孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国・上海  ゼロコロナが破綻した香港は「社会実験」? 武漢と同じ情報隠蔽の懸念も

2022-04-02 23:13:56 | 中国
(【4月1日 HUFFPOST】封鎖で人影が消えた上海居住区を、背中に括りつけたスピーカーから感染予防対策スローガンを流しながら歩くロボット犬。なかなかディストピア的シュールな光景です)

【ゼロコロナが破綻した香港 中国にとっては「社会実験」「モルモット」?】
中国の「ゼロコロナ」政策に関して、“中国政府が「ゼロコロナ」に固執するのは、中国製ワクチンの有効性が低いため感染が広まると、高齢者死亡の増加など収拾がつかない状態になりかねいのを懸念している・・・との指摘もされています。”と、3月28日ブログ“中国 「ゼロコロナ」でも歯止めがかからない感染拡大 上海も封鎖 住民の不満・ストレスも増大”で書きましたが、中国が恐れる具体例が感染爆発した香港の惨状でしょう。

香港では「一国二制度」の形骸化を示すような北京からの封じ込め指示にもかかわらず、3月初旬のピーク時には1日の新規感染者数が7万人を超えました。人口740万人の約1%。東京都(1400万人)に換算すると14万人レベル。

その香港もさすがにピークアウトしたようですが(4月1日の新規感染者は5823人)、混乱の影響も大きく、今後の国際都市としての存続も危ぶまれる事態に。

****ゼロコロナが破綻した香港、止まらない人口流出と外資の「香港売り」****
1日の新型コロナ新規感染者数が一時期6万人に迫った香港の感染拡大もここ数日は1万人を下回り、ようやくピークアウト感が出てきた。香港大学は最大350万人程度の感染者が出たと推計している。筆者の周りを見ても、およそ市民の3人ないし4人に1人程度が感染した印象が強い。

北京中央政府の意向を受けて進めてきた「ゼロコロナ」政策は明らかに破綻したことになるが、香港政府は相変わらず、「ダイナミックゼロ」の看板を下ろさず、市民の失笑と怒りを買っている。

外国資本と外国人の香港流出も止まらない。アジアのハブとして自由にヒト・モノ・カネが行き交う国際都市、香港が香港たる存在理由を自ら損ねてしまった。「中華人民共和国香港特別行政区」はこのまま衰退していくのだろうか。

香港での新型コロナ致死率(死亡者数÷累計感染者数)は1%を超えており、日本や韓国に比べてはるかに高い。直近の第5波(オミクロン株)での比較では世界最悪となっている。香港は都市国家なので他の国と単純比較はできないにせよ、重症化や免疫不全によって連日、多数の方々が亡くなっている現実には心が痛む。
 
中国系建設会社によって急ごしらえで増設された隔離病床も、果たしてどこまで致死率低減に効果があるのか。
事実上、鎖国に等しい入国制限と徹底隔離に重点を置きすぎたあまり、肝心の域内での治療・療養体制整備が後回しになっていたのではないか。
 
老人ホームや障害者施設へのワクチン巡回接種は十分にできていたのか。 
そもそも中国ワクチン(シノバック)にどこまで重症化予防効果があるのか。
 
国安法施行以降、少なくない医療従事者が香港を離れていった事実も含めて、世界最悪の致死率を招いた様々な要因について分析し、再発防止に向けて政策転換を図るような声は、もちろん香港政府から聞こえてこない。
 
メディアや逮捕を逃れた民主派活動家も、一様に声を潜めている。そうした政府批判が「国家安全を損ねる」「市民を扇動する」との嫌疑をかけられ、罪に問われる今の香港では、残念ながら行政に対するチェック・アンド・バランスも自浄作用も機能しない。
 
世界最悪の致死率をもたらした要因には、そうした社会構造や統治システムの欠陥も少なからずあると筆者は感じている。

「全市民一斉検査」を棚上げも「朝令暮改」の香港政府
オミクロン株拡大に香港政府も手をこまねいているわけではないのだが、結局は中国と同様に「ダイナミックゼロ」なる掛け声ばかりで、多くの防疫措置が破綻をきたしている。
 
ワクチン未接種者には飲食店やスーパー、ショッピングモールへの立ち入りを禁止したものの、それを管理するスマホアプリ「安心出行(Leave Home Safe)」は肝心の通報システム(日本のCOCOAに似た接触確認アプリによるアラーム)の運営を止めてしまい、市民の失笑を買っている。
 
以前は感染者が立ち寄った場所に同時刻にいた場合、アプリ経由で「検査指示」がスマホに入り、無視して検査を受けない場合は罰金が課せられた。しかし、あまりにも感染者が増えすぎて「実施不能」とあっさり止めてしまった。
 
