孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ウクライナ  “オレンジ革命のジャンヌ・ダルク”ティモシェンコ首相 敗戦か

2010-02-08 16:13:30 | 国際情勢

(大統領選挙敗戦が伝えられるティモシェンコ首相 この美貌が国際舞台から消えるのは残念なことです。もっとも、“当然に”と言うべきか、相当に強烈な個性の女性のようですが・・・
“flickr”より By homas Barthelet
http://www.flickr.com/photos/tommybart2000/4308117555/)

【「歴史の新しいページが開かれた」】
7日に決選投票が行われたウクライナ大統領選挙は、現時点の報道によれば、予想されたように親ロシア派のヤヌコビッチ前首相が制したようです。

****前首相が勝利宣言…ウクライナ大統領選*****
8日朝(日本時間午後)の中央選管発表によると、開票率81・02%の段階で親露派のビクトル・ヤヌコビッチ前首相(59)が得票率48・61%で、対立候補のユリヤ・チモシェンコ首相(49)(45・72%)を上回って優勢となっている。
ヤヌコビッチ氏は7日夜の記者会見で、「歴史の新しいページが開かれた」と語って、事実上の勝利宣言をした。一方、チモシェンコ氏は「結論を出すには早過ぎる」と述べ敗北を認めていない。チモシェンコ氏は、「不正が疑われる場合には抗議活動や法的手段に訴える」と語っており、選挙結果の確定は長引く可能性もある。
決選投票の投票率は69%で、第1回投票(1月17日)の67%を上回った。【2月8日 読売】
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【美貌の「ジャンヌ・ダルク」】
ウクライナ大統領選挙が世界的に注目されるのは、ロシアと西欧社会の中間に位置するウクライナがロシアとの関係についてどのような選択をするのか、あるいは、かつてのオレンジ革命の帰結がどうなるのか・・・という事情があってのことですが、個人的には、その類まれな美貌とロシアから告発されたこともあるアグレッシブな経歴で有名なティモシェンコ首相の動向が気になります。

****知りたい!:ウクライナ大統領選、7日決選投票 影多き美人候補、ティモシェンコ首相****
 ◇日本のネットで人気 政界進出後に逮捕歴--ティモシェンコ首相(49)
「美しすぎる首相」と呼ばれるウクライナのユリヤ・ティモシェンコ首相(49)が、大統領のポストに挑み、関心を集めている。その美ぼうから日本でもファンは多いが、相当な野心家といわれており、カネにまつわる黒いうわさも絶えない。
選挙運動のイメージ色は純白に赤。白い服を着たティモシェンコ氏が、えとにちなんだ白いトラをなでるポスターを大量に作り、容姿を前面に出した選挙戦を行う。1月17日の大統領選では25%を得票、35%で1位のヤヌコビッチ前首相(59)とともに、2月7日の決選投票にコマを進めた。
前回04年の大統領選では、ユーシェンコ政権を生んだ民主化運動「オレンジ革命」を指導した一人として、欧米メディアが「現代のジャンヌ・ダルク」とたたえた。インターネット上のサイト「最も色気のある国家指導者」では堂々の1位だ。
ティモシェンコ氏は昨年3月に初来日し、明治神宮を参拝した画像が欧州のニュース番組で繰り返し流された。日本のネット上でも「ティモシェンコたん」と呼ばれ「超リアル峰不二子(アニメ『ルパン三世』の美人キャラクター)」と書き込まれたりもした。
トレードマークは三つ編みを頭の上に回した独特のヘアスタイルだ。ウクライナ女性の伝統的な髪形といわれ、政治的に重要な場面では、この「勝負髪形」で登場する。

3歳の時に父親が家庭を捨て、母子家庭で育った。ソ連末期にレンタルビデオチェーンを興し、ソ連崩壊後に石油やガス関連の会社を経営、「ガスの女王」と呼ばれた。96年に最高会議(国会)の議員に初当選し、政界へ進出。1日16時間の職務をこなすという。実業家の夫との間に今年30歳になる長女がいる。
オレンジ革命で首相に就任したものの、ユーシェンコ大統領(55)と対立。7カ月で解任されたが、07年の最高会議選挙で代表を務める政治ブロックが躍進し、返り咲いた。ロシア産天然ガスの輸入価格交渉では、プーチン露首相と合意を取り付ける手腕を見せた。
実業家時代は闇に包まれた部分が多い。経営していたガス会社は販売流通を独占して巨利を得ており、政界進出後の01年にロシア産ガスを抜き取った疑いで逮捕された。起訴は免れたが露検察はその後、ティモシェンコ氏を贈賄の疑いで指名手配、時効で捜査は打ち切られた。「ティモシェンコ氏がジャンヌ・ダルクならば、火あぶりにしてしまえ」(ネットの書き込み)など風当たりも強い。【2月4日 毎日】
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(ウクライナにも“えと”があるのでしょうか?)

