孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

韓国  日本を抜いた賃金水準 若者が“ヘル朝鮮”と自虐する厳しさも 最近の女性安全対策

2016-06-06 23:03:04 | 東アジア

【6月5日 朝日GLOBE】

【“今は昔”の日本の所得・賃金水準
今更ながらの話ではありますが、「失われた20年」(あるいは“30年”?)とも言われるように、日本の経済的低迷が続いています。

****日本の1人当たりGDP、香港・イスラエルに抜かれる 14年  過去最低の20位****
国や地域の生産性の高さの目安となる「1人当たり名目国内総生産(GDP)」で、2014年に日本は先進国が加盟する経済協力開発機構(OECD)の34カ国中20位だったことが分かった。

イスラエルに初めて抜かれて前年の19位から順位を1つ下げ、遡れる1970年以来の最低に転落した。各国・地域のGDPをドルに換算して比べるため、円安・ドル高も響いている。

内閣府が25日発表した14年の国民経済計算確報で判明した。日本の1人当たり名目GDPは3万6230ドルとなり、前年から6.0%減った。前年を下回るのは2年連続。円建てのGDPは増えたものの、円の対ドル相場が7.8%下落したため「ドルで付加価値を生む力」が目減りした。
 
日本は1996年に3位だったが、21世紀に入って下がり続けている。14年は主要7カ国(G7)でみてもイタリアをわずかに上回る6位だ。
 
為替レートが異なるので厳密な比較はできないものの、世界銀行などの統計によると、香港にも抜かれ、かつてアジア新興工業経済群(NIES)と呼ばれた同地域やシンガポールより下に位置する。後ろからはBRICs諸国が迫る。中国は8千ドルだが、成長が鈍るなかで8.6%伸びた。(後略)【2015年12月25日 日経】
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アジアで突出するシンガポールはもちろん、香港にも抜かれた日本は、OECDの34カ国中20位ということですが、21位がイタリア、22位がスペイン、23位は韓国です。このあたりの順位も2~3年後には・・・・。

フルタイム労働者の賃金を購買力を基準に比較すると、2014年データでは、すでに日本はスペイン、韓国に抜かれています。

ちなみに、上記賃金比較によれば、バブルがはじける1991年の数字は以下のとおり。
4位 アメリカ(43,508ドル) 9位 日本(36,152ドル) 20位 韓国(24,308ドル)
これが2014年には
2位 アメリカ(57,139ドル) 17位 韓国(36,653ドル) 19位 日本(35,672ドル)
【6月5日 朝日GLOBEより】

順位云々はともかく、アメリカにしても、韓国にしても、その他の国々にしても、賃金が上昇しているのに対し、日本の賃金が減少しているのが特徴的です。(バブルの頃が異常だったとも言えますが)

もとより、暮らしやすさ、幸福度といった類のものは、賃金水準だけで決まるものではなく、多くの要因に影響されるものです。

例えば、経済協力開発機構(OECD)は「より良い暮らし指標(Better Life Index: BLI)」を作成していますが、(1)所得と財産、(2)雇用と収入、(3)住宅、(4)健康状態、(5)仕事と生活のバランス、(6)教育と技能、(7)社会とのつながり、(8)市民参加とガバナンス、(9)環境の質、(10)安全、(11)主観的幸福の11項目で人々の経済状態と生活の質を分析しています。

当然ながら、数値化が困難な各要因を敢えて数値化して、更に異質なそれらを総合的に国際比較するというのは本来無理な話で、あくまでもひとつの参考といったところです。

そのBLIでみても、日本の位置づけは前出賃金水準などと似たようなところです。(数値化しやすい経済指標のウェイトが大きいせいでもあるでしょう)

個人的には、「別にあくせく働かなくても、暮らしやすければそれはそれでいいのでは・・・」とも思いますが、経済的な停滞が続くと、その“暮らしやすさ”にも疑問符が付いてくるのも否定できない事実です。

