((左)ボリス・ジョンソン前英国首相(2022年ウクライナ訪問)【11月28日 テレ朝news】 当時ウクライナ・ロシア間で停戦に関する交渉が行われていましたが、「この時キーウに来ていた英国のボリス・ジョンソン首相(当時)が、いかなる文書にもサインせず、『ただ戦え』とアドバイスした」(停戦交渉にあたったウクライナ側代表ダヴィド・アラハミヤ氏)とのこと。 しかし今、“潮目”は変わったようにも)
【ゼレンスキー大統領、ロシア軍撤退まで停戦せず G7はウクライナ支援で結束・・・というものの・・・】
ウクライナ情勢については、期待されたようには進まないウクライナの反転攻勢、戦争の長期化に伴って露呈し始めた政権内部での不協和音、広がる欧米諸国の「支援疲れ」、パレスチナ問題などによるウクライナへの国際的関心の低下・・・といった、ウクライナにとって厳しい状況が強まっていることは、11月5日ブログ“ウクライナ 戦局は膠着 ウクライナ内部の不協和音も 欧米には支援疲れ、関心低下で和平協議の声も”でも取り上げました。
ゼレンスキー大統領は、ロシアがウクライナから部隊を撤退させない限り停戦に応じないと戦争継続の姿勢を崩していません。
****ロシア軍撤退まで停戦せず ゼレンスキー大統領会見****
ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、共同通信などアジアの一部メディアと首都キーウ(キエフ)の大統領府で会見し、ロシアがウクライナから部隊を撤退させない限り、停戦に応じないと明言した。
欧米では停戦を探る動きもあるが、ゼレンスキー氏は否定。中東パレスチナ情勢が緊迫し、侵攻への関心が低下していることへの懸念を示した。来年2月に東京で開かれる日ウクライナ経済復興推進会議の成果に期待を示した。
ゼレンスキー氏はロシア軍が撤退しないままの停戦は「紛争の凍結」に過ぎず、ロシアは時間を稼いで戦力を回復した後、領土を奪うため再び攻撃を仕掛けてくると主張。「ロシアは平和を望んでいない」と述べた。
欧米で広がりつつある停戦論に関しては「手を切り落として他人に渡すような案」しか見たことがないと批判し、領土を割譲してまで和平を求める考えはないと断言した。
ロシアのプーチン大統領については「貪欲で常に飢えている」「ソ連がかつて有していた影響力を取り戻すことを目標としている」と分析した。【11月30日 共同】
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欧米・日本も、日本が議長国となったG7外相会合などで表向きはこれまでどおりのウクライナ支援で結束を示しています。しかし、水面下では「支援疲れ」やウクライナ国内での不協和音が露呈し始めています。
****G7、ウクライナ支援は「決して揺らがない」 東京での外相会合で声明****
G7外相会合で議長を務めた上川陽子外相は、各国がウクライナ支援で結束したと述べた
主要7カ国(G7)の外相会合が8日までの2日間、東京であり、中東情勢が緊迫するなかでもウクライナへの支援は「決して揺らぐことはない」とする共同声明を発表した。(中略)
各国の外相らは、ウクライナを侵攻しているロシアが長期戦に備えているとの認識を共有。ウクライナを経済的にも軍事的にも支援していくと強調した。(中略)
「ウクライナ疲れ」への懸念
(中略)アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、G7が「ロシアの戦争に対する非難で結束している」と述べた。だが、そうした強い言葉は、戦争の長期化の影響を受けるウクライナの現状を覆い隠すものとなっている。
ウクライナは、西側諸国の「ウクライナ疲れ」が、ロシア軍に対抗する戦闘力を低下させることを懸念している。
アメリカのジョー・バイデン大統領は、600億ドル(約9兆円)規模のウクライナへの追加支援の承認を議会に求めているが、共和党議員の反対によって保留されている。米政府関係者によると、現在の支援は数週間以内に底をつき、ウクライナ軍に破滅的な結果をもたらす可能性があるという。
イタリアのジョルジャ・メローニ首相は先週、ウクライナでの戦争に関する「疲労」が強くなっており、「出口が必要だと誰もが理解する瞬間が近づいている」と、アフリカ連合関係者になりすましたロシア人からのいたずら電話で述べ、話題になった。
先月就任したばかりのスロヴァキアのロベルト・フィツォ首相は、政権を発足させると同時にウクライナへの武器供与を停止した。
ウクライナ国内でも揺らぎ
ウクライナ国内でも結束に揺らぎがみられる。軍のヴァレリー・ザルジニー総司令官は先週、戦況について「行き詰まり」だと述べ、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領との見解の違いが表面化した。ゼレンスキー氏は「内紛で溺れないよう」国民に訴えた。(後略)【11月9日 BBC】
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【混迷するアメリカのウクライナ支援 トランプ復活を待つプーチン大統領】
ウクライナにとって死活的に重要なのはアメリカの支援ですが、短期的にはウクライナ支援を含んだ予算案への米議会の抵抗、より長期的には、バイデン政権の継続か、あるいはウクライナ支援に消極的でロシア寄りともとられるトランプ前大統領の復権か・・・という問題があります。
ゼレンスキー大統領は「アメリカの支援なしでもわれわれは戦う」とは言っていますが・・・
****「支援がなければ自分たちで戦う」 欧米“支援疲”とゼレンスキー大統領の苛立ち****
■「あなたたちの支援なしでわれわれは戦う」
ゼレンスキー大統領の危機感と焦燥は日増しに強くなっているようだ。
11月8日のロイターとのインタビューで、「もし来年トランプが大統領に返り咲いたらどうするか」と聞かれたゼレンスキー大統領は、苛立った様子でこう答えた。「もし米国議会やホワイトハウスがウクライナ支援策を変更するなら、こう言おう――わかった、それならあなたたちの支援なしでわれわれは戦う」。
ガザでの悲惨な状況が連日のように伝えられ、世界の関心はパレスチナにシフトしている。東京で開かれたG7外相会議ではウクライナへの支援継続が確認されたが、いまや各国でウクライナ戦争への関心は薄れ、支援の成り行きはますます不透明になっている。
■「支援の96%は使い果たした」
米国のカービー国家安全保障会議戦略広報調整官は、ロシアの侵攻開始以降、ウクライナ支援に当てられた600億ドル(約9兆円)の財政手段のうち、バイデン政権はすでに96パーセントを使い果たしたことを明らかにした。
これは軍事だけでなく財政・経済、人道支援を含んでいる。軍事支援に限ってもすでに90%は支出済みで、ペンタゴンに残るのは11億ドル(約1650億円)のみだと言う。
ホワイトハウスのジャン・ピエール報道官によれば、大統領が決断すれば実施可能な支援であるPDA(緊急時大統領在庫引き出し権)で残っているのは1億250万ドル(約187億円)、武器の生産を発注できるUSAI(ウクライナ安全保障支援イニシアチブ)は3億ドル(約450億円)にすぎず、「USAIは底をつく。PDAも小出しに使っていくしかない」と危機感をあらわにした。
にもかかわらず、バイデン政権が10月20日に議会に提出したウクライナとイスラエルへの新たな支援パッケージ、総計1060億ドル(約15兆円)の支援策は、共和党が多数を占める下院で骨抜きにされ、イスラエルへの143億ドル(約2兆2000億円)緊急支援法案のみが採択された。
これに対して11月7日、上院で多数を占める民主党がこのイスラエル緊急支援法案を否決した。この米国議会の党派的分断によって、結局、イスラエルへの支援もウクライナへの614億ドル規模(約9兆2000億円)の支援も滞っているのが現状だ。
もともと共和党の古参議員は「反ロシア」の機運が強いために超党派でのウクライナ支援が続いてきたのだが、トランプ支持派は、新たなウクライナ支援を拒否する姿勢を打ち出している。【11月11日 テレ朝news】
