孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  外出制限の緩和・経済再開を急ぐトランプ大統領  運用は州一任  NY州知事との「ケンカ」

2020-04-18 22:38:21 | アメリカ

(州政府による「極端な隔離」な抗議して州議会議事堂前に集まった人たち(15日、ミシガン州ランシング)【4月18日 BBC】・・・て言うか、皆自動小銃抱えていますね・・・・トランプ氏は連続ツイートで、「ミネソタを解放しろ」、「ミシガンを解放しろ」、「ヴァージニアを解放して、みんなの偉大な修正第2条を守れ。攻撃されてる」と書いています(太字で強調した部分は、原文では大文字で強調)。どうしてコロナと銃規制がドッキングするのか・・・・)

【感染増加の傾向がみられない地域から、3段階で外出禁止などの対策を緩和 運用は州に一任】
深刻な新型コロナ感染拡大が続くアメリカですが、トランプ大統領は17日の記者会見で、新型コロナウイルスによる国内の死者数について、当初、10万人から24万人にのぼるとされていた予測を大幅に下方修正し、6万人から6万5000人になるという見通しを示しました。

これについてトランプ大統領は、「われわれが正しい対応をしたことで、何百万人もの命が救われている」と述べ、トランプ政権の対応による成果だと強調しました。【4月18日 NHKより】

ものは言い様というか・・・、この人にかかると、6万人の犠牲者も自分の選挙向け「成果」になってしまうようです。
初動対応の遅れ・無策が今の感染拡大を招いたという批判をなんとか払拭したい・・・ということなのでしょう。

トランプ大統領が批判払拭のためにこだわるのが、市民に犠牲を強いる制限をなるべく早く緩和して、早期に経済を再開させること。

もちろん、そのこと自体は政治指導者として当然の願望ですし、国民としても実現することを切実に望んでいます。
問題は、規制緩和の裏付けがあるのか、時期が適当か?、経済再開のリスクをどのように評価したのか?・・・ということです。

とかく選挙対策の国民受けを狙った言動が目立つトランプ大統領ですが、この判断を誤ったら「何百万人もの命」にかかわってきます。いつものように「まあ、トランプだからね・・・」では済まされません。

****トランプ大統領が経済再開へ指針 感染少ない地域から3段階で****
トランプ米大統領は16日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染症対策で停滞した経済活動を再開するための連邦政府の指針を発表した。

感染増加の傾向がみられない地域から、3段階で外出禁止などの対策を緩和する。ただ、実際の指針運用は州などの地方当局に任せるため、指針策定の影響は限定的となる。
 
トランプ氏は「州が段階的に熟慮された方法をとれるようになる」と述べ、政府指針をどう運用するかは各州に一任する考えを示した。同氏は早期の経済再開を迫り、政府指針に州知事を従わせる構えをみせていたが、姿勢を転換した。
 
新指針の第1段階は、感染確認者が減少傾向で、医療機関に重症者の対応余力があるといった条件を達成した地域が対象となる。客席間を十分に離すなどの対策をとった大型飲食店や映画館の営業再開を認め、企業や事業所は、可能な限りテレワークを実施しながら必要な出社が可能になる。
 
さらに2週間後、感染増加の兆候がなければ、旅行や学校が再開できる第2段階に入る。その2週間後も感染収束の傾向に変化がなければ、第3段階として、事業所への出社を含む企業活動の通常稼働を認め、バーなどの小型店も営業できるようになる。
 
感染症対策の緩和は、各州で十分な感染の検査体制が整備できていることが前提となる。トランプ氏は第1段階について、条件が整った地域は「明日にも」可能だと述べた。一部の州はすでに独自の経済再開指針の策定に動いている。【4月17日 産経】
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この方針に沿って、テキサス州知事(共和党)が経済再開を目指しています。

****米テキサス州、いち早い経済再開を模索 検査に遅れも****
米テキサス州のアボット知事は17日、5月上旬をめどに一部の民間企業の再開を目指す方針を表明した。

方針策定に当たっては、事業再開を強く希望する経済界と、早まった再開は犠牲者を出しかねないと警告する医療専門家やエコノミストとの間で慎重なバランスを取る必要に迫られた。

最終的に、アボット氏は穏健なアプローチを採用。完全再開に踏み切るのではなく、医療や経済の専門家の助言を参考にしつつ、緩やかな経済再開に向けて段階的な措置を取る考えを表明した。