一時期よく目にした「ワーキングプア」という言葉、最近はあまり見かけませんが「貧困」の実態が改善された訳でもないでしょう。日本でも世界各国同様に「格差」も問題視されています(格差の程度・実態は各国で異なるでしょうが)。

ましてや、将来的には少子高齢化の進展ということで、あまり明るい話はなさそうです。

その一方で、意識のどこかに91年頃までの“経済的にアジアで突出した状況にあった日本”“ジャパン アズ ナンバーワン”といった思いが残っています。
賃金水準でも韓国に追い抜かれたと聞くと、あらためてその環境変化に驚くところもあります。頭を切りかえて現実に向き合う必要があります。

****スペイン、韓国に追い抜かれた日本の賃金****
日本の賃金は、減り続けている。

OECDの統計によると、フルタイムで働く人の平均賃金は1997年の459万円をピークに下がり続け、2014年には400万円を割り込んだ。主要国で、これだけ長く賃金が上がらないのは珍しい。
 
他国の例も見てみよう。厳密な比較は難しいが、同じOECDが、各国の通貨の購買力をもとに計算した統計を出している。

それによると、日本のフルタイム労働者の賃金水準は00年以降、ほぼ横ばいだ。一方、韓国は上昇を続けて07年に日本に並び、今や上回る。

経済の停滞とデフレが続いた日本は、国内総生産(GDP)が伸び悩んできた。ただ、GDPや企業の利益は平均賃金のように減ってはいない。生産性が上がっても、その分け前が働き手に分配されにくくなっているのだ。
 
日本総合研究所調査部長の山田久は「市場の力も、組合の力も、どちらも中途半端になっている」と指摘する。
 
転職市場が発達した米国なら、賃金カットすれば働き手が逃げていくので賃金は下がりにくい。市場の力で、伸びる産業や賃金が高い産業に、人が移る。
 
欧州では、産業別に労使が職種ごとの賃金を決めて労働組合が賃金を守る。
 
日本は職を失うと再就職が難しい。組合も企業別で弱い。そのため賃金よりも、雇用が優先される。その結果、「失業率は上がりにくいけれど、賃金は下がりやすい」ことになったというわけだ。(後略)【6月5日 朝日GLOBE】
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雇用維持を優先した結果、失業率は低いが賃金は伸びない。先述のように「別にあくせく働かなくても、暮らしやすければそれはそれでいいのでは・・・」とも思えますが、経済のダイナミズムは失われ、長期的には“ジリ貧”ということにもなります。

日本に追いついた韓国 厳しい経済状況も
一方、賃金水準で日本に追いついた韓国ではありますが、韓国ネットで自虐的に使われる“ヘル朝鮮”という言葉に象徴されるように、経済的にみても(「サムスン」などを除けば)かなり厳しい状況にもあるようです。

****ヘル朝鮮****
韓国の主に20-30歳代の若者たちが]韓国社会の生きづらさを「地獄のような朝鮮」と自嘲するために使うスラング。2015年にSNSから広がり、その後メディアや文化人も頻繁に言及する流行語となった。

この言葉が流行した背景
流行の背景には、韓国の超競争社会による雇用不安と、縁故採用がはびこる不公正な就職状況がある。

韓国では過酷な受験競争を経て大学を出てもすぐ就職できないことは珍しくなく、2014年時点で20代の就業率は57.4%だった。高学歴層の就職競争は特に熾烈である。

反面、富裕層やエリート官僚による縁故採用がなくならず、政治的なスキャンダルにもなっている。

結局、カネもコネも無い「第三身分」は勤勉に努力したところで安定したキャリアデザインを描けないという不条理な現実に対する憤りが、自国を否定する「ヘル朝鮮」という言葉への若者たちの共感を生んだ。【ウィキペディア】
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若者の就職難については以下のようにも。

****アジアで稼ごう****
・・・・一方で、韓国では若者の就職難が深刻だ。 14年の大卒者の就職率は54.8%にとどまる。そこで、韓国政府は職にあぶれた若者たちが日本を含めた海外で職に就けるよう後押ししている。
 
入社までの研修費用は韓国政府が持ち、本人には支度金約20万~40万円が、雇用企業には約20万~30万円が支給される制度が13年にできた。

日本向けの枠は昨年まで200人で、今年から500人に増やした。事業の一部を支援するパソナ・コリアの担当者キム・テヒョンは「韓国で高賃金を得られなかった層が日本に流れ込み、日本人と競合する構図です」と話す。(後略)【6月5日 朝日GLOBE】
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そうした厳しい韓国社会の一端を示す意識でしょうか。

****韓国の会社員、実際の退職年齢は51歳!?****
2016年6月3日、韓国・朝鮮日報によると、韓国の会社員が考える退職年齢は51歳であることが分かった。

就職ポータルサイト・ジョブコリアが5月26〜31日に会社員1405人(男性772人、女性633)を対象に調査した結果、自分の退職年齢を男性は51.7歳、女性は49.9歳と考えていることが分かった。

全体の平均は50.9歳になる。これは、昨年3月に会社員1636人を対象に実施した同様の調査結果52.1歳に比べ1.2歳低年齢化している。

職級別にみると、一般社員51.7歳、課長50.2歳、次長50.1歳、部長51.4歳、役員51.3歳、CEO53歳などだった。

このような状況の背景には、会社員が自分の雇用状況に不安を感じていることがある。調査の中で「現在の雇用状況に不安を感じている」と回答した人は全体の66%(928人)で、「不安を感じていない」と回答した人は全体の7.8%(110人)にすぎなかった。

この報道に、韓国のネットユーザーからさまざまなコメントが寄せられている。

「40代で早期退職するのが当たり前になっている」
「50歳そこそこで退職したら、その後どうするんだ」
「51歳まであと6年しか残ってない」

「法的に定めた定年はそんなに若かったか?(※法定定年年齢は60歳)」
「公務員はちゃんと60歳まで働けるってのに…」
「政界では70代も普通なのに…」

「いつまでも働ける職場なんて、労働者にとってはブラックな職場しかない」
「長く職場にとどまるのが必ずしも良いことではない。組織に迷惑をかけながら居座るのは本人の健康にもよくない」
「できるだけ長い間他人に使われて、それで一生を終えることを考えるより、自分で事業をすることを考えたほうがいい」【6月6日 Record China】
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退職後はどうするのか・・・と言えば、軽トラックで自営業を始めるとか。

****韓国の人気車種に異変!一番売れてる車は・・・・ネット「悲しい現実****
2016年6月6日、韓国・SBSテレビはこのほど、韓国で今年に入り一番売れている車が、普通乗用車でもSUVでもない、「誰もが思いもしない意外な車種だった」と報じた。

今年に入り2月を除いて4カ月不動の1位を獲得したのは、現代(ヒュンダイ)自動車の1トントラック「ポーター」。4、5年前から人気上位にたびたび食い込んではいたものの、今回は2位に大きな差をつけた圧倒的な1位だという。

この不意の人気上昇には大きく2つの理由がある。1つは今後予想される販売価格の値上げだ。韓国ではこのところ深刻化している大気汚染対策のため、今年冬ごろにディーゼル車への規制が強化される見込みだ。

もう1つの理由は、トラックを使って商売をしようという自営業者の増加。不況で職を失った人が老後に備えるために自営業を始める例が少なくないのだ。

韓国の就職関連企業が最近行った調査によると、「自身が勤務する会社の展望」を聞いた質問に、全体の3分の2が「うちの会社には未来がない」と悲観的な回答をした。

また、韓国の法定の退職年齢は60歳だが、「60歳まで勤め上げられる」と考えている人はわずか19%、自己都合にしろ会社都合にしろ、「自分が退職することになると思う年齢」の平均は51歳だった。

こうしたサラリーマンの不安が「ポーター」を人気1位に押し上げたとも言える。SBSは「全世界の先進国のうち、『ポーター』が1位の国はない」と伝えた。

これについて韓国のネットユーザーは次のようなコメントを寄せている。

「“ヘル朝鮮”の悲しい現実だ」(中略)
「食べていくために必要な車」(後略)【6月6日 Record China】
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政府・当局が腐心する女性安全対策
お隣の国ではありますが、政治的対立や嫌韓的な論議では見えてこない社会の在り様も。
最近目にした、韓国の女性問題(というか、女性の安全をめぐる問題)に関する記事が2件。

****韓国で女性の殺害事件、政府が無料の帰宅エスコートサービス****
2016年6月2日、央広網によると、韓国中心部でこのほど起きた女性の殺害事件を受け、韓国政府は夜間に帰宅する女性のエスコートサービスを無料にする案を打ち出した。

韓国では現在、全国の公園などの公衆トイレに安全ブザーを設置するなど、女性の安全を守るための設備の整備に力をいれている。中でも注目を集めているのは、女性の帰宅エスコートサービス。ソウル市内25カ所に連絡センターを設置。夜10時半から深夜1時ごろまで「夜道が危ない」と感じた場合は、電話すれば自宅まで一緒に帰ってくれる人を派遣するサービスも導入されている。

エスコートサービスは、急に体調が悪くなった人や自分で歩けなくなった人も利用可能。これまでにもソウル市の女性が、夜中のコンビニエンスストアで泥酔し、立ち上がれなくなった男性を見つけ、通報して家まで送り届けてもらったという。【6月3日 Record china】
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“韓国中心部でこのほど起きた女性の殺害事件”というのは、“ソウル市の江南駅近くにある男女共用のトイレで先月17日、23歳の女性が見知らぬ男によって殺害されるという事件が起きた。男は警察の取り調べに対し、「いつも女性から無視されていたのでやった」と供述。”【6月2日 Record China】と思われます。

それにしても、政府が無料の帰宅エスコートサービスというのは、手厚いサービスと言うべきか、そんなものが必要とされることを憂うべきか・・・。

****韓国警察の“行き過ぎた”女性安全対策に、韓国ネットの反応は****
2016年6月2日、韓国メディア・韓国経済によると、韓国でこのところ女性が被害者となる凶悪事件が相次いでいることを受け、警察が男性対象に打ち出した勧告が物議を醸している。

ソウル市内の一部の警察署が最近、各管内のマンション住民や宅配・出前配達員の男性に求めた内容とは、マンションのエレベーター内でマスクやヘルメットの着用を控えてほしいというもの。

女性が襲われる事件が相次いでいることを受けて警察が独自に聞き取り調査を実施、女性たちが、マスクなどで顔を隠した見知らぬ男性とエレベーターに同乗することを最も恐れているとの事実を把握したためだ。

警察署長の一人は「住民らの意見を聞き、女性らがエレベーター内でどれだけ大きな恐怖を感じているか分かった」とし、この措置が事件防止に役立つと述べた。

しかし、一日中バイクに乗りヘルメットをかぶる宅配業者や出前配達員からの不満の声は大きい。また、警察内部からも「大気汚染やインフルエンザなどでマスクを外せない男性もいるだろうに」など、行き過ぎた措置との指摘も上がっている。

これについて、韓国のネットユーザーから多数のコメントが寄せられた。

「そんなことしてないで処罰を強化すべきだ。凶悪犯が町を歩いてるのに、安心なんてできるわけない」
「そのうち男は名札を付けて歩くことになる」
「大気汚染はサバとサムギョプサル(豚の三枚肉)のせい、今度はマスクにも責任を押し付けるのか」(後略)【6月5日 Record China】
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世論にしても、行政にしても、敏感に大きく反応するあたりは国民性でしょうか。

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