孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

日本  停滞・衰退する日本経済・社会 「衰退途上国」との指摘も

2022-06-11 23:02:18 | 日本
【衰退途上国であり発展停滞国】
****日本が12回目の安保理入り、外務副大臣「国際秩序の維持と強化目指す」****
日本が国連安全保障理事会の非常任理事国に来年から2年の任期で選出された。これを受け、小田原潔・外務副大臣は9日、国連本部で記者団に、「法の支配に基づく国際秩序の維持と強化を目指していく」と抱負を語った。(中略)

日本は加盟国では最多の12回目の非常任理事国を務める。国連総会で9日に行われた非常任理事国の改選ではマルタ、スイス、エクアドル、モザンビークも選出された。モザンビークと、2002年に国連に加盟したスイスの安保理入りは初めて。【6月10日 読売】
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安保理の理事国の資格といわゆる「国力」は別物ですし、実際、マルタ、スイス、エクアドル、モザンビークなどが選出されるのであれば、日本が選出されるのは何ら問題はないでしょう。

一方で、かねてより日本は「常任理事国」入りを悲願としてきました。
しかし、現実国際政治において「常任理事国」となると、世界への影響力、いわゆる「国力」的なものが要求されます。

20年前、30年前ならともかく、今の日本にそのような「力」があるのか?と問えば、はなはだ疑問のようにも思えます。

「失われた20年、30年」を経て、今や日本は「衰退途上国」になっているとの指摘も。

****20年でGDP世界順位を26位も落としている日本はもはや後進国なのか?****
国内総生産(GDP)はアメリカ、中国に次ぐ第3位に位置する日本。この順位だけ見れば豊かな国と思われがちですが、平均的な豊かさを示す指標として使われる、GDPを人口で割った「一人当たりGDP」でみれば日本は30位。深刻化していることがわかります。(中略)

20年で2位から28位に転落
バブル経済が崩壊した1990年、日本の1人当たり国内総生産(GDP)は2万5,896ドルで世界8位だった。韓国は6,610ドルで42位、日本との差は4倍あった。

2000年、日本の1人当たりGDPは3万9,173ドルで世界2位まで上昇した。韓国は1万2,263ドルで10年ぶりに2倍増えたが、世界順位は35位だった。日本との差も3倍を超えていた。

2021年、日本の1人当たりGDPは3万9,340ドルで世界28位、韓国は3万3,801ドルで世界30位だった。韓国が日本を目前に追い上げることができたのは、1人当たりGDPが20年間で3倍近く増えたためでもあるが、日本の停滞が深刻だったのがより大きかった。

2012年、4万9,175ドルまで増えた日本の1人当たりGDPは、9年ぶりに19%減少した。世界順位が20年ぶりにこのように墜落した国は先進国の中で日本が唯一だ。
世界3大経済大国、先進7か国(G7)の一員である日本内部でさえ、「あっという間に後進国になった」(2021年4月9日、日本経済新聞)や「衰退途上国であり発展停滞国」(寺崎彰情報通信振興会理事長の2021年産経新聞寄稿文)という嘆きが出る理由だ。

国内総生産(GDP)の256%まで増え、G7の中で断然最悪の国家負債比率は、日本の未来も明るくないことを警告している。

デジタル技術力順位27位(韓国8位)、電子政府順位14位(韓国2位)、総合国家競争力順位31位(韓国23位)など未来競争力部門で日本は到底先進国とは言えない成績表をひっさげている。

国際連合(UN)の2021年持続可能な発展達成度でも、日本は19位(韓国27位)と毎年順位が下がっている。
日本経済新聞は「中国がリードしている第5世代(5G)通信規格競争には参入できず、特技だった半導体は米国・韓国・台湾に遅れをとった」として「電気自動車転換がかなり遅れたうえに新再生エネルギー分野は欧州・中国との格差が大きく広がった」と指摘した。

福島原発事故を経験しても「環境後進国」のレッテルを免れなかったという自省も出ている。日本は世界5位の二酸化炭素排出国だが、時代の潮流である脱石炭社会の実現を宣言したのは120番目だった。

1975〜1989年、世界で2番目に多くの新薬を開発した「バイオ強国」の地位を失って久しい。新型コロナウイルス感染症のワクチンを独自開発することに失敗し、日本のワクチン接種率はしばらく世界100位圏に留まった。

