孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  銃規制強化を求める法案提出 提案どおりの成立は疑問

2013-01-31 20:59:32 | アメリカ

(1月26日、ワシントンでの銃規制強化を求めるデモに参加した、銃乱射事件が起きたコネティカット州(CT)Newtown市の市民 “Sandy Hook”は事件の起きた小学校 “flickr”より By rwreinhard http://www.flickr.com/photos/31283743@N00/8417320555/

【「何とかしなければならない。その時は今だ」】
コネティカット州の小学校銃乱射事件を受けた、「銃社会」アメリカにおける銃規制の動きについては、昨年末12月28日ブログ「アメリカ 動き出した銃規制論議」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20121228)でも取り上げましたが、銃を使用した凶行が依然として多く報じられています。

****米シカゴの公園で発砲、少女が死亡 大統領就任式で演奏のバンドに所属****
米イリノイ州シカゴで29日、公園にいた子供たちを狙った発砲事件があり、15歳の少女が死亡したほか、少年2人が負傷した。地元警察が30日、発表した。

死亡したハイディヤ・ペンドルトンさんは首都ワシントンD.C.で先週行われたバラク・オバマ米大統領の就任式で演奏を披露した高校マーチングバンドの鼓手を務めていた。親族によると「歩く天使」のような子だったという。(中略)シカゴ市警察は、銃撃犯が子供たちをギャングのメンバーと勘違いして発砲したとみている。

オバマ大統領はこれまで、シカゴなどの都市で死傷者を出し続ける発砲事件に対処する必要性を頻繁に述べてきている。今回の事件を受けホワイトハウスは30日、オバマ大統領はペンドルトンさんの家族のために祈りを捧げているとの声明を発表した。(後略)【1月31日 AFP】
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一方、銃規制法案の導入を巡る公聴会に、11年のアリゾナ州での銃乱射事件で頭部に銃弾を受け重傷を負ったギフォーズ元下院議員が出席、規制強化を求める証言したことも話題となっています。

****米上院:銃規制法案の公聴会 元議員が強化訴え****
米上院司法委員会は30日、銃規制法案の導入を巡る公聴会を開いた。11年の米アリゾナ州での銃乱射事件で頭部に銃弾を受け重傷を負ったギフォーズ元下院議員が証言し、「あまりに多くの子どもの命が失われている。何とかしなければならない。その時は今だ」と銃規制強化の必要性を訴えた。

元議員は言語障害が残っており、ゆっくりと紙を読み上げた。銃規制強化に反対している全米ライフル協会(NRA)のラピエール副会長は「家族を守るために何を購入できるかについて政府は介入すべきではない」と指摘。銃購入時の犯罪歴調査についても「犯罪者は(犯罪歴を)提出しない」と効果がないとの考えを強調した。

昨年12月の小学校銃乱射事件を受けた銃規制議論が議会でも本格化したが、法案成立への道筋はまだ見えていない。規制推進派は、司法委とは別に、高い殺傷力を持つ銃に焦点を当てた公聴会を開く方向で調整を始めた。【1月31日 毎日】
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【「市民社会に戦争で使う銃は必要ない」】
国民に銃への根強い支持があることや、全米ライフル協会(NRA)の強い政治力などで、銃規制について語ることは政治的には大きなリスクを負うことにもなり、オバマ大統領も選挙中は殆んど触れることもありませんでしたが、コネティカット州の小学校銃乱射事件後の規制強化を求める世論も高まったことを背景に、規制強化への動きを明らかにしています。

****オバマ米大統領、銃犯罪防止対策を発表****
バラク・オバマ米大統領は16日、銃を使った犯罪を抑制するための新たな対策を発表した。
オバマ大統領が打ち出した対策には、安全で責任ある銃の保有についての新たな全国キャンペーンの実施や、家庭における銃保管庫の安全基準の見直し、銃を使って襲撃された場合の訓練を学校に提供することが盛り込まれている。