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与野党の対立からウクライナ支援を含む予算案が決まらないアメリカでは、必要最小限の「つなぎ予算」でなんとかやりくりしていますが、その「つなぎ予算」も失効する11月17日の直前、15日にアメリカ上院は新たな「つなぎ予算」をようやく可決。
これで政府閉庁といった最悪の事態は免れていますが、新たな「つなぎ予算」は一部の予算を来年1月19日まで、残りを2月2日まで確保するもので、対立の要因となっているウクライナ支援などは盛り込まれていません。
こうした事態を歓迎しているのはロシアのプーチン大統領。トランプ前大統領の復権を待っている状況で、それまでは和平合意など新たな動きは示さないのでは・・・とも見られています。
****プーチン氏、米大統領選の結果前に和平で合意せず=米高官****
米国務省高官は28日、ロシアのプーチン大統領は、2024年11月の米大統領選の結果を確認するまではウクライナと和平で合意することはないと述べた。
米大統領選を巡っては、共和党の有力候補と見られているトランプ前大統領がウクライナへの支援を批判している。
同高官は、北大西洋条約機構(NATO)外相会合後に記者団に述べた。個人的な見解かそれとも米政府の見解かと記者から質問された際、「広く共有されている認識だ」と述べ、「それが28日のNATO会議で全ての同盟国がウクライナへの強い支持を表明した背景だ」と説明した。
トランプ氏に言及したり、米大統領選の結果がウクライナ支持にどう影響するかは明言しなかった。【11月29日 ロイター】
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【広がる停戦に向けた転機に入ったとの見方 領土の線引きと戦後ウクライナの安全保障が最大の焦点】
こうした状況を受けて、ウクライナ戦争をめぐる欧米メディアの報道にもウクライナ反転攻勢の失敗、アメリカの対応の失敗、ロシアのウクライナ領占領という現状での停戦といったウクライナにとって不都合な面に言及するような“潮目の変化”が起きています。
****ロシア・ウクライナ戦争の潮目が変わった?――領土割譲で停戦という「不都合な選択」****
「支援疲れ」に中東情勢の緊迫も加わり、ロシア・ウクライナ戦争をめぐる欧米メディアの報道に潮目の変化が起きている。
ウクライナ軍の反転攻勢の失敗や兵員不足に多くが言及、バイデン政権の対応にも批判が集まる。現状でロシア側が占領地域を手放すことは考えにくい。このまま停戦交渉に向かった場合、ウクライナが領土割譲という苦渋の選択を強いられるとの見方が台頭している。
ロシア軍の全面侵攻から1年9カ月を経たロシア・ウクライナ戦争は、ここへ来て潮目が変わりつつある。
ウクライナ軍の反転攻勢は成果を得られず、政権内の亀裂が伝えられる一方で、ロシアは長期戦に持ち込み、兵力を増員しながら有利に展開している。
イスラエル・ハマス戦争も、欧米諸国のウクライナ支援に影を落とした。
欧米側がヴォロディミル・ゼレンスキー政権に対し、和平交渉の検討を打診したとも報じられた。ゼレンスキー政権は依然徹底抗戦の構えだが、今後、停戦の動きが浮上する可能性も出てきた。
「力による現状変更は許されない」(岸田文雄首相)としてウクライナ支援を続けた西側諸国にとって、憂鬱な展開となりかねない。
「反攻は失敗、突破口なし」
10月末以降、ウクライナ側の「不都合な真実」(米誌『タイム』)を伝える欧米の報道が相次いでいる。
ウクライナのワレリー・ザルジニー総司令官は英誌『エコノミスト』(11月1日)とのインタビューで、「ウクライナ軍は南部ザポリージャ州で17キロしか前進できていない」「われわれは膠着状態に追い込まれた。これを打破するには大規模な技術的飛躍が必要だが、突破口はないだろう」と苦戦を認めた。
ウクライナが6月4日に反転攻勢を開始して5カ月を経たが、ロシアが制圧するウクライナ領土の約20%のうち、奪還できたのは0.3%にすぎないとの報道もあった。