日本の近代化と経済成長を牽引した主役と評価される「教育競争力」も揺れている。文部科学省科学技術・学術政策研究所によると、日本の人口100万人当たり博士号取得者は2008年131人から2018年120人に減った。
100万人当たり博士号所持者が約400人の英国と300人余りのドイツ、韓国、米国を大きく下回った。主要国の中で博士の割合が減った国は日本だけだった。

先進国の脱落を阻止しようと躍起になる日本の足を引っ張るもう一つの後進性は男女格差だ。2021年の世界経済フォーラム(ダボスフォーラム)男女平等指数で、日本は120位(韓国102位)とアラブ諸国を除けば最下位圏だった。

日本の女性国会議員(衆議院基準)の割合は9.67%で世界165位だ。女性医師(21.9%)、判事(22.6%)、学校長(16.4%)の割合も先進国と大きな格差を見せている。

日本の男性労働者の非正規職の割合が22.2%であるのに対し、女性労働者の54.4%が非正規職だ。女性の賃金水準は男性の77.5%で、経済開発協力機構(OECD)平均の88.4%を大きく下回る。

経済官僚出身で2020年まで5年間、日本銀行政策委員会審議委員を務めた原田豊教授は最近、韓国経済新聞とのインタビューで「今日の日本は清朝末期に似ている」と話した。原田教授は「清はアヘン戦争敗北以後70年間何もしなかったが、1911年の辛亥革命で滅亡した」とし、「まともに帰ることのない日本も何もしないまま衰退している」と語った。(後略)【6月10日 MAG2NEWS】
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GDP関連の指標については、現在急激に進んでいる円安の為替レートが反映されると、ドル換算ではさらに深刻・急激な落ち込みになるのでは。

もちろん国力なり国の状態を表す指標はGDPのようなフローの数字だけではありませんので、いろんな角度からみたら「まだまだ日本の力は・・・」という指摘も多々あるのでしょう。

ただ、上記記事にもあるようなIT関連の成長力、教育の現状など経済・社会の多くの面で、あまり楽観的になれない現実があるのも事実でしょう。

【衰退国家アルゼンチンの二の舞いに?】
それにしても「衰退途上国」・・・・(勘違いだったにしても)「ジャンパン・アズ・ナンバーワン」(社会学者エズラ・ヴォーゲルによる1979年の著書)という言葉が飛び交った時代を知る者としては隔世の感があります。

もちろん、成長することが目的ではなく、要は国民が幸せに暮らせるなら別に「発展停滞国」でもかまわないのですが、現実問題としては、成長で得られるパイの拡大がないと、格差などの内部の歪、国民の間の利害対立は解決が難しく、より深刻なものになりがちです。

上記【MAG2NEWS】では、日本の現状は清朝末期に似ているとの指摘がありますが、かつての豊かな先進国から急速に衰退した南米アルゼンチンになぞらえる指摘も。

****日本が「先進国脱落」の危機にある理由、衰退国家アルゼンチンの二の舞いに?****
19世紀以降の世界で唯一、先進国から脱落したアルゼンチン。日本も同じ道を辿るのか
アルゼンチンは19世紀以降の世界で唯一、先進国から脱落した国家として知られる。農産物の輸出で成長したが、工業化の波に乗り遅れ、急速に輸出競争力を失ったことがその要因だ。国民生活が豊かになったことで、高額年金を求める声が大きくなり、社会保障費が増大したことも衰退につながった。

時代背景は違うが、似た現象が起きているのが現代の日本である。IT化の波に乗り遅れ、工業製品の輸出力が衰退しているにもかかわらず、社会は現状維持を強く望んでいる。この状況が続けば、アルゼンチンの二の舞いになっても不思議ではない。

かつて対照的な立場にあった日本とアルゼンチンだが…
このところ、「日本が先進国の地位から脱落するのではないか」との指摘をよく耳にするようになってきた。数年前からこの問題に警鐘を鳴らし続けてきた筆者としては、世間が現状を正しく認識するようになったことは高く評価できる。
 
だが、国家が一度落ちた経済力を復活させるのは極めて難しいのも事実であり、日本はまさに転落の瀬戸際にある。先進国の地位から脱落した国がどうなってしまうのか、唯一の先例であるアルゼンチンを参考に考察してみたい。
 
社会の近代化が急速に進んだ19世紀以降、先進国として豊かな社会を形成していた国がその地位を失うケースは極めて珍しい。
 
近代資本主義社会は先行者に圧倒的に有利なシステムであり、欧米を中心に一足先に近代化を実現した国は当初から豊かで、その後も豊かな社会を持続している。後発の国はなかなか豊かになれず、先行した国が脱落することもなかった。
 
だが、この常識に当てはまらない国が世界に2つだけある。それが日本とアルゼンチンである。
 
景気循環論で有名なノーベル賞経済学者サイモン・クズネッツは「世界には4つの国がある。先進国と途上国、そして日本とアルゼンチンだ」とジョークを飛ばしたといわれる。アルゼンチンの衰退と日本の成長が異例という意味だが、今では皮肉なことに、後述する理由によって、日本がアルゼンチンに続いて衰退しようとしている。

アルゼンチンの経済規模はタイやマレーシアと同程度
両国の経済レベルに目を向けると、現時点におけるアルゼンチンの1人当たりGDP(国内総生産)は約1万ドルで、日本の4分の1である。東南アジアの新興国としては比較的豊かな部類に入るタイは約7800ドル、マレーシアは1万1000ドルなので、アルゼンチン経済は豊かな新興国と同水準と考えれば分かりやすいだろう。
 
だが、戦前のアルゼンチンは今よりもはるかに豊かであり、先進国とみなされていた。1910年におけるアルゼンチンの1人当たりGDP(90年ドル換算)は3822ドルと、英米仏独4カ国の平均値である4037ドルとほぼ同じ水準となっており、旧宗主国であるスペイン(2175ドル)を大幅に上回っていた。(中略)

戦前のアルゼンチンは日本よりも圧倒的に豊かであり、欧米先進国と同等かそれ以上の生活水準だった。ところが、欧米各国が戦後さらに成長ペースを加速させたのとは対照的に、アルゼンチンの成長は一気に鈍化し、今では完全に衰退国となっている。(中略)

日本とアルゼンチンの状況は実はよく似ている
アルゼンチンと日本は時代背景も産業構造も異なるが、衰退のプロセスはよく似ている。
日本経済は戦後、工業製品の輸出で経済を成長させたが、90年代以降、日本の輸出競争力は急激に衰えた。世界全体の輸出に占める日本のシェアは80年代には8%とドイツに並ぶ水準だったが、現在ではわずか3%台にとどまっている。

日本の製造業が凋落した最大の原因は、全世界的な産業のパラダイムシフトに乗り遅れたことである。90年代以降、ITが急激に進歩し、世界の主力産業は製造業から知識産業に移行したが、日本はこの流れを見誤り、ハード偏重の従来型ビジネスに固執した。

IT化の波に乗り遅れたという点では、国内のサービス産業も同じである。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本におけるIT投資水準は横ばいで推移する一方、米国やフランスは投資額を約4倍に増やしている。

IT化が進まないと業務プロセスのムダが温存され、生産性が伸びない。IT投資を成功させるためには人材投資も並行して行う必要があるが、日本企業における人的投資の水準は先進諸外国の10分の1しかなく、状況をさらに悪化させている。
 
豊かになった国民が社会保障の維持を強く求めていることや、競争力の低下に伴う国産化(工場の国内回帰)への過度な期待、ナショナリズムの勃興など、アルゼンチンと日本の共通点は多い。

日本がこのまま手を打たなければアルゼンチンの二の舞いになる
では、日本がこのまま何も行動を起こさず、アルゼンチンと同じ道のりをたどった場合、私たちの生活はどうなるだろうか。結論から言えば、貧富の差が広がり、激しい格差社会になる可能性が高い。
 
先ほど、現在のアルゼンチンの生活水準は、豊かな東南アジアと同程度であるという話をした。タイやマレーシアの人たちは、今ではかなり豊かな生活をしているので、この程度であれば悪くないと思った人もいるだろう。だがそれは、あくまでも表面的な印象にすぎない。
 
日本がアルゼンチンと同程度まで経済が衰退したとしても、相応の仕事に就き、平均以上の年収を得ている人にとっては、何とか我慢できる生活水準かもしれない。だが、平均値の低下は、大抵の場合、格差の拡大と同時並行で進んでいく。
 
アルゼンチンは経済の低迷によって何度も年金制度の再構築を余儀なくされている。経済が低迷すると、最初に打撃を受けるのは貧困層や高齢者である。
 
国民の所得格差を示すジニ係数を見ると、現在のアルゼンチンは0.43となっており、00年には社会不安の危険水域とされる0.6に近づいたこともある。日本は0.33だが、このまま衰退が続いた場合には、数字が悪化するのは確実だろう。
 