感染爆発で検査能力が追い付かないのが中止の真の理由だが、香港政府は「実効性がない」というだけで検査能力の問題には触れずじまい。行政が実態をきちんと説明して、市民に理解を求める姿勢がまったくない点は、日本人として違和感しか覚えないが、これが「中国流」なのだろう。
 
市民全員を一定期間に3回検査するとした「全民検査」も方針が二転三転した挙句、棚上げとなった。これも「今は実施する時期ではない」「全民検査をやらないというわけではない」などと歯切れの悪い説明に終始しているが、多くの市民は「どうせやりっこない」とタカをくくっている。
 
突然の全市民一斉検査、ロックダウンという話が行政長官から出て、市民が買いだめに走り、一時的にスーパーで食料品が棚から消える騒ぎになったが、結局は大山鳴動してネズミ一匹出てこなかった。
 
感染した発症者へのケアについてもお粗末なことこの上ない。
知り合いの日本人は家族全員が感染してしまい、本人とお子さんが39度近い熱が出て大変だったそうだが、コロナ専門病院の診療予約電話には何度かけてもつながらず、結局は診察も受けられないまま買い置きの解熱剤でしのいだとのこと。

外出もできないので食料も底をつき、ネットスーパーや友人の手助けで何とか耐えしのいだらしいが、行政からのサポートは皆無だったそうだ。
 
別の知人は、簡易抗原検査キットや体温計の入った「感染キット」のようなものを地域のソーシャルワーカーが持ってきたとのことだが、食料品の支給はなかったという。
 
香港でも居住地域によって行政の対応にかなりばらつきがあるのは、中国社会のように地域住民を統制、管理する「社区」システムが未整備なためだろう。日本でも町内会や自治会が、行政機能を担ってコロナ感染者ケアにあたれないのと同様で、その点で香港の社会システムはまだ日本に近いのかもしれない。

止まらない香港からの人口流出と外資の「香港売り」
このように感染しても病院にすら行けず、行政の対応もお粗末な状態では市民の不安は募るばかりだ。当然、年明けから続く香港からの市民脱出に歯止めがかからない。
 
出国者から入国者を引いた純流出者は、3月中旬までに14万人にも達している。
国安法施行後、20〜21年の移民等による香港の人口減は約10万人で21年末の香港の人口は740万人だったが、今年に入りさらに14万人もの市民が香港を離れたというのだから相当な数だ。特に香港の人口の10%を占めると言われる外国人(非中華系香港市民)の域外流出が著しいという。
 
在香港欧州商工会議所の調査では、香港で活動を行う欧州企業の半分が1年以内に事業を香港外に移転させる計画を持っている。
 
海外と自由に行き来できる香港の利点が「ゼロコロナ」政策で失われた上、移民による離職率の異常な高まり、コロナ規制によって海外から人材獲得もままならないなど、国際ビジネス拠点としてもはや香港は相応しくない、と多くの欧州企業は判断しているようだ。
 
ウクライナ紛争も、ビジネス拠点としての香港の魅力を削ぎ落す結果をもたらしつつある。中国への「経済制裁リスク」だ。
 
香港株式市場(ハンセン指数)は3月15日、再び急落し2日間の下げ幅としては2008年以来最大となる10%安となった。昨年の高値から40%もの大幅な下落になる。中国のコロナ規制リスクやロシアとの関係を巡る経済制裁への懸念による見切り売りだが、資本の移動に制限のない香港から投資マネー、外国資本が撤退を始めたと見ることもできる。

「香港モルモット論」で再び広がる反中感情と政府不信
市民の流出が止まらず外資も香港を見限り始めたことで、さすがにキャリー・ラム行政長官も多少焦りを感じたのだろう。ここにきて、これまでの入国時の最長3週間の強制隔離を最短1週間に短縮し、米英など9カ国との旅客便運航禁止措置を4月から解除すると決定した。
 
加えて、18歳以上の永住権を持つ市民に1人1万ドルの電子消費券を配布するほか、失業者への臨時給付、月給3万ドル以下の勤労者に対する給与補助等の実施も発表した。
 
いわばアメとムチによる懐柔策でもあるが、1月7日から禁止されている夜6時以降の店内飲食禁止措置は4月21日まで継続し、完全に営業禁止となっているバーやカラオケ等はさらに1カ月後の5月21日以降に再開可否を見直すとのことで、罰則付きでの行動制限や営業禁止措置は当面現行のまま維持される。
 