企業活動の再開に向けた計画を発表するのは今月27日となる。アボット氏は、計画の内容は「データと医師」が決めると強調している。

それでも、アボット氏は大規模州の知事の中でいち早く、自宅待機命令の解除に向けた具体的な日程を発表する形となった。(中略)

テキサス州は企業寄りの姿勢で知られ、一部ではアボット氏がもっと積極的な再開に踏み切るのではないかとの予測もあった。テキサス州の経済規模は1兆8000億ドルとカリフォルニア州に次いで米国2位だが、原油価格の下落にパンデミック(世界的流行)が重なり特に打撃が大きい。

アボット氏が自宅待機命令を出したのはわずか2週間前。テキサス州は依然、新型コロナウイルスの検査数で他の大規模州に大きく水をあけられている。

地元保健当局によると、人口2900万人の同州において、検査の実施回数は17日時点で16万9536回にとどまる。感染者は1万7371人、死者は428人に上っている。【4月18日 CNN】
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【制限措置に不満を募らせる市民を煽るトランプ大統領】
この新型コロナ対策も、共和・民主、トランプ・反トランプの「分断」を反映した形になっており、トランプ支持勢力からは早期の規制緩和を求める動きが表面化しています。

****外出禁止にうんざり、「反撃」に出る米国市民 ****
新型コロナウイルスの感染拡大を受けた外出禁止などの制限措置に不満を抱く米国市民の間で、制限緩和や経済活動の再開を州知事に訴える動きが目立ち始めた。 
 
ケンタッキー州のアンディ・ベシア知事(民主)ら、一部の知事はデモ参加者を非難。ベシア氏は会見で、経済活動を再開すれば「確実に人々が死ぬ」と述べた。 
 
米国ではコロナ流行を受けた封鎖措置が続く1カ月間で、新規失業保険申請件数が約2200万人と記録的な水準に達した。強制的な事業停止に対して、企業従業員や個人事業主の間では不満が高まっている。 
 
ミシガン州ランシングでは15日、大規模な抗議集会が開かれた。開催に関わったグループのボランティア、マット・シーリー氏はインタビューで「命を救うために人々を家の中に閉じ込めておけば経済が崩壊し、結局人の命が犠牲になる」と語った。 

 
今週各地で行われたデモの規模や様子はさまざまだ。荒れ模様となったランシングの集会には警察の推計で3000人以上が集まった一方で、16日にバージニア州リッチモンドでは40人が静かな集まりを開いた。 

ノースカロライナ州ローリーでは14日に約100人が集まった。警察は10人を超える集まりを禁止する行政命令に違反したとして、51歳の女性を逮捕した。州当局では、女性は命令に従う機会を何度も与えられたにも関わらず「そうしないことを選んだ」としている。 
 
ランシングのデモ参加者は、ミシガン州のグレッチェン・ホイットマー知事(民主)が自宅待機措置を拡大したことに反発。州議会議事堂 周辺の交通を遮断し、銃を携帯する参加者もみられた。「彼女を収監しろ」と叫ぶ声も聞かれた。 
 
ホイットマー知事は非常事態宣言を4月末まで延長することを発表したほか、店舗の規模に応じて入店者の数を制限する新たな措置も導入した。 
 
必要不可欠とはみなせないとして、店舗内の特定のコーナーを閉鎖する措置もあり、園芸用品コーナーの閉鎖については、州のグリーンハウス業界から、業界が壊滅状態に陥るとの悲鳴が上がっている。(後略) 【4月18日 WSJ】
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荒れ模様となったミシガン州・ランシングの集会については、以下のようにも。

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ミシガン州の州都ランシングには、民主党のグレッチェン・ホイットマー州知事が発令した厳しい外出制限に反発する約3000人が集結した。デモの参加者の一部は武器を携帯していた。

「グリッドロック作戦」と名付けられたこの抗議デモを主催したのは、「過度な隔離措置に反対するミシガン市民」と名乗る、複数の右派組織からなるグループ。

デモ隊は「私たちは働きたい」「ロックダウンを解除しろ」といった標語を掲げ、ホイットマー氏をナチス・ドイツの独裁者アドルフ・ヒトラーになぞらえた参加者もいた。
 
また多くの参加者がトランプ氏への支持を示すために、「アメリカを再び偉大に」という前回大統領選での同氏のスローガンが書かれた共和党カラーの赤い帽子をかぶり、今年行われる次期大統領選のための「トランプ2020」と書かれた旗を振っていた。この抗議行動によって、ミシガン州議事堂の周囲では大規模な渋滞が起こった。【4月17日 AFP】
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“一方、大方の市民らはホイットマー州知事の新型ウイルス対策を好意的に評価している。”【同上】とも。

保守系メディアのWSJは、この件では早期の規制緩和を望む立場のようで、規制の行き過ぎ、特にミシガン州の過剰な規制を厳しく批判しています。

****【社説】過剰なコロナ対策、逆効果も ****
米国民は、屋内退避とソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)の命令をおおむね進んで受け入れている。しかし一部の当局者は、これでは十分ではないと考えているようだ。隠れたいじめ体質を発現させたような彼らのやり方は、新型コロナウイルスの拡散抑制につながる行動への国民の支持を弱めることになるだろう。 
 
問題の1つは、規制の行き過ぎた適用だ。屋内退避の命令施行を任された州や地方の当局者の一部は、執行すべき命令内容を誤解しているか、判断力の欠如という問題を抱えているように見える。

コロラド州ブライトンの警察官たちは、ほとんど無人のソフトボール場で妻と6歳の娘と遊んでいた男性に手錠をかけた。警察官はこの男性が規則に違反したと主張したが、その規則とは5人以上のグループに対するものだった。 
 
首都ワシントンの公園などでは、警察官が地元の人々に対し、ベンチに座ることを禁じている。1人きりで座ることさえも禁じているのだ。

フィラデルフィアでは、警察官らが、マスクをしていなかった男性を公共バスから引きずり降ろした。この男性は降車を求められた際に応じなかったようだが、違反行為の内容から見て、警察官の行動は行き過ぎだったと思われる。(中略)

最も行き過ぎた命令を出したのは恐らく、ミシガン州のグレッチェン・ホイットマー知事だろう。同知事は、他の多くの知事が行っている「必要不可欠でない」事業所の閉鎖に加え、州民が互いの家を行き来することも禁じた。

同知事は記者会見で、「あらゆる規模の全ての公的および私的な集まりは禁じられる」と説明した。同知事は「それでも屋外活動のための外出は認められる」として寛大にもそれを容認し、屋外活動は「他者から6フィート(約1.8メートル)離れた場所で行われる限り、許される」と述べた。 
 
ミシガン州政府はまた、一連の厳格な制限を押し付けた。スーパーマーケットの非必需品売り場の禁止令もその一つで、結果としてその売り場は周囲から遮断された。(中略)
 
政府当局者は、もっと緩やかな手法を採用していくことが望ましい。コロナウイルスの脅威はワクチンや、より良い治療法が確立されるまで終息せず、米国民は、政府が経済活動の再開を認めても、何らかのソーシャルディスタンシングや自己隔離をまだ何カ月も続ける必要があるとみられる。 
 
ミシガン州知事が出したような命令やその恣意的な適用は、市民の集団的な不服従を招き、命令の本来の趣旨を損なう恐れがある。公衆衛生、そして合衆国憲法の擁護の立場からは、米国民を責任能力のある市民として扱う方が望ましい。【4月15日 WSJ】
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トランプ大統領はミシガン州などでの規制緩和を求める動きを後押ししていますが、なにやら露骨な政治的思惑が・・・

****「州を解放せよ!」 トランプ氏がツイート、野党系知事に揺さぶり****
トランプ米大統領は17日、中西部ミシガン州とミネソタ州、南部バージニア州で新型コロナウイルス感染の拡大防止策である自宅待機令の緩和と早期の経済再開を求める抗議デモが起きていることに関し、これらの州を「解放せよ!」とツイッターに書き込み、抗議デモを支持する立場を示した。
 
3州は知事が野党・民主党系であるほか、11月の大統領選の行方を左右する激戦州に位置付けられている。特に、ミシガン州のホイットマー知事は民主党候補指名を確実にしたバイデン前副大統領の副大統領候補にも取り沙汰されており、トランプ氏の発言には大統領選に向けて民主党勢力を揺さぶる思惑も込められているとみられる。
 
(中略)抗議デモは、中西部ウィスコンシン州や東部ペンシルベニア州、西部アイダホ州でも予定されるなど、トランプ氏が16日に経済再開に関する新指針を発表したのを受けて多くの州で実施される公算が大きい。
 
