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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  水責めなどの“過酷な尋問”をめぐり、オバマ大統領とチェイニー氏が論戦

2009-05-22 21:53:57 | 世相

(水責めのデモンストレーション 拷問に反対する催しですから、実演している恐そうな方も、実際は拷問に反対する優しい方なのです・・・多分。
“flickr”より By isa e
http://www.flickr.com/photos/isa_e/2023183793/)

【“自国の価値観と理想”】
オバマ大統領は就任直後の1月、テロ容疑者に対する「水責め」などを禁じる大統領令に署名。
4月16日には、司法省法律顧問がCIAに渡した、「水責め」などを裏付ける覚書(2002~05年の文書4件)の公開に踏み切りました。
一方、ブッシュ政権時のチェイニー副大統領は、水責め等の正当性を主張しています。

****対テロ政策めぐり火花=オバマ大統領とチェイニー氏-米****
キューバ・グアンタナモ米軍基地のテロ容疑者収容所閉鎖の是非など米国の対テロ政策をめぐり、オバマ大統領とチェイニー前副大統領が21日、それぞれ演説して火花を散らした。オバマ大統領は、前政権の政策が米国の価値を傷つけ、結果的にテロリストを増殖させたと主張。一方、チェイニー氏は第二の同時テロを防いだと正当性を強調した。

国立公文書館で演説したオバマ大統領は「最も大切な米国の価値観を守ることが、平時も戦時も、国の安全を守る上で最高の資産となる」と強調。収容所での処遇や中央情報局(CIA)による過酷な尋問が「法の支配を損ない、米国に対する世界の支持を失った」と指摘した。
一方、直後にワシントン市内で講演したチェイニー氏は「当時、情報機関に合法的な権限を与え、テロを防ぐ有益な情報を得ることができた」と成果を訴えた。【5月22日 時事】
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オバマ大統領は4月20日にCIA本部を訪れ「米国が特別なのは、脅威にさらされている厳しい時代にあっても、われわれが自国の価値観と理想を積極的に支持するためだ」とコメント。
法の順守は国際テロ組織アルカイダなどへの対応を一層困難にするものの、米国が最終的に勝利し、歴史的に評価されるだろうとの見解を示しています。【4月21日 CNN】
また、4月29日、就任100日目あたって行った記者会見で、テロ容疑者に対して行われた「水責め」を正当化するためブッシュ前大統領が用いた法解釈は「間違い」で、水責め行為は「拷問だ」と明言しています。【4月30日 AFP】

チェイニー前副大統領は5月10日、米CBSテレビの番組で、過酷な尋問によって国際テロ組織アルカイダのテロ容疑者から引き出した情報によって、「数千人、数十万人の米国民の命を救ったと、全面的に確信している」と述べ、ブッシュ前政権が容認した水責めなどの尋問手法を「後悔はしていない。まったく正しいことだったと思っている」「容疑者の抵抗を打ち破るために必要不可欠のものだった」と正当化しています。【5月11日 AFP】

【「セ氏5度以上」】
“水責め”の具体的な方法についてはあまり記載されていませんが、“ホルダー米司法長官は3月2日、ワシントン市内で講演し、国際テロ組織アルカイダのテロ容疑者らに自供させるため、口や鼻に大量の水を注ぎ込む過酷な尋問法「水責め」について「拷問であり、わたしが長官である限り、これを正当化したり容認することはない」と約束した。”【3月3日 産経】とあり、大体“水責め”という言葉から連想するような内容だったようです。

その回数などについては、
****米CIAの尋問、アルカイダ被告に水責め183回****
米中央情報局(CIA)が、9.11米同時多発テロ事件の主犯格の1人とされる国際テロ組織アルカイダのハリド・シェイク・モハメド被告に対する尋問で、183回に及ぶ水責めを行っていたと、20日の米ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。
また、同じくアルカイダ幹部として拘束されたアブ・ズベイダ容疑者には83回の水責めが行われたという。

同紙は2005年の米司法省関連の覚書を引用し、この2人に行われたとされる水責めを使った尋問の回数が、これまでに報道されていたよりもずっと多かったことを示した。また、元CIA職員のジョン・キリアコウ氏が2007年に、ズベイダ容疑者に行った水責めは、同容疑者に知っていることをすべてを自白することに同意させるために行った35秒間だけだったと、報道機関などに語っていた点も指摘した。(後略)【4月20日 AFP】
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なお、アルカイダ幹部として拘束されたアブ・ズベイダ容疑者は、ただの物資調達係りだったようです。【4月29日 Newsweek日本語版】

アブ・ズベイダ容疑者の尋問については“手錠をかけられたまま、1週間睡眠を奪われ、壁に叩きつけられ(ただし、「非常に硬い壁ではなく、回数も20~30回以下」)、何度も冷水(ただし、「セ氏5度以上」)を浴びせられた・・・とのことです。【4月29日 Newsweek日本語版】
「 」書きは、公開された覚書にある、CIAからのお伺いに対して司法省法律顧問が行った拷問禁止規定に抵触しないための法的助言です。
水責めには、「セ氏5度以上」の冷水をホースやバケツで浴びせる・・・という内容も含むようです。
“口や鼻に大量の水を注ぎ込む”方法よりは、はるかに人道的な方法です。
逃げられない者の顔面に強い水圧で長く浴びせれば同じかもしれませんが。

【虫責め】
アブ・ズベイダ容疑者は虫嫌いだったようで、それを知ったCIAは“狭くて暗い箱に閉じ込め、昆虫を体に這わせる”という“虫責め”についても司法省にお伺いをたてています。
司法省の回答は「毒虫を入れると通告すれば不当な脅迫だが、何も告げず、無害な虫と一緒に閉じ込めるだけなら問題ない」というものでした。こうした尋問方法は「妥当な判断力を持つ人間を深刻な肉体的苦痛に直面させることにはならない」ということです。

いささか滑稽な問答ですが、虫嫌いの私からすれば“拷問”以外のなにものでもありません。
結局、この“虫責め”は実行されなかったそうです。【4月29日 Newsweek日本語版】

【美学の問題】
映画やTVドラマのヒーローが悪人の頭に拳銃をつきつけ「三つ数えるまでに、話せ」と迫る類のシーンはよく見かけ、多くの視聴者はそれを受け入れています。
もっとも多くの場合、怯えた悪人は秘密を話し、頭を打ち抜かれることもありませんし、銃には実際には弾が入っておらず、撃つつもりもなかった・・・という流れになりますが。
悪人が話さず、実際に頭を打ち抜いたら、世間が認める“ヒーロー”たりうるかは疑問です。

非人道性を批判することは容易ですが、テロの危機も考えられる場面で、“拷問”あるいは“過酷な尋問”をどのように評価するかは迷うところもあります。
水責め尋問は逆効果だった・・・という話には、ほっとするところがあります。

****アル・カーイダ水責め尋問「逆効果だった」…FBI元捜査官****
米上院司法委員会は13日、ブッシュ前政権下での「過酷な尋問」に関する公聴会を開き、国際テロ組織アル・カーイダ幹部を取り調べた連邦捜査局(FBI)の元捜査官は「水責めなどの尋問手法は逆効果だった」と証言した。
チェイニー前副大統領などは、過酷な尋問は「次なるテロの阻止に役立った」と主張しており、当事者の証言は尋問論議に一石を投じそうだ。
この元捜査官は、2002年3月に逮捕されたアル・カーイダ幹部のアブ・ズベイダ容疑者を尋問したアリ・スーファン氏。
証言によると、元捜査官は信頼関係の構築などを基本とする通常の方法で尋問し、アル・カーイダ最高幹部ハリド・シェイク・ムハンマド容疑者(逮捕済み)が米同時テロに関与していたなどの有力情報を自白させた。
ところが、中央情報局(CIA)に委託された民間取調官が続いて尋問を担当した際、水責めを行った結果、ズベイダ容疑者は口を閉ざしたとされる。元捜査官は「過酷な尋問は非効果的だ。アル・カーイダ打倒の取り組みに有害となる」と主張した。【5月15日 読売】
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“過酷な尋問”の効果の有無にかかわらず、「米国が特別なのは、脅威にさらされている厳しい時代にあっても、われわれが自国の価値観と理想を積極的に支持するためだ」「最も大切な米国の価値観を守ることが、平時も戦時も、国の安全を守る上で最高の資産となる」と、毅然とすることは勇気のいることです。
個人的にはそのような姿勢を評価しますが、日本において世間のみながそれを受け入れてくれるかどうかについては自信がありません。


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