孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

電気自動車(EV)普及の加速化 “出遅れ”が目立つ日本

2022-12-04 22:58:41 | 日本
(ロールスロイスは10月18日、ブランド初のEVとなる大型ボディの2ドアクーペ『スペクター』を欧州で発表した。【10月19日 Response】)

【加速するEV化の流れ あのロールスロイスも】
私個人は自動車の普通免許は持っておらず、原付しか乗りません。ですから、車そのものに関しては人並みの知識も関心もありません。 ただ、日本経済を牽引してきたのが自動車産業であることから、日本自動車産業の今後は気になります。

自動車の主流が化石燃料から電気自動車に急速に変化していることは今更の話ですが、そうした流れに日本は対応できているのだろうか・・・という素朴な疑問が。

****EU、内燃エンジン新車販売の35年以降実質禁止で合意****
欧州連合(EU)は27日、内燃エンジン乗用車の新車販売を2035年以降実質的に禁止する法整備で合意した。

EU加盟各国代表と欧州議会、欧州委員会は一連の協議で、自動車メーカーに対して35年までに二酸化酸素(CO2)排出量の100%削減達成を義務化することで意見が一致。また30年以降に販売される新車には、適用するCO2排出量削減率を現行の21年比37.5%よりずっと高い同55%に定める。

内燃エンジンで走るバンの新車も、CO2を21年比で30年までに50%、35年までに100%減らす必要があるとした。

年間生産台数が1万台未満の小規模メーカーについては、排出量ゼロの達成が36年まで猶予される。

欧州議会メンバーとして協議を主導してきたヤン・フイテマ氏は「合意は自動車の運転者にとって朗報だ。排出量ゼロの新車は価格が下がって手に入りやすくなり、誰にとってもより身近な存在になる」と述べた。

欧州委で気候変動問題を担当するフランス・ティメルマンス上級副委員長は、合意は業界と消費者に強いシグナルを送ることになると指摘。「欧州は移動交通手段の排出量ゼロに移行する事態を積極的に受け入れつつある」と述べた。【10月28日 ロイター】
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日本企業が得意としているハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)も対象になります。

EUだけでなく、イギリスも30年までにガソリンとディーゼル車の新車を販売禁止にする予定で、35年にはHVも対象とします。米カリフォルニア州も35年までに排ガスを出す新車の販売を禁止する方針を示しています。

こうした流れの中で生き残るために、あのロールスロイスさえもがEVに。

****英・高級車メーカー ロールスロイス 初の電気自動車を公開****
イギリスの高級車メーカー、ロールスロイス初の電気自動車が公開されました。
18日、報道陣に公開されたのは、ロールスロイス初の電気自動車「スペクター」です。

ロールスロイスは、「スペクター」を高級車初の電気自動車だとアピールしていて、内装には、夜空に浮かぶ星をイメージしたというイルミネーションもちりばめられています。

ロールスロイスは、「スペクター」を皮切りに、2030年までに全ての製品を電気自動車にする方針です。

ロールスロイス・エトヴェシュCEO「電動化がブランドにとって最適だと10年以上前から考えていました。日本のお客様にとって素晴らしい体験になると思います」

「スペクター」の日本での販売価格はおよそ4000万円を想定していて、来年後半にも市場に出る予定です。【10月19日 日テレNEWS】
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EVと言えばイーロン・マスクCEOのテスラですが、今日のニュースではEVトラックも手がけているようです。

****テスラ EVトラックの納車開始 1回の充電で800km走行****
アメリカの電気自動車大手テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は、1回の充電でおよそ800km走るトラックの納車を始めたと発表した。

マスクCEO「トラック『セミ』を納車できることに、とても興奮している」
1日、テスラのマスクCEOは、アメリカでEVトラック「セミ」の納車を始めたと発表した。
最初の納入先は、飲料などを扱うペプシコだという。

テスラによると、およそ37トンの荷物を積んだ状態で、1回の充電でおよそ800kmを走行できるという。
マスク氏は、アメリカでのトラックからの排出ガスは、自動車全体のおよそ2割を占めるとして、気候変動対策や、沿道に住む人の健康被害や騒音解消に役立つと強調している。【12月4日 FNNプライムオンライン】
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【EVで目立つ日本の“出遅れ”】
一方で、日本企業のEVへの取り組みはあまり活発でないようなイメージがあります。

