孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  5月11日で移民流入制限措置「タイトル42」が失効 緊張するメキシコ国境

2023-05-09 22:37:05 | 難民・移民

(メキシコ側から川を渡って来る移民を、馬に乗って阻止する米国境警備隊員ら=2021年9月、米テキサス州(AP=共同)【5月3日 共同】)

【増加する不法移民 緊迫するメキシコ国境】
アメリカを目指す不法移民がメキシコ国境に押し寄せており、その対応にバイデン政権が苦慮していることは、これまでも度々取り上げてきました。

与党民主党内左派には移民への寛容な対応を求める声が強く、バイデン氏自身、大統領選挙ではトランプ前政権の非寛容な対応を批判して政策転換を掲げてきました。

しかし、現実問題としては、寛容な施策をとれば更に大勢の移民が殺到し、アメリカ国内世論が硬化するということがあり、結局、前政権時とあまりかわらない対応に終始しています。

そうした状況でも不法移民流入は止まりません。その過程で、多くの犠牲者が生まれます。今日も、悲劇一歩手前の事態が報じられています。

****貨物列車に100人超の不法移民、メキシコ国境付近 米テキサス州****
米テキサス州のメキシコ国境付近で先週、貨物列車に乗り込んだ100人あまりの不法移民が見つかった。
地元保安官事務所によると、乗務員からの通報で捜査当局者らが出動し、不法入国の外国人100~150人を発見した。

酷暑の中だったが、けが人はいずれも軽傷。1人は列車から降りる時に気を失ったが、地面に落ちる前に捜査当局者らが受け止めた。

車両は極度の高温に達していた。地元当局者は、目的地の同州ユバルディまで乗り続けたら全員死亡していただろうと述べた。

保安官事務所によれば、不法移民の一部は捜査チームが到着する前に逃走したとみられ、列車に乗っていた正確な人数は不明だが、86~90人が操車場で国境警備隊に拘束された。鉄道への不法侵入罪に問われる見通しだという。

米国ではトランプ前政権の下、新型コロナウイルス感染対策として導入されていた不法移民の即時送還措置「タイトル42」が、11日に失効する。これにともない、越境者が急増する事態が懸念されている。【5月9日 CNN】
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記事最後の「タイトル42」失効の件は、後ほど。

流入した不法移民もすぐにメキシコに移され、更に本国へ強制送還されてしまうことで、その不満が爆発することも。

****移民収容施設で火災、39人死亡=送還への抗議発端か―メキシコ北部****
メキシコ北部シウダフアレスの移民収容施設で27日夜、火災が発生し、収容者少なくとも39人が死亡した。原因は調査中だが、本国への送還を懸念した収容者の一部が火を付けたとみられる。

現場は、米国南部テキサス州エルパソと川を挟んで接している国境の街。メキシコ当局などによると、火災発生当時の施設には中南米出身の成人男性68人が収容されていた。29人が負傷して病院で手当てを受けた。

メキシコのロペスオブラドール大統領は28日の定例記者会見で、火災に関して本国送還を知らされた一部の収容者が「抗議」のためにマットレスに火を付けたことから起きたと指摘。「(放火した収容者は)こうしたひどいことになるとは想像していなかった」と語った。【3月29日 時事】
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上記だけではよくわかりませんが、シウダフアレスの移民収容施設に収容されていた移民というのは、アメリカに入ったものの、新型コロナウイルスのパンデミックを理由とする「タイトル42」によって、亡命申請できないままメキシコなどに送り返す「門前払い」された者ではないでしょうか。

一方、不法移民が多く入ってくるテキサス州などの国境地帯では不穏な空気も。

テキサス州ブラウンズビルで7日朝、車がバス停に突っ込みました。地元メディアなどは、8人が死亡、少なくとも11人がけがをしたとしています。付近には移民の避難施設があり、犠牲者の多くはベネズエラ出身者だったということです。【5月8日 TBS NEWS DIGより】

****メキシコ国境・米テキサスで暴走車がバス停突入…8人死亡 “移民侮辱”の言葉も 規制失効で移民流入加速か****
「運転していた男は移民を侮辱していた」メキシコに近いアメリカ南部テキサス州で、車が移民たちに突っ込み8人が死亡した事件、犯行の瞬間の証言です。

メキシコと国境を接するテキサス州で、事件は起きました。(中略)

