(【6月3日 テレ朝news】)
【総選挙は予測通り与党圧勝 進む分断】
「世界最大の民主主義国」とされるインドでは投票所を約100万カ所に設置、約1500万人をスタッフを配置して4月19日から6月1日までの約1か月半の期間に、州や地域ごとに7回に分けて投票が行われてきましたが、あす4日に開票が行われます
出口調査では、選挙前の予測どおりモディ首相率いる与党「インド人民党(BJP)」の圧勝が示されています。
****インド総選挙、モディ氏与党連合が圧勝へ 出口調査****
インドで1日、下院総選挙の投票が終了した。テレビの出口調査によると、3期目を目指すモディ首相のインド人民党(BJP)を中心とする与党連合が過半数を大きく上回る勢いだ。
大半の出口調査は与党連合「国民民主同盟(NDA)」が下院543議席の過半数272議席を大幅に上回り、3分の2以上を獲得する可能性があると予測している。
5つの主要な出口調査のまとめによると、NDAは353─401議席を獲得する可能性がある。2019年の総選挙でNDAは353議席を獲得し、うち303議席をBJPが占めた。
5つの調査のうち3つは、BJP単独の議席数が19年の303を上回る可能性があると予測している。
ラフル・ガンジー氏の国民会議派を中心とする野党連合は125─182議席を獲得する見通し。
モディ氏は投票終了後、出口調査には言及せずに勝利を主張。「国民がNDA政権再選へ記録的な数の票を投じたと自信を持って言える」と述べた。【6月3日 ロイター】
**********************
インド・モディ政権の抱える問題については、5月13日ブログ“インドの民主主義は病んでいる 「世界最大の選挙」を実施中も、その民主主義には疑念も”でも取り上げましたので今回は触れませんが、一つだけ関連記事を。
****分断広がるインド社会、モスク跡地にヒンズー寺院に「夢がかなった」「悪夢だ」****
(中略)モディ政権はヒンズー教の理念による国家統合を目指し、国内では少数派イスラム教徒が強く反発。インドの世俗主義が揺らぐ中、モスク(イスラム教礼拝所)跡地に1月、ヒンズー教寺院が建立された北部ウッタルプラデシュ州アヨディヤでは社会の分断が垣間見えた。
「ヒンズー教徒の夢」5カ月で1500万人
「ヒンズー教徒の夢がかなった。数百年間、この地に寺院を望んでいた」。寺院前で入場を待っていたスダ・シャルマさん(50)は寺院建立を歓迎した。シャルマさんは家族5人で自宅からバスを乗り継いで20時間以上かけてアヨディヤを訪れたという。
気温が40度を超える中、5月下旬のこの日、数万人の信者が集まった。1月の建立以来、寺院の来訪者は既に1500万人を超えた。「夢がかなった」とは大げさではなさそうだ。
アヨディヤでは16世紀、イスラム系王朝のムガル帝国がモスクを建立した。ヒンズー教徒団体は20世紀に入り、モスクのある地点がヒンズー教の聖地だと主張。1992年に一部信者が暴徒化してモスクを破壊し、全土で2千人以上が死亡する暴動に発展した。
2014年発足のモディ政権はヒンズー教徒の利益を最重要視し、アヨディヤでの寺院建立を公約に掲げた。選挙に間に合わせるように今年1月に行われた落成式典でモディ氏は「何千年経っても、人々はこの日を忘れないだろう」と万感の思いを込めた。「人々」とはヒンズー教徒を指すことは明らかだ。
イスラム教徒は「侵入者」
「古くからのモスクはもう再建されない。悪夢だ」。寺院周辺のにぎわいの一方、イスラム教徒の男性は暗い表情を浮かべた。取材に応じた地元イスラム教団体幹部のモハマド・カドリさん(32)は、「インドのイスラム教徒の未来は危険にさらされている」と憂慮した。
カドリさんによると、アヨディヤには寺院建立前からヒンズー教徒の流入が進むと同時に、イスラム教徒への迫害が広がったという。BJPの政治家によって、地域のモスクへの水の供給が遮断され、ヒンズー教徒による襲撃事件も相次ぐ。何者かによる暴行を2度受けたカドリさんは「ヒンズー教徒は聖地アヨディヤに住むイスラム教徒が邪魔で仕方がない」と話した。
モディ氏はヒンズー教徒を優遇する一方、イスラム教徒を軽視するかのような姿勢を示す。今年3月には移民に市民権を与える「市民権改正法」を施行したが、イスラム教徒は対象外とし、「宗教的差別だ」との批判が上がった。モディ氏は今回の選挙の集会でイスラム教徒を「侵入者」と呼んで、批判している。
モディ氏の姿勢に共鳴するかのように国内では反イスラム感情が高まり、ヒンズー教徒が神聖視する牛を売っていたイスラム教徒が殺害される事件も相次ぐ。米ピュー・リサーチ・センターの調査(21年発表)によると、過去1年で宗教的な差別を受けたと答えたイスラム教徒は21%で、地域によっては4割に上った。
カドリさんは選挙でモディ氏が圧倒的支持を受け、3期目に入ることを警戒する。「この政府が続けば、イスラム教徒への嫌がらせは倍増するだろう。憲法で保障された人権の尊重と反する」。その上で、過度なヒンズー至上主義が「世界最大の民主主義国」としての看板を傷つけかねないと訴えた。【6月1日 産経】
