孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

途上国貧困層を襲う“ゴミの山”崩壊事故 中国の資源ごみ輸入禁止で対応を迫られる日本

2018-02-21 22:54:23 | 環境

(百数十名をのみこんだエチオピア・アジスアベバの“ゴミの山” 【2017年3月14日 AFP】)

【“ゴミの山”で暮らす以外に選択肢がない貧困層
途上国では多くの貧困者がゴミが集められる“ゴミの山”周辺で暮らしています。

居住環境が悪いことで家賃などの負担が少なくてすむために貧困層が集まるのか、貧困者が住む地区にゴミが集められるのか・・・そのあたりはよくわかりませんが。

“ゴミの山”は収入源でもあり、“ゴミの山”からの使えるゴミの回収で生計をたてている者も多くいます。
しかし、“ゴミの山”が崩れ落ちることで悲劇も。

****ゴミの山崩れ貧困層の住居直撃、17人死亡 モザンビーク****
アフリカ南東部モザンビークの首都マプトでこのほど、15メートルの高さに積み上がった巨大なゴミの山が貧困層の暮らす住居の上に崩れ落ち、当局によると17人が死亡した。

ゴミの山の崩落は19日の早朝に発生。住居内で眠っていた住人が埋もれる形となった。モザンビーク赤十字の報告によれば、死亡した人の中には新生児とその母親も含まれているという。

現場はマプト市内の困窮した人々が暮らす人口密集地。数日にわたり続いた大雨がゴミの山の崩落につながったとみられる。

大量のごみの直撃を受けたのは7棟で、近隣の住民らも救助隊に加わって生存者の捜索に協力した。救助に携わる赤十字は、すべての犠牲者について身元が判明していると述べた。 一時避難所に身を寄せた32世帯には、毛布や防水シート、台所用品が支給された。

赤十字の広報担当者はCNNに対し「ゴミの山の崩落は貧困と都市計画の問題をあぶり出すものだ」と指摘。「被害に遭ったのは貧困層の中でも特に貧しい人々。もともと安全性の懸念からこの場所からの退去を求められていたが、食べ物などを求めて戻ってきてしまう」「ここで暮らす以外に選択肢がないのだ」と述べた。

マプトの人口は100万人超。世界各国の情報を年間形式でまとめた「CIAワールド・ファクトブック」によれば、その半数近くが貧困ラインを下回る生活を強いられているという。【2月21日 CNN】
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有害で悪臭を放つ“ゴミの山”から離れられない貧困層、その“ゴミの山”に押しつぶされる事故・・・途上国における貧困を象徴するような悲劇です。

この種の事故は、世界各地の途上国でときおり起きていますが、1年ほど前のエチオピアでの事故では100名以上が犠牲になっています。

****エチオピア 貧困が招いた悲劇 ゴミ山崩壊で死者多数****
アジスアベバ郊外の「コシェ」と呼ばれる巨大なゴミ捨て場には、木材と泥で、運の良い住人のものは金属板で出来た何百もの小屋が林立し、ここで何百もの人々が日々暮らしている。

(2017年)3月11日、轟音とともにゴミの山が崩壊し、巻き込まれた百人以上が亡くなった。その多くは女性や子ども、中には地元のサレジオの学校に通う生徒もいた。

ゴミの山は、住人の多くにとって主要な収入源である。修理し、再利用し、売ることのできるものを見つけるのだ。
 
コシェとは、土地の言葉、アマリク語で「塵(ちり)」の意。40年以上にわたり、アジスアベバのゴミが年に3千トン捨てられてきた。

すでに2010年、ゴミの山が拡大、住居や学校に接近していたため、市当局は警告を発していた。市のスポークスマンによると、「悲劇の再発を防ぐため、この地区に住む人々はほかの地区に移された」とのこと。(中略)
 
