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豊田の生活アメニティ

都市デザイン、街歩き・旅行、くらし

日本の円安・物価高は止められるか!

2024-04-14 | 気になる本

河野龍太郎(2022)『グローバルインフレーションの深層』慶應義塾大学出版会①

 日銀は3月19日金融政策会合で物価上昇率2%が見通せるとして、マイナス金利をやめた。YCCもETF=上場投資信託とREIT=不動産投資信託の新規の購入も終了して、金融緩和の転換へ舵を切ったように思える。しかし、国債は買い入れるとした。円高に向かうと思えたが、1$153円と円安に向かい株価も上昇した。生活必需品、輸入品は上がっているし、賃上げは大手のみで定昇分を引けば物価上昇に追いつかない。円安やインフレを止めるには、日銀が利上げすべきだが政府と日銀の莫大な国債が持たない。

 本書はアメリカを中心にインフレの深層を丁寧に検証している。日本はアベノミクスの異次元の金融緩和、そして日銀のデフレ脱却で「物価上昇率2%」だけを追求してきたが、大企業のトリクルダウンはなく内部留保は増えても、国民の所得・消費は増えず経済成長は止まっている。借金先送り、経済・金融政策の失敗が、歯止めなきインフレを招くのではないか、というのが私の懸念と関心であった。問題点を指摘するが、各種政府の審議会などの委員のせいか遠慮気味である。河合小百合「日本銀行 我が国に迫る危機」、山田博文「国債ビジネスと債務大国日本の危機」の方が、現実味がある。軍事費拡大、少子化対策の財源論をどうするか、消費税か国債発行か富裕層増税か、日本はアルゼンチンの道か。財政の無駄は公共事業か、社会保障か、軍事費か、裏金かなど興味ある論点である。

現在興味のあるテーマの1つは、人口減少と少子化対策である。まずは、少子化対策に関する部分を紹介し、感想を次回書く。


安藤光義「日本資本主義の展開と(農業)基本法」メモ

2024-03-12 | 気になる本

日本資本主義の歴史的構造転換と農業基本政策を考える。

 HONDA 抜き書きメモ

 安藤光義 経済4月号 「日本資本主義の展開と基本法」より

1999年の現行法(食料・農業・農村基本法)の改定と2022年から始まった改正議論を並べて歴史的にみると、日本農業は日本資本主義と一体のものである。戦後復興が重工業化による高度成長、石油危機を乗り越えジャパンアズナンバーワンの時代、冷戦終了、GATT・ウルグアイ・ラウンドからWHO体制でグローバル化時代、人口減少と地盤沈下で現在に至る。

・1971年の金ドル交換停止 石油危機、福祉国家の解体と新自由主義、資本の自由化で多国籍企業家と国民経済の黄昏、利潤率低下で行き場を失った過剰資本は投機的な金融市場の拡大と崩壊。

・1944年7月 ブレトンウッズ体制、基軸通通貨はポンドからドルへ、固定通貨、IMF、自由貿易による植民地化

・1950年 朝鮮戦争 (民主化の)逆体制 アジアの兵器廠、米国の衰退で日本と西独の台頭

・1961年 基本法 価格所得政策、都市への人口移動、地価上昇で農家の資産保有意識、兼業農家進行、食料自給率の減少、米国の余剰農産物の輸入

・1964年 グレイン・ソルガム(きび、飼料)の輸入自由化、飼料用穀物を肥料や農薬と同じ生産資材、対米従属体制で食料自給率の低下は必然

・1971年 金ドル交換停止、スミソニアン協定

・1973年 第1次石油危機 農村が過剰人口のプール、1955~高度成長、日米貿易摩擦

・1977年 第3次全国総合開発計画、定住圏構想     

・1979年 「ジャパンアズナンバーワン」、「双子の赤字」(軍事費増大で)

・1985年 プラザ合意 ドル安円高に協調        (企業の海外進出)

・1989年 日米構造協議(貿易摩擦を背景に日本に規制緩和、公共事業630兆円)

・1990年 バブル崩壊 株価暴落 (2024年株価高騰とその原因は)

・1995年 「日本的経営」、4割が非正規は1999年の派遣法改悪で2003年製造業に、

     日系外国人や外国人技能実習生 

・1997年 アジア通貨危機(なぜ)

・2008年 リーマンショック サブプライム(住宅・車ローンの異常貸し出しと金融工学による不良債権の株式化、トヨタショックで派遣切り、税金免除5年)

(2011年東日本大震災、民主党政権、アベノミクスの異次元の規制緩和、マイナス金利)

農村の工業導入 九州(91年トヨタ九州)、東北(2012年豊田東日本)へ安い賃金

 日本資本主義委は石油危機を克服したが、日米貿易摩擦の激化。米国の「双子の赤字」、円高不況、金余りがバブル経済、そして崩壊。リストラと人員削減で「就職氷河期」に。低賃金農労力の基盤は国内(九州、東北)から海外へ。

 おわりに 予算裏付けない、存続不可能、非正規、結婚率・出生率低下の希望喪失社会


鈴木康弘「能登半島地震と活断層」を読む

2024-03-05 | 気になる本

能登半島地震と活断層―「想定外」の背景に何が?

 鈴木康弘(2024.3「世界」)「能登半島地震と活断層」

 著者とは以前、豊田市の地震動調査でご一緒したことがある。地理学、活断層の専門家である。地震には大きく分けて、海洋のプレート型と内陸の活断層型である。どちらも過去に起きたから、周期的に起きるとは限らない。日本列島は世界で地震頻繁国である。そして今は活動期にある。いつどこで起きるか予知は不能で、震度6以上に耐える構造物にする必要がある。「想定外」の地震や津波が起きる日本で、原発の立地や核ゴミを埋める場所などないと思う。忖度なしで科学的に発言できる研究者が、国民の生命財産を守るには必要である。この本はそういう立場を感じる。以下、本のメモ書きである。

 兵庫県南部地震以降、大地震の発生可能性に焦点が当てられ、活断層が5Km以内に近接する場合には一連で活動すると予測された。しかし、原子力発電所の安全審査においては必ずしもこの考えは採用されず、起こらない主張もされた。これに対し後藤は、海域の活断層が過去にずれた結果できた地形が連続するとして、今回の震源断層とほぼ匹敵する一連の海底活断層の存在を十年前に指摘していた。こうした見解の相違が生まれる科学的理由は、沿岸海域の調査が技術的に難しいこと、漁業権との兼ね合いも容易ではないなどがある。

 能登半島にある志賀原発の安全審査の際、北西方の海域には10Km以下の短い海底活断層しかないとされていた。しかし2007年の能登半島地震では長さ30Kmにわたる海底活断層が一気に活動し、認定の誤りが明らかになった。今回の地震で再び同じ問題が起きたのだから、これは従来の調査手法や判断のあり方に問題があったと言わざるを得ない。

 今回の能登半島地震の全貌はまだ明らかでないが、以下の3点を指摘できる。1、沿岸海域の活断層は盲点である。2、海岸地形を見直し、海成段丘が標高の高い場所にあるのにその原因が明らかになっていない地域をリストアップし、沿岸に海底活断層がある可能性を見極め、調査戦略を熟慮する必要がある。3,阪神・淡路大震災の惨事を繰り返さないため、地震研究の成果を防災に結び付けようというのが29年前の発足時の出発点であった。今は調査結果をまとめるだけになっていないだろうか。

 東海地震への警戒を促し、次に南海トラフ地震や千島海峡の地震へ注目させようとしても国民の関心が高まらないのは、科学への信頼が揺らいでいるためかもしれない。関連企業や機関への忖度は言語道断である。地震本部の発表は純粋に科学的である必要があり、バイアスがあるという印象を持たれたら国民の信頼を損ねる。

 参考文献

鈴木康弘「原発と活断層」

鈴木康弘編「防災・減災につなげるハザードマップの活かし方」


内田、姜「世界最終戦争論」

2024-01-15 | 気になる本

内田樹 姜尚中(2016)『世界「最終」戦争論』集英社新書

今年の元旦から能登で大きな地震が勃発した、テレビを見ていて正月で半島ということもあって、救助がなかなか進まず歯がゆく悲しくなる。能登では群発地震が続きある程度は予測されていたが、地震災害は天災であり地震国日本では避けがたい。ならば、当然のこととして原発はなくすべきである。

 羽田の航空事故はヒューマンエラーである。日航機の死者がでなかったのは不幸中の幸いであった。飛行機は安全第一、日航は解雇撤回せよ。ウクライナのロシア侵略戦争とイスラエルのガザ侵攻は停まる気配がない。防衛に名を借りたイスラエル軍はジェノサイドであり、戦争は人災である。

 昨年は戦争、政府・日銀の債務、人口減少問題、さらに金権腐敗政治(パーティ券の裏金)が、私の関心事であったが、年末からの諫早湾の公共性について読みかけの本と、今年は地震防災のテーマが加わった。戦争論の読みかけの本が2冊ある。以下、この本の6章のメモ書きである。

 はじめに

姜 第2次世界大戦が終わった時、もう二度と再び、あのような悲劇は繰り返すまい、と誓ったに違いない。自爆を覚悟し、自らの肉体の炸裂が祝福されると信じる人々や集団を、巨大な軍事力や核の抑止力で抑え込むことができるのだろうか。(テロ、神風特攻隊)

姜 世界は「右傾化」しつつある。

内田 これは「極右の勢力伸張」というよりも「国民国家の解体」であるという、中田孝の指摘である。

6章日本のシンガポール化

内田 国民資源を、当面の利益とか株価のために、溶かしている。大気や海洋や森林の自然環境もあるし、交通網や通信網やライフラインのような社会的インフラもあるし、司法や医療や教育のような制度資本もあるけれど、人間が生活を営むためになくてはならない。年金を株に突っ込むなんて、正気の沙汰ではない。

内田 成長し続けるにはシンガポールをモデルにする。反政府的なメディアは潰す。労働組合は潰す。「金儲け」に直結する以外の学術には公的支出しない。全国民が「経済成長」という国是のために1億総活躍するシステムをつくる。金儲けのしやすいビジネス環境を作って、世界の資本を呼び込む。安倍政権の当面の政策が、その方向である。

姜 そうです。原発事故で人が住めない廃墟にしたわけだから、国土喪失だ。

内田 TPPもそうで、小規模農家は消滅する。当然、地方の居住不能エリアは広がり、都市部以外に住めなくなる。

 地方のコンパクトシティで廃墟になったら、最終的に人間が住めるのは都市部しかなく、雇用は賃労働、生活必需品はコンビニ、娯楽は人工物しかない。コストは下げられる。

 左翼リベラリズムは伝統的な成長論者である。人口減の日本には成長する余地はないから、成長戦略を語ることは無駄である。成長しなくても愉快に生きていける戦略を考えるべきだ。

コメント

豊田市もコンパクトシティを都市のメインテーマにしていて、市街化区域や立地適正化による居住誘導区域で中山間地の加速化が進む。コンパクトシティはサスティナブルシティにすべきである。


西谷「私たちはどんな世界を・・・」③

2023-12-02 | 気になる本

 (  )内は私のコメント

 1933年に京大の滝川事件、35年には美濃部達吉の「天皇機関説」が不敬罪になった。40年津田宗吉の本さえ、日本神話を無視しているということで発禁処分をうける。「神国日本」を受け入れないと、「非国民」となる。

 民主主義の下でも戦争は起こる。産業化した社会では、雇用労働が一般の人の生活条件で在り、それが崩れると人びとは容易に戦争を求めるようになる。不安や憎悪が苦境にはけ口になるからだ。そのことをナチズムは典型的に示している。戦争が起こらないようにするには、国家間の力の政策を抑えるだけでなく、それぞれの人々が社会的に安定して生きていけるようにしなければならない。「フィラデルフィア宣言」(?)

 戦後の処理は、アメリカが一番動いたからとういうことで、単独講和となった。が連合国側の志向も働く。まず、神道国家体制の解体、次に財閥が軍部と結びついて利権を追求したので、財閥解体をする。もう一つが農地改革である。「鬼畜米英」、「神国日本」が戦争に負け、アメリカに従うしかない。経済的に復興してその有難さを受け止め、「親米日本」のベースになる。「戦後レジームが日本をダメにした」というが、こういう考え方は、明らかに「神国」復興派の流れである。

 80年代に日本の経済力がアメリカを脅かすようになったら、日米安保関係は軍事だけでなく、日本の経済に強く介入する。構造改革を要求する、それが「日米構造協議」(経済学の本では指摘がある、が他分野の方が問題にするのは少ない。最近では五十嵐仁さんから聞いた。また、沖縄の基地が沖縄の経済を妨げているという発想は、宮本憲一が指摘していたが、最近では沖縄知事からも聞かれるし世論になりつつある。)

 最初に職業斡旋を民営化したのがリクルートである。90年前後に最大の疑獄事件をおこした。


西谷「私たちはどんな世界に生きているのか」①

2023-11-28 | 気になる本

西谷修(2020)『私たちはどんな世界に生きているのか』講談社現代新書

この本を読む前に、「戦争とはなんだろうか」を読んだ。借りて一読したが、購入して精読している。著者のブログ「言論工房」も見つけた。今まさに人が殺されている、ガザの記事もじっくり読みたい。著者は豊田市出身と聞いている。機会があれば、お話を聞きたい人である。以下、この本の気になったメモ書きである。(  )内は私のコメント。

IOTとかAIを取り入れると高齢化社会や過疎地の問題も解決するのか?バーチャル・フユチャーは絵空事ではないか?ビル・ゲイツなどの富豪は、何を意味するのか。現代世界の変容を導き、文明の未来を先取りするとみなされる人たちが、私的に巨額の富を築く一方では、世界中に貧困や荒廃が広がっている。この大地や海や空が商品化を思いついた者の独占的所有物になるかのように。

 最初の核エネルギーを都合よく利用したつもりでも、処理できない残りの核燃料の滓が出る。最終的に安定状態になるのに何万年もかかる。それを手につけた人類は、人類史の時間を超える射程をもって、危険な残り滓を管理し続ける。テクノロジーは有益な道具を作り出すように見えて、予測しえない事態に人間をさらし、人間の制御しえない結果を引き起こす。それを世界は科学の進歩と言っている。

 戦後レジームの脱却は、「憲法改定」が掲げられてきた。

 それまで、日米足並みそろえて北朝鮮に核開発放棄を迫って圧力をかける(ならずもの国家だから交渉しない)、という路線でやってきた。が、トランプ大統領は金正恩との交渉に乗り出した。

 戦時中の徴用工に関して、韓国の裁判所は日本の企業に対して賠償金を払えという判決を出した。日本政府は、日韓請求権協定で賠償の問題は終わっているはずだ、韓国政府はけしからん、国際法無視だ、というわけだ。日本には三権分立はない。韓国政府に日本政府は注文をつけられない。韓国は三権分立だから。事実、日本には、日米安保条約がらみの問題で、政府の方針や意向に反する判決は事実上出せない。国家の請求権協定は、私的な請求権は消えていない。日本政府の規範でもあった。「過ちて改めざる、これを過ちという」孔子。韓国、北朝鮮にも、戦時中の日本はたいへん酷いことをした。今後日本は貴国の人々にそのようなことはしません、人道上許されないことでした、と謝罪する。それは最低限やらないと、両国関係の未来なんてごまかしになる。(著者は三菱鉛筆と三菱グループを勘違いし、謝罪している)

 世界的な共通了解として、日本はアジア諸国を侵略して蹂躙した。南京攻略をはじめとして、各地で残虐行為も繰り広げた。日本の戦争が中国はじめアジア諸国にとってはいかに酷いものであったか。五味川純平の「人間の条件」(映画を徹夜で見た。後半寝てしまった。)にある。塗炭の苦しみを国民が味わった。しかし、その記憶は、日本が高度成長し、経済大国と言われバブル経済も経験した社会で薄れてゆく。

 


松本清張「徳川家康」の功罪は?

2023-10-28 | 気になる本

松本清張(1982)『徳川家康』講談社

 現在放映中の時代劇、家康の伝記である。初めは近くの知名や本多姓が出てきて見ていたが、時代考証に違和感を覚え最近は見ていない。偶然、松本清張のこの本を検索して、図書館で借りた。清張の時代背景は良く調べてある。40年前に書かれているが面白く、一気に読んだ。今の東京も家康が原点であった。信長、秀吉は個人の支配であったが、家康は長い人質時代から苦労を重ね、人生訓や学問から組織体制を整備し天下統一を維持した。以下、気になる箇所のメモ書きである。(  )書きは私のコメント。

 強い人間は苦労しても、じっと辛抱して耐える。どんなに苦しい時でも、歯を食いしばって勇気を失わない。

 百姓が困ることは、武士階級も困ってくる。なぜなら、刀や槍で威張っても、武士は何も作らない。米や野菜をつくるのは百姓である。(ものづくりは車だけでなく、米や野菜も含まれる。が、豊田市の「ものづくり」は、車だけに感じる。)

 秀吉が家康を関東に追いやったのは、褒美もあるが、庶民が家康を慕っていた。それを嫌って、未開拓の関東地方へ追いやった。後の江戸城や江戸にしたのは、家康の力である。

 連れ小便のはじまり・・・「関八州古戦禄」に書いてある。

 家康は正信に「第2に、自分の部下の者を使うのに、ひいきや不公平があってはならぬこと」。

 秀吉の生活は派手であった。大がかりな茶の湯の会をしたり、目を驚かすような花見の宴をしたり、日頃の暮らしも華美であった。家康の生活は質素であった。家康の処世の哲学は質素倹約だ。それと「いつも足ることを知っている」。

 1592年に、明と戦うために、朝鮮に兵を出した。誰一人として止めるものがいなかった。家康は、秀吉の時に闘った朝鮮とも仲直りをし、明とも交わりたいと望んだ。進んで外国と交易しようと望んだが、キリスト教の布教を恐れ、平戸と長崎を開港場として、鎖国した。

 家康の心の中では、信長の命令で殺した、我が子信康のことが思い出された。

 家康の功罪は議論がある。鎖国は残念であるが、戦国の世を鎮め300年太平の基を築いたのは功罪である。それと江戸のまちを切り開いた。

 偉人とは出世することばかりが偉人ではない、平凡ななんでもないことに気をつけて、りっぱにこの世に処していくのが、偉人であろう。

 このような視点を持って、「どうする家康」を又観ることにした。


「平成都市計画史」その③

2023-10-26 | 気になる本

6章 規制緩和

5つの規制緩和 ①地下室の容積率算定の緩和、②共同住宅の共用部分の容積率参入の緩和、③指定確認検査機関の導入、④用途地域における容積率の選択肢の拡充、➄天空率の参入。バブル経済の崩壊後に、不動産市場へのカンフル剤として機能した。近隣住民との紛争になることもあった。自治体によっては調停など紛争予防の法など作る所もあったが、プロトコルは存在しなかった。(相互理解がなかったのか、意味不明である。規制緩和それ以前に、絶対高さから容積率に、用途地域の多様化など規制緩和がある。地方分権、都市計画の分権が叫ばれたが、市場の要望に押され政治的には規制緩和が止まらず、住民参加の都市計画は進んでいない。)

図の規制緩和に、特定街区、総合設計制度、高度利用地区、地区計画があり、バブル期では規制緩和が前面に出た。都市再生特別措置法が作られた。当初は10年間で時期と場所が限られていたが、特区として影響を広げていった。都市計画法とは別建ての都市計画と考えられる。タワーマンションだけでなく、平成期にはこれら収益をあげやすい商品で都市が成長し、市場の制度はそれを速くたくさんつくれるように発達した。(規制緩和で、)市町村に法を渡していく地方分権が行われていたので、市町村の法と市場の制度の間でプロトルコを介し、多様な制度が成長できなかった

7章 住宅の都市計画

住宅政策の3本柱に、公営住宅、公団住宅、住宅金融公庫(戸建て持ち家)があり、量の拡大と質の向上を目指した。シェアハウスは居住水準を満たしていないし、寝食分離もないが、個人の主観による。人口構成の変化で、サ高住、有料老人ホームの増加、タワーマンションか小さくても戸建てか、新しい住宅でギャップを調整した。

8章 景観の都市計画

国立のマンション建設で、「景観の利益」が争われた。この開発は法を守らなかったわけではなかった。制度が法よりも優位であることが明文化された。

景観法、景観条例に基づき、景観地区やルールが作られたが、リーダーが継続されていない。

9章 災害の都市計画

ストック再生という言葉が使われるようになったのは、平成12年頃である。平成期は環境という言葉が覆いかぶさった。再生と環境は相性がいい。阪神淡路大震災で行われたのは、土地区画整理事業と市街地再開発事業であった。災害前の神戸市はまちづくり協議会を中心にした地区まちづくりがあった。S50年代に始まった木造住宅密集市街地の都市計画は修復型まちづくりであった。東日本大震災は地震よりも津波の被害が大きかった。さらに原発の被害もある。大堤防をつくり、建築禁止区域を設定し、集団移転をした。

10章 土地利用の都市計画

土地利用は自然(山林、河川)、市街地(住宅、工場、店舗)、農地と区分けされる。市街地は用途地域で建築の用途がコントロールされる。まちづくり3法で、中心市街地のシャッター通り解消を目指し中心市街地活性化法ができ、大型店と小売店とのせめぎあいを調整する三法ができた。空想化に歯止めがかからず、2006年規制が強化された。

2000年都市計画法改正で、①線引きの選択制、②開発許可の弾力性、③準都市計画区域の設定、④特別用途制限地域の創設がされた。線引きを廃止した香川県、新たに指定した鶴岡市がある。

 まちづくり三法が効果を発揮できず、大店立地法は改正されず、都市計画法の改正がされた。①用途地域を改正し大型店の規制をした。②調整区域の例外的に開発許可不要の公共施設について、例外を廃止した。安価な土地を求めて調整区域に作られてきた。③都道府県が大型店を調整できる仕組み。

