孤帆の遠影碧空に尽き

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スリランカ  北部州議会選でタミル人政党圧勝  懸念される自治権拡大を目指す州政府と中央政府の対立

2013-09-28 20:47:04 | 南アジア(インド)

(9月21日 投票所に訪れた地元住民と警備にあたる治安要員 “flickr”より By Vikalpa | Groundviews | CPA http://www.flickr.com/photos/14744574@N03/9859180845/in/photolist-g2dSYD-g2e4CW-g2dXT7-g2e6eG-g2dYtW-g2e1dN-g2dW9s-g2eu8K-g2dXhZ-g2dKVu-g2ecTv-g2e2vY-g2ekYt-fTLFx4-fTLNsf-fTMifM)

スリランカでは、かつて政府軍と少数民族タミル人反政府武装勢力「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」の間で戦われた7万人以上の犠牲者を出す激しく長い内戦の舞台となった北部州で、9月21日、初の州議会選の投票が行われました。

この選挙、および北部の中核ジャフナの現況などについては、9月20日ブログ「スリランカ タミル人居住エリアの北部州で内戦後初の州議会選挙実施」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130920)で取り上げたところです。

同地域は住民の95%がタミル人であり、予想されたように少数派タミル人による政党「タミル国民連合」(TNA)が圧勝しました。

****タミル人政党が圧勝=25年ぶりの北部州議会選―スリランカ****
四半世紀にわたる内戦の舞台となったスリランカ北部州で21日、25年ぶりとなる州議会選挙が行われ、少数派タミル人による政党「タミル国民連合」(TNA)が38議席中30議席を獲得して圧勝した。

2009年の内戦終結後も多数派シンハラ人主体の中央政府の直轄統治下に置かれていた同州で、タミル人が一定の自治権を獲得したのは初めて。
選挙管理委員会によると、投票率は67.5%だった。

TNAは州首相を選出する権利を得たが、大統領に任命される州知事は与党出身で、専門家は「『ねじれ』状態の中、どこまでタミル人の自治が拡大されるかは不透明だ」と話す。【9月22日 時事】 
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“州首相に就任予定のTNAのウィグネスワラン元最高裁判事は記者会見し、タミル人と、国内では多数派のシンハラ人との和解について「われわれは同じ国の市民だ」と述べ、北部州の独立を目指さないことを強調した上で、連邦制の導入を訴えた。”【9月23日 産経】とのことです。

しかし、“TNAは、憲法でうたわれる警察や土地開発、財政権限の州政府への委譲を履行するよう求めている。こうした権限は、国内にタミル人を抱えるインドの圧力で内戦中に憲法に盛り込まれた条項だが、実施は棚上げされてきた。ラジャパクサ政権はタミル人による分離・独立運動の高まりを警戒、憲法修正の動きを見せている。人権問題で欧米やインドの批判を浴びるラジャパクサ政権が、タミル人への権限委譲に逆行する憲法修正を本格化させれば、いっそうの反発を招く可能性がある。”【9月20日 産経】とのことで、今後、シンハラ人主導のラジャパクサ政権と自治権拡大を目指す州政府が激しく対立する恐れも指摘されています。

****内戦終結4年 スリランカで初の北部州議会選 根深い政府不信、和解遠く***
スリランカで政府軍と少数派民族タミル人の反政府武装勢力、タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)との内戦が終わって4年余りがたつ。

LTTEがかつて支配した北部州では今月21日、同州創設以来初めての州議会選が行われ、復興を印象づける一里塚となった。

しかし、多数派民族シンハラ人が支配する政府や軍へのタミル人の不信感は強く、和解への道は遠い。

エメラルド色に輝くサンゴ礁の海を望む北部州の州都ジャフナでは、内戦で破壊された建物におびただしい銃弾の痕が残る。アナンディ・サシタランさん(42)はこの町でタミル人野党、タミル国民連合(TNA)から州議会選に立候補して当選し、TNAを勝利に導いた。

夫が元LTTE幹部で、終戦時に行方不明になっているサシタランさんは投票前日の20日、軍やラジャパクサ政権与党支持者に自宅を襲撃されたと訴えた。

軍車両4、5台で乗り付けた約70人の武装集団に取り囲まれ、自身はかろうじて脱出したものの残った支持者らが棒などで殴られたといい、10人が病院に運ばれた。「襲撃犯の多くは顔を知っている与党支持者だった。上着だけ軍服の軍人もいた」と証言する。

弁護士のスガーシ・カナガラトラムさんは「選挙で勝つつもりかと銃で脅され殴られた。国際社会やメディアにこのことを話せば殺すといわれた」と訴えた。

軍は事件への関与を否定するコメントを発表し、真相は判然としない。だが、サシタランさんが「軍は内戦の生き証人である私を殺そうとしているに違いない」と話すように、タミル人の政府や軍への不信感が今も根強いことは確かだ。

 ■軍の監視に恐怖感
実際、北部州の多くのタミル人は、常に軍情報機関の監視の目を恐れている。

内戦当時、非政府組織(NGO)で働いていた40代の男性、Kさんもその一人だ。「タミル人は外国メディアに話をすると、後で情報機関から何を言ったのかと尋問される。にらまれると、車ではねられて死んだり行方不明になったりすることさえある。自由に話もできない」と打ち明けた。

Kさんは政府軍への恨みを忘れていない。内戦の最終局面でつらい目に遭っているからだ。LTTEは2009年5月の政府軍の攻勢で消滅し、内戦の最終段階では多くの市民が巻き添えになって死亡した。

Kさんは妻と子供2人を連れて逃げ回り、政府軍の砲撃で右足を失った。以来、義足を使っている。妻も病院内に避難していたときに政府軍の銃撃を受け、背中を負傷した。

国連の報告はLTTEが市民を「人間の盾」にしたとしている。しかし、Kさんは「私たちはLTTEとともに追い詰められていっただけだ。盾にされたとは思っていない」とLTTEを弁護した。

タミル人は北部州では人口の95%を占める多数派で、Kさんのように政府軍よりLTTEに好感を持ち続けている人は少なくない。

かつてLTTEの武装闘争路線を支持したTNAは州議会選で圧勝し、自治権拡大への期待が高まっている。Kさんも「シンハラ人に何も決められたくない。北部州は独立すべきだ」と話した。

 ■自治権拡大が望み
ただし、TNAが求めているのは独立ではなく、自治権拡大と連邦制だ。憲法にうたわれている警察や土地開発の州政府への権限委譲の履行を重視する。

北部州の警察官の大半はシンハラ人で、タミル人住民からは「言葉が通じず、とりあってくれない」との不満が強い。TNAは「治安維持をタミル人の手で」と主張している。

また、内戦の舞台となった北部州には軍の大規模基地があり、兵士15万人が配置されている。国内避難民は10万人以上に達し、土地を軍に奪われた多くのタミル人が政府に補償を求めている。内戦中には、軍人が多くの女性に暴行したり殺害したりしたといわれる。

州議会選で、TNAの州首相候補として当選したウィグネスワラン元最高裁判事は「軍は土地や女性に手を出した。まずやるべきことは、軍を出てゆかせることだ」と語った。

もっとも、政府は北部州のために何もしなかったわけではない。中国とインドの支援で幹線道路と鉄道が整備され、昨年の北部州の域内総生産(GDP)成長率は前年比22%も伸びた。
逮捕したLTTEの元メンバーのうち約1万2千人に社会復帰教育を施し、釈放したと発表している。

 ■「生活は悪化の一途」
しかし、こうした政策にもタミル人の不満の種がくすぶる。あるビジネスマンは、「タミル人が求めているのは支援による経済開発より、開発の能力を高める教育や制度だ。政府はタミル人に経済力を持たせないようにしている」と話す。

終戦後に逮捕され、社会復帰教育を受けて釈放された30代の元LTTEメンバーの男性も、「職業訓練を受けて仕事を約束されたが、給料は払われなかった。LTTEが支配した時代の方が物価が安く、今は暮らし向きが苦しくなるばかりだ」とこぼした。

LTTEの元メンバーには、政府支持者に転向した人もいる。広報担当者だったダイアマスター氏(57)はLTTEの思想を放棄し、一時は州議会選で与党側からの立候補を目指した。
そんな彼ですら、「シンハラ人中心の軍とタミル人の和解は果たさなければならないことだが、今回の選挙でもたらされることはないだろう」と悲観的な見方を示した。

それどころか、スリランカのラジャパクサ政権は、州議会選で一定の権利を得たタミル人に、独立運動の高揚を警戒して監視網をいっそう厳しくするとの見方が強い。

豊かな観光資源が眠るジャフナ。砂浜で貝を採っていたアルチャナさん(30)は、「終戦で逃げ回らなくてよくなったことはうれしい」と話した。真っ白なビーチが観光客で埋まる日は、いつになれば来るのだろうか。【9月27日 産経】
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軍の主要基地などが置かれ、村の人たちが立ち入れない地域(ハイ・セキュリティ・ゾーン:HSZ)が残されている状況、HSZを正式に政府の土地として接収しする政府方針に対する住民側の反発、復興は進んではいるものの、必ずしも地元住民の暮らしを改善させる状況にないこと・・・などは、前回ブログでも取り上げました。

シンハラ民族主義の傾向が強く、内戦においても国際社会から批判を浴びる強引な作戦を強行したラジャパクサ大統領のこれまでの言動を考えると、タミル人への権限委譲がスムーズに進むとは思えません。
“ジャパクサ政権と自治権拡大を目指す州政府が激しく対立する恐れ”は多分現実の問題となるでしょう。

日本はかつては最大の支援国であり、ラジャパクサ政権の人権侵害を批判する欧米とは一線を画する対応をとってきました。
内戦終結後は、内戦中に影響力を増した中国を意識して、関係強化を目指しています。

****スリランカと関係強化 麻生副総理が大統領と会談*****
麻生太郎副総理兼財務相は2日、訪問先のスリランカでラジャパクサ大統領と会談し、経済協力などの関係強化で一致した。

副総理は内戦が続いたスリランカの国民和解の進展を求めるとともに、同じ海洋国家として沿岸警備隊の能力向上などへの協力を約束した。

地政学上重要な位置にあるスリランカに中国が投資や援助を増加。麻生副総理は会談後、記者団に、「国民和解が進み、治安が安定し、経済成長が続くのであれば、日本として一層の協力をする用意があると伝えた」と話した。

スリランカは2009年の内戦終結後、高い経済成長率を維持し、1人当たりの国内総生産(GDP)は南アジア主要国の中ではトップ。

だが、内戦後も少数民族タミル人への人権侵害があるとして欧米諸国などから批判されている。日本政府は欧米との橋渡しをすると同時に、インフラなど投資環境の整備面で協力する考えだ。【5月2日 共同】
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スリランカ北部復興に日本政府・日本企業も、これまで以上にかかわることになると思われます。
その際、“国民和解の進展”にも留意してもらいたいものですが、無理な注文でしょうか。

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