孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン  難航する核開発問題協議再開  制裁で疲弊する経済  「イスラムの価値」徹底の動きも

2013-01-29 23:41:25 | イラン

(イラン・テヘランの街角で見られる“腎臓売ります”の落書き “flckr”より By Kombizz http://www.flickr.com/photos/kombizz/5736845988/)

イラン核施設で爆発?】
真偽のほどは定かではありませんが、イランの核施設で大規模爆発があったとの報道が流れています。
かねてより、イスラエルはイラン核開発を実力で阻止する意向を示していますので、イスラエルの工作活動か・・・という憶測も出てきますが、アメリカが報道の信ぴょう性を疑問視していますので、恐らくはデマなのでしょう。

****イラン:「核施設爆発」報道相次ぐ…政府「事実無根*****
イラン中部にあるフォルドウ核施設で大規模な爆発があったとの報道が相次ぎ、イラン政府が「事実無根だ」と否定している。米欧諸国やイスラエルが最も警戒する地下核施設で、厳重な管理下にあるとされ、事故なのか、外国による工作活動か、情報の真偽を含めて臆測を呼んでいる。

 ◇米側も疑問視
米ニュースサイトWND上に24日、元イラン革命防衛隊員で米中央情報局(CIA)のスパイを自称する男性が記事を掲載。イラン情報省の元関係者からの話として、フォルドウ核施設で21日午前に大きな爆発があり、技術者ら240人が閉じ込められたとした。

英タイムズ紙(電子版)は28日、イスラエル情報筋が爆発があったことを確認したと伝えた。一方、米国のカーニー大統領報道官は28日、「(爆発の)報道が信ぴょう性があるとは思えない」と爆発を疑問視した。事実であれば、国際社会が懸念する核開発活動が一定後退する可能性もある。

イラン国営テレビによると、イラン原子力庁のバルブロウディ副長官は28日、「(核施設爆発は)全くのうそで、西側諸国の宣伝行為だ」と反論。イラン軍高官も「爆発は一切ない」と否定した。

フォルドウ核施設は09年9月に存在が発覚。地下深くに約2000台の遠心分離機が設置され、国際原子力機関(IAEA)の一定の監視下でウラン濃縮活動を行っている。米欧やイスラエルは施設の解体を要求しているが、イラン側は「平和的な核開発だ」と主張して応じていない。【1月29日 毎日】
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双方の信頼醸成には程遠い状況
オバマ大統領から政権2期目の国務長官に指名されたジョン・ケリー上院外交委員長は、就任の可否を判断する公聴会で、イランの核兵器開発について「大統領と私は問題の外交的解決を選ぶ」と述べ、制裁と交渉を組み合わせた外交的解決を追求する考えを明示しています。
アメリカ同様、経済制裁で経済が悪化しているイランとしても、交渉に何らかの道筋をつけたい思いもあります。
しかし、イランの核開発問題協議の再開は難航しています。

****核問題:協議再開、調整が難航…トルコ開催にイラン難色****
イランと、国連安保理常任理事国にドイツを加えた6カ国との核開発問題協議の再開を巡り、調整が難航している。一時は今月末にもトルコで再開するとの観測が流れたが、イラン側が開催場所について異議をとなえ迷走している模様だ。

イラン核協議は昨年6月にモスクワで開かれたが、核の平和利用の権利を主張するイランと、ウラン濃縮停止や核施設の閉鎖をイランに迫る6カ国側との溝が埋まらず決裂した。その後、米欧諸国が経済制裁を強めたため、イラン経済は急速に弱体化。イランは協議を再開し、制裁解除につなげたい考えだ。

核協議は今月末にトルコ・イスタンブールで再開することで決まりかけた。しかし、シリアのアサド政権に批判的なトルコでの開催に、シリアの同盟国のイランが難色を示した。イランは新たな開催場所候補としてカイロを挙げたが、エジプト政府の了解は得られていない。イランとエジプトは長く国交を断絶していたが、11年2月にムバラク政権が崩壊して以降、関係修復が進みつつある。

