孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

コーラン焼却問題  メディア報道の在り方を問う声も

2010-09-14 20:16:55 | 世相

(9月9日 地元イスラム団体の代表者と握手するテリー・ジョーンズ牧師 ただ、あまりに遅きに失しました。彼が播いた憎悪の種はイスラム社会各地に広がり、大勢の死傷者を出す事態となっています。そして、その種をまき散らしたのはメディアの無責任な報道ではないか・・・との意見もあります。“flickr”より By Diario Presencia
http://www.flickr.com/photos/diariopresencia/4976231041/)

【分断の一日】
フロリダの小さな教会の狂信的な牧師の思慮を欠いた行動は、イスラム社会に、そしてイスラム社会との関係を改善しようとする試みに大きな傷を残す結果となりました。
「9.11」を迎えたアメリカは、「グラウンド・ゼロ」近くでのモスク建設問題もあって、「分断の1日」となりました。

****モスク賛否デモ、米分断の「9・11」 コーラン焼却も*****
米同時多発テロから9年となった11日、ニューヨークの現場「グラウンド・ゼロ」周辺では、近くで建設が計画されているイスラム教礼拝施設モスクに対する賛成、反対派がデモを行い、互いに非難し合った。米国の団結を訴えるはずの「9・11」は、一転、分断の一日となった。
11日、グラウンド・ゼロに隣接する公園で被害者を悼む追悼式典が終わると、イスラム教への見方をめぐり、賛成派が「信教の自由」を訴え、反対派は「イスラム教はテロ集団」などと気勢をあげた。

一方、11日にイスラム教の聖典「コーラン」を燃やすとし、注目を集めたフロリダ州のキリスト教会の牧師はニューヨーク入りしたものの、計画は実行しなかった。だが、米メディアなどによると、テネシー州スプリングフィールドで別の牧師がコーランを焼却。この牧師は「コーランは愛ではなく、憎しみの本である」と訴えていると伝えられている。
また、ニューヨークのデモ現場周辺や、首都ワシントンでもコーランを破るなどの事例があったという。【9月13日 朝日】
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【各地で死傷者】
問題のテリー・ジョーンズ牧師は結局計画を中止しましたが、その決断はあまりに遅く、また、類似の行為を誘発しました。
そして、こうしたコーラン焼却の報道はイスラム世界で人々の怒りをかきたてるところとなり、特に、従来よりイスラム系住民と政府当局の間で死傷者を出す緊張関係があったインド北部ジャム・カシミール州では、16人の死者を出す惨事となりました。

****インド:コーラン焼却への抗議デモで発砲 16人が死亡*****
イスラム教徒が多いインド北部ジャム・カシミール州で13日、イスラム教の聖典コーランが米国で焼却されたとの報道を受けて実施された抗議デモの参加者に治安部隊が発砲し、少なくとも16人が死亡、約100人が負傷した。地元警察当局者が明らかにした。重体者が多く、死者数はさらに増える可能性もある。
警察当局によると、イランの衛星テレビが現地時間13日朝のニュース番組で、米首都ワシントンでコーランが焼却されたと報道。これを受け、抗議デモが起きた。

デモ参加者らは同州の少なくとも4カ所で「米国は悪の国」「米国は反イスラム教徒の国」などと反米スローガンを連呼しながらデモ行進。一部が暴徒化し、キリスト教系の学校や政府関連施設に放火。治安部隊は放火をエスカレートさせようとした参加者に向け発砲したという。
同州では今年6月以降、カシミール地方のインドからの分離独立を支持する群衆と治安機関の衝突が繰り返され、約70人が死亡。コーラン焼却報道も加わり、住民の暴徒化が今後さらに拡大する危険性もある。【9月14日 毎日】
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反米感情の強いアフガニスタンでも死傷者が出る事態となっています。
****アフガンのコーラン焼却デモで治安部隊が発砲、9人死傷****
アフガニスタン東部のロガル州で12日、米フロリダ州のキリスト教会がイスラム教の聖典コーラン焼却を計画したことに対する抗議デモが行われ、治安部隊との衝突で2人が死亡した。地元当局が明らかにした。
デモ隊の規模は数百人に上り、外国軍基地の襲撃を警告。これに対して、鎮圧を図ろうとしたアフガン治安部隊が発砲し、負傷者も7人出たという。
アフガン国内では、コーラン焼却計画に反対するデモが続いており、10日にも1人が死亡していた。【9月13日 ロイター】
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インドのジャム・カシミールで多数の死傷者を出す事態となったのは、カシミール地方のインドからの分離独立を求める住民と治安当局の対立が続いていたこと、そして恐らく治安当局側もそうした一連の抗議行動への対応の一環として厳しい対応をとったことによるものでしょう。

