孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  身内で固める「孤独の皇帝」習近平主席 “王岐山スキャンダル”の背景・今後は?

2017-06-09 21:59:58 | 中国

(「中国の真の依法治国(法に基づく統治)のために戦う」などと訴える、“王岐山スキャンダル”を暴露した“亡命政商”郭文貴氏のツイッター【5月18日 朝日】)

【“腹心”“懐刀”の異例の大抜擢で体制固め
中国ではこの秋の党大会に向けて、習近平主席が自身のかつての部下でもある“腹心”“懐刀”を異例の大抜擢で昇進させ、党指導部である政治局員における多数派を形成し、その権力基盤を固めようととする動きが相次いで報じられています。

****習氏腹心の蔡奇氏、北京市トップに 破格昇進で政治局入りへ****
中国共産党は27日までに、蔡奇・北京市長(61)を市トップの市党委書記に昇格させる人事を決定した。国営新華社通信が同日報じた。

最高指導部メンバーが大幅に入れ替わる今年秋の党大会で、習近平国家主席(党総書記)の側近として知られる蔡氏が政治局員(現在25人)に昇格することが確実となった。

蔡氏は習氏が福建省や浙江省に勤務していた時代の部下。地方指導者として突出した実績も北京での政治経験もなかったが、昨年10月末に習氏の意向を受けて国家安全委員会弁公室副主任から北京市代理市長に抜擢(ばってき)され、今年1月には市ナンバー2の市長に選出されたばかりだった。
 
首都北京のトップは政治局入りが約束されたポストだ。今年秋の党大会では、68歳定年の慣行に従えば政治局員25人のうち11人が引退する見通し。

習氏にとっては、確執が伝えられる李克強首相の出身母体、共産主義青年団(共青団)派などを抑えて自派で政治局の過半数を握れるかが焦点となる。

政治局入りが確実視されていた習氏の腹心、黄興国・元天津市党委代理書記が汚職で失脚したことから、蔡氏の抜擢は政治局入りの布石との見方もあった。
 
ただ蔡氏は2012年の前回党大会で、中央委員(定員205人)どころか中央委員候補(171人)にすら選出されていない。“一般党員”から一気に政治局入りするのは破格の昇進で、党内の一部から反発も予想される。(後略)【5月27日 産経】
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****上海も「三段跳び」か 北京トップに続き習氏側近****
秋の中国共産党大会の前後に、上海市トップの市党委員会書記に習近平国家主席の側近で市ナンバー2の応勇市長(59)が昇格するとの観測が高まっている。

実現すれば、北京市トップに習氏側近の蔡奇氏(61)が「三段跳び」で昇格したのに続く大抜てき。江沢民元国家主席の「上海閥」の本拠地で、習氏の権力固めを象徴する人事になりそうだ。(中略)
 
応氏は浙江省出身で派出所勤務から省高級人民法院(高裁)院長に上り詰めたたたき上げ。習主席が浙江省トップ時代に信頼を得たといわれており、2007年に習氏が上海市トップになったのと同時期に上海高級人民法院幹部として上海入りした「習氏の懐刀」だ。
 
5月に改選された上海市党幹部人事では、韓氏を除く他の幹部が応氏ら習氏側近でほぼ埋められた。15年に非習系の艾(がい)宝俊元副市長が収賄の疑いで失脚。前市長の楊雄氏も引退に追い込まれるなど反腐敗運動で幹部が次々と更迭された結果だ。
 
昨年秋に党中央の「核心」になった習氏にとって、北京に続き上海のトップも自らの側近で固めることができれば、「習1強」体制を内外に強く印象づけられる。危機感を募らせた上海閥からの巻き返しも予想され、党大会に向けた波乱要因になっている。【6月1日 毎日】
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“一般党員”から一気に政治局入りさせるという、相当に強引な人事です。それが可能になるということは、「習1強」体制とも言われるように習近平主席が党内の支配力を強めていることを示しているのでしょう。

ただ、同時に共産主義青年団(共青団)派や江沢民派などの対立勢力との軋轢を強め、厳しい権力闘争にさらされることにもなり、その結果次第では「習1強」体制も揺らぐこともありえます。

権力を一身に集めてみても身内以外は誰も信用できない「孤独の皇帝」】
そういった中南海での権力闘争についてはほとんど何も知りませんし、さほどの関心もありませんが、上記のような記事を読んでの個人的な感想は、“国家の指導部を決めるのに、個人的なつながりのある者をとりたてるような形でいいのだろうか?”という素朴な疑問です。

