(写真はヤギの乳を搾るモンゴルの少女 “flickr”より By Terrold)
最近目にしたモンゴルに関する話題2件。
モンゴルはソ連・東欧情勢に連動して、90年には共産党の一党独裁を放棄、経済的にも従来のソ連型経済から自由市場経済に転換しました。
今回の話題はともに、モンゴルが進める市場経済化の陰の部分にもかかわるようです。
モンゴルは人口の3分の1が遊牧に携わる国で、広がる大草原がイメージされます。
モンゴルに限らず今世界中のあちこちでも同様の現象が見られますが、モンゴルの草原が急速に砂漠化しているとのことです。
南のゴビ砂漠が拡大して北上しており、50年以降すでに200万haの草原が砂漠に飲み込まれてしまったとか。
草原は縮小し、過密化し、都市に次第に接近、遊牧生活の存続が危ぶまれているそうです。
主因は気象変化、少雨と旱魃ですが、これを加速化させているのが、市場経済のもとで進む無秩序な露天掘りの鉱山採掘、その多くは違法なものだそうです。
市場経済化の影響は鉱山開発だけでなく、遊牧民自身にも。
経済価値の高いモンゴルカシミヤ供給のため、ヤギの放牧が増加。
ヤギは草原の草を根こそぎ食べつくしているとか。
現在、日本を含めて外国資本がカシミヤを求めてモンゴルに流入しているそうです。
また、市場経済化という変革に乗り切れず都市で失職し、遊牧生活を始める人々が急増したことも草原の草を回復力以上に消費する結果になったようです。
遊牧の国モンゴルにとって、遊牧の危機は民族のアイデンティー喪失にも関わる問題です。
もうひとつの話題はストリートチルドレン。
推定3,700~4,000人の子ども達が路上で生活しているとされ、そのほとんどが首都ウランバートルで暮らしています。
彼らはゴミを拾い集めたり、施しを求めて生活しています。
冬は-40℃にも下がるため、暖房用の配管が収められた不衛生なマンホールで生活している子供達が多いそうです。
市場経済化の変革は、アメリカ主導で急速に行われました。
(これを資金的に支持したのが日本の援助です。)
この過程で従来の経済は崩壊し、年金・福祉・無償教育などの政策も停止し、生活保護も行われなくなったそうです。
貧困層の多くは以前にも増して困窮、混乱し、その結果としてストリートチルドレンが増加しました。
最近、このストリートチルドレンが減少したそうです。
その背景には生活保護の一部再開するなどの評価すべきこともあるのですが、特に少女を見かけなくなったとのこと。
これは、路上生活の少女達が性産業に人身売買されていることの結果ではないかとも言われています。
もともと遊牧生活を基本にしたモンゴルの社会では子供の数等の把握が十分になされていないこともあって、人身売買が横行しているそうです。
彼女等の売買先は主に中国で、数千人が性産業等に売られているとも言われています。
モンゴルは中国とは歴史的にも犬猿の仲で、「中国人のようだ」というのは最大の悪口となり、選挙でも「あの候補は家系に中国の血が入っている」というのは最大のスキャンダルとなるような社会だそうです。
そんなモンゴルで、自国の少女達を中国に売り飛ばすというのは・・・市場経済下では“なんでもあり”ということなのでしょう。
モンゴルにおける自由市場経済化は十分な準備・理解が不足しているなかで強行され、結果福祉制度は崩壊。
自由化とは「自由に振る舞って良いこと」だと勘違いする政治家や役人が多く、汚職が頻発し、外国の援助金は効率的に使われない。
波に乗った一部の人間は富裕化しましたが、多くの貧困層の生活は悪化。
そのような負の側面も多分に持っているようです。
一方で、“遊牧民もテントの脇にパラボラアンテナとソーラーパネルを立てて自動車用のバッテリーを充電し、それをテレビの電源にして香港の衛星放送でワールドカップを見るようになった。”とも言われています。
それが経済発展の成果かどうかはともかく、市場経済化の評価については、市場経済の恩恵・成果の面も十分に評価する必要があるでしょう。
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