この香港の各種制限は、中国を除けば周辺諸国で最も厳しいものであることは言うまでもない。会社帰りに軽く一杯すらできないでいる在住日本人にとっては、日本の「まん延防止措置」ですらうらやましい。
 
このように建前では「ゼロコロナ」政策を堅持しつつ、全市民一斉検査を棚上げし、部分的に出入国制限も緩和、段階的に行動制限、営業制限も解除する香港に対し、中国側から「香港での社会実験」との論評が出始めた。
中国での「ゼロコロナ」転換について、香港を実験台にして、その経緯を静観しようというのだ。
 
経済活動への影響を無視して、上海や深センでロックダウンと市民全員検査を実施する中国の原則からみれば、全員検査を棚上げし、外国との行き来も部分的に緩和している香港は「おきて破り」になるので、その免罪符としての「香港モルモット論」なのだろう。
 
だが、実験台扱いされる我々にしてみれば愉快な話ではない。
「ゼロコロナ」で散々市民生活を規制しておきながら、結局は感染爆発で世界最悪の致死率に至った香港の市民感情は「今までの苦労が水の泡になった」というもので、香港政府への不信、不満は再びじわじわと広がっている。

そうしたところに中国からモルモット扱いされているのだから、国安法で押さえつけられていた反中感情がもたげてくるのは無理もない。
 
逃亡犯条例に端を発した抗議デモ、国安法の施行、そしてゼロコロナによる社会統制と突然の感染大爆発──。この3年間、香港は歴史に残る激動が続いた。
 
今後、外国資本と外国人の香港流出が止まらず、抜け去ったあとに中国資本と中国人が流入してますます中国化が進むのか。習近平政権や香港政府が思い描くほどスンナリとことは運ぶだろうか。もうひと波乱、ふた波乱あってもおかしくないと筆者は考える。【3月31日 平田 祐司氏 JBpress】
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意外な感じがありましたが、林鄭月娥行政長官も「頭脳(人材)が流出しているのは疑いようがない」と現状を認めています。

*****香港、ゼロコロナ措置での頭脳流出「疑いようがない」=行政長官****
香港の林鄭月娥行政長官は30日の記者会見で、香港政府が中国の厳格な「ゼロコロナ」感染対策の順守を掲げて続けていることで、世界的な金融拠点としての香港から「頭脳(人材)が流出しているのは疑いようがない」と述べた。

林鄭氏は「一部企業の上級幹部の一部は香港を離れている」と認めた。

一方で、自分はだれよりも香港の国際的な地位を評価していると強調。「最も重要なことは、香港は引き続き(金融拠点としての)優位性を維持しているということだ。感染が落ち着けば香港はさらに発展できる」と強気にコメントした。

香港では全域の「封鎖」措置や全員ウイルス検査などの実施を巡って、実際には政府当局者から矛盾するメッセージが出されていることも市民らの嫌気を誘い、この2か月で国外に出る動きが相次いでいる。【3月31日 ロイター】
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北京は強力な封じ込めを指示しましたが、香港には中国のような地域住民を統制、管理する「社区」システムが未整備なため、(その良し悪しは別にして)中国同様な強力な住民管理を行う土台もありません。

【封鎖でも感染拡大続く上海 高齢者医療施設で多くの死者との情報も】
では、中国では?
習近平国家主席の脳裏で香港とダブるのが、3月28日ブログでも取り上げた東西に分けて封鎖に入った上海の現状でしょう。その上海ではまだ拡大が収まっていません。

****中国 上海でコロナ感染者過去最多 市内大部分で厳しい外出制限****
新型コロナウイルスの感染拡大で、段階的に外出制限が行われている中国最大の経済都市・上海で1日、過去最多の感染者が確認され、市内の大部分で外出が厳しく制限される事態になっています。

中国では1日、新型コロナウイルスに市中感染した人が無症状を含めて9875人確認され、このうち、最大の経済都市・上海では過去最多の6311人が確認されました。

上海市当局は、先月28日から市内全域を主に東西2つの地域に分けて厳しい外出制限を段階的に行っていて、日本人も多く住む西部の地域では1日から今月5日までの予定で外出が制限され、大規模なPCR検査が行われています。

一方、東部の地域では、外出制限が1日に解除される予定でしたが、感染者が相次いで確認されたため、人口が多い浦東新区のすべての住宅地など、広い範囲にわたって制限が延長されることになりました。

この地域に住む日本人駐在員の中には、今月10日ごろまで外出制限を延長された人が相次いでいて、勤務先の工場の稼働なども停止を余儀なくされているということです。

このため、上海では市内の大部分で外出が厳しく制限される事態となっていて、市民生活や経済活動への影響が懸念されています。

上海東部に住む日本人 “外出制限長期化で生活物資調達厳しく”
上海・東部の浦東新区に住む40代の日本人駐在員の男性は、外出制限が1日に解除される予定でしたが、新たな感染者が確認されたため、今月10日まで延長されることになりました。

男性は「前触れもないまま通達があり、準備なしで外出が制限されたうえ、さらに長期化ということになり生活物資の調達が厳しくなっています。これ以上長期化しなければいいと思っています」と話していました。

男性によりますと、2日になって当局からコンビーフや野菜、それにそばなどの食料が配給されたものの、個人で肉や野菜などを調達することが難しくなっているということです。【4月2日 NHK】
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買い物に行くこともできないため、政府から配られる物資や買いだめした食料でしのぎます・・・とは言っても、2500万人がどうやって?

“上海ほぼ全域がロックダウン状態に 食料届かず 医療もひっ迫”【4月1日 TBS NEWS】
“上海のスーパーで食料めぐり男たちが「大喧嘩」、ロックダウン目前のパニック”【4月1日 Newsweek】
といった混乱も当然のことでしょう。

そうした状況で、前出香港の惨状ともダブるような事態を伝える報道も。

****コロナ感染拡大の上海、隠された高齢者病院の実態****
中国上海市にある大型の高齢者医療施設で、新型コロナウイルスの感染が広がっており、多くの患者が死亡していることが、内情を知る関係筋の話で分かった。金融ハブである上海市のコロナ感染状況が、当局の発表以上に深刻であることを示唆している。
 
上海市政府は当地でコロナが猛威を振るい始めた3月以降、市内に数百カ所ある高齢者医療施設におけるコロナ関連の集団感染や死者を公表していない。
 
上海市にある高齢者医療施設「上海市東海老年護理医院」では、スタッフが隔離施設に送られたことを受けて、用務係6人が穴埋め要員として配置された。彼らはウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、病院から複数の遺体が運び出されるのを目撃したか、他人から聞いたと話した。病院内では少なくとも100人がコロナ検査で陽性反応が出たという。

ある用務係は、コロナに感染して3月28日に死亡した男性患者の死化粧を任されたと話した。
夜間に病院ゲート付近で6台の霊柩車が駐まっているのをみたという別の用務係は「死ぬほど怖かった」と心境を語った。
 
ある患者の息子はここ1週間に父親が同病院で死亡したと話した。息子の友人がWSJに明らかにした。その友人によると、他の訪問者も十数人の遺体を見たと話しているという。
 
中国のソーシャルメディア上でも、複数のユーザーが同病院で報告されていない死者が出ている疑いがあると投稿していた。
 
死因がコロナ感染か、慢性疾患によるものかは分かっていない。同病院は死者について公表しておらず、過去との比較が難しい。患者の親族からは、医療スタッフが隔離施設に送られたため、患者が放置されていたとの声も聞かれた。
 
上海市の保健当局者は、同病院で感染が急増していることを認めていない。上海市政府は、この病院の住所と一致する施設で3月16~17日に感染者が2人見つかったと報告していた。ところが、その後はこの住所で感染が確認されているとしているものの、数については報告されていない。(中略)
 
中国では、80歳以上の高齢者でワクチンを2回以上接種しているのは半分にとどまっており、専門家からは以前からオミクロン株がもたらす危険性を警告する声が上がっていた。上海で65歳以上の住民は400万人に上っており、中国の大都市としては高齢層の比率が特に高い。
 
東海医院に10年以上勤務する用務係、ザン・アイジェンさんは、3月19日の夜、検査で陽性反応が出たことで、医師や看護師を含む数十人のスタッフと共に、バスで隔離施設へと搬送された。隔離先のホテルに1週間滞在した後、先週末には競技場に設置された臨時隔離施設に送られたという。彼女は「用務係、看護師や医師も、みんな感染している」と話す。
 
内情に詳しい関係筋によると、同病院はスタッフの隔離に伴い、過去2日に約50人の用務係を採用した。その多くは病院内での様子を事前に聞かされておらず、あまりに多くのコロナ患者の世話を任されることになってショックを受けているという。
 
ある用務係は3日連続で、病院から遺体を運ぶ仕事を手伝ったが、その後、自身もコロナで陽性となり、隔離施設に送られたという。【4月1日 WSJ】
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高齢者医療施設ですから、コロナに関係なく死者が出ても不思議でもありませんが・・・

高齢者比率が高く、その高齢者へのワクチン接種が進んでいない、しかもワクチン自体の効果に疑問も・・・パンデミック初期の武漢の惨状を繰り返さないためにも中国政府には透明性が求められますが、その透明性がないの中国の中国たる所以・・・。
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