孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  20日の大統領選挙 現職再選か、決戦投票か

2009-08-13 21:29:13 | 国際情勢

(前回04年のアフガニスタン大統領選挙の投票所の様子 "flickr”より By rybolov
http://www.flickr.com/photos/rybolov/2895027757/)

【「タリバンは優勢で、非常に攻撃的になっている」】
アフガニスタンの状況は相変わらずのように見えます。
“アフガニスタンの首都カブール南方にあるロガール州の州都Pul-e-Alamで10日、反政府武装勢力タリバンが政府ビルを狙った自爆攻撃を行い、警察官3人と市民2人が死亡。タリバン側も兵士6人が死亡した。州知事スポークスマンが明らかにした。”【8月11日 ロイター】

オバマ大統領は3月に2万1000人の増派と文民支援を組み合わせた包括戦略を打ち出し、7月2日からは、タリバンの拠点地域である南部ヘルマンド州で、海兵隊約4000人を投入した大規模な掃討作戦「剣の一撃作戦」を始めています。イラクでの教訓を生かし、掃討後の治安維持に力点を置き、復興支援を進めることを目指しているとか。

しかし、タリバン側の抵抗も厳しく、7月の米兵死者は43人に上り、2001年の開戦以来、過去最悪となっています。
駐留米軍のマクリスタル司令官は米紙に「タリバンは優勢で、非常に攻撃的になっている」と語っており、南部カンダハル州など人口が多い地域に集中的に米軍を再配置する事態に追い込まれているそうです。
また、比較的安定していた北部や西部でも脅威が増しているとも報じられています。【8月11日 時事より】

上記の掃討作戦「剣の一撃作戦」は、8月20日のアフガン大統領選を前に、タリバンの拠点ヘルマンド州を制圧することで形勢を変えたい思惑もあるようですが、その大統領選挙を前に、“意外にも” 首都カブールではこの1カ月間、自爆や路上の仕掛け爆弾によるテロが起きていないそうです。
大統領選を前に「首都の死守」を掲げる政府が大量の警官を動員し、警備を強化したのが奏功しているとか。【8月13日 毎日】

【決選投票になれば「米国が対立候補を支援する」】
その大統領選挙は、現職のカルザイ大統領優位が以前から伝えられていますが、対立候補のアブドラ元外相の追い上げやアメリカの思惑もあって、微妙な情勢もあるようです。

****アフガン大統領選:20日実施、現職再選か 米の動き鍵に*****
アフガニスタンで20日、大統領選が行われる。再選を目指す現職のカルザイ氏が最有力候補だが、第1回投票で当選に必要な過半数の獲得は困難との見方が広がる。一方、旧支配勢力タリバンとの和解を公言するカルザイ氏に対し、オバマ米政権は非難を強めており、上位2人の決選投票になれば「米国が対立候補を支援する」との観測も出始めた。

選挙管理委員会によると、候補者数は37人(9日現在)。前回04年選挙の18人を大幅に上回り、カルザイ氏の求心力低下を物語る。各種世論調査では、カルザイ氏が支持率40~30%とトップだが、前回選挙の得票率(55%)を下回る。これにアブドラ元外相とガニ元財務相が20~10%台で続く。

人気低下に危機感を抱いたカルザイ氏は、前回大統領選に立候補したウズベク人軍閥トップのドスタム将軍やハザラ人軍閥のモハケク司令官らに新政権での重要ポストを提示し、選挙協力を要請。第1副大統領にタジク人軍閥のファヒム氏を迎えたことで、国内第一勢力のパシュトゥン人のカルザイ氏が「全民族和解」を印象づける。
その上でカルザイ氏は、当選後にタリバン指導部と「本格対話を始める」と公言。タリバン支持層の取り込みも狙う。

オバマ米政権は今春以降、カルザイ政権の「汚職」への非難を強め、カルザイ氏の実弟が麻薬密売に関与していると指弾。国内の「カルザイ非難」が高まる結果となった。さらに7月、ドスタム氏が01年11月に関与したとされる投降タリバン兵大量死事件の「調査」を命令。「カルザイ氏は戦争犯罪者の軍閥を取り込んでいる」と非難する人権団体と呼応し、カルザイ氏を揺さぶる。
背景には、米国の後ろ盾で政権を維持しながら、米国批判を強めるカルザイ氏へのいらだちがある。しかし同氏陣営は、「将来的な米軍撤退も視野に入れた政権作りが必要」と立場の違いを示す。
これに対し、他の有力候補は知名度が低く、民族を超えた支持の広がりには乏しい。このため、「決選投票に持ち込めば米国の支持が得られる」(アブドラ陣営)とカルザイ氏へのネガティブキャンペーンを強める戦術だ。【8月9日 毎日】
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【金権選挙 選挙後の混乱】
****現職カルザイ氏をアブドラ氏猛追 決選投票の可能性*********
20日のアフガニスタン大統領選挙まで1週間余り。当初、過半数を獲得しての続投が有力視されていた現職のカルザイ大統領(51)を、同政権で外相を務めたアブドラ氏(48)が猛追しており、決選投票の可能性も出てきた。アブドラ氏は、カルザイ氏が勝利しても結果を受け入れず、抗議デモに打って出る構えをみせている。治安がいっこうに改善しない状況下で政治も混乱すれば、「安定」はさらに遠のきそうだ。