****EVシェア、中国や欧州20%超 民間調査、日本「出遅れ」****
各国に拠点を置く民間調査機関ブルームバーグNEFは17日、中国や欧州では電気自動車(EV)の販売台数ベースでのシェアが2022年上半期に20%超となったと発表した。

エジプトで開催中の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)に合わせ、世界のエコカー販売に関する調査結果を公表した。日本は2%に過ぎず、インドやオーストラリアなどと共に「出遅れ」組に分類した。

ただ、日本はEVの購入補助制度の効果によりシェア拡大の可能性もあると分析した。

22年上半期の世界のEV販売台数は約430万台と、前年同期比で約7割増えた。【11月17日 共同】
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購入補助制度もさることながら、日本でEVを普及させるための課題としていつも指摘されるのが充電施設の問題。

****「日本は技術で勝負し、普通充電器を増やすべき」 電気自動車の普及が遅れる日本の課題を自動車評論家が指摘****
自動車評論家の国沢光宏が11月25日(金)、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』に出演。電気自動車の普及が遅れる日本の課題を指摘した。

国沢は、日本で電気自動車の普及が遅れる原因について「ヨーロッパは真剣に、そして急速に化石燃料を使わない方向に動いている。この流れに文句を言ってもしょうがない。日本は技術で負けなければいいだけ。むしろ積極的に取り組んでいくべき」と語った。

続けて「日本の課題は充電器の普及。ヨーロッパに行くと、至る所に200Vの普通充電器がある。アメリカでは空港に行くと200Vの普通充電器がズラリと並んでいる。一方、日本の羽田空港には5つしかなかった。考えられないくらい、やる気がない印象」と指摘した。

また、トヨタ自動車の新型プリウスが、HVとPHEVで販売される事について国沢は「皆さん勘違いしているのは、電気自動車の時代に最終的に移行するのは2050年。電気自動車の環境は整っていなくて、まだ移行期。これから10年、15年は、燃費のいいハイブリッド、PHEVの新型プリウスは大きな役割を果たすと思う。それに新型のデザインは国内だけでなく、世界的にも評判がいい」と期待感を示した。【11月25日 ニッポン放送NEWS ONLINE】
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“まだ移行期”なのはそうなんでしょうが、ただ、その時期に“本気”にならないと取り返しがつかないことにもなんるのでは・・・と危惧しています。それが“勘違い”なのかどうか・・・

お隣の韓国では・・・。

****韓国・ソウル市内のEV充電器3万5千基突破 2年前の4倍以上に****
韓国のソウル市は7日、同市内に設置された電気自動車(EV)の充電器が3万5000基を超えたと発表した。

9月までに設置された充電器は累計3万5216基で、2020年末の8387基の4.2倍に増えた。充電器1基当たりの市内のEV台数は約1.5台。

タイプ別では駐車場、ガソリンスタンドなど生活・交通拠点の急速充電器が2171基、職場など公衆利用施設の緩速充電器が1万4848基、マンション・一戸建てなど住宅のコンセント型充電器が1万8197基となっている。

ソウル市は今年から、市民による充電器設置場所の提案を受け付けている。市民の利便性向上のため、通行量の多い大通りなどに街灯型充電器30基、アクセスしやすい液化石油ガス(LPG)スタンド9カ所に急速充電器9基を設置する計画だ。

兪連植(ユ・ヨンシク)ソウル市気候環境本部長は「26年のEVシェア10%時代の実現に向け先回りして充電器を設置し、街灯型など多様な充電器の設置を拡大するなど充電環境の質を改善する方策を検討している」として、市民の需要に合わせて充電インフラを拡大するよう努力すると述べた。【11月7日 聯合ニュース】
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EVの本場中国ではもちろん。“EV大国の中国、充電施設でも電池技術でも欧米を引き離し中―香港・亜洲週刊”【10月16日 レコードチャイナ】

こういう技術は日進月歩でしょう。「技術的に環境が整っておらず・・・」と言っていたら、あっという間に・・・

****EVの充電が10分でできる新技術誕生―中国メディア****
2022年10月17日、中国メディア・環球網は、10分間で充電が完了する新たな電気自動車(EV)バッテリー充電技術が誕生したと海外メディアが報じたことを紹介する記事を掲載した。