 総務省はH16年「中心市街地の活性化に関する関する行政評価・監視結果に基づく勧告」、国交省は新しい時代の都市計画、人口減少社会を諮問。中心市街地の活性化が、小規模店の保護や育成といった問題だけでなく、人口減少に向けた、都市構造の再編として捉え直した。「集約型都市構造」は都市機能の集約を促進する拠点として、公共交通ネットワークで連携させる。コンパクト+ネットワークが使われだした。


饗庭「平成都市計画史」その②

2023-10-22 | 気になる本

3章 民主化の4つの仕掛け 4章 都市計画の地方分権 5章 コミュニティ

 規制緩和は政府にとって、公共投資をすることなく市場の制度を復活することができる魔法の杖のようなものである。バブル期を通じて都市計画の規制緩和という切り札は温存されていた。タテ方向にもヨコ方向にも、規制緩和が温存されていく。

 いたずらに法が増えて規制緩和が行われず、バブル経済期の失敗で疲弊した市場の制度の復活を妨げるおそれがある。一方の手で規制緩和を、もう一方で地方分権の蛇口をひねり、両者を混ぜ合わせなくてはいけなかった。その時に使われるのが、「特区」と「コミュニティ」である。2002年、都市再生特別地区が創設された。特区の目的として「地域活性化」があげられている。特区とコミュニティは時間と場所を限った地方分権の実験である。

 ワークショップで有名なのが、世田谷区の猫じゃらし公園である。(ワークショップは住民参加の手法として広まったが、最終整備事業の決定は行政が行うことがあり、参加者と行政のずれが生ずる場合がある。)自治基本条例が進み、市民と行政の協働が市政運営の中心に位置づけられた。(まちづくりの目的、課題が様々である)2003年指定管理者制度が始まった。豪華な公園(広場)、使いやすい道路をつくったところで、一つひとつの商店が魅力的にならなければ、中心市街地は再生されていかない。TMOのほとんどが商工会議所であった。TMOは2006年法的位置づけを失った。かわってまちづくり会社や中心市街地整備推進機構と呼ばれる組織である。(豊田市の自治基本条例は理念的なもので、都市計画まちづくりは含まれていない。地域自治区の役員はほとんど自治区役員が占める。地域の道路、公園、交通など要望は自治区を通さないと市は受け付けない。)


雨宮処凛「生活保護」を読んで

2023-09-27 | 気になる本

雨宮処凛(2023)『生活保護』河出書房出版

生活保護は人生でけがや病気になった時の最後のセーフティネットである。しかし、自民党の一部議員などは、生活保護で遊んでいるとか、国民年金より恵まれていると攻撃してきた。極まれにいたとしても、捕捉率は少ない。著者はリーマンショック以降にこの問題に取り組んできた。以下その要旨である。

 生活保護はマイナスイメージがある。扶養照会で、家族に知られたくない、という気持ちもある。よくある誤解に、「働けるのに働きたくなくて生活保護を受けている人がいる」。(パチンコをやっている)不正受給の批判があるが、件数の2%以下である。

 2021年の年間自殺者数は21007人である。動機は「健康問題」、ついで「経済・生活問題」である。刑務所に収容されると、一人当たり400万円の費用がかかる。生活保護費の方が安い。子育て世代の年収が減っている。非正規率は4割近い。貯蓄ゼロ世帯は増え続けている。

 2012年、自民党は「生活保護給付水準1割引き下げ」を掲げて衆院選を戦い、政権交代した。DaiGoは「生活保護の人に喰わせる金があるなら猫を救って欲しい」、「邪魔だし、臭いし」。餓死事件を見た人などは酷いと憤慨する人もいるだろう。

 役所で「生活保護課」は人気のない職場である。1人当たり80~100世帯と多忙である。(国の機関委任事務で、国から受付を減らすよう指導される)

 韓国では家賃だけ、医療費だけ、という形で利用できる。1999年「国民基礎生活保障」とう名前に変わった。相対的貧困率も2011年18.6%が2020年15.3%に下がった。困窮者を雇った共同組合への支援規定がある。困窮者に仕事を与えて支える仕組みがある。

 コロナで利用したのは、「総合支援資金」「緊急小口資金」など、国の特例貸付だった。コロナで生活保護を利用する人は増えない。(?

 五石さんは、住宅家賃補助という形で住宅補助や教育補助を独立させる。