イラン国営通信によると、他にカザフスタンやトルクメニスタン、スウェーデンなどが開催場所の提供に意欲的だとしているが、今月中の開催は困難な情勢だ。

6カ国側の窓口、アシュトン欧州連合外務・安全保障政策上級代表(外相)の報道官は23日、イランの姿勢を「開催場所を変更したり、返答を遅らせたり、態度を変えてばかりだ」と非難。これに対し、イラン側は「時間かせぎをしているのは6カ国側だ」と反発し、双方の信頼醸成には程遠い状況だ。【1月29日 毎日】
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NATO、トルコにパトリオット配備 警戒を強めるイラン
なお、シリア・アサド政権批判を鮮明にしているトルコには、NATOがシリア国境にパトリオットを配備しています。隣国トルコへのNATOのミサイル配備に、イランは警戒を強めています。

****NATO:迎撃ミサイル「パトリオット」、トルコで運用****
北大西洋条約機構(NATO)は26日、トルコのシリアとの国境線沿いに配備した地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」(PAC3)の運用を開始した。化学兵器を含むシリアからの弾道ミサイル攻撃などに備える。月末にはフル稼働する予定。
NATOによると、迎撃ミサイルを展開する加盟国の米、ドイツ、オランダのうち、まずオランダのミサイルがNATOの司令網と連結され、稼働可能となった。

トルコ・シリア国境は全長900キロにものぼり、すべての国境線の防衛は事実上、不可能。だがパトリオットの配備で、トルコの総人口7400万人の約半分にあたる3500万人を防衛できるようになるという。NATOは配備について、シリアに飛行禁止空域を設定するためではなく、あくまで「純粋な防衛」のためだと説明している。【1月27日 毎日】
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“こうした動きにシリアの同盟国イランは強く反発しており、メフマンパラスト外務報道官は6日、「ミサイル配備はイスラエルを守るためのものだ」と3カ国の動きをけん制した。イランはシリアのアサド政権を擁護すると同時に、トルコへのミサイル配備がNATOによる将来のイラン攻撃への布石にならないか懸念を強めている。”【1月7日 毎日】

【「制裁下のイランではろくな仕事がない」】
経済制裁で疲弊するイランでは、腎臓の闇売買が盛んになっているそうです。
もともとイランでは一定の条件下で腎臓売買が合法とされるというのも、驚きです。
イランは北朝鮮などと違って、選挙が一定に機能している国ですから、アフマディネジャド大統領など為政者としては、市民生活の困窮・不満の増大には当然ながら神経を使います。

****イラン:腎臓の闇売買が横行、違法手術も…借金苦背景に****
米欧諸国による相次ぐ経済制裁で打撃を受けるイランで、腎臓売買が盛んになっている。イランは一定の条件下で腎臓売買が合法とされる異例の国だが、借金苦などで規定以上の高額で腎臓を売る人が相次ぎ、闇売買、違法手術が横行しているという。首都テヘラン市内には、血液型や携帯電話の番号が殴り書きされた場所が数カ所あり、切羽詰まった人々の悲痛な思いが感じ取れる。(中略)

路上の落書きで「買い手」を誘うのは、高額の報酬を求める闇の腎臓提供者たちだ。テヘラン東部の電気修理業の男性(26)は、事業資金や昨夏開いた結婚式のため友人や親類から多額の借金を重ねた。しかし、核開発問題に対する米欧の経済制裁などによる物価高で借金が返せない。数カ月前に路上に腎臓提供の張り紙をした。1億2000万リヤル(約38万円)程度で提供したいが、希望者からの連絡はない。「制裁下のイランではろくな仕事がない。(腎臓提供以外に)借金を返す方法がない。妻には内緒だ」とため息をついた。(後略)【1月9日 毎日】
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ロケット技術向上に、アメリカやイスラエルが警戒感
核開発に話を戻すと、核兵器の使用には核兵器と並んで長距離弾道ミサイルの開発も必要になりますが、この方面でもイランは成果をあげているようです。

****イラン、サルの宇宙打ち上げに成功=ロケット技術向上に警戒も****
イランからの報道によると、イラン国防省は28日、サルを乗せたロケットを打ち上げ、高度120キロ超の宇宙空間に到達したと発表した。打ち上げ日時など詳細は明らかになっていないが、サルは生きたまま地上に戻り、回収されたという。今回の打ち上げは「有人宇宙飛行への準備」の一環としている。
イランは2011年にもサルの宇宙打ち上げを試みたが失敗している。

核兵器開発疑惑が浮上しているイランがロケット技術も向上させていることに、米国やイスラエルが警戒感を強めている。ロケットは核兵器の運搬手段の一つ、長距離弾道ミサイルに転用される恐れがある。
イランは核技術、ロケット技術ともに「平和利用」が目的だと主張している。【1月28日 時事】 
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保守化の動き、体制が思い描く価値観を徹底させる狙い
6月には大統領選挙が予定されているイラン国内の状況については、改革派抑え込みは相変わらずのようです。

****改革派系メディア一斉捜索、13人逮捕…イラン****
イランの治安当局は27日、不適当な海外メディアに協力したとして、改革派系の新聞など6社を一斉捜索し、計13人を逮捕した。
各社の一斉捜索・逮捕は異例。6月の大統領選を前に、イスラム体制側が、体制を批判する改革派勢力に「警告」を与えたとみられる。(後略)【1月29日 読売】
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学生ら若者の民主化運動への傾倒を警戒したものか、大学での取り締まり強化の動きも出ているようです。

****イランの大学、保守化 男女別授業・服装違反3回で退学****
イランの大学で男女別授業や服装の厳しい取り締まりが目立ち始めた。「イスラムの価値」に基づく男女のあり方を高等教育の場でも、というわけだが、性別による入学制限の動きすら出てきている。政府の狙いをいぶかしむ声もある。

 ●「イスラムの価値」徹底
首都テヘランの国立アラメ・タバタバイ大学。・・・・大学には約1万9千人が通う。昨年9月の新学期から一部の授業が男女別になった。ファリブーズ・ドルタージ副学長は「大事なのはここがイスラム社会だということ。男女別の方が感情的な問題も起きず、勉強に集中できる」と話した。・・・・イランには国立・私立あわせて444の大学がある。「男女別」の導入数は不明だが、地元メヘル通信によると、高等教育を所管するダネシュジュー科学技術相は「82%の親が男女別の授業に賛成している」と語り、広げていく意向を示している。

 ●反体制デモ契機か
髪はスカーフなどで覆い、体の線が出ないコートを着用する――。いわゆる「イスラム式服装規定」はイラン女性の義務だ。だが若い女性には、スカーフを浅くかぶり、前髪をのぞかせるスタイルがはやる。大学は神経をとがらせる。

テヘラン郊外の私立大学に通う男子学生(21)によると、昨秋から服装チェックが厳しさを増した。「女子は化粧やイヤリング、ネイルアートも禁止。男子も半袖が許されなくなった」。校門での服装検査に引っかかれば校内に入れず、違反3回で退学だという。

男女別の授業に、服装検査。「大学保守化」ともいえる一連の動きの理由を科学技術省はきちんと説明していない。だが、体制が思い描く価値観を徹底させる狙いがあるようだ。
きっかけは、2009年6月の大統領選後に起きた大規模な暴動にあるとみられる。学生がデモに加勢し、アフマディネジャド大統領の再選無効にとどまらず、イスラム体制の打倒まで叫んだ。国を統治する宗教指導者らが危機感を募らせたのは間違いない。

科学技術省高官は10年秋、大学の人文科学系の学問には「西洋で発達したものでイスラムの原理に合わない部分がある」と発言。イスラム色を強める必要性を唱え、各大学が教科書の見直しに着手した。
そして、この6月にはまた大統領選が控えている。

 ●性別で入学制限も
教育の機会を妨げる動きも出てきた。イランの大学・大学院生は、約450万人。うち約6割を女子が占める。だが昨年秋の入学者から女子を募集しない学部・学科が出はじめたのだ。(中略)
科学技術省幹部は「学生寮の問題や企業の求人を考慮して各大学が決めたことだ」と説明する。「国として男女を差別しているわけではない」といい、男子に制限をかける大学もある。

ただ、最高指導者ハメネイ師は「イスラムは女性が仕事を持つことに同意している」としつつ、「女性の仕事で何より重要なのは子どもの教育と夫の精神を支えること」と説く。イランの人口を1億5千万人にほぼ倍増させる構想にも何度か言及している。

イランの人権団体はウェブサイトで「女性の社会進出を認めず、家庭におしとどめようとするところに本当の目的がある」と批判。「女性差別の動きが大学から社会に広がりかねない」と懸念する。(後略)【1月10日 朝日】
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