また、米疾病対策センター(CDC)に銃を使った事件の原因と防止策について研究することを求めたほか、現在は個人間で銃の売買をする場合には免除されている銃購入者の背景調査を、全ての銃購入者に拡大することも求めた。
さらにオバマ大統領は議会に、攻撃用武器禁止措置の更新と、銃による大量殺害を防止するため弾倉に入る弾薬の数を10発以下に制限することも求めた。

オバマ大統領が求めた本格的な銃規制措置の多くは、議会が新しい法律を成立させることが必要になるが、銃所持を支持する団体や銃規制に消極的な民主、共和両党の保守系議員によって内容が弱められる可能性があるという見方もある。【1月17日 AFP】
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オバマ大統領の求めに呼応する形で、殺傷能力の高い銃を規制する法案が24日、上院に提出されています。
しかし、審議は難航することが予想されています。

****米国:銃規制の法案、上院に提出 成立は困難の見通し****
米上院のファインスタイン議員(民主)が中心となってまとめた殺傷能力の高い銃を規制する法案が24日、上院に提出された。昨年12月の東部コネティカット州の小学校銃乱射事件を受けた銃規制をめぐる論争が議会で本格化する。
与党の民主党内からも法律による銃規制には反対する声が上がっており、抜本的な銃規制法案が成立する見通しは立っていない。

法案は、オバマ大統領がすでに提案した内容に沿ったもので、半自動式ライフルや弾倉に10発を超える弾が装填(そうてん)できる銃など、157種類の銃について販売、製造を禁止する。また、銃の販売や移転に関し、購入希望者の調査を強化し、殺傷能力の高い銃の保有者については、安全管理の徹底を義務付ける。
過去に米国で施行された銃規制法よりも、厳しい内容で、提案者に名を連ねた議員は全員が民主党。

記者会見したファインスタイン氏は「20人の子どもが命を失ったことが、『市民社会に戦争で使う銃は必要ない』との警鐘でないとすれば、一体何だというのか」と述べ、銃規制の必要性を訴えた。

銃規制に反対する全米ライフル協会(NRA)は「銃規制が機能しないことは米国民がよく分かっている。ファインスタイン氏らの法案は議会によって否決されると確信する」などとした声明を発表。提案通りに法案が成立する可能性はかなり低いとみられる。【1月25日 毎日】
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現実政治の世界では、財政問題で対立する共和党から妥協を引き出す見返りに、銃規制法案の“緩和”といったようなこともあるのでしょうか。

【「心の奥深くにある感情や政治的分断をかき立てる複雑な問題」】
オバマ大統領は銃規制強化が国民の「心の奥深くにある感情や政治的分断をかき立てる複雑な問題」とした上で、「それが何もしないことの言い訳にはならない」「一つの命でも救えるのなら、われわれには努力する義務がある」とも強調しています。

****政治信念の違いが絡む銃規制****
「一つの命でも救えるのなら、われわれには努力する義務がある」
ホワイトハウスで1月16日、バラク・オバマ米大統領(51)が沈痛な面持ちで訴えた。
小学1年の児童ら26人が犠牲になったコネティカット州の銃乱射事件を受けて発表された包括的な銃犯罪対策。オバマ大統領は銃規制の是非で米世論が二分される中、子供の命を守る試みが「(国民の)分裂を生むようなことがあってはならない」と訴え、協力を呼びかけた。

銃使用の殺人、年1万件
「銃社会」と呼ばれる米国では、日本と比較すれば格段に銃が日常へと溶け込んでいる。一部の大型スーパーマーケットでは半自動小銃が手に入る。狩猟はワシントン郊外でも人気の高いレジャーの一つだ。
世論調査によると、米国で銃を保有している家庭は約47%。銃を使用した殺人事件は年間約1万件に達しており、先進国では突出した数字となっている。

こんな風に書き出すと、あたかも米国民が好戦的で、銃管理が実質的に野放しになっているようにも受け取れるだろう。だが、やや現実は異なる。
州によっても微妙に違うが、販売店で銃を購入するには犯歴などの身元調査が義務づけられ、年齢制限も科されている。自宅外で銃を携帯するには、別の許可証が必要なことも多い。
講習や保管、メンテナンスにもルールが存在するなど、すでにさまざまな規制があり、多くの国民は法律に従って銃を所持している。

大統領も「権利」は尊重
では、オバマ大統領が問題視しているのは、何なのか。今回提言されたのは、軍用並みに殺傷力が高い自動小銃の規制だ。

コネティカット州の乱射事件でも自動小銃が使われ、犠牲者は3~11発の銃撃を受けたという。あまりの威力のすさまじさに外形から身元の判別が困難な遺体も多かったとされる。オバマ大統領が「就任以来で最も悲惨な事件」と周囲に漏らしているのも無理はない。
また、昨年7月に映画館で12人が射殺されたコロラド州オーロラの銃乱射事件で使用されたのも自動小銃だった。

合衆国憲法「修正第2条」は国民が武器を所持し、携帯する権利を認めており、オバマ大統領も「その権利は尊重されなければならない」と訴える。
2年前にアリゾナ州の銃乱射事件で頭部を銃撃され、生死をさまよったガブリエル・ギフォーズ前下院議員(42)も拳銃の保有者であり、修正第2条の重要性を訴える一人だ。

だが、一般的な生活を送る国民に1秒間で数十発の連射が可能な自動小銃の保有が必要なのか。本当に護身の意味があるのか。「ノー」と答えるのが、オバマ大統領やギフォーズ前議員ら規制推進派の立場だ。

思想・信条の問題
他方、銃規制反対派は自動小銃での譲歩が、やがては拳銃や猟銃の規制にもつながりかねないとの疑いを抱いている。反対派には草の根保守運動「ティーパーティー(茶会)」の支持者など、保守系の人脈も少なくない。政府が国民の権利に過剰介入することを何よりも嫌う彼らにとって、銃規制は政治信念や思想の問題なのだ。
さらには、あらゆる銃器が自分や家族の安全を守る「自己責任」の象徴であり、政府の強権発動に備える「対抗手段」とも捕らえている。
日本で護憲といえばリベラル派だが、米国の修正第2条をめぐる護憲論には、保守とリベラルが入り乱れているのも興味深い。

オバマ大統領は銃犯罪対策が国民の「心の奥深くにある感情や政治的分断をかき立てる複雑な問題」とした上で、「それが何もしないことの言い訳にはならない」と強調する。
規制に反対する全米ライフル協会(NRA)は、今回の銃規制を「世紀の戦い」と対決色をあらわにしており、国民的な議論を巻き起こすのは確実な情勢だ。【1月26日 産経】
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銃規制強化が“政府による国民の権利への過剰介入”とは思いませんが、銃が大量に存在する社会において銃保持が自分や家族の安全を守る拠り所ともなっている現状はわかります。
しかし、薬物依存症の患者が薬物を求める言い様にも聞こえます。
やはり「それが何もしないことの言い訳にはならない」というのが、事態改善のための正論でしょう。

今後の世論は・・・?】
ただ、今は銃規制強化を求める声もそれなりに大きくなっていますが、銃への依存が強いアメリカ社会ですので、今後の世論の風向きはわかりません。

****銃規制強化求め数千人がデモ=「銃ではなく子供守れ」―米首都****
米首都ワシントンで26日、銃規制強化を求める数千人規模のデモが行われた。デモにはダンカン教育長官や2012年12月の銃乱射事件で小学生20人が犠牲となったコネティカット州サンディフックの住民のほか、多くの子供も参加した。

デモ参加者は、銃で殺害された子供たちの写真や「銃ではなく、子供を守れ」などと書かれたプラカードを掲げ、連邦議会議事堂前からワシントン記念塔まで行進した。
ダンカン長官は、自らがシカゴ市の教育長を務めていた際、2週間に1人の割合で生徒が銃による暴力の犠牲になっていたとし、「(銃規制強化へ)今こそ行動しなければならない」と繰り返し訴えた。【1月27日 時事】 
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毎年6月に行われる同性愛者の権利を求めるゲイ・パレードでも、ニューヨークなどでは50万人規模で行われます。
“銃規制強化を求める数千人規模のデモ”・・・いささか心もとない感もしますが・・・・。
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