記事は、EVのバッテリー充電時間を10分に短縮する新たな技術が開発され、学術誌「ネイチャー」で発表されたと紹介。新技術ではバッテリーに非常に薄いニッケル箔を添加することでバッテリーの温度と反応性を調節可能とし、あらゆるタイプのEVバッテリーでも10分間の急速充電がほぼ可能であると伝えた。(後略)【10月18日 レコードチャイナ】
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日本の対応が遅れているのでは・・・という疑問は、私のような車に無知な人間だけでなく、国際的評価ともなっているように見えます。

****日系車が神の域から転落―中国メディア****
2022年10月30日、中国メディアの界面は、かつて中国市場を席巻した日系車が「神域」から転落したとする記事を掲載した。

記事は、かつて「化石燃料車の販売チャンピオン」との誉れを受けていた日系車が現在は業界再編の荒波に直面していると紹介。トヨタが大幅な値下げに踏み切って苦境を乗り越えようとしているものの、市場全体を見渡すと日系車は「販売数も価格も下落する」という厳しい状態にあると伝えた。

そして、日系車の現状を招いた要因として3つの点を挙げている。

まずは、化石燃料車に固執したことを挙げ、1980年代から先行者の優位性をもって中国市場に参入して高い評判を獲得してきた日本のメーカーが「どうして自ら快適な場所を捨て、損を出してまで未知の新エネルギー市場に積極的に乗り出そうとするだろうか」とし、化石燃料車で不動の地位を築いてきたことでかえって新しい分野への動き出しが鈍ってしまったとの見方を示した。

次に挙げたのは、中国ブランド車の台頭だ。中国で日系車が売れたのは価格面、経済性の優位性があったからであり、現在の中国ブランド車も同様にその優れたコストパフォーマンスで合弁ブランドが占拠してきた市場を蚕食していると説明。「日系車が中国で成功した道を中国ブランドが学び、そして追い越した」と評した。

3つ目は、時代の主役が新エネルギー車に切り替わったこととし、化石燃料車の時代には日系車が主役で模倣と追い上げの目標とされていたものの、新エネ車の時代になって主役が新勢力や既存企業の新エネ車ブランドへと交代し、かつて日本を追いかけていた存在が業界をリードするようになったとしている。

記事はその上で「BYDや新興勢力をはじめとする新エネ車ブランドがすでに、技術的な強みと戦略によって化石燃料車からの世代交代を実現しようとしている。十数年に及ぶ新エネ車補助政策のアシストが今、花開き、実を結ぼうとしている。日系車の神域からの転落は、化石燃料車時代の終わりが来たことを示すものと言えるだろう。自動車産業は全面的に電動化の時代に入ったのだ」と主張した。【11月3日 レコードチャイナ】
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EVは化石燃料車に比べて技術的なハードルが格段に低く、異業種で参入が容易なのが特徴です。

****自動運転も・・・中国のIT大手「百度」が新EV発表 異業種含めた開発競争が本格化****
中国のIT大手、百度(バイドゥ)などが開発した量産型の電気自動車が発表されました。電気自動車への異業種の参入と競争が本格化しています。

中国のIT大手・百度と自動車大手の吉利が手がけた電気自動車「ROBO-01(ロボワン)」。
1回の充電で600キロ走行でき、百度のAI=人工知能の技術を生かして音声認識によりドアを開けることもできるほか、運転席にはレバーなどが無い設計になっています。価格は39万9800元、日本円にしておよそ800万円。

すでに予約販売が始まり1000台が売れていて、来年、納車予定だということです。

百度は、すでに北京などで無人タクシーの自動運転を実用化していますが、今回発表された車にも高速道路や市街地での一定程度の自動運転機能がついているということです。

電気自動車や自動運転車をめぐっては中国では「ファーウェイ」や「シャオミ」など、ITや家電企業といった異業種からの参入が相次ぎ、アメリカのIT大手グーグルも自動運転車の開発を進めるなど、業種を超えた世界的競争が本格化しています。【10月28日 TBS NEWS DIG】
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自動運転技術については、まだまだ実用化に難しい問題が多いと思いますが、EVの方は今後流れが加速するでしょう。もちろん日本企業も手をこまねいている訳でもないでしょう。

****トヨタ、中国BYDと開発の新型EVを発売 現地向けに****
トヨタ自動車は24日、電気自動車(EV)専用ブランドの新型車「bZ3」を近く中国で発売すると発表した。中国のEV大手、比亜迪(BYD)との共同開発で、トヨタとしては初のセダン型となる。EVの販売が盛んな中国で品ぞろえを広げて、顧客の開拓を急ぐ。価格、詳細な発売時期、生産台数の目標などは未定としている。

