(1月5日 南スーダン・ジョングレイ州 ロウ・ヌエル族の襲撃を避けて避難したムルレの人々 “”より By unpeacekeeping http://www.flickr.com/photos/unpeacekeeping/6648334449/ )
【「戦争をせざるを得ない状況になればする」】
昨年7月にスーダンからの分離独立を果たした南スーダン共和国。その財政の唯一の柱は石油です。
しかし、南スーダン産の原油の輸出にはスーダンを通るパイプラインやスーダンの輸出港を使用する必要がありますが、その使用料をめぐって両国の対立が過熱。
スーダンが原油を差し押さえたことに対抗して、南スーダン政府は1月20日、同国での原油の生産を段階的に停止すると発表しています。
もちろん、南スーダン側も対策を考えていない訳ではなく、スーダンを経由しないケニアへの輸送ルートの建設がケニアとの間で合意されています。
*****南スーダン:ケニアと石油パイプライン建設に合意*****
昨年7月にスーダンから分離独立した南スーダンと、南隣に位置するケニアの両国政府が今月24日、南スーダンからインド洋に面するケニア東部ラムへ通じる石油パイプライン建設に合意する覚書に署名した。
南スーダンからの石油輸出ルートは現在、北のスーダンを通る既存パイプラインに限定され、原油権益の分配を巡る南北スーダン間の対立が続いている。南スーダンは、新パイプライン建設でスーダンからの依存脱却を目指す意向を示した形だ。
AFP通信によると、覚書は南スーダンからケニアへ石油パイプラインと光ファイバーケーブルを建設するという内容。南スーダンの首都ジュバでキール南スーダン大統領とケニアのオディンガ首相が立ち会い、署名。建設時期や受注企業は明らかにされていない。
国連平和維持活動(PKO)のため陸上自衛隊先遣隊が入った南スーダンは、独立以前の南北スーダン全体の約4分の3にあたる豊富な油田を抱える。南北内戦終結の包括和平合意(05年)でいったんは権益を南北で折半すると決めたが、南スーダン独立後、北部スーダン側にあるパイプラインや輸出港の使用料などを巡る交渉が暗礁に乗り上げている。【1月30日 毎日】
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ただ、実際に稼働するのはしばらく先の話ですので、当面はスーダンとの関係改善が急務となりますが、スーダンとの間には、パイプラインや輸出港の使用料だけでなく、分離独立に伴う債務の分配方法、国境線、スーダンに住む南スーダン出身者の国籍問題、反体制派への支援、南北の境界にある油田地帯アビエの帰属問題.など難問が山積しています。
スーダン・バシル大統領側からは、「戦争をせざるを得ない状況になればする」といった穏やかならざる発言も出ています。
****スーダン大統領、南スーダンとの戦争「ありうる」****
スーダンのバシル大統領は3日、原油を巡って火種を抱える南スーダンとの戦争の可能性について「ありえる」と、国営テレビのインタビューで発言した。AP通信などが報じた。
バシル大統領は「今の雰囲気は、平和というよりも戦争だ。戦争をせざるを得ない状況になればする」と述べ、原油問題の解決に南スーダンが歩み寄らないと批判した。一方で「(戦争を)主導的には行わない」とした。
南スーダンは20年以上の内戦を経てスーダンから昨年7月に分離独立。だが、国境付近の産油地帯の帰属や原油利益の配分が未解決になっている。南スーダンの原油は、スーダンを通るパイプラインを通って輸出されてきた。南スーダンは1月末、スーダンが法外な輸送料を要求しているとして原油の生産を全面停止。スーダンを「泥棒」と断じた。さらに独自のパイプライン建設の計画を明らかにしたため、両国の緊張が一気に高まった。【2月4日 朝日】
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“もっとも、長年の内戦を経てようやく分離を果たした南北スーダンが、再び本格的な戦争に突入する可能性は低いだろう。過去50年の大半を戦闘に費やしてきた両国は、戦争がもたらす人的・経済的犠牲の大きさを熟知している”【1月31日 Newsweek】というのが、常識的な判断ではありますが・・・・。
なお、両国関係の緊張で、スーダン政府軍と南スーダン支持の反政府勢力の間で武力衝突が続いているスーダン南部エリアでは、混乱による飢餓の発生も懸念されています。
****飢餓、50万人に影響も=スーダン南部地域****
米国連代表部は16日、安保理議長国の南アフリカに書簡を送り、南スーダンと国境を接するスーダンの南コルドファン、青ナイル両州で、武力衝突により飢餓の危険が高まり、50万人に影響が出る恐れがあると指摘した。安保理外交筋が明らかにした。