国民的人気の高い総司令官は、「ウクライナ軍はロシアが構築した地雷原に足踏みし、西側から提供された兵器も破壊された。指揮官らの交代もうまく機能しなかった」と述べた。ウクライナ軍高官が戦況の膠着や苦戦を公然と認めたのは初めて。
『タイム』誌(10月30日号)はゼレンスキー政権の内幕を報道し、「ゼレンスキー大統領は肉体的な疲労からか精神的にも疲弊し、メシア的妄想と精神病的な第三次世界大戦の恐怖を煽っている」とし、「ウクライナはロシアとの消耗戦に敗れつつあり、大統領の命令に従わない兵士も出ている」と伝えた。兵員不足で高齢兵士の招集をせざるを得ず、現在の軍部隊の平均年齢は43歳まで老化しているという。
『タイム』は昨年末、国家と国民を統率し、勇気ある抵抗を示したゼレンスキー大統領を「パーソン・オブ・ザ・イヤー」(今年の人)に認定したが、カバーストーリーを書いた同じ筆者が今回、政権内部の亀裂を列挙している。
欧米が水面下で停戦説得
こうした中で、米NBCニュース(11月3日)は、欧米諸国の政府高官がロシアとの和平交渉の可能性について、ウクライナ政府と水面下で協議を始めたと報じた。
米当局者によれば、これは10月に開かれたウクライナ支援国会合の際に話し合われ、ウクライナ側が協定締結のために何をあきらめるかについて概要が討議されたという。NBCは、欧米側の和平提案は、戦況の膠着や欧米の援助疲れ、中東紛争激化という新展開を受けて示されたとしている。
NBCによれば、ジョー・バイデン大統領はウクライナの兵力が枯渇していることに強い関心を寄せている。米当局者は「欧米はウクライナに兵器を提供できるが、それを使える有能な軍隊がなければ、あまり意味がない」と話した。
これらの報道に対し、ゼレンスキー大統領は記者会見やNBCテレビとの会見で、「戦争が膠着状態とは思わない」「年末までに戦場で大きな成果を挙げる」「ロシアと交渉するつもりはない」と反論し、抗戦方針を確認した。
米国家安全保障会議(NSC)の報道官は、「米国は引き続きウクライナを強力に支援する。交渉も含め、将来の決定を決められるのはウクライナだけだ」と述べた。戦争継続か和平かの決断を、ゼレンスキー政権が下す構図は変わらない。
一方で、ロイド・オースティン米国防長官とウィリアム・バーンズ米中央情報局(CIA)長官が11月20日時点でキーウを訪問中だ。バイデン政権屈指のロシア通といわれるバーンズ長官の訪問はサプライズで行われたが、今後の展開などをめぐり重要協議が行われた可能性がある。
バイデン外交への批判噴出
一連の報道を受けて、欧米では、ロシア・ウクライナ戦争が転機に入ったとの見方が相次いでいる。
ドイツのニュースサイト、『インテリニュース』(11月6日)は、「ウクライナ戦争の終わりの始まり?」と題する記事で、「西側のウクライナ疲れは半年前から始まっていたが、反転攻勢への期待があったため、抑えられた。しかし、反攻が何ら進展をみなかったことで、停戦論が浮上している」「ゼレンスキーが昨年4月に和平に持ち込むことを検討したことは正しかった。今、クレムリンに交渉を持ち掛けても、一蹴されるだろう。時はロシアに味方する」と分析した。
英紙『テレグラフ』(11月4日)は、「ウクライナの現在の軍事力では、ロシアが厳重に構築した防衛網を突破する見込みはなく、反攻作戦は萎縮している。ロシアは間違いなく、消耗したウクライナ軍に対して再攻勢を準備している」とウクライナ軍が悲惨な状況に追い込まれかねないと指摘した。
同紙は、米国が長射程地対地ミサイル「ATACMS」の供与を10月まで実施しなかったり、F16戦闘機の供与を遅らせるなど、優柔不断な対応を続けたことが反転攻勢不調の理由だとし、「現状では、プーチンが勝利を手にする。これを打破するには、ウクライナに制空権、戦闘技術、強力な大砲を与えることだ」と強調した。
米紙『ワシントン・ポスト』(11月5日)も、ウクライナ軍が今後、突破口を開く可能性は低いとし、昨年11月にロシア軍が南部ヘルソン市から撤収した時点が交渉のチャンスだったが、バイデン政権は何もしなかったと指摘。「長距離ミサイルの供与の遅れも含め、バイデン政権はウクライナで確固たる対応を取らなかった。官僚的な惰性や、戦況がエスカレートするリスクへの懸念があった」と分析した。