エチオピアのVISのプロジェクト・マネージャー、ジャコモ・スピガレッリはバチカン・ラジオで次のように伝えた。「この悲劇は大きな傷跡を残しました。残念ながら、またもやいちばん打撃を受けたのは最も弱い人々、子どもや女性だからです。ゴミ溜めで働いていたのは、主に女性や子どもたちだったのです。」(中略)

コシェのゴミ廃棄場はエチオピアで最大。日々の糧を求め、その周りに何百もの人々が住みついていた。

昨年、市当局によって閉鎖され、住人は別のゴミ廃棄場に移るよう求められていた。しかし、新たなゴミ廃棄場の近隣住民の反対を受け、市は方針を撤回していた。【2017年3月16日、20日 カトリック・サレジオ修道会日本管区】
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2017年3月15日の時点で113名の死亡が確認され、うち75名が女性とのこと。また少なくとも80名が行方不明と伝えれていましたので、犠牲者数は最終的には150~200名に近い数字になったのではないでしょうか。

“過去2年の間にもここで小規模な地滑りが発生しており、その都度2~3名の死者を出していた。”【2017年3月16日TechinsightJapan】ということで、予想されていた惨事でした。

このエチオピアの事故の1か月後の昨年4月には、スリランカでも同様の事故がおきています。

****ごみ山が崩落、19人死亡 近隣住宅など145棟に被害 スリランカ****
スリランカの最大都市コロンボ近郊のコロンナーワで14日、高さ91メートルまで積み上げられていたごみの山が崩落して近隣の住宅などが下敷きになり、これまでに子ども4人を含む少なくとも19人が死亡した。
 
現場では前日の大雨でごみの一部が崩れ、近隣の複数の住宅の基礎部分などに損害を及ぼしていたため、多くの住民が自宅から避難していたが、警察当局によると、住宅など145棟がごみ山の崩壊によって損壊したという。
 
現場では軍の兵士ら数百人が救助活動にあたっている。
 
この屋外集積場には毎日約800トンもの固形廃棄物が捨てられ、近隣の住民は怒りをあらわにしていたという。
 
スリランカ議会は、コロンナーワで2300万トンのごみが腐敗している状況は深刻な健康被害を及ぼしているとして報告を受けていたという。
 
またこのごみ集積場では、固形廃棄物を燃料に変えて使う発電所の建設が進められている。【2017年4月15日 AFP】
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事故後、スリランカではゴミを減らす取り組みも行われているようです。

****ビニール袋禁止=ごみ山崩れ死者、住民怒る-スリランカ****
スリランカ政府は1日、ビニール袋の使用を禁止した。また、使い捨て製品の使用も禁じる。

最大都市コロンボでは、各地に見上げるような巨大なごみの山が築かれており、4月にその一つが崩れ、家々を押しつぶして32人が死亡した。さらに大雨に際し、流れ出したごみが下水管を詰まらせ洪水が起きたと住民から怒りの声が湧き起こっていた。

事態を受け、シリセナ大統領が出した結論がこの日の禁止令だった。プラスチックの食器の販売も禁止し「禁令に従わない者は犯した罪の責任を負う。国家環境法に沿って罰を受ける」と国民に通告した。違反者は罰金1万ルピー(約7000円)か、最大で禁錮2年の刑となる。【2017年9月2日 AFP】
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環境対策に乗り出す中国 資源ゴミ輸入を禁止

(ブロック状に固められた廃プラスチック=香港(ブルームバーグ)【2017年8月9日 SankeiBiz】 これらの相当量が日本からのもので、最終的には中国へ運ばれます)

日本はゴミのリサイクルはかなり進んでおり、中国からの観光客が“日本では街にゴミがおちていない!”と感嘆したり、ゴミ分別の徹底ぶりに“そこまでやるか・・・・”と疑問も感じたり・・・・といった話がしばしば報じられています。

