孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ベネズエラ  国内外からの批判にも強気姿勢のマドゥロ大統領 事態を動かす可能性があるとしたら・・・

2024-08-30 23:03:31 | ラテンアメリカ

(28日、カラカスで演説するベネズエラの野党指導者マチャド氏(中央)【8月29日 時事】
ただ、事態を動かすには軍部内部からの離反が必要かも)

【選管幹部が不正告発 最高裁は選管発表支持】
南米ベネズエラのマドゥロ大統領が選挙結果を捏造して(確定的な証拠はありませんが、状況的には真っ黒)居座っていることは、8月11日ブログ“ベネズエラ 国内外の選挙結果捏造批判にも居座るマドゥロ大統領 残された選択肢は国を去ること”でも取り上げました。

状況はその後も変わりませんが、選管内部からの不正告発も出ています。

****ベネズエラ選管幹部が告発 選挙不正を暴露、政権に逆風****
ベネズエラの選挙管理当局幹部が26日、7月の大統領選で複数の不正行為があったと内部告発し、現職マドゥロ大統領が勝利したとの結果は「透明性と真実性を著しく欠いている」と批判した。選管内からの暴露は、選挙の正当性を唱える政権にとって逆風となりそうだ。

告発したのは選管当局の委員5人のうちの1人、フアンカルロス・デルピノ氏で、X(旧ツイッター)に文書を掲載した。

デルピノ氏は、投票締め切り後に野党側の監視員が立ち退かされたことは「重大な規則違反」だと指摘。投票結果の送信が中断されたことも問題視し、政権側が原因に挙げたサイバー攻撃によって「正当化された」と訴えた。【8月27日 共同】
***********************

フアンカルロス・デルピノ氏は中央選管に相当する全国選挙評議会(CNE)委員5人のうちの一人で、野党に近いとされる人物とか。

ただ、権力機構の一員たる最高裁は、マドゥロ勝利の選管発表を支持しています。根拠はわかりませんが。

****「現職当選」司法も認定=最高裁が選管発表支持―ベネズエラ****
ベネズエラ最高裁は22日、先月行われた同国大統領選で反米左派の現職マドゥロ大統領が当選したことを認める判断を下した。

統一候補の当選を主張する野党陣営との対立が続く中、選管当局の発表を司法が支持したことでマドゥロ氏3選の既成事実化が進んだ。3期目の任期は来年1月からの6年間となる。

選管の発表への反発が広がる中、裁判所を掌握するマドゥロ氏が司法判断を出すように求めていた。ロドリゲス最高裁長官は判決文を読み上げ、選挙の物証に関して「正当性に異論の余地はない」と言明し、マドゥロ氏を当選とした選管の見解を有効と認定した。

選管は、マドゥロ氏が約52%の得票率で当選したと発表。しかし、開票の詳細は公表しておらず、不正を指摘する声が野党陣営から上がっている。【8月23日 時事】
********************

マドゥロ大統領は主要閣僚の大幅な入れ替えを実施。批判の矛先をそらす狙いもあるとも。

****ベネズエラ大統領が主要閣僚入れ替え 選挙不正批判そらす狙いも****
ベネズエラのマドゥロ大統領は27日、主要閣僚の大幅な入れ替えを実施した。先の大統領選におけるマドゥロ氏の勝利に野党や国際社会から疑念や批判の声が広がる中で、こうした論争から注目をそらす狙いもあるとみられる。(後略)【8月28日 ロイター】
*******************

【国内外からの不正選挙批判は続いているものの、事態を動かすには至らず】
国内外からの批判も続いています。

****EU、マドゥロ氏の「民主的正当性」否定 ベネズエラ大統領選****
欧州連合(EU)加盟国の外相らは29日、ベネズエラのマドゥロ大統領の「民主的正当性」を受け入れないとの認識で一致した。ボレル外交安全保障上級代表(外相)がEU外相会議後に発表した。

ボレル氏は、ベネズエラの選挙管理委員会に対して、7月28日の選挙でのマドゥロ氏の勝利主張を裏付ける信頼できるデータを提供するよう何度も求めたが、同委員会がその要請を受け入れなかったことを受け、この決定を下したと説明した。

同氏は記者団に「マドゥロ氏は事実上大統領のままだろう。しかし検証できない結果に基づいてわれわれは民主的な正当性を否定する」と語った。

選挙管理委員会は現職のマドゥロ氏の勝利を宣言したが、完全な投票結果を公表していない。野党側は、野党統一候補のゴンサレス氏の圧勝を示す投票結果を公表した。ゴンザレス氏はビデオ会議形式でEU閣僚会議に参加した。

ボレル氏は、EUが選挙に関していかなる制裁も課していないため、今回の決定が直ちに実質的影響を及ぼすことはないとしたが、約4億5000万人の国民を代表するEUによる「強い声明」だと述べた。【8月30日 ロイター】
********************

ただ、いくらEUが「民主的正当性」を否定しても、「マドゥロ氏は事実上大統領のままだろう」ということでは、マドゥロ氏を否定する多くの国民が浮かばれません。

アメリカもブリンケン国務長官が8月1日、野党統一候補の勝利は「明らかだ」とする声明を出していますが、その後の具体的行動はありません。

中南米でも、ブラジル、コロンビア、メキシコも、結果の「公平な検証」を求めています。アルゼンチン、エクアドル、コスタリカ、中米パナマは野党候補勝利を表明していますが、マドゥロ大統領としては「それがどうした」というところでしょう。

国内の抗議行動も続いてはいますが・・・マドゥロ氏を退陣に追い込む決定力に欠けています。

****ベネズエラの〝鉄の女〟、「マドゥロ大統領勝利」抗議デモの先頭に 大統領選から1カ月****
南米ベネズエラの大統領選から1カ月が経過した28日、野党側は、不正集計の疑いが浮上した選挙管理当局による「マドゥロ大統領勝利」を認定した最高裁などに抗議する集会を各地で開いた。

「鉄の女」の異名を持つ指導者マリア・コリナ・マチャド元国会議員(56)が先頭に立ち、独裁色を強めるマドゥロ政権に退陣を迫ったが、政権交代の実現は難しくなっている。

マチャド氏は、マドゥロ氏が大統領に就任した2013年、「自由」を掲げて発足した政治団体「ベンテ・ベネズエラ」の創設メンバー。昨秋の予備選で約9割の票を得て野党統一候補となった。

しかし、マドゥロ氏の影響下にある最高裁は「汚職に関与した」としてマチャド氏を公職から追放。マチャド氏は、自らの出馬を断念し、今年7月の本選では元外交官のゴンザレス氏の支援に奔走した。

マチャド氏は、大統領選の結果について、野党側が全国3万の電子投票機の8割超から回収した開票記録に基づき、得票率67%のゴンザレス氏が、同30%のマドゥロ氏に勝利したと訴える。28日は首都カラカスの抗議集会で、「世界がベネズエラの声を聞いている」と支持者に訴え、政権交代の実現を呼びかけた。

これに対し、治安当局は28日、マチャド氏と一緒に集会に参加した野党側の幹部ピリエリ氏を逮捕。既にマチャド氏の警護責任者や弁護士も逮捕しており、マチャド氏への圧力を強めている。マチャド氏自身も、軍の離反を呼びかけたとして、ゴンザレス氏とともに捜査対象となっている。【8月29日 産経】
******************

【中米ニカラグアの・オルテガ大統領 「もし反革命がおきれば、ニカラグアから戦闘員を派遣する」】
マドゥロ大統領の強気姿勢を支えるのは国際的にはキューバ、ロシア、中国からの支持。
さらに、中米左派政権のニカラグアからは「もし反革命がおきれば、ニカラグアから戦闘員を派遣する」との“力強い”支持も。

****ニカラグア大統領、ベネズエラに「サンディニスタ戦闘員」派遣の申し出****
南米ベネズエラで現職のニコラス・マドゥロ氏が勝利を宣言した大統領選挙をめぐり不正が指摘されている問題で、中米ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領は、もし「武装反革命」が起きればマドゥロ氏を支援するため「サンディニスタの戦闘員」をベネズエラに派遣すると申し出た。

マドゥロ氏の勝利宣言に対しては、不正を訴える声が野党からも国外からも噴出した。街頭では数千人が抗議運動を展開し、市民少なくとも24人と兵士1人が死亡。政府の治安部隊は少なくとも2000人を拘束した。

オルテガ大統領は26日に行われた中南米諸国のオンライン首脳会合の席上、ベネズエラで「武装反革命」が起きた場合はマドゥロ氏を支持すると表明。「もし戦闘になった場合、彼ら(マドゥロ政権)にはサンディニスタの戦闘員が付いている」と述べた。

ニカラグアのサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)は、1970年代末のニカラグア革命で実権を握った左派の政治運動で、オルテガ大統領はFSLNに所属している。

オルテガ大統領はまた、ブラジルやコロンビアの大統領(いずれも左派)がマドゥロ氏の3期目勝利を承認していないことを非難した。現在5期目となるオルテガ大統領自身も、過去の選挙で不正があったとして非難されている。

政府系が支配するベネズエラの選管当局によると、大統領選はマドゥロ氏が50%を超す得票で勝利した。これに対して野党連合や国連の選挙監視団などが選管の数字に疑問を投げかけ、米国や欧州連合(EU)、国際機関も開票結果に関する詳しい数字を公表するようベネズエラに促している。【8月28日 CNN】
*******************