7日朝、バス停に暴走した車が突入。死亡したのは、保護施設で一夜を過ごしたベネズエラ移民など8人でした。(中略)

目撃者 ベネズエラ出身 ハビエルさん 「理不尽すぎます。被害者の一人は8か国を経て、ようやくここに着いたんです。アメリカンドリームを実現させるために」

車を運転していたのも中南米系の男で、悪意をむき出しにしていたといいます。
目撃者 ベネズエラ出身 ハビエルさん 「『ここから出ていけ、仕事を奪いに来ているんだろう』などと言っていました」

実は現地では。
記者 「川を渡って来た人たちがアメリカ当局に、これから拘束されるものとみられます」

不法入国者が急増し、事件前には非常事態宣言が出されていました。今週、トランプ前政権で始まったコロナ対策に伴う入国規制が失効しますが、移民支援に携わる人は(中略)「移民の入国規制が失効したら、政府は十分な態勢を整えるべきです」

移民流入はさらに加速するとみられますが、テキサス州知事は、新たに450人の州兵を国境沿いに配置し、徹底的に取り締まると発表。さらなる混乱への懸念が強まっています。【5月9日 TBS NEWS DIG】
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【今月11日で「タイトル42」失効】
これまでの記事にもしばしば登場するのが“「タイトル42」失効”という話。

****タイトル42*****
(トランプ)前政権下では20年3月、新型コロナウイルスのパンデミックを理由に、「タイトル42」が発令された。この規則では、米国入りした移民希望者を亡命申請させないまま、メキシコなどに送り返す「門前払い」ができる。

バイデン現政権は今年(2022年)4月、規則を5月に停止すると表明したが、裁判所が認めず、効力は現在も続く。停止されれば、移民希望者のさらなる増加が予想されるため、民主党内にも現状を肯定する意見がある。【2022年10月21日 読売】
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これまで先延ばしされてきた、また、バイデン政権も実質的にそれを容認してきた移民流入制限措置「タイトル42」が、いよいよ5月11日で失効します。

****バイデン政権、メキシコ国境に部隊1500人派遣 不法移民対策で****
バイデン米政権は2日、メキシコ国境からの不法移民流入に備え、国境地帯に軍部隊1500人を追加派遣する方針を明らかにした。

トランプ前政権で新型コロナウイルスの流行を理由に導入された規制措置が11日に失効するのを受け、不法移民の流入が加速すると予想されるための措置。

バイデン政権は、前政権の強硬な移民対策に反対の立場をとってきたが、有効な代替策は打ち出せないまま後手に回っている。

国境地帯にはすでに2500人の部隊が配置されている。国境警備を担う国土安全保障省の要請に基づくもので、新たに派遣される部隊は国境監視や不法移民を収容する施設の運営などに当たる。

ホワイトハウスのジャンピエール大統領報道官は2日の記者会見で、「国防総省は過去20年間にわたって国境警備を支えてきており、(部隊派遣は)珍しいことではない」と述べ、事態を深刻視するべきではないと強調した。

メキシコ国境から流入する中南米系の不法移民を巡っては、共和党のトランプ政権が2020年3月、感染症対策で政府に広範な権限を認める法律を根拠に、拘束した不法移民を強制送還しやすくする措置を導入。バイデン政権はこれを引き継ぎつつも、中南米諸国への支援を強化することで不法移民の発生そのものを抑制する方針をとってきた。

だが、不法移民の流入に歯止めはかからず、昨年は国境で拘束された不法移民数が5月だけで22万人超に上るなど過去最多規模で推移。同措置が失効する今月11日以降はさらに増加すると見込まれている。

24年大統領選での再選を目指すバイデン大統領としては、軍部隊を追加派遣することで、不法移民問題で過度に「弱腰」だとの批判を受けることを回避したい思惑もあるとみられる。【5月3日 産経】
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【バイデン政権 類似制度創設で実質的に移民を締め出すことを検討しているとも】
現実世界で問題となるは、移民対応の在り方云々というより「選挙」 大統領選挙を前に不法移民殺到といった事態になれば、バイデン氏・民主党にとっては苦しい展開ともなります。

失効する「タイトル42」と似たような新制度を創設することが検討されているとも報じられています。

****米バイデン政権、不法移民の送還継続へ新措置****
ジョー・バイデン米大統領は選挙期間中に、迫害を逃れて米国への難民を希望する人々の受け入れに努めることを誓った。

だが大統領就任から2年がたった今、選挙公約とは裏腹に、メキシコ国境に押し寄せる難民希望者の抑制を目指す新制度の策定に動いている。こうした方針転換は幅広い政治的シフトを反映したものだ。