トヨタは2021年、EV専用の新ブランド「TOYOTA bZ(トヨタ ビーズィー)」を立ち上げ、その第1弾としてSUBARU(スバル)と共同開発した多目的スポーツ車(SUV)の「bZ4X」を世界で発売した。今回のbZ3はbZ4Xに続く第2弾だ。

bZ3の生産と販売はトヨタの中国合弁会社「一汽トヨタ」が担う。中国の天津にある工場で生産し、現地向けに販売する。1度の充電で走行できる航続距離は「最長600キロメートルを超える」(トヨタ)としており、bZ4Xと同程度となる。

トヨタは中国でガソリン車のほかにハイブリッド車(HV)にも注力してきた一方、EVの販売はまだわずかだ。中国での新車販売台数は21年に過去最高の194万台に達したが、このうちEVは約5千台にとどまった。

トヨタは30年に、EVだけで年350万台の世界販売を目指している。もともと21年5月、30年には世界で燃料電池車やEVを年200万台販売すると表明していた。だが、中国を筆頭にEV需要が急拡大しているとして、EV販売台数の計画を引き上げた経緯がある。(中略)

トヨタは車載電池に30年までに2兆円を投じる方針を示すなど、EVの基幹部品である電池の確保にも力を入れる。22年8月末には日米で電池の増産に最大で約7300億円を投じるとも発表しており、CATLやBYDなどとの提携関係を生かした電池の確保も急ぐ。

トヨタは21年に初めての量産型EVとしてbZ4Xを発表。ただ、急旋回などで脱輪の恐れがあるとして22年6月に国土交通省にリコール(回収・無償修理)を届け出ていた。10月には原因を特定して対策を実施、生産も再開している。【10月24日 日経】
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中国のEV大手BYDが1~6月に世界で販売したEVは約32万台で、米テスラに次ぐ2位。

【携帯電話・家電製品に続いて自動車もガラパゴス化?】
“トヨタはもともと強みがあるハイブリッド車だけでなく、EVや燃料電池車を「全方位」で開発し、国や地域の事情にあわせて環境規制や市場の変化に対応しようとしてきた。ただ、次世代車として市場で本命視されているEVはテスラや中国勢が先行し、トヨタは追う立場になっている。”【日系メディア】

トヨタは「多様化した社会には多様化した解決策が必要」(トヨタの豊田章男社長)とのことで、水素を燃やして走る水素エンジン車にも力を入れています。
“トヨタ水素エンジン車がデモ走行 世界ラリーで脱炭素を披露”【11月12日 共同】

“トヨタは水素エネルギーこそ未来の形であり、電気自動車やハイブリッド車は過渡的な製品だと考えている”【10月7日 レコードチャイナ】とか。

水素を使う技術は、水素エンジン車以外に燃料電池車(FCV)もあります。トヨタの「MIRAI」など。

水素エンジン車は水素エンジンを搭載した自動車です。 エンジンの燃焼室で水素を燃焼し、その爆発力で動力を得ます。 通常のガソリン車でいうガソリンが水素で置き換わったのが水素エンジン車といえるでしょう。 
これに対し、燃料電池車(FCV)の場合、水素は燃料電池の発電のために使用されます。

FCV最大の問題は水素ステーションの整備。中国はそのインフラ整備にも力を入れているとか。

****中国で燃料電池車産業発展の布石が着々と進む―中国メディア”****
(中略)国家エネルギー局のデータによれば今年6月末現在で全国に270カ所を超える水素ステーションが設置されており、設置数で世界の40%を占めていると紹介。それでも燃料電池車を急速に普及させるにはなおも水素補給能力が不足しているとし、北京市、上海市、広東省の各地方政府が助成金を出すなど水素ステーション建設の促進を率先して行っていると伝えた。【10月26日 レコードチャイナ】
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一連の情報からは自動車の新たな時代に向けた日本の企業・政府の“本気度”の低さが感じられ、化石燃料で世界をリードした日本の自動車産業は、その技術的優位性が故に新たな技術への適応が遅れて“ガラパゴス化”するのでは・・・という懸念が拭えません。

1年前のTVドラマ「日本沈没」では、日本人移民を外国に受入れてもらうための切り札がトヨタをイメージした自動車企業の移転でしたが、10年後、20年後、その「切り札」が残っているのか?

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