孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

チャベス・ベネズエラ大統領  「黙れ!」のスペイン国王、隣国コロンビア、宿敵アメリカとの関係

2008-07-26 15:42:32 | 国際情勢

(支持者にこたえるチャベス大統領 “flickr”より By ¡Que comunismo!
http://www.flickr.com/photos/quecomunismo/2039971925/)

【「なぜ黙らないのか」から8ヶ月】
強硬な反米左派でいろんな話題を提供してくれるチャベス・ベネズエラ大統領ですが、昨年11月のイベロアメリカ首脳会議でスペインのアスナール前首相を「ファシスト」と執拗に非難。
これにフアン・カルロス・スペイン国王が「なぜ黙らないのか」と叱責した“事件”が当時話題になりました。
この国王の「なぜ黙らないのか」という言葉は、スペイン語圏の流行語となったそうです。

今月、そのチャベス大統領とカルロス国王が8ヶ月ぶりに再会することになりました。
チャベス大統領は訪欧前のテレビ・ラジオ番組で、「国王を抱擁してやりたい。でもフアン・カルロス、わたしは黙りはしない」と相変わらずでしたが、地中海のバレアレス諸島にある夏の別邸で休養中のカルロス国王と面会した大統領は、「まるでキューバかジャマイカのような暑さだ。ビーチに行きましょう」と親しげに語りかけ、関係修復をアピールしたそうです。【7月26日 毎日】

【ウリベ・コロンビア大統領と差しの会談】
態度・反応がころころと変わるのは、いかにもチャベス大統領らしいところです。
隣国コロンビアとの関係も、断交したり修復したり目まぐるしく変わります。

コロンビアの左翼ゲリラ、コロンビア革命軍(FARC)をめぐっては、コロンビアとベネズエラは互いに非難しあうような関係が続いていましたが、今年3月に実施されたFARCに対するコロンビア軍のエクアドル越境攻撃に対し、チャベス大統領は即刻在ボゴタ大使館を閉鎖、職員を帰国させる事実上の断交措置をとりました。
(エクアドルやニカラグアと違って完全に断交しなかったところがミソでしょうか。)
一時は国境に戦車隊を配置するようなものもしい状況にもなりましたが、ラテン・アメリカらしく、事態は一転して解決へ向かいました。

ただ、両国の関係はその後もすっきりはしていなかったようで、今月11日、コロンビアのウリベ大統領とベネズエラのチャベス大統領は関係正常化を目指して、ベネズエラ北西部の町プントフィホで差しで会談を行いました。
(表向きの非難、険悪な両国関係にも関わらず、両首脳同士の関係は比較的“良好”だとの話を聞いたこともあります。)

会談では、両国国境での協力や貿易が中心に話し合われ、チャベス大統領はこの会談について、「関係緊密化、協力、平和、中南米の一体化などを目指すもの」としています。
いつも対立が取り沙汰されるコロンビアはベネズエラにとってはアメリカに次ぐ貿易相手国で、取引は年間約60億ドル(約6375億円)に達しているという“緊密な関係”が背景にあります。

【「持ちつ持たれつ」の関係】
ところで、“宿敵”アメリカとの関係ですが、ベネズエラにとっては最大の貿易相手国でもあります。
チャベス大統領はブッシュ米大統領を「悪魔」とののしり、対米石油禁輸を再三ほのめかしてきました。
しかし、ベネズエラのアメリカへの原油・石油製品の輸出量は全体の5割を占め、07年の対米輸出額500億ドルのうち95%は原油だったそうです。

また、アメリカが消費する石油の約6割は輸入で、うちベネズエラは3番目に多い11%を占めています。
米会計検査院の06年の報告書によると、ベネズエラが石油禁輸を発動した場合、米国市場の原油価格は8~11%上昇し、ガソリンも高騰するそうです。【7月26日 毎日】

結局、アメリカはベネズエラにとって無視できない顧客、ベネズエラはアメリカにとって現実的には重要な石油供給国で、両国はいわば「持ちつ持たれつ」の関係にあります。

【したたかな外交】
表向き非難しあっても、実利を阻害しないように配慮する。
機会を捉えて、豹変するような関係修復も辞さない。
国と国との関係は、このような“したたかさ”というか“二枚舌”というか、“正論”だけでは片付かないところもあります。

生真面目だけでは外交はうまくいかない・・・ということですが、政策を支える国民にそのような“したたかさ”を受け入れる思慮がなければやむを得ぬところでもあります。
もっとも、チャベス大統領のスタンドプレー的な豹変ぶり、思いつきのような行動は、いささか度が過ぎるように思えますが。


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