【事態を動かす可能性があるとしたら、軍部中堅の離反か】
マドゥロ大統領を支える最終的な力は軍部の支持です。

前回ブログでも取り上げたように既得権益システムの一端に連なる軍幹部はマドゥロ大統領への忠誠を明らかにしています。

****ベネズエラ国防相、マドゥロ大統領に軍の「絶対的な忠誠」表明****
ベネズエラのパドリノ国防相は6日、7月28日の大統領選を巡り現職マドゥロ大統領と野党候補だったドムンド・ゴンサレス氏双方が勝利を主張する中、マドゥロ氏に対する軍の「絶対的な忠誠」を再確認すると表明した。

ゴンサレス氏と野党連合を率いたマリア・コリナ・マチャド元国会議員は5日公表の書簡で軍に「国民の側に立つ」よう求めていた。

パドリノ氏はテレビ演説で、野党側の要求を「愚かで非理性的」と一蹴し、「われわれの団結と確立された制度を壊そうと狙っているが決して壊すことはできない」と強調。軍幹部や警察が同氏の周りを囲んだ。

野党側はゴンザレス氏の得票数が600万票強と、マドゥロ氏の270万票の2倍以上だったと主張。3万台の投票機分の投票用紙の写しをインターネット上で公開している。

選挙管理委員会は投票用紙の写しを公表しておらず、7月29日以降、ウェブサイトもダウンしている。【8月7日 ロイター】
*********************

今後に向けて、マドゥロ大統領を追い込む可能性があるとしたら、軍部の中堅の動向でしょう。

****混乱続くベネズエラ 大統領強権姿勢の裏に中露の支持、軍の動向がカギ****
(中略)
マドゥロ政権は大規模な抗議デモ発生について野党指導者らが国家に対する反乱を扇動したとして逮捕する構えだ。

内外からの批判の高まりを一向に気にせず大統領が強気になる背景には友好国キューバのほか、中国、ロシアからの支持を得ていることがあるとの指摘も多い。

特に中国はベネズエラ大統領選の公式発表のわずか四時間後にマドゥロ大統領の勝利を承認する迅速な対応ぶり。中国はベネズエラと「包括的パートナーシップ協定」を結んでおり、政治・外交面での支持に加え、経済支援も続けている。

マドゥロ大統領が昨年9月に訪中し、習近平国家主席と会談して以後、2国間関係は一段と強化されたといわれ、「国際世論がいくら選挙不正があったと非難しても、中国の支援がある限り国際的孤立を恐れないというのがマドゥロ氏の考え」(在カラカス外交筋)との説もある。

ロシアのプーチン大統領もマドゥロ大統領あてに祝電を送り、今後さまざまな分野で関係を深化させると約束した。

■ 軍中堅幹部が野党に同調の動き?
一方、米国のマドゥロ政権に対する対応は今一つはっきりしない。バイデン政権は新たな制裁を検討していると報じられたが、ベネズエラ大統領選後約1カ月経った現在まで制裁は発動されていない。

バイデン政権がベネズエラに対し強硬措置を迅速に取っていないことが、マドゥロ大統領が強気になる一因と見る向きもある。

今後のシナリオについては「マドゥロ政権が野党勢力への弾圧を強め、権力の座に居座り続ける」(中南米専門の米シンクタンクの研究者)との見方が有力だ。

ただ、少数意見ながらマドゥロ大統領退陣が追い込まれるとの見方もある。メキシコ有力紙「エル・ウニベルサル」の政治記者は「国内の混乱が一層深まれば軍が大統領に反旗を翻す可能性が出てくる」と予想する。

ベネズエラの国防相や参謀総長らは大統領選後もマドゥロ大統領への忠誠を誓っているが、同記者によれば、軍の一部中堅幹部の間で国家の分裂を回避するため、野党陣営に同調する動きがあるという。

中南米専門家の間ではベネズエラの現状が2019年のケースと酷似しているとの指摘もある。この年ボリビアで大統領選が行われたが、4期目の当選を目指したモラレス大統領が不正選挙への抗議デモが広がる中、軍が離反し、辞任に追い込まれる歴史的政変が起きた。ベネズエラで同様の政治ドラマが展開されるか、同国の軍の動きが焦点になりそうだ。【8月28日 山崎真二氏 Japan In-depth】
*******************

軍幹部は既存体制にべったりでしょう。動きがあるとしたら“国を憂う青年将校”の決起・・・ということになりますが、二・二六事件を持ち出すまでもなく、そうした決起は失敗することも。成功のカギは国民との連動でしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする