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群青のミッドウェー その3

2015-03-10 20:42:37 | 群青のミッドウェー
『紺碧のダナウェイ~Her Majesty's Angels~』


 (このおはなしはフィクションです。実在の個人・団体には一切関係ありません)

この索敵だか偵察だかには、「日本軍に不利な点が多々あった」と、おれの見たサイトには書いてあった。
霧が出ていたり、カタパルトの不具合で偵察機が予定通りに発艦できなかったり、色々アクシデントがあったようだ。
だが、生意気を承知で言わせて貰うなら、それって、運不運の問題なんだろうか。
おれも敦もサッカー部に入っていて、自慢じゃないがレギュラーだ(練習しないでゲームなんかやっていていいのかって? うちの学校はグラウンドが狭いので、運動部が交替で使用している。今日は野球部の練習日なのだ)。
うちの監督は、『語録』を作りたくなるほど格言めいたことを言うのが好きな人だが、その1は何と言っても、「不運だと思うことの大半は自分に原因がある」だろう。
この間の練習試合でもそうだった。相手はけっこう強豪チームだったが、おれたちは終盤まで0-0で粘っていた。そのまま引き分けても、「勝ちに等しい引き分け」と言える試合だった。相手選手の表情にも、無名校相手に得点できない焦りが滲んでいるように見えた。
そのせいか、おれがドリブルでボールを前線に運んでいくと、ものすごいタックルをくらった。おれは見事にすっ転がりながら、心の中で、「やったー、FKだー!( ^-^)ノ」と叫んでいた。だが、審判は笛を吹かない。嘘だろう? おれは呆然と審判の姿を目で追った
敦の「戻れー!」の叫びに、慌てて走り出した時はもう遅かった。おれたちはカウンターをくらって、決勝点を入れられてしまった(ごていねいに、アディショナルタイムにももう1点入れられた)。
試合後、「あのジャッジがなかったら、勝てたかもしれないのに」とぼやいていると、監督にどやされた。
監督が言うには、相手の選手はフィジカルが強いので、もっと強い当たりをくらってもびくともしなかった。だから、おれがあの程度の当たりで倒れてもファウルをとられなかったのだ。
「仮にミスジャッジだったとしても、プレイが続いているのにぼーっと突っ立っているとは何事だ!」と、おれを含めて数人の戻り遅れた奴らがゲンコツをくらった その時は、「きっつー」と思ったが、落ち着いて考えると、監督の言う通りかもしれない。
おれは次の練習からは、できるだけ筋トレを手抜きせずフィジカルを鍛え、ゲームが続いている間は何があっても集中を切らさないことを心がけるようにした。
サッカーの試合ですらこうなのだから、いわんや戦争においてをやである(←最近、漢文で習った表現。古文だったかな?)
何でも、空母同士の対決では、とにかく先制パンチをかました方が勝つという。ミッドウェー作戦の最大の目標は敵空母の殲滅なのだから、この場合、何をおいても相手より先に敵の空母部隊を発見することを優先するべきだったんじゃないだろうか。二段でも三段でも、バンバン偵察機を出していれば、アクシデントは「不運」につながらなかったように思う。
それなのに、攻撃機が少なくなるから一段索敵にするなんていってるのが、日本の貧乏くさいところだ

結局、敵空母は見つからないまま、友永隊長率いるミッドウェー島攻撃部隊が出撃した。
この攻撃は、ゲームのメインの流れとは独立した「イベント」になっている。イベントなんていうと不謹慎に聞こえるかもしれないが、ゲーム用語だから仕方がない。
「イベントに参加しますか?」という質問に、敦はもちろん参加をクリックして、零戦パイロットをキャラ選択した。
味方の航空部隊が攻撃に行く時の戦闘機の役目は、重い爆弾を積んで身動きが鈍くなる爆撃機の護衛である。飛行機の速度が違うので目的地に着くまでは寄り添って飛ぶわけではないらしく、敦は、「上昇、下降、これで旋回だな」と、操作を確認していた。
しかし、ミッドウェー上空に到達した瞬間、「え? 何? うそ、マジ?」と素っ頓狂な声をあげる。敵戦闘機が待ち伏せしていたのだ。
実は、これが日本軍の大誤算の一つだった。日本側は真珠湾の時と同じく全くの奇襲をかけているつもりだったのだが、海軍の暗号はアメリカにバレバレで、向こうはミッドウェー島の守備を強化して待ち構えていたのである。
敦は爆撃機の側に行こうとするが、敵戦闘機にはばまれてなかなか近づけない。それでも、何機か撃墜して(1機撃墜すると100ポイントゲットできる)、味方の護衛にとんでいった。敵にやられそうな味方機は画像が点滅している。その側へ行って、相手の戦闘機を追い払うと、点滅が消えて50ポイントが入る。敵機を撃墜すれば100ポイントだ。
敦は調子よくポイントを取っているように見えたが、
「何か、これ、すっげー疲れる
ダナウェイにもアクロバティックな戦闘シーンは何度も出てきたが、「こんなの作画するの大変だろうなー」と感心する程度で、見ていて疲れるということはなかった。だが、ミッドウェーの画像には、自分がそこに引きずり出されたような、妙なリアリティがあった。
攻撃隊が突っ込んでいくシーンもそうだ。高高度から見ると、ミッドウェー島は海にぽちっと突き出した突起のようだ。そこに爆弾を落とすのだから、いかに急降下しなければならないかがわかる。しかも、下からは対空砲火、周囲からは敵戦闘機の攻撃を受けながらだ。
正直、
(自分がこんなことしなきゃならなくなったら、いやだな
と、思った。
高度が下がるにつれ、ミッドウェー島の周囲には珊瑚礁なんかあって、綺麗な海なのがわかる。戦争なんかしてないで、ここで泳いだら気持ちいいだろうなあ
「疲れる理由がわかった。敵多すぎ~
敦が悲鳴をあげる。ポイントはかなりの数字になっていたが、敵戦闘機は次から次へと敦の零戦に群がってくる。
こんなに大変な思いをしたにも関わらず、この攻撃は空振りだったようだ。敵機のほとんどはどこかへ逃げ出してしまっていたし、爆撃した地上施設もすぐに修理が可能なものばかりだった。
友永隊長は、「二次攻撃の必要を認む」と打電した。
これが、南雲を悩ませ、最大の「たられば」につながっていくのだ。(つづく)