また、日本の相対的貧困率は15.7%と先進国としては突出して悪い数字になっていることはよく知られている。統計が異なるが、アルゼンチンはコロナ危機前の段階で20%台後半となっており、コロナによってさらに悪化したといわれる。
 
アルゼンチンの場合、非正規労働者や自営業の比率が高く、こうした人たちは社会保障の枠組みに入っていない可能性が高い。日本においても同様に、時代に合わない年金制度や非正規社員の増加、貧困化の進展や格差拡大などが問題視されている。これらを放置すれば、日本はよりアルゼンチンに近づくことになる。
 
仮に日本が衰退しても、「豊かなアジア各国と同水準なら良し」とするのか、「激しい格差社会になり果てるのは到底受け入れがたい」と考えるのかは、人それぞれかもしれない。だが平均値の低下というのは、目に見えない部分で、国民に相当な苦難をもたらすことは確かだ。【2月7日 加谷珪一氏 DIAMONDonline】
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【社会の内向きベクトル マスク依存症的現状もそのひとつのようにも】
経済・社会制度に関する議論は多々あるところでしょうが、話は飛躍しますが個人的には、日本が全世界的な産業のパラダイムシフトに乗り遅れている背景としては、「安心・安全」信仰で新しいもの、リスクを伴うものへのチャレンジに消極的な日本社会の風潮があるように考えています。

いつまでもマスクにしがみつく現在の状況も、そんな内向きベクトルのあらわれのひとつのようにも。

****マスクなしの素顔が恥ずかしい? 長引くコロナ、子どもに「依存」広がる懸念 専門家「発育妨げる」弊害訴え****
長期の新型コロナウイルス流行でマスク着用が常態化し、素顔を見せることを恥ずかしがる子どもが増えている。専門家は「コミュニケーションの発達や不登校に影響しかねない」と懸念し、子どものマスク着用の弊害を訴える。

◆オンライン授業なのにマスク着用
3月、東京都内の母親(29)は自宅でオンライン授業を受ける小学4年の娘(10)を見て不思議に思った。自宅ではふだんマスクを外し、以前はオンライン授業も素顔で参加していたが、この時はマスクを着けていた。理由を聞くと「みんな着けているから何となく」。画面の子どもの半数がマスク姿だった。
 
母親は「外でマスクを外していいと伝えた時も娘は恥ずかしがった。以前より素顔をさらすのが不安になっている」と心配する。
 
調査会社「日本インフォメーション」が2月、10~60代の会員約1000人を対象にインターネット調査を実施したところ、「コロナ収束後もマスクを使用するか」との質問に対し、10代は男女ともに約5割が「いつも必ず使用」か「できるだけ使用」と答えた。
 
理由は、10代女性では「かわいい、きれい、かっこよく見える」が最も多く、感染対策と関係がなかった。実際、東京・原宿で尋ねると、女子高校生(17)は「素顔を見せられるクラスメートは5人くらい。今さら外せない」と苦笑した。

◆「マスク依存」はコロナ前からある
「マスク依存の子どもが増えている可能性がある」と警告するのは、赤坂診療所(東京都港区)でマスク依存の患者を診てきた精神科医の渡辺登さんだ。

従来のマスク依存について「人前に立つことを極度におそれる『社会不安障害』のある方らが、表情を隠すために着用していた」と説明する。依存に陥ると意思疎通が難しく、孤立して不登校や引きこもりになるリスクが増えるという。
 
広島県の男子大学院生(23)はコロナ禍前にマスク依存を経験した。「高校入学時に花粉症対策で着用したら、表情を隠せる安心感で外せなくなった」と振り返る。「コミュニケーションに困る」と悩んだ末、大学進学を機に自力で脱却した。国民のほとんどがマスク姿の現状には「望まずに依存する人が増えないでほしい」と願う。
 
渡辺さんは「子どもは顔にコンプレックスを抱えている場合も多い。感染対策のはずが、素顔を隠すことに利点を持つと、将来マスクを外せなくなりかねない」と強調。「感染リスクがない時はできるだけ外させた方がいい」と指摘した上で、「着用をやめるタイミングを政府が示してほしい」と求める。【5月10日 東京】
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