【メディア報道の在り方を問う声も】
ジャム・カシミール地元当局は、11日にキリスト教徒の団体が米ホワイトハウスの前でコーランのページを引きちぎる映像を流し、同州のイスラム教徒らの怒りをあおったとして、イラン国営のプレスTVを非難。地元政府は同国のケーブルチャンネルで放映されている同テレビ局の放送を禁止しました。

イラン国営TVの報道は、あきらかに騒ぎを扇動する目的でなされたものですが、一般のマスメディアの報道も、無名の一人の狂信者の行為を全世界に知らしめ怒りを全世界に広げたという意味で、その報道の在り方を問う意見もあります。

****コーラン焼却騒ぎを煽ったメディアの罪*****
無名の牧師の軽挙妄動を世界的大ニュースとして報じたことが、各国の暴動につながった

結局、テリー・ジョーンズ牧師は周りからの圧力、そしておそらくは自分自身の良心に屈した。しかしその決断はあまりにも遅すぎた。
ジョーンズの「コーラン焼却集会」計画(後に撤回)を受けて、インド北部カシミール地方やアフガニスタン、イランなどで抗議デモが発生。デモは暴動に発展し、9月13日までに少なくとも16人が死亡した。
暴動は同時多発テロからちょうど9年を迎えた9月11日の翌日に始まった。世界が宗教過激派との対立は避けねばならないと考えている、まさにその時に。狂信者が起こした9年前のテロが、それから10年近く続く2つの戦争を生み、何十万人もの命を奪っている。この恐怖──愚行と呼ぶ人も多いだろう──は、ごく少数の狂った原理主義者たちの激情から始まった。

今回の流血騒動に火をつけたのは、米フロリダ州ゲーンズビルにある、信者50人ほどの小さなキリスト教会の牧師。ジョーンズは11日、NBCテレビの取材に対して、「今日も、そして今後も」コーランを燃やすことはないと語った。
しかしジョーンズが期待していたであろうイスラム教徒の怒りの炎は、既に燃え上がっていた。こうして9・11テロから9年目の今年は、宗教対立に端を発した暴力で尊い命が無意味な犠牲を払わされた一連の騒動が際立つかたちになってしまった。

狂人がイスラムを侮辱するとき
今回の騒動の責任はメディアにもある。取るに足らない牧師の軽挙妄動を逐一報じることが、どんな公益につながるというのか、報道機関は自分たちの役割について省みる必要があるだろう。ジョーンズが参列者もまばらな教会でコーランを焼こうしたことが世界に知れ渡ったのは、それがニュースとして世界へ発信されたからだ。大ニュースとして扱ったことで、メディアはその後の暴動の発生に手を貸したことになる。
いま問うべき問題は、次に同様の事件が起きたとき、メディアがどんな対応を見せるかだろう。そう、またどこかの狂人が一瞬のスポットライトを浴びたいがために、イスラム教徒を侮辱したり他の人々を挑発する行動にでたときだ。【9月14日 Newsweek】
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今、日中間では尖閣諸島周辺で起きた海上保安庁巡視船と中国漁船の接触事件が焦眉の問題となっていますが、
抗議船を問題海域に出した台湾では、日台交流協会(日本大使館に相当)前に100人あまりが集結して日の丸を燃やしたり破り捨てたりするなどの抗議行動を行ったとか。
こうした映像が日本側で繰り返し放映されることで、感情的な対立がいたずらに高められていくような事態が懸念されます。

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