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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

カナダ  移民・難民受け入れに比較的寛容なイメージに関するあれこれ

2017-06-12 22:12:27 | 難民・移民

(リッチモンド公衆市場【JUNGLE CITY.COM】https://www.junglecity.com/enjoy/travel-short-trip/vancouver-and-richmond-canada/
“Chef Liu Kitchen の台湾ヌードルと、Peanuts のバブルティーがオススメ!”とか。
“香港系移民によって本国をも凌ぐ一大グルメ・タウンに発展したリッチモンドですが、近年は本土や台湾からの移民が増え、さらに飲食店が充実”とのことで、車で3時間程度のアメリカ・シアトルからも日帰りできるとあって、多くの人々を引き寄せているようです。)

地域によって偏る移民
移民・難民受け入れに比較的寛容なイメージもあるカナダですが、西海岸のブリティッシュコロンビア州南西部、バンクーバーに隣接するリッチモンド(人口は約19万人)では人口の半分を中国系移民が占め、地元住民の反発を招いているとか。

****カナダにあふれる中国語の看板、中国系住民の急増に不満高まる****
2017年6月9日、中国メディア・紅星新聞によると、カナダのリッチモンド市がチャイナタウンと化しており、街にあふれる中国語の看板に現地住民が不満を募らせている。

チャイナタウンは世界各地にあるが、街の一角や数本の道であることがほとんど。しかし、カナダのリッチモンド市は街全体がチャイナタウン状態となっている。住民の半数を中国系が占めている。

中国系住民の増加により、街には中国語の看板が目立つようになった。元から住んでいた人々の間では読むことのできない中国語看板が増えていることに不満が高まっており、議会では中国系店舗の看板の半分を英語にするよう求める動きも出ている。【6月11日 Record China】
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リッチモンドは人口は185,400人(2008年)。“移民人口の多いことで知られ、全人口の57.4%を移民がしめ、これはカナダ全都市中最高率である。特に近年は富裕な香港中国人の移民が増加し、市人口の45%が中国系である。市中心部には中国系のための巨大ショッピング・モールが複数あり、観光名所となっている。”【日本カナダ学会HP】

リッチモンドに関するこの種の記事は数年前からあり、“日本もやがてカナダのように中国人に乗っ取られてしまうぞ!”的な中国嫌いの人々が取り上げる格好の対象にもなっていますが、カナダ全国で見た場合、中国人移民が突出している訳でもなく、「HAPPY BANANA’S BLOG」によれば、2015年移民者のうち最も多いのがフィリピン人(年間約5万人)、次がインド人(約4万人)で、中国人は3位の約2万人となっています。

蛇足ながら、イラン、パキスタン、シリアからも各1万人程度の移民を受け入れています。

ただ、地域・都市によって移民出身国の偏りがあり、カナダ最大都市トロントのあるオンタリオ州ではインド人が多い、フランス語圏のケベック州ではフランス、アルジェリア、モロッコなど、フランス語が公用語として話す国が多いといった特徴があり、リッチモンドなどブリティッシュコロンビア州では中国人などアジア系が多くなっているようです。【上記グラフを含め2016年11月21日「HAPPY BANANA’S BLOG」http://happybanana.info/?p=8209より】

異国での生活の不便・不安感から、同国出身者が多い地域に引き寄せられるという側面があり、日本でも特定の国の出身者が多い“〇〇タウン”と呼ばれる地域もあります。

ただ、社会への同化という面でみると、そういう現象は同化を阻むことにもつながり、文化・風習などで地域住民との摩擦も大きくなりますので、移民を受け入れる場合、政策的に特定地域に集中しないように誘導する配慮が必要ではないでしょうか。

資産家よりも人材を
中国人移民の場合、富裕層が高額の投資をする見返りに永住権を獲得する・・・というイメージもありますが、そのあたりも近年は変わってきているようです。

****中国人移民はお断り?!カナダやオーストラリアなど人気移民先が方針転換―中国****
2016年8月1日、起点は記事「“中国人を歓迎せず”と宣言?!四大移民大国がそろって態度変更」を掲載した。

カナダ、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド。中国人の移民先として人気を集めてきた4カ国だが、ここ数年、移民政策の厳格化や反中感情の高まりにより、中国人にとって移民が難しくなりつつある。いったい何が起きているのだろうか?各国の事情を見ていこう。

まずカナダだが、2012年に投資移民という資格そのものを取り消した。今後は高度な人材の移民を中心に受け入れることになる。資産家よりも人材を受け入れたいという狙いだ。(後略)【2016年8月14日 Record china】
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社会には人種差別的な摩擦も
“カナダの警官がほほ笑みながら、アメリカ国境を越えようとする難民の女の子を抱き上げる”といった写真などから、先述のようにカナダは移民・難民受け入れに比較的寛容なイメージがあります。

実際、なんだかんだ言っても、移民・難民に門戸を閉ざしている日本などより遥かに寛容なのでしょうが、ただやはり、市民生活にあっては異文化が惹起するトラブル・摩擦もあるようです。

****英語できないなら中国に帰れ!」=女性が中国系店員を罵倒―カナダ****
2017年6月5日、看看新聞は、カナダの市場で女性が中国系店員に「中国へ帰れ」など罵声を浴びせ掛けるトラブルがあったことを伝えた。

記事は、英紙デイリー・メールの報道を紹介。トラブルは今月2日にカナダのFoodymartという市場で発生した。その一部始終を記録した動画には、車いすの女性が中国系の店にやって来て、英語が通じないことを理由に腹を立て、何度も「中国に帰れ」といった暴言を浴びせる様子が映っている。

動画を撮影した中国系住民のFrank Hongさんは「女性は店に来て、英語ができる人がいるか聞いた。だが、一向に何を買いに来たのかを言わなかったので、言いがかりをつけに来たのだと感じた」と話す。

Hongさんによると、店のマネジャーがやって来て「店員全員が英語を話せる訳ではありません」と理解を求めたが、女性は「だったらあんたらは中国に帰れ、中国に帰れ」と返答。

女性はさらに、「ここはカナダだ、英語とフランス語の国だ、英語ができなければ働けないと法律で決まっている」とまくし立てたそうだ。女性の「中国に帰れ」という発言に、そばにいた男性が笑う一幕もあったという。

この様子を見ていた客が通訳を買って出ようとしたが、女性は「法律で決まっているんだ!」の一点張り。だが最終的には、女性は別の華人客の助けを受けながらオーダーをしたとのことである。

Hongさんは「中国系カナダ人として、深い驚きと怒りを覚える。この女性の行動を世界に見せることで、自分たちを含めたみんなの人種差別に対する意識を高められたら」と語っている。【6月7日 Record China】
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必ずしもリベラルイメージどおりでもないカナダ政府
カナダ政府についても、トゥルドー首相のイメージも手伝ってトランプ大統領とは対照的にリベラル・寛容のイメージがありますが、実際はそうでもない・・・・という指摘もあります。

****カナダ首相は「反トランプ」という幻想****
<トゥルドーはイメージ通り自由世界の旗手なのか? カナダ人ジャーナリストが明かす真の姿>

若くて感受性豊か、フェミニストで環境保護論者。筆者の母国カナダのジャスティン・トゥルドー首相は、ドナルド・トランプ米大統領とは真逆のイメージを振りまいている。波打つナチュラルヘアも好対照だ。

首相の好感度は国の好感度につながる。ポピュリズムとは無縁の進歩的な安息の地――こんなイメージをカナダは獲得しつつある。

英エコノミスト誌は昨秋、カナダを象徴するカエデの葉の冠をかぶった自由の女神像を表紙にした。CNNは今や「カナディアン・ドリーム」の時代ではないかと問い、ニューヨーク・タイムズ紙は、カナダは自由世界の新しいリーダーだと書いた。

トランプの勝利に打ちのめされたアメリカのリベラル派は、トゥルドーとカナダに理想の姿を求めている。しかしそれは幻想にすぎない。カナダはアメリカに対抗するのではなく、アメリカを模倣する国なのだ。

アメリカで何かがあると、その数年後にカナダで似たような現象が(より生ぬるい形で)起こる。アメリカでは09年、変革を求める国民がオバマ政権を誕生させた。カナダも15年、首相を古くさい保守派のスティーブン・ハーパーから、若い中道派のトゥルドーに交代させた。

幻想は現実を見えなくする。トランプが最初の入国停止の大統領令を出した直後、アメリカに拒否された難民の受け入れをトゥルドーが明言した、と米メディアは報じた。

でも実際は、トゥルドーの曖昧なツイートを都合よく解釈しただけ。いわく「迫害、テロや戦争から逃れる人々へ。信仰にかかわらず、カナダ国民はあなた方を歓迎します。多様性は私たちの力です」。

このニュースが収まった頃、トゥルドー政権は難民政策に変化はないとこっそり釈明した。アメリカで難民認定されずカナダに亡命受け入れを求めた者も、従来どおり出身国に送還するとのことだ。

カナダの警官がほほ笑みながら、アメリカ国境を越えようとする難民の女の子を抱き上げる写真を見たことがあるだろう。感動的だが、直後に子供と両親が逮捕される写真はあまり知られていない。米カ両国は現在、共同で難民流入を阻止している。

メディアもイメージづくりに協力する。今年2月の訪米時、トゥルドーがトランプの差し出した手に不快感を見せるような写真が拡散した。実際はすぐ後に力強く握手し、がっちりハグし合ったのだが。

トゥルドーは、オバマ政権が却下したカナダからメキシコ湾岸に原油を運ぶ「キーストーンXLパイプライン計画」の交渉を進め、4月に米軍がシリアをミサイル攻撃した際も全面的な支持を表明した。

アメリカのメディアがトゥルドーは反トランプだと持ち上げる一方、カナダのメディアはトランプのメンツをつぶさずうまく立ち回っていると評価する。

小心者のカナダ人はどんな状況でも、隣の大国とうまくやりたいのだ。でも従順でいるだけでなく、いつか「カナダのトランプ」が生まれる可能性もある。

5月末の野党・保守党党首選で有力候補だったのはTV司会者で大富豪のケビン・オリアリー。4月末に選挙戦から降りたが、首相候補として再登場しないとも限らない。だってカナダはアメリカ追従だから......。【5月19日 Newsweek】
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社会の人種差別的風潮にしろ、政府のイメージとは異なる側面にしても、まあ、現実はそんなものでしょう。
そのようなイメージとは異なる側面ももちろんあるし、一方で、そうは言ってもイメージどおりのような側面もまた現実にある程度存在する・・・といったところでしょう。
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