新型コロナウイルスの感染拡大対策として不法越境者の送還を認める「タイトル42」という措置を導入してから3年。数十年にわたり難民希望者に認められてきた権利を聖域としない将来について、民主・共和両党の議員とも違和感を抱かなくなりつつある。

バイデン政権はタイトル42が11日に期限を迎えた後、同様の措置を導入する計画だ。既存の法律は難民希望者の不法越境を明確に認めているが、新たな措置では不法越境者を直ちに厳しい難民基準で審査することになる。

審査基準はほとんどの申請が通らないよう設計されており、通過しなかった人は母国またはメキシコに送還されることになる。【5月9日 WSJ】
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民主党党内では揉めるかも。

【ゼロコロナ政策で急増した中国人不法移民】
コロナ禍では、ゼロコロナ政策を嫌気して、メキシコ国境を超える中国人移民も急増したとか。

****ゼロコロナ余波か、メキシコから米国目指す中国人移民が急増 SNS駆使して情報交換****
中南米を陸路で横断し、メキシコ国境から米国を目指す――。ラテンアメリカからの移民の多くが使うルートであるが、米税関国境警備局(CBP)によると過去半年間で、このルートで米入国を目指す中国系移民が増えているという。 

米メキシコ国境で最近よく見られる光景――米国境警備隊員の聴取を受ける、中国出身者の長い列だ。 
「ここの人たち、ここの警察はとても親切だ。これこそ私が思い描くアメリカだ」 

中南米を経由して、メキシコから陸路で非正規に米国へと渡る中国人移民が増えている 。ロイターは3週間にわたって取材を重ね、テキサス州南東部で数百人の中国人を目撃した。そのうちの20数人から話を聞くことができた。

取材に応じた全員が、陸路で移動することを思いついたきっかけはソーシャルメディアだったと語った。インフルエンサーやプライベートグループ、コメントなどの情報を参考に、渡航計画を立てたという。 

取材に応じてくれた人々は、顔の部分をぼかしてある。 「私はまず湖北から香港に行き、香港からタイに飛行機で渡った。さらにタイからトルコに飛行機で飛び、エクアドルから南米を経て、米国を目指した」 

駐米中国大使館は、メールで次のように述べた。中国政府は不法移民には反対の立場であり、それは「国際的な問題であり、多国間の協力が必要だ」としている。 

中国経済がゼロコロナ政策の余波を受ける一方、米国のビザ取得が困難であることから、メキシコ国境から米国を目指す中国人が急増しているのだ――移民問題の専門家や弁護士、現役およびOBの米政府関係者らは、そう指摘する。 

移民問題に詳しい弁護士はこう話す。 
弁護士 シャオシェン・ファン氏 「中国は非常に厳しいゼロコロナ政策をとっていた。基本的にすべてが閉鎖され、住居も閉ざされ、職場も閉ざされ、国全体が閉ざされた。国民は家でずっと壁を見つめているわけにはいかない。生活するためにお金を稼がなければならない。住宅ローンを払い、食費を稼がなければならない。なのにその機会がなくなった」 メ

キシコ国境で検挙された中国人は、2022年10月からの半年間で6500人以上に達した。これは米税関国境警備局(CBP)が発表した資料によるものだ。

米南西部の国境に到着する数十万人の移民の、ほんの一部に過ぎないが、CBPによると、中国人はこの半年間で最も急増した。

中国人の移民の中には、靴の選び方から信頼できる現地ガイドの探し方、そして支払い方法など移動に関する細かい情報を、SNSに頼る人も。多くの移民が利用するのが、TikTokの中国国内版ともいえるショートビデオアプリ「抖音」だ。(後略)【5月2日 ロイター】
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ただ、中国もすでにゼロコロナを止めて、中国経済も変化している最近でも、中国人不法移民がまだいるのでしょうか?

それにしても、米中対立が険しい今日、「中国に強制送還されたら収容所送りになる」と移民から言われたら、アメリカ当局も・・・・どうするのでしょう?

もっとも、中南米出身者については、送還後どうなろうが、飢え死にしようが、ギャングに殺されようが、「知ったことではない」と強制送還していますけどね。
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