公正さ云々ではなく、そんな狭い範囲で人材を選んで大丈夫なのか?という疑問です。
いかに習近平主席とは言え、個人的に関係があり、知りえた人材は極めて限られています。広く探せば、13億の国民を束ねていく指導部にふさわしい人材は、いくらでもいるだろうに・・・。

こういう形で抜擢した“腹心”“懐刀”による指導部が、国民全体ではなく習近平氏個人にしか顔を向けないことは言うまでもありません。

しかし、共産主義青年団とか上海閥といった“組織”を背後に持たないうえに、これまでも権力闘争で多くの“敵”をすでにつくっている習近平氏としては、信頼できるのは自分とこれまで関係があった“身内”しかいない・・・という状況でもあるようです。

****孤独の皇帝」習近平 信頼できる盟友・側近が欠如****
・・・・(自ら提案した現代版シルクロード「一帯一路」構想を盛り上げる国際首脳会議という“晴れ舞台”で)習近平はなぜ形だけでも記者会見をして「世界の指導者」の肉声を発しなかったのか。秋の共産党大会を前に記者会見で聞かれたくない問題を抱えていたからだろう。
 
習近平が恐れるのは、盟友、王岐山・党中央紀律検査委員会書記にかかわる汚職疑惑だ。震源地は、米国逃亡中の郭文貴という政商で、インターネットや外国メディアとのインタビューで、王岐山ファミリーの汚職腐敗調査を習近平サイドから依頼されたと吹聴していた。
 
事実だとすれば、習近平政権の功績である汚職一掃は見せかけで、実質は政敵打倒の党内抗争にすぎなかったことになる。中国大衆に広まった習近平神話は崩壊するだろう。

また習近平が王岐山の汚職を追及するなら、王岐山に弾圧され重要ポストを奪われた江沢民派、共産主義青年団(共青団)派などが不満を爆発させ、党大会の議案を事前審査する八月上旬の北戴河会議で党長老たちが王岐山の責任を問うかもしれない。

そうなれば王岐山の定年延長を柱とする習近平の第二期政権構想は砂上の楼閣となる。習近平の心中は「一帯一路」どころではないだろう。

郭文貴告発の背後に権力闘争
当初、海外メディアは亡命政商の発言を疑っていた。しかし、記事を流した米国の中国語メディアが激しいサイバー攻撃を受けたり、米国政府の運営するVOAの衛星テレビが郭文貴のインタビューを放映中、上層部の圧力で突然中断したりしたため、郭文貴の告発の背後に中国共産党内の権力闘争があることは明白となった。
 
郭文貴の暴露によれば、王岐山の妻は、保守派長老の姚依林元副首相(故人)の娘で、その親族が中国の航空、金融大手の「海航集団」(HNA)を実質支配し、汚職腐敗にまみれているという。HNAは最近、ドイツの投資銀行「ドイツ銀行」の筆頭株主に躍り出るなど活発な海外投資で知られている。
 
だとすると王岐山は反腐敗運動の主将という顔の裏に、運動で打倒された薄煕来・元重慶市党委員会書記らと同類の、「赤い二世」利権集団の一員の顔も持っていたことになる。
 
習近平は秋の党大会で、王岐山を定年延長させて党中央政治局常務委員に留任させ、来年の春、設置予定の「国家監察委員会」のトップに就けようとしている。王岐山の恐怖支配をバックに独裁体制を維持しようという目論見だ。だが反腐敗闘争の道義的優位性が消滅すればそれは成り立たない。
 
中国政府は郭文貴を国際刑事警察機構(ICPO)に国際指名手配申請し「犯罪者の発言は信用できない」というキャンペーンを始めたが、姚依林ファミリー疑惑について具体的反論は乏しい。(中略)

身内以外は誰も信用できない
ロシアのプーチン大統領は政権中枢を「シロビキ」と呼ばれる秘密警察出身者で固め、「オリガルヒ」と呼ばれる新興財閥を弾圧して政権を維持している。習近平はプーチンの統治スタイルを模倣したが、それが自分の足元を崩すことを忘れていたのではないか。
 
郭文貴は、習近平を警護する「シロビキ」の弱体さも直撃した。郭文貴によれば、王岐山の調査を依頼したのは習近平警護の責任者である傅政華・公安部常務副部長(公安省筆頭次官)で、そのうえに傅政華の弟が介入して拘留中の郭文貴親族の身柄釈放と引き換えに金銭を要求したという。

真偽は不明だが、習近平は「一帯一路」首脳会議が終わると、首都警備責任者の王小洪・北京市公安局長を中国版NSCといわれる党中央国家安全委員会の弁公室常務副主任に昇進させた。
 
王小洪は習近平が福建省時代の警護官で、習近平の宿舎近くに住み身辺警護に当たっていた。習近平政権が誕生すると福建省の地方公安幹部から河北省公安幹部を経て北京市公安局長に抜擢された。今回の昇進は、王小洪が副部長(次官)級の定年である六十歳になったため、六十五歳定年の部長級ポストに異動させてその身分を守ったのだ。次期政権で傅政華を抜いて公安部門の柱に起用するという意図が見える。
 
習近平は執務時間の一割を経済、一割を外交、残りは人事と言われるほど、身内集めの人事に徹している。権力を一身に集めてみても身内以外は誰も信用できない性格が政権を硬直化させ、海外逃亡中の政商の告発ひとつで動揺したように見えるのだ。

「一帯一路」首脳会議を終えた今、中国国内では秋の党大会で勢力確保を狙う党内各派の動きが再び活発になってきた。「孤独の皇帝」と化した習近平を中心に、抗争は続く。【「選択」6月号】
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“執務時間の一割を経済、一割を外交、残りは人事”・・・日本でも“人事の佐藤”と評された長期政権の首相がいましたが、政治の要は人事・・・・でしょうか?ただ習氏の場合は、“人事の妙”といった話ではなく、自己保身のための極めて狭い範囲の人事に腐心しているにすぎません。

中断された“王岐山のスキャンダル”暴露インタビュー トランプ政権の対応は?】
“敵”に囲まれた習氏の“右腕”どころか“両手・両足”ともなって“敵”を切りまくっているのが盟友・王岐山ですから、その王岐山のスキャンダルが正式に取り上げられることになれば、習氏の権力は一気に大きく制約されます。

王岐山のスキャンダルを明らかにしている亡命政商・郭文貴氏のTVインタビューが中断された件では、一体だれが中断させたのか?という疑問が当然にあります。

****郭文貴のVOAインタビューを中断させたのは誰か****
“秘密”抱えて米国に逃げた「闇の政商」を巡り、米中が駆け引き

・・・・郭文貴は北京五輪公園開発で暗躍した闇の政商であり、太子党の“ラスボス”とも呼ばれている元国家副主席の曾慶紅の腹心でもあった。すでに失脚した元公安副部長の馬建から習近平政権のスキャンダル情報を得て、そのまま米国に逃亡中だ。(中略)

2015年春にいわゆる「馬建失脚事件」「郭文貴事件」が発生、私はこうした事件が、習近平による曾慶紅をターゲットにした権力闘争の一環と捉えて見ていた。

習近平はオバマ政権に、米国に逃げ込んだ郭文貴や、令計画(失脚済み)の弟・令完成らを、汚職容疑者として引き渡すように求めてきたが、さすがに弱腰と呼ばれたオバマでさえ、彼らの引き渡しに応じなかった。

中国側が勝手に私服警官を米国に送り込んで、彼らを探し始めたのが、オバマ政権の逆鱗に触れ、二人の引き渡し問題は暗礁に乗り上げた。曾慶紅も未だ失脚せずに健在である。

米国がこの二人の持つ“スキャンダル”(が本当にあるなら)を利用すれば、習近平政権を揺るがすこともできる。なので習近平は焦っていた。
 
だが昨年12月に国際刑事警察機構(ICPO)の総裁にまんまと初の中国人を就任させたことで、情勢は習近平に利するように傾き始めた。中国はついに、ICPOに郭文貴の「国際指名手配書(赤手配書)」を出させることに成功したのだ。(中略)

この流れから考えると、トランプ政権は、ひょっとして郭文貴や令完成を中国へ引き渡すこともあり得るのでは、という気もしてくるではないか。
 
こうした状況で、おそらく郭文貴が焦ったのだろう。4月19日、VOAの衛星放送番組で、インタビューを生中継で受けることにした。(中略)インタビューは全部で3時間、最初の1時間は生中継で、途中定時ニュースやCMを挟み、時間をおいて収録分を流す予定だった。
 
ところが、結論を先に言ってしまうと、このインタビューは1時間が終わり、残り2時間に入ったところで突然、VOA側の都合で、視聴者に何のことわりもなく打ち切られてしまったのだった。

ちょうど、習近平が王岐山を信用しておらず、王岐山自身の汚職問題の調査をするように、側近の公安副部長の傳政華に命じて、その協力を傳政華が郭文貴に要請した、という話が終わったタイミングだった。あまりのことに、世界中のチャイナウォッチャーたちが騒然とした。

暴露話は本当か、打ち切りは誰の圧力か
私たちが知りたいことは主に二つある。一つは、習近平と王岐山の対立や、王岐山の汚職など郭文貴が番組で暴露した話は事実なのかどうか。もう一つは、インタビュー打ち切りは誰の圧力によって、誰が判断したのか。(中略)

