孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ドイツ  拡大する「反イスラム」の動き

2015-01-20 22:30:34 | 欧州情勢

(ペギーダなんてゴミ箱へポイ・・・反「反イスラムデモ」参加者 1月12日 ベルリン “flickr”より By Bernd Sauer-Diete https://www.flickr.com/photos/basspunk/16085111737/in/photolist-qvopjH-qvn7aM-qvopDF-qSxHWM-qKw83y-qS8QUj-qA844H-qvRLpL-qNgM1e-qMDMAK-qveT4u-pRqSNb-qNqULa-qvYjx2-qA6mRx-qL91rq-qvZ1Li-pVdi4N-qNkZCw-qL8iCw-qNkZxw-qvR4NA-qvYjd4-qvYj5t-qvYj2H-pRDbPr-qPVnxL-qS49QP-qzMKTZ-qMeXqn-qMyLQS-qN4f8v-qvu5xJ-qMZ3d3-qMU3Na-qvu4eG-qvCBFP-qMU2wx-qvBgDZ-pR47pd-pR46Wu-qvBeqk-qvtZes-qvBdr6-qMYVgY-qvBbi8-qMTVap-qMYT6A-pR41gG-qKLbZy)

【「デモ参加者の多くは、政治に自分たちの意見が反映されていないと感じている」】
フランスの政治週刊紙「シャルリー・エブド」本社などの連続銃撃テロ事件、多数のイスラム教徒移民を抱える欧州社会ではイスラムへの警戒感、「反イスラム」の動きが強まっています。

一方、「シャルリー・エブド」が事件後の特別号で表紙に再びイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載したことで、世界のイスラム教国にはイスラムへの冒涜であるとする怒りが広がっています。

ドイツでは、トルコなどからのイスラム教徒の移民が人口の約5%に当たる約400万人を占め、重要な経済の担い手となっています。

そのドイツでも、「反イスラム」のうねりが大きくなっています。それを代表するのが「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人」(通称ペギーダ・Pegida)の運動拡大です。

イスラム教や「犯罪者である亡命希望者たち」に対して怒りの声を上げるペギーダのデモの参加者数は、ドレスデンで昨年10月に始まった当初は数百人だったものの、多くの不満のはけ口となり、支持者の数は以降徐々に増え続けています。

特に、「シャルリー・エブド」本社などの連続銃撃テロ事件直後の12日に行われたデモの参加者数は、過去最多の2万5000人に上りました。

これに対し、ペギーダ反対派によるデモも10都市以上で行われ、参加者は計10万人に上っています。

****反イスラム派」と反対派、12万人がデモ応酬****
フランスの政治週刊紙「シャルリー・エブド」本社などの連続銃撃テロ事件を受け、ドイツ各地で12日夜、反移民デモを続ける「ペギーダ」(「西欧のイスラム化に反対する欧州愛国主義者」の略称)と、ペギーダに反対する陣営の双方によるデモが行われた。

DPA通信によるとあわせて12万5000人以上が参加した。
双方の衝突などは伝えられていない。

東部ドレスデンでは、ペギーダが、一連の銃撃事件の犠牲者を追悼する趣旨でデモを行い、地元警察によると、同団体主催のデモとしては過去最多の約2万5000人がドイツ国旗を手にするなどして参加。東部ライプチヒやベルリンなどでも同様のデモが行われた。

一方、10都市以上で行われたペギーダ反対派によるデモの参加者数は計約10万人とペギーダを圧倒。ライプチヒで約3万人、南部ミュンヘンでは約2万人が、事件に乗じて反イスラム感情をあおろうとする動きへの反対を訴えた。【1月13日 読売】
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ペギーダは表面的には比較的穏健な主張を掲げていますが、背後ではネオナチなどの極右政党との関連を指摘する向きもあります。