米調査機関ピュー・リサーチ・センターが16日発表した世論調査では「州政府が外出制限を性急に解除することを懸念する」との回答が66%に上った。

また、73%が「最悪の事態はこれから訪れる」と答えるなど、米世論の大勢は自宅待機令などで「ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)」を維持することを支持する立場を示している。【4月18日 産経】
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【慎重姿勢のクオモNY州知事との「ケンカ」をヒートアップさせるトランプ大統領 深まる「分断」】
一方、反トランプの急先鋒の立場にあるのが、最近全米で注目度がアップしているクオモNY州知事(民主党)。
トランプ政権は必要なカネを出さずに、責任だけ州に押し付けていると、大統領を批判しています。

****トランプ政権、経済再開で各州に「責任転嫁」=NY州知事****
米ニューヨーク州のクオモ知事は17日、新型コロナウイルス感染拡大を受け休止状態の同州の経済活動再開に向けて連邦政府からの支援が必要とし、トランプ政権は「金を渡さずに責任を押し付けているだけだ」と批判した。

(中略)トランプ大統領は前日、新型コロナ感染拡大で打撃を受けている米経済の再開に向けた指針を発表。各州は状況に応じて3段階で封鎖措置の解除を進めるべきとした上で、経済再開プロセスを開始するにあたり「強力な検査プログラム」を備えるべきとした。

クオモ知事は「トランプ政権が州政府に望んでいる措置を講じるための資金はあるか。答えはノーだ」と述べた。

ニューヨーク州は経済再開と新型コロナ検査拡大に向け連邦政府による資金提供が必要と強調。連邦政府が打ち出した3つの経済対策から「州政府が受け取った支援はゼロだ」と言明。「何らリソースを提供することなく、先例のない大規模な責任を各州に要請しないでもらいたい」と述べた。

また、州政府による連邦支援要請を巡るトランプ大統領の批判に対し、「家でテレビを観ているだけなのであれば、トランプ大統領は仕事に戻るべきなのでは」と応じた。【4月18日 ロイター】
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トランプ大統領は、やれるものなら自分の判断で経済再開を決めてしまいたいのでしょうが、アメリカの政治システムにあってそれが出来ないので州に判断をゆだねている・・・ということでしょう。

ただ、そのことは失敗した際には非常に便利。おそらく州知事の判断が間違った、州の対応が悪かったと、すべての責任を(民主党系の)州側に負わせるつもりでしょう。

クオモNY州知事とトランプ大統領の争いはヒートアップ。

****不仲のNY州知事に「仕事しろ」 トランプ大統領が応戦****
「責任転嫁をするな」「仕事をしろ」――。新型コロナウイルスへの対応をめぐり、米ニューヨーク州のクオモ知事とトランプ大統領が17日、そんな言葉で互いへの批判を繰り広げた。

米国の感染者と死者の数はともに世界最多。連邦政府に支援を求めるクオモ氏に対し、トランプ氏は自らの成果を強調しており、非難合戦は今後も続く可能性がある。
 
両氏は以前から仲が悪いことで知られる。17日に口火を切ったのはクオモ氏。これまでの連邦政府の支援が州にとって不十分だと訴え、「金を渡さずに責任転嫁をするな」と批判した。
 
一方、トランプ氏は数十分後、クオモ氏を名指しして「不満でなく、行動に時間を使うべきだ。そこ(会見場)から出て、仕事をしろ」とツイート。連邦政府として臨時の病床を設置したり、人工呼吸器を贈ったりした「実績」も挙げた。
 
まだ会見中だったクオモ氏は、報道陣からこのツイートについて問われ、「もし家でテレビを見ているなら、立ち上がって仕事に行くべきだ」と反論。病床や人工呼吸器を増やすことは、疾病対策センター(CDC)などの予測に基づくものだったと訴え、「CDCの予測を読んでいないのか?」と皮肉った。
 
米国は新型コロナウイルスの感染者数が世界最多の69万9千人超。死者も3万6千人を超え、世界で最も多い。【4月18日 朝日】
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トランプ大統領は、周知のように国外にあってはWHO・中国を激しく批判して、資金停止まで。

「今はそんなことやっている時じゃないだろう・・・」と常識人は思うのですが、あちこちにケンカを売って、初動を誤ったという自分への批判をうやむやにしてしまおう・・・というようにも見えます

と言うか、自分の意に沿わない相手には、すぐにケンカを売って、力でねじ伏せようとするというのは、「分断」を深める結果にも。強い指導者を求める一部の支持者には受けるスタイルでしょうが。

なお、一連のコロナ対応で影がかすんだのがバイデン氏。いっそのこと好感度アップのクオモ氏を副大統領候補にしたら・・・と思うのですが、公約で副大統領は女性にということにしているようです。

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