汚職問題ではなく権力闘争
さて郭文貴の話は事実なのか。これは何とも判断しにくい。姚慶応という人物の存在も裏がとれない。だが、口から出まかせばかりとも思えない。

中国のハイレベルの政治家、官僚が汚職の一つや二つやっているというのは当たり前だし、中国人ビジネスマンが工作員として海外の民族運動組織や民主化運動家に接触していることもよく聞く話である。
 
だが、この件において、実のところ細部の事実の正確さは重要ではない。重要なのは、これは汚職問題ではなく、権力闘争であるという点だ。

習近平は郭文貴の背後にいる政敵・曾慶紅を牽制する意味でも郭文貴を逮捕する必要があり、スキャンダルの暴露を抑え込まなければならない。

一方、郭文貴は、背水の陣で習近平政権にスキャンダルを小出しにしながら、自分の身を守り抜かねばならない。矛先が、党序列一位で最高意思決定者である習近平にではなく、王岐山に向いているのは、習近平にメンツを与えて妥協を引き出すつもりかもしれない。
 
次に、誰がVOAにインタビューを中断させたのか、という問題である。要するに、米国政府が関わっているのかどうか。トランプ政権が、郭文貴をどう扱おうとしているのか、である。それによっては、習近平政権がひっくり返る可能性も、習近平政権の長期独裁に貢献する可能性もあるのだ。

送還されれば死刑の可能性も
中国外交部と駐米大使館がVOAに対して、番組の内容がどのようなものか説明を求めていることは、番組中、キャスターが漏らしている。だが、中国当局から圧力がかかるのは想定の範囲内だ。仮にも米議会からの資金提供も受けている天下のVOAが中国当局だけの圧力に屈することがあるだろうか。
 
華字ネットメディアの明鏡ニュースは、国務省やホワイトハウスがVOAに圧力をかけた形跡はなく、あくまでVOAのハイレベルの独自判断で打ち切りを決定した、という情報を出した。VOAサイドが国際指名手配者を擁護するように受け取られたくないと判断した、という見方だ。
 
だが、そこに米国が北朝鮮の核問題で中国の協力を強く要請しているという米中関係の成り行きが忖度されていない、とも限らない。(中略)

トランプが切るカードは?
郭文貴が逃げ込んだのはトランプ政権下の米国である。伝統的な米国政府は、祖国の重要機密情報を握る政治亡命者は手厚く庇護し、その情報を対外戦略に生かしてきた。

だが、トランプはどうだろう。少なくとも中国の送還要請を拒否する理由として人道主義を掲げるのには無理がありそうではないか。
 
秋の党大会まであと半年ほどだが、それまでに郭文貴が米国に居続け、王岐山の汚職を暴露し続ければ、習近平が目論む王岐山の政治局常務委員会残留の可能性は消えてしまうのではないか。それどころか、反腐敗キャンペーン自体に説得力がなくなり、党中央の執政党の正当性や権威が大きく崩れることになりはしないか。
 
一方で、トランプ政権が習近平政権の求めに応じて、郭文貴を中国に引き渡すことになれば、米国は習近平政権の安定と権力闘争を支持しているとみなされるだろう。米国が支持すれば、中国はさらに大国への道、帝国主義への道を切り開くことになる。
 
郭文貴問題は、米中関係の試金石となると同時に、習近平政権の命運も左右しそうである。【4月26日 福島 香織氏 日経ビジネス】
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この中断されたTVインタビュー後、“中国の官僚腐敗、暴露続ける郭氏に単独取材 一問一答”【5月18日 朝日】http://digital.asahi.com/articles/ASK520H62K51UHBI03Y.htmlで郭文貴氏の主張が取り上げられています。

話が事実かどうかはわかりません。郭文貴氏も“同じ穴の・・・”ですから。

同氏は、王岐山の腐敗調査を命じられた件について、“私には習主席が調査を命じたとは思えない”“習主席は心から反腐敗を望んでいたが、王氏、孟氏、次官が反腐敗を利用してライバルを捕まえた”云々と、習主席批判は慎重に避けています。

レッドラインを超えないように・・・ということでしょうが、とっくにラインを超えています。“中国国内では、中国メディアが郭文貴の汚職のものすごさをこれでもかと、一斉に報道している。もし、米国が彼を中国に送還することがあれば、死刑は免れ得ない。”【前出 福島 香織氏】

情報漏洩者に対するネガティブキャンペーンは日本でもありましたが、漏洩情報内容以上に怖いものを感じます。

郭文貴氏は今後について、6月に改めて記者会見して、更に多くの秘密・証拠を暴露するとも主張しています。【前出 朝日より】
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