで到達しているようにも。

習近平国家主席の発言を報じるニュースにどのように反応したかが記録される・・・それをもとに当局が「要注意」と判断した人物は「矯正センター」に送られ再教育をうける・・・・そんな未来もあるのかも。

中国であり得るなら、他の国でも・・より隠蔽された形で。

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