パレスチナとウクライナの二つの戦争への対応をめぐり、米国内でバイデン外交への批判が高まりつつある。
ただし、首都キーウの外交筋は、一連の報道について、「長期戦がロシアを利する要素はあるが、ウクライナ軍内部に乱れはなく、反転攻勢は続く。ザルジニ―総司令官らの発言は、航空戦力、地雷撤去など西側に支援の足りない部分を列挙したものだ。ドイツ政府も援助の倍増を決めた」と述べ、誇張が多いと指摘した。
バルダイ会議で「西側との戦争」を強調
ロシアの通信社は、ウクライナの苦境を伝える欧米の報道を細大漏らさず転電し、ロシアの優位を印象付けている。ウラジーミル・プーチン大統領は10月のバルダイ会議で、「6月に開始されたいわゆる反攻作戦で、推定9万人以上のウクライナ兵が死傷した。作戦は失敗に終わった」と強調した。(中略)
10月のバルダイ会議では、「西側は何世紀にもわたり、植民地主義と経済的搾取で途上国を蹂躙した」「この戦争は、より公平な国際秩序を作るための戦いだ」と述べ、BRICS諸国とともに、新国際秩序を目指すと強調した。ロシア側のナラティブ(物語)は、限定軍事作戦から「西側との戦争」へと変質しており、長期戦の構えのようだ。
停戦交渉について、プーチン大統領は「ウクライナが東部・南部の4州をロシア領と認めることが停戦の条件」としてきた。バルダイ会議では、「ロシアは世界最大の領土を持つ国であり、これ以上新たな領土は求めない」とも述べた。
ロシアの独立系世論調査機関、レバダ・センターによれば、プーチン大統領が4州確保を前提に停戦を提案すれば、70%が支持すると回答しており、ロシア世論にも戦争疲れの兆しがみられる。
中国が仲介に登場との予測も
これに対し、ゼレンスキー大統領は昨年11月のビデオ演説で、ロシアとの和平交渉再開の条件として、①領土の回復②国連憲章尊重③損害賠償④戦争犯罪者の処罰⑤ロシアが二度と侵攻しないという保証――の5項目を要求した。
この基本方針は1年後の現在も変わっていないが、反転攻勢の不調、欧米の支援疲れ、国内の疲弊といった新情勢の下で、今後停戦交渉に乗り出す可能性もないとは言えない。「すべての領土奪還まで戦争遂行」を支持する国内世論は、昨年前半は90%に達したが、最近は60%台に低下している。
仮にロシア・ウクライナ間で和平交渉が行われるなら、領土の線引きと戦後ウクライナの安全保障が最大の焦点になろう。
ロシアは既に、クリミアと東部・南部4州をロシア領と憲法に明記しており、占領地を手放すことは考えられない。ただ、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は新しい国境線について、「東部ドネツク、ルハンスクは州全体がロシア領。南部ヘルソン、ザポリージャ両州の境界は住民と協議して決める」と述べたことがあり、南部2州で一定の譲歩を行う可能性もある。
いずれにせよ、和平交渉に応じるなら、ウクライナ側は領土割譲を受け入れるかどうか、苦渋の選択を強いられそうだ。
戦後の安全保障では、ウクライナは既にNATO加盟を申請している。ロシアは停戦によって時間稼ぎをし、再度侵攻する可能性があるだけに、安全確保にはNATO加盟が最も有効だ。しかし、ロシアはこれに猛反発するほか、NATO内部に反対論、慎重論もある。
仮に和平交渉が始まっても、交渉は難航し、長期化しそうだ。和平工作に際しては、「欧米とロシアはウクライナ戦争で疲弊しており、中国が満を持して仲介に登場し、超大国としての台頭を狙う」(エドワード・サロ米アーカンソー州立大准教授、『ナショナル・インタレスト』誌、11月7日付)との予測も出ている。【11月21日 新潮社Foresight】
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「停戦交渉」をめぐるさまざまな憶測が欧米各国で出始めた現在、ウクライナ・ゼレンスキー大統領からすれば、「欧米はウクライナを見捨てた」ということにも。