ただ、日本のゴミのリサイクルは国内で完結している訳でもなく、資源ごみの多くが、日本の清潔さに驚く中国に輸出されていたようです。

その中国は、PM2.5に代表されるような環境問題が近年大きな政治課題となっており、習近平政権も環境対策に本腰を入れています。

その一環として、他国からのゴミ輸入を禁止することになりましたが、これまで中国に“輸出”して、自国のゴミ問題を“解決”していた国々は、対応を迫られています。

****中国の廃棄物輸入禁止策、世界のリサイクル産業に波紋****
中国では長年、世界中から資源ごみを輸入していた。しかし、今年から廃棄物の輸入が一部停禁止されたことで、世界各国は早急に大量のごみの新たな廃棄先を見つける必要に迫られている。
 
中国の廃棄物輸入禁止策は昨年7月に発表され、年明けから施行された。欧米などの企業はわずか6か月の間に他の選択肢を探すことを強いられ、中には駐車場に廃棄物を保管する企業まで出ている。
 
今回の法律で禁止されたのは24種類の固形廃棄物で、一部のプラスチックや紙類、布類も含まれている。中国の環境省は世界貿易機関(WTO)への通告の中で、「原材料として使用可能な固形廃棄物の中に大量の汚れた…あるいは危険でさえあるごみが混じっている。これが中国の環境を深刻に汚染している」と説明した。
 
中国政府の最新統計によると、2015年だけでも中国は4960万トンのごみを買い入れている。例えば欧州連合(EU)は収集・分類したプラスチックごみの半分を輸出しているが、その85%は中国へ向かう。

またアイルランドは2016年、プラスチックごみの95%を中国へと送った。同年、米国が中国へ輸出した廃棄物は52億ドル(約5700億円)相当の1600万トン超に上った。
 
中国に依存している国々にとって今回の廃棄物の輸入禁止は「激震」だと、国際再生資源連盟のアルノー・ブルネ会長は言う。「中国は世界最大の市場であるだけに、われわれの産業全体に影響が及ぶ」
 
ブルネ氏の推算によると、世界から中国へのプラスチックごみの輸出は2016年の740万トンから、今年は150万トンにまで激減しそうだ。また、紙ごみの輸出も4分の1程度まで激減する見通し。
 
原因の一つは、中国が受け入れ可能とするごみ1トン当たりの混入物の制限値を下げたことにある。より厳しい基準を多くの国は満たすことができていないのだ。

こうしたことからインドやパキスタン、東南アジア諸国といった新興市場に注目する国もあるが、中国へ廃棄物を輸出するよりも高くつくだろう。
 
行き場を失った再生ごみが焼却されたり、他の廃棄物と一緒に埋め立て地などに投棄されたりすれば、それは環境的な「大惨事」へとつながるリスクになりかねない。【1月24日 AFP】
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上記の中国のゴミ輸入禁止は、これまで資源ごみを活用してきた中国にとっても、新たな対応を迫られる世界にとっても“無駄”なだけで賢明ではない・・・との指摘もあるようです。

下記はブルームバーグ・ビューのコラムニストの意見です。

*****真の無駄生む中国資源ごみ輸入禁止 *****
過去30年以上にわたり、中国製造業の急成長は廃プラスチックや古紙など再利用できる資源ごみの輸入に支えられてきた。

だが、同国政府は7月、資源ごみの大半について、今年末までに海外からの輸入を禁止すると世界貿易機関(WTO)に通知。公衆衛生と環境を害する「海外の廃棄物」追放運動の一環だという。
 
中国政府は扱いの難しい国内の廃棄物問題から注意をそらす意図もあり、以前から輸入廃棄物の話題を大きく取り上げている。しかし、1980年代以降これまで、資源ごみの輸入を奨励してきた。
 
廃プラスチックや古紙の輸入は、石油を採掘したり樹木を伐採したりするよりも安くて速く、容易だ。環境にも優しい。

1トンの古紙をリサイクルすれば、米国の平均的な家庭の6カ月分の電力を賄うのに十分なエネルギーが得られる。プラスチック製品を作るのに資源ごみを利用すれば、製造に要するエネルギーを最大87%削減できる。2015年に世界中で取引された資源ごみの量が約1億8000万トン、金額にして約870億ドル(約9兆6240億円)に上ったゆえんだ。
 