選挙の主な争点は治安、腐敗・汚職、経済復興。だが、実際には有権者の投票動向は地元部族のリーダーの意向に左右され、政策は二の次だ。
41人が立候補を表明し、最終的に35人程度になるとみられる選挙戦は事実上、カルザイ、アブドラ両氏の一騎打ち。テロの標的になってきたカルザイ氏は、満足に地方を遊説できず、代わって地方の指導者層が支持を訴えている。アブドラ氏の方は精力的に地方を行脚し、これが追い上げの原動力となっている。

アブドラ氏は、全34州の半分以上をすでに回った。会合は常に数千人規模と盛況だ。「多額の金を投じ、夜から朝までホテルを借り切って部族のリーダーたちを接待漬けにしている」(地元筋)という。現金も飛び交う。それは「カルザイ陣営も同様」(同)ではある。
「カルザイ政権は国の金庫から金を引っ張り出し、庶民のために責務を果たさない麻薬の密輸団だ」と批判を強めるアブドラ氏は、カルザイ氏が過半数を獲得しても不正の結果だとしている。(後略)【8月12日 産経】
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7月13日ブログ「アフガニスタン 軍閥勢力復権の動き オバマ大統領、ドスタム将軍の犯罪を調査指示」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090713)で、カルザイ大統領がドスタム将軍など軍閥勢力に対し、ポストをばら撒く形で権力中枢への復帰を約束し、その支持を得ようとしていることを取り上げましたが、そのときにも触れたように、軍閥勢力への擦り寄りはアブドラ元外相などの他候補も同様です。
「多額の金を投じ、夜から朝までホテルを借り切って部族のリーダーたちを接待漬けにしている」といった金権選挙ぶりも、カルザイ、アブドラ両候補とも同様なようです。
これで、「良き統治」が実現されるのか・・・。

タリバン側の妨害のなかで、どのくらいの投票率になるのかも注目されます。
前回04年選挙では71%でした。
恐らくはこの数字を下回るのでしょうが、その数字の大小は、タリバン側の攻勢・住民支配の状況を示すバロメーターともなりそうです。

決選投票になるのか、イラン大統領選挙のように第1回投票で決まるのかはわかりませんが、いずれにしても“アブドラ氏は、カルザイ氏が勝利しても結果を受け入れず、抗議デモに打って出る構えをみせている。”とのことですから、多少の混乱は避けられないようです。
それにしても、選挙前から“不正”前提に選挙結果受け入れ拒否というのも、腐敗・汚職の蔓延するアフガニスタン政治らしいとも言えます。

【「今からゴミ拾いに行く」】
そんなアフガニスタンにも、りっぱな方がいるようです。
文字通りに信じていいのかどうかはわかりませんが・・・。

****アフガニスタンの日常:/3 テロ恐れずゴミ拾い*****
アフガニスタン中部マイダンワルダック州のハリム・フィダイ知事(38)は、公務の合間を縫って町中のゴミを拾う。行政府の汚職体質に国民の厳しい目が向けられる中、カルザイ大統領に請われて1年前にジャーナリストから転身した。国内最年少知事は信頼回復のため地道な活動に取り組んでいる。
カブールに隣接する同州は、旧支配勢力タリバンの首都浸透を防ぐ砦(とりで)だ。米軍も州内に増派し、激しい戦闘が続く。タリバンとの対話も重視する知事だが、政府の人間なのでテロの標的となる。

「今からゴミ拾いに行く」。知事が秘書に伝えると、武装警官らが護衛に駆けつけた。高さ5メートルのコンクリート壁に囲まれた州政府の庁舎から出発する一行には物々しい雰囲気が漂う。
知事の頻繁な外出がテロを引き寄せないかと心配する声もあるが、本人は「トップが閉じこもってどうする」と意に介さない。【8月12日 毎日】
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自爆テロの危険のなか護衛にあたる武装警官は、お気の毒です。


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