孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

世界第4位の外国人労働者受け入れ国・日本 “事実上の移民受け入れ”に向けた政策転換 準備は?

2018-10-21 22:01:58 | 難民・移民

【10月14日 朝日】

「『ガイジンは苦手』と言っている場合じゃない。多文化共生は私たちの必修科目です」

【「移民政策」とは違うと強調する日本政府 しかし、やってくるのは「人間」】
「移民政策」はとらないとしている日本でも、「人手不足」を背景に、外国人労働者の受け入れを単純労働まで広げようという新しい在留資格制度がスタートすることは報道のとおりです。

****新在留資格、生煮え 外国人受け入れ拡大「来春」、単純労働も****
外国人労働者の受け入れを単純労働まで広げようという新しい在留資格の骨子が、12日公表された。

人手不足に悩む業界などに突き動かされ、今秋の臨時国会に出入国管理法などの改正案を提出し、来年4月のスピード導入をめざす。

「永住」につながる仕組みも盛り込まれたが、政府は「移民政策」とは違うと強調する。その制度設計には課題も多い。

 ■長期滞在、技能熟練なら可能に 移民?永住?政府は否定
(中略)日本はこれまで、医師や弁護士など「高度な専門人材」は海外から積極的に受け入れつつ、単純労働については就労目的の在留資格がなく、大きな転換となる。
 
政権は一方で、「移民政策をとる考えはない」(安倍晋三首相)と何度も強調してきた。山下貴司法相も12日の会見で「深刻な人手不足の状況に対応するため、真に必要な分野に限り、一定の専門性技能をもつ外国人を受け入れる。期限を設けることなく外国人を受け入れるものではない」と述べ、「移民政策ではない」とした。
 
新たな在留資格「特定技能」は技能の熟練度に応じて「1号」「2号」と分かれている。1号は家族帯同が認められず、在留期限は最長で5年間だが、より熟練した2号は家族帯同が可能になり、「高度な専門人材」と同様、定期的な審査をクリアすれば在留資格も更新が可能になる。さらに、日本に10年間滞在すれば、永住許可の要件の一つも満たす。
 
(中略)ある官邸幹部は「移民政策でないことの肝は、期限の設定や家族帯同を認めない点などに表れている」と話した。2号への移行は高いハードルになる可能性がある。

 ■人手不足条件、介護・外食など候補 対象業種、なし崩し拡大も
(中略)新しい在留資格が認められるのは「不足する人材の確保を図るべき産業上の分野」とした。候補に挙がるのは介護、外食、漁業、建設業や農業などの14分野。法務省は年内にも、省令で対象分野を決める見通しだ。
 
法務省幹部は、分野の絞り方について「公的な指標などを用いて人手不足の程度を調べる」と話す。業種別の有効求人倍率などが参考にされそうだ。
 
外国人労働者に資格を与える業務の対象を「相当程度の知識または経験を要する」ものとし、外国人の日本語能力も「生活に支障がないか」を確かめるとした。

ただ、技能の具体的な水準や測る手法などは、定まっていない。試験は各分野を所管する省庁が定めることになっているが、実際には、各業界団体などで運営する既存の検定試験などが下地になるとみられる。(中略)

だが、こうしたルールも業界の要望に押され、なし崩し的に広がる可能性がある。国際貢献を旗印に1993年に始まった「外国人技能実習制度」では、受け入れる業界団体の要望を受けて、職種や作業を拡大してきた。制度開始時は17だった職種は77まで広がった。
 
対象分野に入らないとみられているコンビニエンスストアでは、業界団体の日本フランチャイズチェーン協会が対象業種にコンビニを盛り込むよう政府に要望することも検討している。【10月13日 朝日】
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おそらく日本の「人手不足」は景気による強弱はあるにせよ、少子高齢化を背景に慢性的・長期的なもので、かつ、今後次第に深刻化するものでしょう。その対応は不可避であり、外国人労働者の受け入れ拡大は今後も続くでしょう。

その際、「労働力」としてしか見ない現行制度では、「人間」としての外国人労働者の立場を困難なものにし、いろんな社会的軋轢・トラブルのもとにもなります。それは外国人労働者への反発を強め、社会全体の変質をも惹起します。

****外国人に選ばれる国」めざすが 家族帯同、最長10年できず****
外国人労働者については、人手不足に悩む先進各国で奪い合いが激しくなりつつあり、政府は新しい在留資格を「外国人に選ばれる国」(菅官房長官)をめざしたものだとする。
 
外国人技能実習制度では、最低賃金で働くケースが多く、実習先の変更もできない。新資格では、日本人と同等以上の報酬額の確保を義務づけたり、同じ分野で転職可能にしたりする配慮が盛り込まれた。
 
一方、特定技能1号の外国人の生活や日本語習得をサポートする登録支援機関には、国は直接関与せず、技能実習生の監理団体と同様に民間団体に委ねられる。
 
技能実習生に認めていない家族の帯同は1号でも認めず、2号なら認めることにしている。1号は3年間の経験のある技能実習生なら、無試験で取得できることにする。実習生から1号に移るケースも多くなりそうで、最長で実習生で5年、1号で5年の計10年間家族と離ればなれになる。
 
家族を呼び寄せることをめざし、2号の取得に挑む外国人も出そうだが、詳しい条件や試験といった詳細の設計はこれからだ。さらに2号の資格を得て家族と暮らしても、景気悪化などで対象分野の「人手不足」がなくなれば職を失い、帰国させられる可能性もある。
 
外国人労働者の実態に詳しい川上資人弁護士は、家族の帯同を認めないことは「人間の自然なあり方に反しており、国際的な基準に照らしてもあり得ない」と批判。「2号の取得者がほとんど出ない、絵に描いた餅のような資格にならぬよう今後の議論を注視することが大事だ」と指摘する。【同上】
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事態が深刻化してから「労働力を呼んだら、来たのは人間であった」と気づいても、外国人労働者、日本社会双方にとって不幸なことにもなります。

****知らずに増えた移民外国人の不都合な真実 もはや彼ら抜きに経済は回らないが課題も****
いま日本のカタチが変わろうとしている。

決して大げさな話ではない。おそらく後世の人にとって、2018〜19年は、国のあり方がはっきり変わった歴史的なターニングポイントとして知られているはずだ。これまで「移民政策は断じてとりません」と繰り返してきた政府が、“事実上の移民受け入れ”に向けて大きく舵を切ったのである。(中略)

こうした矢継ぎ早の政策発表のウラにあるのは、深刻な労働力不足である。
2018年現在、最新の有効求人倍率は1.63倍。政府はこの数値を好景気の指標として使うが、要するに現場で人手が足りていない何よりの証拠だ。

政策と実態のねじれ
いま街で見掛ける外国人労働者のほとんどは留学生や技能実習生だが、彼らは本来的な意味での労働者ではない。(中略)

日本で暮らす外国人の数は2017年末の時点で250万人を超えた。これは名古屋市の人口(約230万人)よりも多い。そのうち労働者は約128万人で、さいたま市の人口(約126万人)に匹敵する。

ともに法務省が統計を取り始めてから過去最高の数値である。都内に限っていえば、いまでは20代の若者の10人に1人が外国人という割合だ。

コンビニだけでなく、ドラッグストアやファミリーレストラン、ハンバーガーショップ、牛丼チェーンなどなど、さまざまな場所が働く外国人の姿であふれている。

もちろん世界的に見れば、日常的に外国人が多いという状況は珍しいことではない。だが、政府は「断じて移民政策はとらない」と明言してきたのに外国人労働者の数が増えている。これはいったいどういうことだろうか。

政府の方針をわかりやすくいえば、「移民は断じて認めないが、外国人が日本に住んで働くのはOK、むしろ積極的に人手不足を補っていきたい」ということだ。(中略)

とりあえず10月下旬からの臨時国会には注目だが、消費税率が3%→5%→8%、そして10%と段階的に高まってきたように、外国人労働者の受け入れ枠も(なんとなく)知らないうちに増えていくのかもしれない。

留学生が労働力不足を補う現状
本を書くにあたって、多くの“コンビニ外国人”に取材をした。そのほとんどが日本語学校か専門学校に通う留学生だった。

彼らは、「原則的に週28時間まで」のアルバイトが法的に許されている。「原則的に」というのは、夏休み期間などは週40時間のアルバイトが認められるためだ。学生がより長く働けるように長期休暇が多いことをウリにしている日本語学校もある。