【「改革の約束は裏切られた」】
ティモシェンコ・ファンの一人としては、今回結果は残念なことですが、超強気な彼女のことですので、まだ敗北を認めておらず、選挙不正の提訴やデモなどで抵抗、混乱が起きる可能性も示唆されています。
ただ、やり直し選挙に持ち込んで逆転勝利したオレンジ革命当時のような熱気は今はなく、情勢をひっくり返すのは無理ではないでしょうか。

****街角:キエフ 次世代に夢を託す*****
エブゲニー・ディキさん(36)。環境科学が専門の大学助教授だが、04年に民主化運動「オレンジ革命」の原動力となった青年組織「ポラ」で、今も幹部を務める。あれから5年。期待を担って誕生した政権は国民に見放され、当時数十万人の市民が集結した中心部の独立広場は、7日の大統領選を前に閑散としている。近くの喫茶店に誘って話をきいた。
「改革の約束は裏切られた。英雄も権力に就いたら結局、それまでの政治家と同じだった」。それでも今回の選挙は「尊敬はできないが2人の候補者の中ではまだまし」という理由で、「オレンジ革命」をともに戦ったティモシェンコ首相を個人的に応援する。少なくとも政権を批判しても暗殺されない、自由な世の中になった。それは守りたい、という。
「当時は生命の保証もなく、両親にさよならを言ってバリケードに加わった。今じゃ考えられないが、そんな時代だったんだ」(後略)【2月7日 毎日】
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【余裕のロシア】
ロシアとの関係で言えば、ロシアと敵対的な親欧米派ユーシェンコ現大統領の政策によってウクライナ経済が深刻な不況に陥っていることから、親ロシア派のヤヌコビッチ前首相だけでなく、かつてオレンジ革命を主導したティモシェンコ首相もロシアとの関係改善を訴え、プーチン・ロシア首相とも良好な関係を築いています。
従って、どちらが勝利してもロシアとの関係改善が進むものと見られています。
そのため、04年の前回選挙では露骨な介入姿勢を見せたロシアは、今回は一転して余裕の静観姿勢を取っています。

なお、親ロシア派のヤヌコビッチ前首相も、国営テレビでのロシア語放送復活を求めることも現時点ではなく、ロシアが主導する「集団安保条約機構」に加盟せず「ウクライナの軍事的な中立性を保持する」と表明するなど、ロシア一辺倒のイメージは否定しており、西欧とロシアとのバランスが求められることになりそうです。
ウクライナでは、NATO加盟支持は30%以下ですが、6割以上は将来的なEU加盟を支持しているとのことです。

【「ウクライナには政治や言論の自由があり、民主主義がある」】
オレンジ革命の成果である民主主義がどうなるか・・・という点については、危惧する向きもあります。
****ウクライナ 民主主義根付くか 大統領決選 カラー革命に試金石*****
グルジアやキルギスでは「革命」後の政権が翼賛体制を築き、民主化の後退が指摘される。これに対し、ウクライナで報道・言論の自由や政党政治の機能が維持されてきたのは、一つには「革命」に大衆の強力な支持があったからだ。
だが、今回は「オレンジ革命」後の政治的混乱に対する国民の倦怠(けんたい)感も強く、「革命」時の再選挙で敗北した親露派候補、ヤヌコビッチ地域党党首(59)の優勢も伝えられる。地域党は選挙戦最中の3日、開票作業をめぐる選挙法修正案を議会で可決させ、批判されている。親欧米候補のティモシェンコ首相(49)もオリガルヒ(新興寡占資本家)による放送局支配を嫌悪しており、国による放送局買収をめざしているとされる。
ゾロタリョフ氏は「選挙後に勝敗をめぐる混乱が起きれば民主主義への不信感が高まる。国民に権威主義への期待が生じる事態が最も問題だ」と語っている。【2月7日 産経】
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ただ、前出毎日記事に“少なくとも政権を批判しても暗殺されない、自由な世の中になった”とあるように、オレンジ革命によって得られた政治的自由がウクライナに一定に根付いているのも事実です。

****赤の広場で 自由が息づく街****
取材した政治評論家が「まだまだ不完全だが、ウクライナには政治や言論の自由があり、民主主義がある」と話すのを聞いたとき、そんな感情を抱いた理由に思い至った。周囲の目を気にすることなく、感じたことを何でも話せる「自由」だったのだ。
ロシアでも選挙で大統領が選ばれる。が、投票前に時の指導者が意中の人物の名を口にした瞬間、後継者が決まってしまうのが実情だ。酒場や道端で出会う人々は政府への不満を述べるのに、その声を公に上げることはためらう。政権の評価をめぐり、識者が議論するような討論番組もほとんどない。
もちろん、ウクライナも問題は少なくない。たとえば、わいろを求める役人の悪質さはロシアを上回るともいわれ、ビジネスマンの方々はさぞ苦労されていることだろう。だが、この国には人々が生きる上で最も大切なものが息づいていると感じた。【1月25日 産経 佐藤貴生】
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オレンジ革命で敗れたヤヌコビッチ前首相の復活当選を以って、オレンジ革命の成果そのものがすべて否定されることになると悲観的に考えることもないようです。

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