銀座のうぐいすから

幸せに暮らす為には、何をどうしたら良い?を追求するのがここの目的です。それも具体的な事実を通じ下世話な言葉を使って表し、

『のだめカンタービレ』-3、(日本人はヨーロッパが好きなんだ)

2010-01-30 11:16:00 | Weblog
 「のだめカンタービレ」について、書かれているブログ等を読みますと、非難しているヒトもあります。「軽い」とか、「出演者が、タレントの起用が多くて、演技が下手だとか」言って。それは、ある意味であたっています。だから、私の文章の普段の読者が映画館へ足を運ばれて、「いや、面白くなかった」とおっしゃる可能性は、十分あります。
 だけど、『漫画が原作であり、第一ターゲットが少女層であろうと考えると、それを許してあげないといけない』と考えます。

 私にとっては、玉木宏の演技を、チェックすることも大切でしたが、もうひとつ、音楽が好きだから、それが、どういう風に扱われているかというポイントも大切でした。
 それについては、十分に満足し、感謝の気持ちを抱かせられました。この前篇において、メインに選ばれている曲が、チャイコフスキーの『1812』であったというのは、スタッフたちを褒めたい選択です。
 これが、原作の漫画にあったかどうかは私は知らないのですが、よく考えて選択をされています。この曲は交響楽団の演奏する曲目としては、人口に膾炙していません。ポピュラーではないのです。だから、そのこと自体が、新鮮さを呼び覚ましました。裏方として、指揮法の指導を初め、クラシックのプロがきちんと関わっているのを感じさせられます。
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 そして、その結果としてあらためて感じることは、『日本人って、やっぱりヨーロッパが好きなんだなあ』ということです。この映画は冒頭に、Paris  と Wien というロゴが出て、お定まりのエッフェル塔を遠くから望む映像が出たり、ウィーンでは、数々の有名作曲家の銅像が、映し出されます。

 また、中ほどで、主人公『のだめ』の夢(妄想)の表現テクニックのひとつとして、モンサンミッシェルを俯瞰する映像なども出ました。で、ある部分からは、『ありきたりよねえ。これって、協賛企業JAL や、YAMAHA への恩返し、見え見えで、観光誘致映画じゃあない?』とけなされる可能性があります。好意を持っている私でさえ、ピアノだけではなく、大太鼓にさえ、大きなロゴYAMAHAを見つけ、ドキッとしたほどですから。
 でも、それが無くては、映像美さえも伴っているこれほどの映画が、できなかったでしょう。お金がかけられていることは確かです。でも、映画はあたるかどうかがわからないので、現在では協賛企業の資本・参加は仕方がないですね。

 それが、実はクラシック音楽を学ぶ過程でも大きなことなのです。その習得過程において、お金が掛かることが、実態です。だから、クラシック音楽の演奏家になることは日本では一部の階級のものだったのに、それが、だんだん開放をされてきています。そして、小沢征爾や、小林研一郎の出現を経て、・・・・・この映画で、千秋役を演じる玉木宏が、荒唐無稽に見えない社会・・・・・が出現しました。喜ばしいことです。

 そして、それに平行して、庶民階層の出身で、お部屋さえ片付けられない、かつお料理さえできないヒロイン『のだめ』が、・・・・・その才能ゆえに、もしかすると、大ピアニストになれるかもしれない・・・・・という夢が、根底にあるので、この映画がヒットしたのでしょう。この映画もシンデレラ物語のヴァリエーションのひとつですが、そこに長期間の修行という新しい味付けが加えられているのです。ただし、この前篇では、ぷつんと切れるので、それはペンディング(続く)と成っています。

 アッパークラスのヒトが、順当に、修行をして、出世していくところにはドラマは生まれません。ドキュメンタリーは、生まれても劇映画は、生まれないのです。そして、あくまでも、少女たちがメインターゲットだとしたら、この映画は、これでよいのです。

 実は、皆様の中でお若い方は、ご存じないかもしれませんが、小沢征爾さんだって、同時進行的に彼の進歩を見ている、私などの年齢からすれば、修行にお金が掛かるので、いろいろ裏話があったのですよ。今では、そんなエピソードは一切忘れられていますが、あったのです。そういうエピソードを下敷きにして、この原作と、映画が、生まれ、夢の世界を表出しているのです。

 でも、若き日の小沢さんが、バイクを駆ってヨーロッパを音楽修行をしたように、若いということはすばらしいことです。今のヒトは、アメリカも憧れの場所となり、修行の目的地になっている模様ですが、ヨーロッパがあらためて、若いヒトの憧れの対象となるのは、よいことのひとつです。クラシック音楽に大勢のヒトが目覚めた、この原作と映画は、それなりに価値があります。学校の音楽という科目では教えきれないことを、教えてくれているから。

 『今の若いヒトは、元気が無くて、海外旅行にさえ行かないので、旅行会社は危機感を持っている』とも一時報道されました。だからこそ、若いヒトへ夢や元気を与える可能性がある、この映画は価値があります。若いうちに、ツアーでもよいからヨーロッパは経験しておくべきですし。

 ところで、日本という国では、最近、『江戸文化、再評価の気運も高い』です。それもよいことです。ヨーロッパに行くにしても、アメリカに行くにしても、日本の最上のものを学んでおくことは大切です。ともかく、学んだり修行をしている人たちが、たくさん出てくることも、この映画の清涼感を生んでいるでしょう。そのまじめさを、薄めるためのずっこけであり、コメディ化であり、タレントの起用だと、感じます。うがった見方でもあるが『まじめであることが忌避される、最近の日本』だからこそ、こういう工夫も必要なのだろうと感じます。
  この項目続く。            2010年1月30日      雨宮舜
コメント
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