書簡は、飢餓の深刻度を示す5段階のうち両州では3月にも最も深刻なレベルに次ぐ「緊急事態」へと悪化するだろうと強調。人道援助機関が現地で自由に活動できるようにする必要性を訴えた。両州では政府軍と南スーダン系武装勢力の衝突が続いている。【1月17日 時事】
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【犠牲者の規模もわからず、救済も困難】
南スーダンが抱える問題は、こうしたスーダンとの緊張関係だけではありません。
以前も取り上げたように、家畜の強奪や村人の誘拐をめぐり部族衝突が続いています。
****南スーダンでまた民族衝突、51人死亡****
家畜の強奪や村人の誘拐をめぐり民族衝突が激化している南スーダン東部ジョングレイ州で16日夜、新たな襲撃があり、少なくとも51人が死亡した。
知事によると、武装集団が夜間に同州北部ドゥク・パディエ村を襲撃し、家々に火を付け、女性と子供と高齢者を中心に51人を殺害した。また、負傷者22人が首都ジュバに避難したという。
南スーダン政府は同州に「人道危機」を宣言している。また国連は、一連の民族衝突で6万人が支援を必要としているとして、緊急援助に乗り出した。【1月18日 AFP】
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この地域では、ムルレ族とロウ・ヌエル族の間で、牛の強奪、報復の襲撃が繰り返されています。
1月11日にも、ロウ・ヌエルが住む村をムルレ60人ほどが武装して襲撃し、ウシ2万頭を連れ去ったと報じられています。この襲撃で57人が死亡、53人が負傷したそうですが、死者の大半は女性と子どもで、男性は11人だけだったとか。【1月13日 AFP】
1月初めには、ロウ・ヌエルの武装した若者最大8000人がムルレの住むピボル郡を襲撃し、3000人以上を殺害したとの驚くべき報告もありましたが、後に、国連南スーダン派遣団のジョンソン特別代表は、誤報だったとみられるとこれを否定しています。
ただ、3000人規模の大虐殺はなかったとしても、報復の連鎖で相当数の犠牲者が出ていることは間違いないようです。
3000人規模の虐殺があったかどうかについて、“誤報だったとみられる”といった一片の記事ですまされるあたり、1月7日ブログ「南スーダン、牛争いから大量虐殺 アフリカで繰り返される虐殺」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120107)で書いたように、“ゴリラ殺害のニュース以下”の扱いです。
被害規模がわからないなど情報も正確に伝わらないぐらいですので、救援活動も難しい状況です。
****民族紛争激化で支援届かず 南スーダン****
■犠牲者の数つかめず
ジョングレイ州では昨年12月末、ロウ・ヌエル族の武装集団数千人がムルレ族の村々を襲撃したことを契機に双方の応酬が激化した。南スーダン政府は同州が「人道危機」の状況にあると宣言。国連が推計する人道支援が必要な市民は12万人に上る。
日本の陸上自衛隊は治安確保という制約があるため、同州での活動は想定されていない。120キロ以上離れ、比較的治安が安定しているジュバ周辺でインフラ整備を行う。
一方、国連南スーダン派遣団(UNMISS)は、全武装部隊の半数の3千人を同州に派遣し、事態の収拾に努めている。ただ、同州は面積が約12万平方キロメートル(日本の約3分の1、バングラデシュとほぼ同じ)の広さで、道路などの交通インフラはほとんどなく、難航している。
昨年末から3千人以上が死亡したとの情報もあるが真偽は不明だ。ヒルデ・ジョンソン事務総長特別代表によると、死者数の規模は把握できないという。
ジョンソン氏は「武装集団は昼夜問わず、どこに現れるかわからない。市民を保護するのが極めて困難な状況だ。すべて防ぐには、国連でかつて認められたことのない軍事力が必要だ」と語った。【1月28日 朝日】
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混迷する南スーダン情勢にあって、日本陸自のPKOが社会の安定に少しでも貢献できれば幸いですが・・・。
万一、日本のPKO部隊が混乱に巻き込まれた場合、どのように対応するかについても考えておく必要があります。ルワンダのジェノサイド、スレブレニツァの虐殺といった事例もあります。
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