********************
【猛烈な熱波 選挙スタッフも大勢が熱中症で死亡】
モディ政権の「ヒンズー至上主義」についても再三取り上げてきていますので、今回はパス。
上記記事で気になったのは政治とは全く別の話で、“気温が40度を超える中、5月下旬のこの日、数万人の信者が集まった”という箇所。
インドは現在猛烈な熱波のさなかにあって、連日50℃前後の気温が報じられています。
そうした状況で、選挙スタッフも大勢が熱中症で死亡しているとか。
****総選挙中のインドで記録的熱波 投票所スタッフなど61人死亡****
総選挙の開票が4日に始まるインドは記録的な熱波に見舞われ、1日に投票所のスタッフ33人が熱中症で死亡したとCNNが報じました。
インドの気象当局によりますと、首都ニューデリーでは熱波の影響で先月29日に最高気温49.1度を記録するなど各地で猛暑が続いています。
CNNによりますと、インド北部のウッタル・プラデシュ州では総選挙の投票最終日となった今月1日に投票所のスタッフ33人が熱中症で死亡しました。
先月24日以降では少なくとも61人が熱中症や脱水症状などで死亡し、このうち43人は投票所のスタッフなど選挙の関係者だったということです。
気象当局は今後、数日間、熱波が続く可能性があるとして注意を呼び掛けています。【6月3日 テレ朝news】
インドの気象当局によりますと、首都ニューデリーでは熱波の影響で先月29日に最高気温49.1度を記録するなど各地で猛暑が続いています。
CNNによりますと、インド北部のウッタル・プラデシュ州では総選挙の投票最終日となった今月1日に投票所のスタッフ33人が熱中症で死亡しました。
先月24日以降では少なくとも61人が熱中症や脱水症状などで死亡し、このうち43人は投票所のスタッフなど選挙の関係者だったということです。
気象当局は今後、数日間、熱波が続く可能性があるとして注意を呼び掛けています。【6月3日 テレ朝news】
********************
ウッタル・プラデシュ州だけで1日で投票所のスタッフ33人が熱中症で死亡・・・日本だったら選挙の中止も俎上に上がると推測されるような大変な事態です。
しかし、どうして投票所スタッフだけがこんな大勢亡くなっているのか?
全くの想像ですが、周囲の目がある投票所ではスタッフの異常がすぐに察知されますので、確認もしやすいのでしょう。逆に言えば、周囲の目が行き届かない住民の自宅などでは、表沙汰になることなくこの何十倍もの犠牲者が出ているのかも。
インドの高温は想像を絶するレベルにあります。
****インド首都で気温49.9度 観測史上最高****
インドの首都ニューデリーで28日、観測史上最高気温となる49.9度が記録された。インド気象局によると同日の予想最高気温を9度上回った。予報では29日の気温も同程度まで上がるとみられ、警報が発令されている。
ニューデリー当局は、人口3000万を超える首都の水不足についても警告している。
主要紙インディアン・エクスプレスによると、アティシ・マリーナ水資源相は、多くの地域で水の供給を減らし、1日当たり15〜20分しか供給されていない地域に給水するなど、さまざまな対策を講じていると主張している。
大方の見方では、猛暑をもたらしている要因は北西部ラジャスタン州から吹いてくる熱風だ。同州の28日の気温は、国内最高の50.5度を記録した。
同州の砂漠地帯ファローディでは、2016年にインド観測史上最高の51度が記録されている。 【5月29日 AFP】******************
****「顔を叩かれているような暑さ」インド首都で最高気温49.1℃を観測 熱波が影響****
熱波の影響で猛烈な暑さに見舞われているインド。地元メディアによると、首都ニューデリーでは29日、最高気温49.1℃を観測しました。5月は1年で最も暑いということですが…。
市民
「この熱波で気温が非常に上がっています。外に出ると、誰かに顔を叩かれているような暑さです。この街で生活するのは難しくなりました」
こちらは学校の教室で横になっている生徒。先生が顔に水をかけたり、生徒らがまわりで必死にあおいでいます。ロイター通信によると、生徒は熱中症になり、病院に搬送されたということですが、命に別状はなかったということです。
地元メディアによると、インド全土で3月以降、熱中症のため60人が死亡し1万6344人が搬送されたとみられ、当局が注意を呼びかけています。
インド気象局によると、今後、徐々に気温は下がるということですが、人々は川に入ったり、こまめな水分補給をしたりして危険な暑さをしのいでいます。
また、ニューデリーなどを管轄する州政府は水を浪費しないよう呼びかけていて、家庭用の水道を商業目的で使用した場合、2000ルピー、およそ3700円の罰金を科すと発表しています。【5月30日 TBS NEWS DIG】
市民
「この熱波で気温が非常に上がっています。外に出ると、誰かに顔を叩かれているような暑さです。この街で生活するのは難しくなりました」
こちらは学校の教室で横になっている生徒。先生が顔に水をかけたり、生徒らがまわりで必死にあおいでいます。ロイター通信によると、生徒は熱中症になり、病院に搬送されたということですが、命に別状はなかったということです。
地元メディアによると、インド全土で3月以降、熱中症のため60人が死亡し1万6344人が搬送されたとみられ、当局が注意を呼びかけています。
インド気象局によると、今後、徐々に気温は下がるということですが、人々は川に入ったり、こまめな水分補給をしたりして危険な暑さをしのいでいます。
また、ニューデリーなどを管轄する州政府は水を浪費しないよう呼びかけていて、家庭用の水道を商業目的で使用した場合、2000ルピー、およそ3700円の罰金を科すと発表しています。【5月30日 TBS NEWS DIG】
エアコンもないような部屋で50℃近くになったら・・・熱中症で死者が出るのは無理からぬところでしょう。
もっとも、あまりの熱さのせいか、測定値も定かでない状況。
****インド首都、最高気温52.9度は観測装置の「不具合」か****
インド気象局(IMD)は29日、首都ニューデリー郊外で同日記録された観測史上最高気温に当たる52.9度について、観測装置の不具合によるものである可能性があると発表した。
IMDは声明で、デリー郊外ムンゲシュプール)の観測所で記録された52.9度は「他の観測所と比べて異常値だった」と説明。センサーの不具合か局地的な要因によるものである可能性を疑い調査中だと述べた。
IMDではデリー首都圏全域の気温や降雨状況を観測するために、主要な気象観測所5か所と自動観測所15か所を設置している。ムンゲシュプール以外の観測所では、29日の最高気温は45.2~49.1度だった。
28日には、ムンゲシュプールとナレラの観測所で49.9度が記録されたが、これらの数値にも問題があるかどうかは明らかになっていない。【5月30日 AFP】 AFPBB News
********************
【気候変動が熱波を劇化】
この高温はインドだけでなく、4月から5月初頭にかけアジア各地で記録されています。
背景には、やはり気候変動の影響が想定されるようです。
****気候変動がアジアの熱波を劇化*****
4月から5月初頭にかけ、アジアにおいて、西はイスラエル・パレスチナ・レバノン・シリア、東はタイ・ベトナム・フィリピンといった国々を40℃越えの日が続く記録的な熱波が襲いました。
熱波はまた、農業部門で生産・収量減といった負のインパクトをもたらす一方、複数の国は数日間の学級閉鎖を余儀なくされ、数百万の学生が教育の機会を失いました。
5月14日、極端現象と気候変動の因果関係を分析するWorld Weather Attribution (WWA)は、気候変動が、4月から5月初頭にかけてアジアの数百万人の人々を襲った熱波を劇化させたと報告しました。
近年、南アジアにおいて、モンスーン入り前の極端な熱波の頻度が増す傾向にあります。これまでもWWAは、2022年インド・パキスタンの乾燥した熱波や2023年インド・バングラデッシュ・ラオス・タイでの湿度を伴った熱波は、気候変動によって30倍確率が高まり、熱の強度も高まったことを報告しています。
近年、南アジアにおいて、モンスーン入り前の極端な熱波の頻度が増す傾向にあります。これまでもWWAは、2022年インド・パキスタンの乾燥した熱波や2023年インド・バングラデッシュ・ラオス・タイでの湿度を伴った熱波は、気候変動によって30倍確率が高まり、熱の強度も高まったことを報告しています。
産業革命期と比べて人類による経済活動により1.2℃温暖化した今日の気候の下では、今回のような極端な熱波も稀な出来事ではありません。
西アジアでは、1年に今回のような熱波が起こる確率は10%、あるいは10年に一度です。フィリピンでも年に10%程度、エルニーニョ現象で10年に1度、エルニーニョ現象でなければ20年に1度と推定されます。南アジア広域では、今回のような4月の高温は比較的稀で、1年に起こる確率は3%、あるいは30年に1度の出来事に匹敵します。
世界が産業革命期比で2℃温暖化した場合、極端な熱波が起こる可能性は、西アジアでは2倍、フィリピンでは5倍になると予想され、気温自体が西アジアで1度、フィリピンで0.7℃高くなると見込まれています。
アジアで過去数年にわたり毎年のように繰り返される熱波及び熱波に伴うインパクトにより、多くの国にとって熱波が深刻な災害であることの認知度が高まり、適切なガイドラインが策定されるようになっています。それだけでなく、熱波に対する緊急救援体制構築に向けた、セクターを超えた連携戦略が必要となるでしょう。【5月21日 国際農研】
***********************
次第に、居住に適さない地域、農業ができない地域も増えてくるのでしょう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます