孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  今後を占う大規模作戦「オペレーション・ムシュタラク」

2010-02-13 11:26:31 | 国際情勢

(昨日2月12日アフガニスタン東部Dwamundaで撮影された少女 彼女の見つめる先にはどんな明日があるのか・・・。
“flickr”より By Wayne_Speek
http://www.flickr.com/photos/theeodguy/4351182307/in/set-72157622943402057/)

【アフガニスタン軍と共同で、事前公開作戦】
ロンドンで1月末に70カ国ほどが参加して開かれたアフガニスタン支援国会議は、アフガニスタンが掲げる国際治安支援部隊(ISAF)からの「5年以内の治安権限移譲」終了の目標を支持する声明を採択しました。
声明は、段階的な治安権限移譲について「条件が整えば」今年中にも「いくつかの州」で実施されるとし、カルザイ政権による「5年以内に治安確保の責任を負う」という目標を歓迎したと報じられています。
また、カルザイ大統領は、イスラム原理主義勢力タリバンの穏健派の社会復帰を促し、政治的和解を図ることで国家再建を目指す方針を表明しました。

こうした“楽観的”な見通しに対する疑問などは、2月1日ブログ「アフガニスタン 支援国際会議でタリバンとの政治的和解を進める方針」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100201)でも取り上げたところです。
そのアフガニスタンで、カルザイ政権の見通しとアメリカ・オバマ政権の3万人増派による出口戦略の今後を占うとも言える作戦が行われようとしています。

****アフガン:米軍など近く南部のタリバン拠点に大規模攻撃*****
アフガニスタン駐留米軍とアフガン軍などは近く、反政府武装勢力タリバンの支配地、南部へルマンド州マルジャに約1万5000人を投入し、大規模な軍事作戦を展開する。オバマ米政権発足後、タリバンに対する最大級の攻撃で、2011年7月までの米軍撤退開始を目指すアフガン戦略の成否を占う戦いとなる。

人口約8万人のマルジャは、タリバンの資金源とされる麻薬の大生産地。今回の軍事作戦には二つの特徴がある。アフガン軍の本格的な参戦と、作戦の異例の事前広報だ。
展開する約1万5000人のうち、半分はアフガン軍で構成され、米海兵隊1個大隊につきアフガン軍の1個大隊が同行する。米軍撤退の鍵を握るアフガン軍の能力が初めて試されることになる。
またアフガン駐留米軍のマクリスタル司令官は4日、軍事作戦を認めた上で、「どれだけのタリバン兵士を殺害するかには興味がない」と語った。金で雇われて戦闘に参加しているタリバン兵士に対し、投降を呼びかける目的があるとみられる。現地では攻撃を知らせる大量のチラシが配布されているという。

一方、地元のタリバン司令官は米紙ニューヨーク・タイムズに「アフガン軍や外国軍と戦うため、兵士を総動員する」と徹底抗戦を宣言。また事前の広報で、米軍を苦しめている手製爆弾(IED=即席爆破装置)を仕掛ける余裕をタリバンに与えた可能性もあり、激しい戦闘になるのは必至だ。【2月12日 毎日】
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【住民には避難呼びかけ】
今回作戦は、上記のような米軍撤退の鍵を握るアフガニスタン軍の能力が試されること、タリバン兵士に対し投降を呼びかける目的があり事前公開の形で行われることといった特徴がありますが、更に、事前公開することで、地域住民に避難等を呼び掛け、できるだけ民間人被害を減らそうとする意図もあるようです。

****駐留米軍ら大規模軍事作戦を開始、アフガニスタン****
作戦は「オペレーション・ムシュタラク(Operation Mushtarak)」と呼ばれる。ムシュタラクとはアフガニスタンの公用語の1つダリー語で「一緒に」という意味。ヘルマンド州では前年夏に約4000人の米軍が夜間急襲作戦「オペレーション・ダガー(Operation Dagger)」を実施し、要地に拠点を設けた。その後米軍とアフガニスタン軍は地元の長老たちと話し合い、部隊はこの地にとどまり、アフガニスタンの中央政府はタリバンよりもよい将来を地元に提供すると話してきた。
約12万5000人が暮らすマージャとその周辺の地域は麻薬取引に携わる武装勢力に支配されてきた。前年夏の作戦とは異なり今回の作戦は実施前からその計画が公に語られ、米海兵隊、NATO軍、アフガニスタン軍の約1万5000人がこの地に集結している。作戦開始前に避難した住民も多いが、NATOは残った住民に戦闘が始まったら屋外に出ないよう呼びかけている。これはアフガニスタンで成功するためには民間人の犠牲者をなんとしても避けることが不可欠だと米国とNATOが認識しているからだろう。
今回の作戦にアフガニスタン政府と諸外国がかける期待も大きく、軍部隊は米国をはじめとするアフガニスタンを支援する国が求める起死回生の成果を上げることが求められている。【2月13日 AFP】
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【軍事力の限界】
アフガニスタンの現況については、以下のような分析が報じられています。
****アフガン:タリバン影響地区5倍に 犠牲増えると英戦略研*****
英国の有力シンクタンク国際戦略研究所(IISS)は3日、各国の軍事力や地域情勢を分析した報告書「ミリタリー・バランス2010」を発表、アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが03年~08年末の間に全国で364ある行政区のうち、影響力を保つ地区を30から160に拡大させたと指摘した。
アフガン駐留外国兵とアフガン人の犠牲者がこれからも当面増え続けるとし、駐留軍は現在「先の見通しが立たない段階にある」と厳しく分析。また、隣国パキスタンが同国内のタリバン勢力を抑え込めるかが、アフガンの治安安定にとって「極めて重要」とした。
報告書は、外国部隊がタリバンとの個別の戦闘のほとんどで勝っているとしており、軍事力だけでは影響力拡大を防げない実態が鮮明になった。
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“個別の戦闘のほとんどで勝っている”にもかかわらず、タリバン支配地域が拡大していく・・・軍事力の限界を示すものです。
今回「オペレーション・ムシュタラク」で意図されている、タリバン兵士の投降促進、民間人犠牲の抑制による地元住民の反発を和らげることできるかが、カルザイ政権にとっての明日、アメリカにとっての“出口”にとってのカギとなります。
また、アフガニスタン軍が独自の力で機能できるかもの重要なポイントです。

タリバン兵士が投降・和解に応じるかどうかについては、彼らはイスラムの信義や復讐のため戦っており、金銭などによる投降・和解はあり得ないとする意見、タリバン側は兵士に政府軍より高給を支給しており、金銭や雇用、身の安全などで交渉の余地があるとする意見、双方あるようです。
タリバン兵士も、いったん投降すると“裏切りもの”として生命の危険にさらされるということもありますので、そう簡単な決断ではありません。

もちろん問題はこれら以外にも山積しています。
投降したタリバン兵士を吸収できる雇用の創出、復興促進・治安改善による国民の支持拡大、政権内部の腐敗・汚職体質の改善・・・。
まあ、全部を一挙にともいきませんので、とりあえずは今回作戦の成否が注目されるところです。


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1 コメント

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Unknown (cnvvlty)
2010-02-16 19:05:21
誤爆という名の殺戮が続いています。作戦という名の単なる大量殺人だと思います。人を殺して解決する物事が本当にあるのでしょうか?
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