週に28時間では時給1000円で計算しても月収は11万円ほどにしかならないが、世界的に見るとこの制度はかなり緩い。たとえばアメリカやカナダなどは、学生ビザでは原則的にアルバイト不可、見つかれば逮捕される。

つまり、コンビニなどでアルバイトをしている留学生は、学生であると同時に、合法的な労働者でもあるのだ。

彼らも仕事を求めているし、現場からは労働力として期待されている。需要と供給を一致させているのは、日本の人口減に伴う深刻な人手不足だろう。実際、留学生の9割以上が何らかのアルバイトに携わっている。

いま日本は「留学ビザで(割と簡単に)入国して働ける国」として世界に認識されている。しかし、ここに大きな問題がある。

日本語学校などに籍をおく留学生の多くは、入学金や授業料、現地のブローカー(エージェント)への手数料などで100万〜150万円という金額を前払いする必要があり、その多くが借金を背負って来日しているのだ。

借金を返済するためには働く必要がある。だが、原則28時間という労働時間を守っていたのでは、生活費を賄うのがやっと。中には強制送還覚悟で法律を破って28時間以上働く留学生もいるし、借金を背負ったまま帰国する留学生も少なくない。

日本語学校を卒業して大学まで通い、日本で就職したいと願う留学生たちも、3割程度しかその夢をかなえることができない。

世界第4位の移民受け入れ国
ユネスコの「無形文化遺産」に登録された和食も、いまや外国人の労働力なしには成り立たない。(中略)
現実として、外国人労働者抜きに日本経済はもう回らない。わたしたちの生活は彼らの労働力抜きには成り立たない。

OECD(経済協力開発機構)の発表では、日本はすでに世界第4位の外国人労働者受け入れ国である(本の執筆時はまだ5位だった)。

国の政策とは別に、外国人との共生に取り組む自治体も増えはじめている。横浜市では独自にベトナムの医療系大学などと提携して、留学生を迎え入れることを決めた。近い将来、大規模な不足が予想されている介護職に就いてもらうための人材確保だ。留学に関する費用や住居費なども市が一部負担するという。

2010年から外国人を積極的に呼び込んでいる広島県安芸高田市の浜田一義市長はこう言っていた。
「今後、ウチのような過疎の自治体が生き残っていく道は世界中に外国人のファンを作ることだ。『ガイジンは苦手』と言っている場合じゃない。多文化共生は私たちの必修科目です」

個人としては、外国人の受け入れには賛成の立場だが、これまで国政レベルでも十分な議論がなされたとは思えず、彼らの生活保障に関する法整備など、受け入れの準備はほとんどされてない。このままなし崩し的に受け入れを進めていいものだろうか。

移民の問題を語るときによく引用されるスイスの小説家の言葉を最後に紹介する。
〈労働力を呼んだら、来たのは人間であった――〉【10月21日 芹澤 健介氏 東洋経済ONLINE】
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急増するベトナム人留学生・技能実習生
最近特に急増しているのがベトナムからの留学生・技能実習生という名の外交人労働者です。

“法務省によると、日本に暮らすベトナム人は07年は3万6131人だったが、17年は26万2405人と約7倍に急増。良好な日越関係や日本の労働力不足を背景に増え続け、フィリピンを抜き、中国、韓国に次ぐ多さとなった。技能実習生は15年末は5万7581人だったが、16年末に最も多かった中国を抜き、17年末は12万3563人。2年間で2倍となった。”【10月14日 朝日】

****留学生が急増 ベトナムの日本大使館が悪質あっせん業者排除****
ベトナムでは日本への留学生の急増に伴って、悪質なビザ申請を行うあっせん業者が増えていることから、現地の日本大使館は特に悪質な業者の申請を受け付けないことを決めました。

日本国内の日本語学校などで学ぶベトナム人留学生は、ことし6月末現在で8万人余りと、5年前の4倍近くに急増しています。ただ、現地のあっせん業者の中には「日本で学びながらアルバイトをすれば、数十万円稼げる」などと誤った説明をして、留学希望者を集めている業者が少なくないのが実態です。

ベトナムの首都ハノイにある日本大使館は、こうした悪質な業者を排除しようと、去年からビザの申請者本人に対する面接を実施しています。

この中には、留学に必要な日本語能力の証明書を提出しているにもかかわらず、全く日本語が話せなかったり、渡航の目的について「働きに行きます」と答えたりする申請者が全体の1割から2割に上っているということです。

このため大使館では、こうした事例が去年から何度も続いている12の業者を特に悪質な業者として大使館のホームページ上に公表し、来月から半年間、ビザの申請を受け付けないことを決めました。

ベトナム人留学生の中には、日本で働くことを見込んで多額の借金をして来日する若者も多く、窃盗などの犯罪に手を染めるケースもあることから、日本大使館ではベトナム当局とも連携しながら悪質な業者の排除に努めたいとしています。【9月30日 NHK】
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こうしたベトナムからの留学生急増の背景には、日本経済の事情があります。また、現地ベトナムでは留学生送り出しが「産業」ともなっています。

****ベトナム人が夢見る「1カ月で年収が稼げる国」 偽装留学生の闇****
(中略)その背景には、日本側の事情がある。政府は2008年から「留学生30万人計画」を進めていた。

しかし11年に福島第一原発事故の影響もあって、留学生全体の7割近くを占めていた中国人が減少に転じた。中国経済が発展し、日本へ出稼ぎに行くメリットが薄らいだことも減少に拍車をかけた。

そこで政府は留学生を確保するため、ビザの発給基準を大幅に緩めた。結果、ベトナム人を中心に出稼ぎを目的とする“偽装留学生”の流入が起き始める。

日本に留学すれば、月20万〜30万稼げる
ベトナム経済も成長しているとはいえ、恩恵は一般庶民にまで届いていない。共産主義国で、かつ賄賂大国という事情もあって、政府の有力者にコネのない若者には生き難い国でもある。

海外への出稼ぎ希望者は多いが、行き先は台湾や韓国、もしくは実習生を受け入れる日本などに限られる。そんななか、日本への「留学」の道が開かれたのだ。
 
ただし、よほどの富裕層でなければ、日本の留学ビザを取得するための経済力はない。ベトナムの庶民が日本へ留学するためには、斡旋業者に頼り、ビザ取得に必要な証明書類をでっち上げてもらうしかないのだ。
 
「日本に留学すれば、月20万〜30万円は簡単に稼げる」
出稼ぎブームの初期には、そんな甘い言葉で若者を勧誘する斡旋業者も多かった。「20万〜30万円」といえば、ベトナム庶民の年収に匹敵する金額だ。

留学生のアルバイトとして認められる「週28時間以内」という法律を守っていれば稼げないが、事情を知らないベトナム人たちは業者のもとへ殺到した。そして、でっち上げの数字が並ぶ書類を準備してもらい、続々と日本へ出稼ぎに行くことになった。
 
斡旋業者には、日本へ留学生を送り出せば1人当たり数十万円が入る。留学希望者が支払う手数料に加え、受け入れ先となる日本側の日本語学校から1人の留学生につき10万円程度のキックバックがあるからだ。物価水準が日本の10分の1程度のベトナムでは、日本への留学生送り出しは「産業」と呼べるほどだ。
 
斡旋ビジネスには、現地の日本人が関わっているケースも目立つ。受け入れ先の日本語学校とのやり取りなどが生じるからだ。
 
「ハノイで複数の日本語学校を経営し、1億円以上も稼いだと豪語している日本人もいる」(現地在住の日本人)
 行政機関や銀行に賄賂を払い、ビザ取得に必要な書類をでっち上げ、日本へと留学生を送り込んでのことだ。(後略)【10月11日 出井康博氏 WEDGE Infinity】
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こうした事情を背景に専門学校で学ぶ外国人学生も増えていますが、定員を上回る学生を受け入れてしまい、発覚して退学・帰国を余儀なくされるといったトラブルも。

また、日本における労働・生活のなかで死にいたる外国人留学生や技能実習生も増えています。

****いびつな政策の犠牲者」ベトナム人実習生らの相次ぐ死****
日本で暮らす外国人留学生や技能実習生が増える中、仕事や生活で追い詰められ、命を落とす若者もいる。ベトナム人の尼僧がいる東京都内の寺には、そんなベトナムの若者の位牌が増え続けている。外国人が働きやすい環境の整備や暮らしへのサポートが必要だと、専門家は訴える。(後略)【10月14日 朝日】
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繰り返しになりますが、「人間」としての外国人労働者をどのように日本社会に迎え入れるかを議論する必要があります。

制度的準備とともに、日本側の意識の改革、覚悟も必要になります。

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