また、単に「反イスラム」だけでなく、ドイツ特有の東西格差など、広い政治への不満の受け皿となっています。

****高学歴・高収入層も集会参加****
反イスラムが一般に広がる象徴が、「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人」(通称ペギーダ・Pegida)だ。

昨年10月以降、東部ドレスデンで毎週月曜にデモを組織。ソーシャルメディアを使って当初の数百人から規模を急拡大した。

12日夜、仏週刊紙襲撃の後、初めて開かれた反イスラム集会では、約2万5千人が「欧州への宣戦布告だ!」「政治もメディアも信用できない!」などと連呼し、古都を練り歩いた。

老夫婦や若いカップルもいた。記者が話を聞くと、飲食店経営者からサラリーマン、年金生活者まで様々だ。「アレックス」とだけ名乗った男性(33)は、「パリの事件がショックで初めて参加した。ドイツの自由は我々が守る」と興奮気味に話した。

ペギーダとは何者か。

代表者は、ドレスデン出身のルッツ・バッハマン氏(41)という人物で、現在の中心メンバーは12人。デモでの排外的な主張とは裏腹に、公表している活動方針には「西洋文化の尊重」「戦争難民の保護」など穏健な主張が並ぶ。

18日、女性幹部がテレビのトーク番組に出演し、「デモ参加者の多くは、政治に自分たちの意見が反映されていないと感じている」と指摘した。「我々は人種差別団体ではない。移民の多い国にはそれなりの規制が必要だと訴えているだけだ」と語り、極右の関与を否定した。

どんな人が加わるのか

DPA通信によると、ドレスデン工科大学が集会の参加者約400人に調査した結果、「東部出身で高学歴、収入も比較的よい中年男性」という典型像が浮かんだ。「反イスラム」で参加した人は4分の1以下で、大半の動機は「政治への不満」だった。

ペギーダに呼応し、独各地で類似団体が次々に生まれ、小規模なデモを繰り返している。

独西部デュッセルドルフのネオナチ研究者、アレクサンダー・ホイスラー氏(51)は、これら類似団体の裏にも極右がいると指摘する。「極右政党の構成員やフーリガンもデモに交じっている。彼らは前面に出ず、一般市民が中心のペギーダの勢いを利用して民衆をあおっている」【1月20日 朝日】
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19日に予定されていたペギーダの野外集会は、リーダーのひとりに対するイスラム過激派による暗殺の計画があるとして、警察によって中止されました。

****ドイツの反イスラムデモ、テロの恐れで中止 「イスラム国が脅迫****
ドイツ東部ドレスデンの警察は18日、同市で翌19日に計画されていた反イスラムデモなどの野外の集会について、テロの危険があるとの理由で禁止すると発表した。

ドレスデン警察によると、右派のポピュリスト団体「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人(PEGIDA)」に対する「具体的な脅威」を示す情報が、連邦警察や州警察などから寄せられた。

集会の24時間禁止措置を告知する文書の中で同警察は、「デモ参加者らに紛れ込んでPEGIDAのデモ組織班のメンバー1人を暗殺」するよう呼び掛けがあったと説明。

この情報は、「PEGIDAのデモをイスラム教の敵と呼ぶアラビア語のツイッター投稿」とも一貫性があるものだとしている。

独紙ビルト電子版は、暗殺の標的はPEGIDAのリーダーの中でも最も著名なルッツ・バッハマン氏だったと報道。PEGIDAの広報担当者も地元テレビに対し、同氏が標的だったことを認めた。

これに先立ちPEGIDAは、交流サイトのフェイスブックへの投稿で、イスラム教スンニ派派の過激組織「イスラム国(IS)」から脅迫があったことを明らかにし、予定されていた13回目のデモを中止すると発表。デモ中止は独自の判断だったと説明していた。(後略)【1月19日 AFP】
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こうしたテロの計画といった話は、イスラムへの憎悪を煽るところとなり、ペギーダの勢力拡大に更に資することになるでしょう。

背後にはネオナチなど極右勢力の影がうごめく
ペギーダと極右の関係は定かではありませんが、ドイツでは以前から、極右勢力がフリーガンを背後から操っているという話があります。

****反イスラム」極右の足音 ドイツ、数カ月前からデモ拡大****
仏週刊紙「シャルリー・エブド」襲撃事件をきっかけに、欧州に広がる「反イスラム」のうねり。ドイツでは事件の数カ月前から、熱狂的なサッカーファン「フーリガン」のほか、幅広い層の市民が、反イスラムの旗の下に集まっていた。背後にはネオナチなど極右勢力の影がうごめく。

腕っ節の強そうな男たちが続々と集まってきた。サングラスにスキンヘッドの若者が目立つ。昨年11月15日昼、独北部の商業都市ハノーバーの駅前広場。3千人以上がこぶしを振り上げ、気勢を上げた。

「ドイツ人よ、団結せよ!」「(イスラム厳格派)サラフィーは出て行け!」

多くはサッカーの試合に乗じて乱闘騒ぎを起こすフーリガンだ。中東の過激派組織「イスラム国」への抗議を旗印に、昨夏ごろから数百人規模のデモを始めた。
「サラフィーに反対するフーリガン」という独語名の頭文字から、通称「ホゲーザ(HoGeSa)」と呼ばれる。

ホゲーザが世間に知られたのは昨年10月26日、独西部ケルンでの集会だ。約4500人の一部が警官隊と衝突し、警官44人を負傷させ、17人が拘束された。

ホゲーザには組織の実態など不明の点が多い。幹部は、主要メディアの取材を拒否。デモを人種差別や偏見に結びつけて報道するため「信用できない」という理由だ。ハノーバーでは、デモ参加者に取材に応じないよう徹底していた。

「極右が裏でデモをあおっているのは間違いない」
極右組織から若者を脱退させる活動を続けるベルリンの民間団体「EXIT」のベルント・ワグナー代表(59)は、そう断言する。

ワグナー氏は、EXITが「キープレーヤー」と呼ぶ人物が複数、ホゲーザのデモに関与していると指摘する。彼らはネオナチなどの極右と市民をつなぐパイプ役で、ロックバンドとしてデモを盛り上げたり、移動用バスの提供など資金面で援助したりするという。

ワグナー氏によると、1970年代に登場したドイツのフーリガンは、政治への興味は薄かったという。酒を飲み、暴れて憂さを晴らすだけの若者たちだった。

だが80年代、「有望な人材」として極右が目をつけ、自分たちの活動に引き入れるようになった。90年代には「ドイツ至上主義」「カギ十字」を掲げ、外国人排斥などを訴えるフーリガンも出てきたという。

ワグナー氏は言う。「最近の反『イスラム国』の動きは、若者たちの愛国心に火をつけ、政治的に扇動するのに都合がいい。極右が勢力を拡大し、主張を誇示する機会に利用している。主張が世間に受け入れられ、士気も上がっている」【1月20日 朝日】
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ドイツに極右政党「ドイツ国家民主党(NPD)」非合法化の動きなどについては、2013年5月6日ブログ「ドイツ 社会に根深く存在し続けるネオナチズムの影」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130506)で取り上げたことがあります。

また、東西格差への不満を背景に拡大するこうした極右勢力については、2013年10月18日ブログ「ドイツ 東西を隔てる「心の壁」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20131018)でも取り上げました。

偏見や思い込みがもたらす社会の不安を肥やしに、「敵をつくる政治」が台頭
経済的にゆとりが失われると、限られたパイを奪い合う形で、移民への不満が高まります。
一方で、社会から疎外され、経済的にも恵まれない移民の若者には、「大義のために一命をなげうつ」という甘美な誘いが広がります。

そのあたりはドイツでもフランスでも同じですが、ドイツの場合は東西格差という地域性もそれに加わります。

****景気低迷、広がる不満と闇 パリ支局長・青田秀樹****
山積みの花束の先に、ユダヤ人4人が殺害されたスーパーがある。立てこもり事件から10日を数える19日朝も警備は続き、犠牲者を悼む人が足を運んだ。

近くに住むシモーヌ・カイエムさん(60)は「移民がどんどん増えた。我々の税金が貧しい彼らの手当に回るのはおかしい」と考えている。イスラム過激派を名乗った容疑者は、西アフリカ・マリ系の移民家庭の出身だった。

フランスのイスラム教徒には移民が多い。パリ中心部に近いモスクに通うモスタファ・アジさん(40)はテロに不快感を示しつつ、こう話す。「仕事や教育が行き渡れば過激思想に染まりにくくなるだろう。生きる目標がない人は過激化しやすいのでは」

フランスの成長率はゼロ近辺を行きつ戻りつする。失業は10%を超えて高止まり。25歳未満の若者なら25%にも及ぶ。

希望を持ちにくい社会に、すさんだ空気が漂う。テロ後、モスクへの発砲や放火、脅しは100件超。「金持ち」と決めつけられがちなユダヤ人も嫌がらせを受ける。イスラエルへの移住は2年前の3倍、1万人を上回りそうだという。

偏見や思い込みがもたらす社会の不安を肥やしに、「敵をつくる政治」が台頭している。「大量の移民が職を奪う」と訴える右翼・国民戦線(FN)である。(中略)

仏国立統計経済研究所の調査では、モロッコなど北アフリカからの移民の家庭に育った人たちの失業率は25~28%(2010年)。「非移民系」の3倍だ。

「移民は、不法な低賃金の仕事の担い手になる。その存在を利用して、企業は『白人』の賃金を抑えようとする。(低賃金の根源だとして)移民に怒りの矛先が向く」と指摘するのは、反人種差別に取り組むベルギーの「ENAR」のミカエル・プリボ代表(40)だ。「イスラム憎悪は構造問題だ」という。

ただし、暮らしや社会に不満、不安を持つことと、武器を手にとることとの間には、大きな溝が横たわる。しかもイスラム系の移民だけの問題でもない。

南仏トゥールーズのドミニク・ボンスさん(61)の息子は、バカンスと偽ってシリアに渡り、13年に自爆攻撃で死んだという。中流家庭に育ったキリスト教徒だった。イスラムに改宗した。

失業し、大量消費の世相に嫌気もさしていたらしい。「自分探しをしていたようだ」。でも、それがなぜ、「聖戦」で爆弾を身につけての攻撃につながったのかは、分かっていない。

景気の低迷でぎすぎすした社会になり、仕事もなかなか見つからない。そこに「戦士」を探す過激組織の手が伸びやすい。言葉巧みな勧誘が、ネット上に広がっている。【1月20日 朝日】
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ドイツでは、「反イスラム」の拡大に伴う社会の分断に対し、ガウク大統領やメルケル首相も「寛容な社会」実現を呼びかけています。

****反イスラム阻止、ベルリンで集会=独大統領、宗教間の理解訴え****
フランスの連続テロ事件の犠牲者を追悼し、「反イスラム」の動きを阻止しようと、ドイツのイスラム教徒団体などが13日夜、首都ベルリンのブランデンブルク門前で集会を開いた。

ガウク大統領が演説し、「ドイツは移民を受け入れて多様性を増していく」と強調。宗教間の理解の促進を訴えた。

集会には約1万人が参加。

メルケル首相も加わり、近くの仏大使館前で大統領らと共に献花した。

ドイツでは昨年10月から続く「反イスラム」デモに対抗し、「寛容な社会」の実現を呼び掛ける集会が全国に広がっている。【1月14日 時事】 
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ただ、社会の底辺に置き去りにされた移民若者の不満、高まる「反イスラム」の風潮への反発は、第2.第3の事件を容易に惹起します。
そうしたときに、どこまで「寛容な社会」を維持できるか・・・厳しい情勢にも思えます。

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