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豊田の生活アメニティ

都市デザイン、街歩き・旅行、くらし

核廃絶はできるか?

2023-09-12 | 気になる本

「世界」10月号の気になった記事は3本、一番は星浩の「滅びゆく日本、再生への道」である。これについては、投稿したので省略する。

二番は田中美穂の「岸田首相、核廃絶はできますか?」である。G7の「広島ビジョン」では、「被爆者」、「非人道性」という文言さえ出てこず、「核兵器禁止条約」にも触れなかった。核保有国が「一方的に軍縮すれば、自国や同盟国の安全が損なわれてしまう」と言い、核軍縮に取り組まない言い訳をしている。「核兵器のない国」を究極の目標と掲げながら、同時に核抑止の維持の正当性を盛り込み、さらに核を持って良い国と駄目な国があるかのように線引きした。広島・長崎への原爆投下はアジア太平洋の人々に対する加害の歴史として決して切り離すことができない。現在日本はアメリカの核の傘の下にいることで、むしろ核の被害を生み続けることに加担している。米国の核実験が67回にわたり行われた。たとえ小量でも、「唯一の戦争被爆国」の日本は核のゴミを捨てている。(要点)

3番目は金子勝の「岸田政権がもたらす経済衰退のメカニズム」である。また、片山義博のミッションを逸脱した、ふるさと納税批判も的をえている。


小川さゆり「宗教2世」

2023-08-20 | 気になる本

小川さゆり(2023)『小川さゆり、宗教2世』小学館

 2022年安倍元首相が銃で撃たれ、「容疑者」は統一協会を恨んだとのことであった。それから自民党との癒着が明らかになった。さらに、2世などの救済も問題となった。統一協会の以前は、勝共連合であった。その後不十分な被害者救済法ができた。しかし、反社会団体であるが解散命令は、質問権行使を口実に解散は先延ばしである。

 この本は2世が顔出しで記者会見し、生々しい実体験であり、夫や編集部のチェックは入っているだろうが、論理的にも実感的にも読みやすい。統一協会は宗教に値しない、霊感商法の壺や印鑑、「寄付」、選挙支援など問題である。子どもは親も国も選べない。親の宗教や結婚観などの押し付けは人権問題でもある。以下、気になった箇所のメモ書きである。

 親は自分の意思でなく、合同結婚式で結ばれている。教会を否定すれば、自分の存在を否定する。三カ月で救済法ができた。弱点は献金が本人の意思か?未成年の2世はハードルが高い。

*豊田市にも警察署の近くに教会がある。自民党の幹部で癒着が不詳である。地方議員との関係は明らかにされていない。豊田市議会には統一協会系から、最も対立する共産党を攻撃し保身する陳情がされている。救済法で2世は救えない、反社の統一協会は解散命令を、政府自民党はすべきである。これには歴史修正主義と平和主義が問われる。


大塚「インフレ・ニッポン」提言への感想

2023-08-15 | 気になる本

大塚節雄(2023)『インフレ・ニッポン 終わりなき物価高時代の当来』

 日本経済はGDPが伸びない。アベクロダは異次元の金融緩和を続けてきた。欧米は8%を超えるインフレであり、利上げを進めている。日本は円安で材料、エネルギーが徐々に上がってきた。この先、インフレになったら国の膨大な借金のため利上げできない。しかも軍拡で軍事費は5年間で43兆円を決めている。一方少子化予算は目処が無く、社会保障は改悪の一途である。日銀の出口戦略国家財政の健全化など、困難な問題に取り組まないと国民生活は破綻するであろう。

 タイトルのとおり庶民はガソリンなど物価高を実感しつつある。著者も終わりなき物価高を懸念している。昨今の経済事情を、1章日本の物価、2章インフレでデフレ、3章円安のジレンマ、4章日銀の終焉、円相場は、5章利上げFRBの効果は、6章賃金は上がるか、「失われた30年」、7章世界インフレの時代、8章6つの提言である。提言をメモ書きする。(  )内は私のコメントである。

1 日本のものづくり、円高恐怖症の脱却

 例えば、日の丸半導体の復活を目指したラピダスは2025年生産に向けて、千歳に工場建設を決めている。(半導体は東芝が先進を行っていたが、米の原発会社を買収し失敗した。)

 米国一辺倒でない日本なりの「新グローバル戦略」を練ることが日本の製造業復活の第1歩になるのではないか。(米国に制約されず日本独自の中国貿易は可能か疑問である)