過去20年にわたり世界最大の資源ごみ輸入国だった中国ほど、そのありがたさを理解している国はない。

同国のリサイクル産業は製造業の急成長とともに発展した。容量で考えれば、00年代半ばには古紙が米国から中国への主要輸出品となっている。

紙類は中国製品の包装材として米国に輸出され、ごみとなり、中国に資源ごみとして再輸出されるため、これらを勘案すれば中国の古紙利用率は70%に達するとの推定もある。
 
これはすべての関係者にとって望ましい状況だ。米国人はリサイクルに熱心だが、それ以上に消費に熱心で、回収した資源ごみの3分の1は国内でリサイクルすることができない。単純に量が多すぎるのだ。

中国が資源ごみの輸入を開始して以来、米国では廃材輸出で4万人以上、中国ではその何倍もの雇用が生まれたとする研究もある。

もちろん、汚染された廃棄物による健康被害など問題もあるが、中国政府はこれらを適切に取り締まり、輸入される資源ごみの質は向上していた。
 
国内の公衆衛生の改善を目指すなら、資源ごみ輸入の禁止は逆効果で、環境問題をさらに悪化させる恐れがある。資源ごみの汚染度合いは国内産の方がはるかにひどいからだ。
 
中国が海外廃棄物の輸入を中止すれば、同国の年間輸入量に相当する廃プラスチック700万トン、古紙2900万トンが全世界でごみと化すとの推計もある。それこそ真の無駄といえそうだ。(コラムニスト Adam Minter)【2017年8月9日 SankeiBiz】
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ただ、自国で処理できない“他国”へ持ち込んで処理するシステムを“合理的”と称賛し、これを禁じる施策を“無駄”と断じる主張は、なにか常識とは異なる“理屈”のようにも。

もちろん、資源ごみだろうが、最先端IT機器だろうが、交易で双方の国の有効資源活用が図られるというのは自由貿易の大命題ではありますが、「自分の出したゴミは自分で処理しろよ!」というのは、至極まっとうな主張でもあります。特に、汚染された廃棄物による健康被害などもある場合は。

最大輸出国の日本 迫られる対応
輸入禁止となった資源ごみのなかで、廃プラスチック(ペットボトルなど)で見ると、香港経由で中国に入るものを含んだ実質では、国別輸入先で日本がトップにあるようです。

****中国「外国ゴミ輸入禁止」の波紋****
4分類24種類の固体廃棄物、「最大輸出国」日本に痛手

(中略)廃プラスチックの輸入禁止に伴い、中国は国内における廃プラスチックの回収率を向上させると同時に再資源化を強化する対応を急ぐものと思われるが、上述したように中国向け廃プラスチックの実質的な最大輸出国である日本ならびに日本の輸出業者が被る痛手は極めて大きいと言える。

年間130万~140万トンの廃プラスチックの市場を失い、600億円以上の取引を失うことになるのである。これだけの量の廃プラスチックを中国に代わって受け入れ可能な市場はおいそれと見つからない。

日本は代替市場を探す、国内工場で廃プラスチックをペレット化して中国へ輸出する、発電焼却を主体とするサーマルリサイクル化による処理で対応することになるが、年間130万~140万トンの廃プラスチックは巨大である。
 
中国の廃プラスチック輸入禁止によって困惑しているのは日本だけではない。上海のニュースサイト「澎湃新聞」は1月3日付で「中国の外国ゴミ輸入禁止に英国は打つ手なし。焼却もできず、処理能力もなし」と題する記事を報じた。(後略)【2月2日  北村豊氏 日経ビジネス】
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対応が難しい問題ではあるでしょうが、自分たちが出すゴミですから何とかしなければならない、なんともできないなら使うのをやめるしかない・・・問題でしょう。

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