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群青のミッドウェー その5

2015-05-03 20:24:48 | 群青のミッドウェー


 (このお話はフィクションです。実在の個人・団体とは一切関係ありません)

ミッドウェー島攻撃から帰ってきた友永隊はへろへろだった。
「ミッドウェー島の守備隊などひとにぎり」なんて軍令部のいいかげんな情報を信じて出撃したら、敵戦闘機の待ち伏せや、すさまじい対空砲火に迎えられたのだからたまらない。
それでも、敵機を40機以上撃墜し、修理可能な物ばかりとはいえ地上施設の爆撃を敢行したのだから、母艦にたどりついた時はよれよれだった。
早くも燃料切れで海に落ちる機もある。護衛の駆逐艦がパイロットを拾い上げているが、飛行機はどうなるんだろう。沈むにまかせるのかな。それはちょっともったいないな
南雲がおれと同じことを考えたのかどうか知らないが、源田に向かって、こう問いかけた。
「友永隊を先に収容した方がいいのではないか?」
「そうですねえ…」と源田は煮え切らない。何だよ、おまえ、決断力レベル高いんじゃなかったのか? さっきから、ずっと頷きトリオじゃねえか
「きっと、南雲さんと相性がいいからじゃない? 敦くんが試合で、仲のいい中村くんより、嫌いな元木くんによくパス出すのと同じ気がする」
碧が思いがけないことを言った。
中村と元木は今、ポジション争いをしているところだ。実際、敦は、監督が中村を使った時の倍くらい元木にパスを出している。
おれも一度、「おまえ、中村の時ももっとパス出してやれよ。このままだと、元木がレギュラーに定着しちまうぞ」と言ったことがある。
「おれもそう思うんだけどさー。元木って、思いがけないスペースを見つけるのが上手いんだよな。あー、やべぇ、誰にもパス出せねえと思った時に、あんなところが空いてたんだつうとこへパッと飛び込んでこられたら、あいつにパスするしかねえじゃん」
碧が言うには、馬が合わないということは人間のタイプが違うからだ。だからこそ、自分とは違う視点や発想を持つことができる。元木が「思いがけない」スペースを見つけられるのはそのせいではないか。逆に、敦と気の合う中村は発想が似通っているので、相手チームが敦の癖を読んできたりすると、機能しにくくなる。
「源田さんと南雲さんも相性レベルが高いんでしょう? 似たもの同士だから、同じところで躓いちゃうんじゃないかな」
碧が『源田さん』とか『南雲さん』とか言うと、おれは妙な気分になった。呼び捨てにするより、さんづけの方が「お友達」という感じがするのはなぜだろう
「そうか。あの相性レベルにはそんな深い意味があったのか。ちくしょー。相性レベルの低い山口あたりと組んだ方がよかったのかも
敦は、今さらながらに後悔している。
その山口からは、「現装備(爆装)のまま直ちに発進の要ありと認む」と矢の催促がきていた。敦が山口をサポートキャラに選ばなかったので、山口は史実通り、空母飛龍に乗り組んでいる。
画面が二分割されて、燃えさかる炎をバックに背負った山口と 困り果てたような表情の南雲 がやりとりをしている。
「陸用爆弾でもいいではないか。敵空母の甲板に穴を開ければ使い物にならなくなる。沈めるのはそれからでもよろしい」
「しかし、ハワイへ逃げ込まれでもしたら…それに、攻撃隊の発艦を先にすると、戦闘機の護衛をつけてやれなくなる。友永隊を先に収容して、その間に爆装を雷装に転換すれば、友永隊の戦闘機を護衛につけてやれるし、魚雷で敵空母を確実に沈めることができる…」
敦はこれを聞いて目を剥いた。
「て、また二時間かけて魚雷につけかえるの? なし、なし。もう敵空母近くにいるんだろ? そのまま出撃だよ」
おお、ついに歴史が変わるのか おれは胸をときめかせて画面に見入った。
南雲の台詞が二つに分かれる。
「1 攻撃隊は爆装のまま、直ちに発艦せよ 2 友永隊を収容し、爆装を雷装に再転換せよ」
敦は、「絶対こっちだよ」と2をクリックした。おい、それ、違うんじゃねーか?
「あー、間違えた
案の定、敦は叫んだ。これまでの分岐では1が史実通り、2が史実と違う選択肢だったので、つい2を選んでしまったらしい。
ああ、これで史実通りになっちまったよ… 
なまじっか予備知識を仕入れたばかりに、おれにはこの先の展開がはっきりわかっている。だが、そんなおれの目にも、「もしかしたら何とかなるかも」と見えるほど、日本の防御は鉄壁だった。
アメリカが次々繰り出してくる攻撃機を、DF零戦が片っ端から墜としてゆく。この頃までは、零戦自体が世界一といっていい性能を誇っていただけでなく、それを操るパイロットの腕も神業的だったようだ。源田が空母をひとまとめにして零戦に守らせればいいと考えたのも一理あると思える活躍ぶりだ。
そのうち、とうとう敵空母の艦載機が襲いかかってきた。ミッドウェー島からの陸上機とはまるでエンジン音が違う。
戦争をちょっとだけ知っているおれのじいちゃん(終戦時に小学生だったらしい)が、B29よりも艦載機が来た時の方が恐かったとよく言っていた。
―低空をさぁーっと飛んできて、動くものは全部機銃掃射していきよる。あの甲高いエンジン音が聞こえてきたらゾクーッとしたよ
何も民間人相手にそこまでしなくてもよさそうな気がするが、いったん戦争状態になってしまうと、ひとまとめに「敵国人」になってしまうんだろうな。
迫り来る雷撃隊を、これもDF零戦がたたき落とす。安堵する間もなく、第二波、第三波が繰り出されてくる。
魚雷は一発でも当たると艦が沈むので、DF零戦も、対空砲も必死だ。
DF零戦の頼もしさに、空母の乗組員は歓声を上げている。だが、サッカーでいえば何本もシュートを打たれている状態なのは変わりない。
いくら鉄壁のディフェンスでも、生身の人間がやっているのだから、一瞬の隙を突いて抜かれることはある。
そして、とうとう、その瞬間がやってきた。(つづく)




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2 コメント

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久々に・・・ (lucino)
2015-05-03 22:33:34
久々にこの話がやって来ましたね

何でしょう・・・中村君と元木君の話はよく分かるような気がします
仲のいい人と、仕事がやりやすい人って全く違いますね
一度、私の幼馴染と同じ職場同じ部署で働いたことがありましてね・・・
普段は仲がいいけど、仕事はめっちゃやりにくかったですね
多分・・・タイプもある程度、似ていたのでしょうね

サッカーもそうかな
うっちーって、シャルケで仲のいい海外の選手がいますけど・・・
その中に、ファルファンって仲のいいリストに聞いたことがないですからね
他のシャルケの選手の名前が結構出てくるのですけどね
多分、これも仕事の相性と友達的な相性も違うのだろうなって思いましたね

さてさて・・・かなり史実に近い所を選んだようですが
最後に、もうワンチャンスが生まれるといいですね
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lucinoさん、感謝してます!  (アンジー)
2015-05-04 21:18:54
わたしは苦手なタイプの人と組んだことがあって、最初はいやだったんですが、お互いの不得意分野を補い合えることに気づきました。
ビジネスパートナーは気が合うかどうかで選んじゃいけないなと感じた出来事です
え? うっちーとファルちゃんて、そんなに仲いいわけじゃないんですか?
プロのチームだとよけいそういうことがあるかもしれませんね。よくいう、「仲良しクラブじゃない」ってやつですかね。
いつも読んで下さってありがとうございますm(__)m
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