2 輸出の主力は「インバウンド

 (コロナ禍後には観光客が増えてきた。中国も復活する。しかし、ホテルなど人出不足は解消されていない。)

3 失われた賃上げのメカニズム

 アベノミクスの円安をテコに景気拡大も、企業収益が高まれば、賃金上昇に結び付くとしたトリクルダウンは、官製春闘で企業の善意に訴えるものであった。(内部留保は増えても、実質賃金は10年来上がらなかった。連合はまともな春闘に取り組まない)。正規と非正規の格差も縮まらない。(23年最賃は平均41円引き上げで、一律ではなく1002円となった。リスキリングも容易ではなく、扶養制限も外れそうにない、ましてや岸田首相が言っていた「分配優先」は成長の後に変わっている)。

4 エネルギー、原発・「炭素価格」は王道で  

 原発が停止し、化石燃料の輸入が増え、22年の貿易収支は20兆円近い赤字となった。当面は電力不足の不安で減らせない。原発再稼働の促進である。(岸田政権と同じで、自然エネルギーへの転換姿勢はない。脱炭素社会への転換GXは可能か?)

5 データ処理の「地産地消」で所得流出を防ぐ

 情報インフラが大きく姿を変える中、日本勢の凋落はここにもある。(マイナンバー制度は延期すべきで、保険証とは切り離すべきである。日米軍事同盟の下軍事的従属だけでなく、日米構造協議経済安保で日本の経済力が衰退する要因と思われる)

6 金融政策を簡素に

 新総裁は金融緩和を続けながら、YCCの副作用をコントロールするか、難しい手綱さばきである。緩和を止めれば下振れリスクがある。賃金上昇の機運が続き経済が上向けば、めでたく金融政策の正常化が近づき、長期金利の均衡水準を探り、出口戦略がシンプルになる。(賃上げで経済が上向くのは好ましいが、その見通しはない。日銀は国債の半分を持っている。フリーランチは無い。)

 コメント

世界的インフレで日本も物価高が始まっている。それが欧米より現在低いと楽観的だが、いつ暴騰するかわからない。その見通しと予測は難しい。人口減少もインフレに影響すると言われている。円安輸入物価高への影響。軍事費の拡大、財政規律の破綻がある。

日銀は金融緩和の継続である。物価が高騰したら、政府の借金が膨大で日銀は利上げできない。出口戦略は示されない。これまでのアベノミクスによる金融緩和の総括が、日本経済再生の出発点である。


安田「国籍と遺書、兄への手紙」

2023-08-06 | 気になる本

安田菜津紀(2023)『国籍と遺書、兄への手紙』ヘウレーカ

 レイシズムやヘイトはどこから来るのか?特に韓国・中国に日本は、侵略し植民地化した国である。冷静にみれば、今は日本がアメリカの事実上の属国になっている。「先進国」日本は自立してアジアの模範となり、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」ことを願う。彼女の著作「隣人のあなた」を読んで、見つけたのがこの作品である。韓国、台湾は近くて何度か旅行した。パラパラと拾い読みしてたが、読みやすく全てを読みとおした。こころに残った点を記しておく。

 ドラマで東北の震災の写真を洗って返す作業を見たが、彼女が(も?)それをしていたとある。フォットジャーナリストの彼女は、写真は「今」を伝えるだけでなく、会えなくなった人に出会える「窓」になるのだ。掲載されている写真は余りクリアではない。

 朝鮮半島のルーツの歩みについて、日本の植民地時代、朝鮮半島出身の人々は「皇国臣民」の「日本国籍者」とされてきた。1952年にサンフランシスコ講和条約から、一方的にその立場を奪われ、「朝鮮人」という特定の国籍を持たない存在として扱われた。朝鮮は南北に引き裂かれ、1965年、南の韓国のみと国交を結んだ。(従軍慰安婦、徴用工、関東大震災虐殺、指紋押捺、社会保障制度、朝鮮高校補助、ホワイト国、統一協会などの問題があり、歴史認識と関わる)。

 自分の出自を言わない。親は言葉がしゃべれない人が多く、財産も職もない。2世の言葉は同じ、顔は似てても、就職差別、結婚差別や偏見、レイシズムがある。日本国籍を取るか、ルーツとアイデンティティに悩む。

 2022年8月ウトロ地区の放火があり、犯人は懲役4年の判決が出た。


大門「やさしく強い経済」②

2023-07-04 | 気になる本

 成長戦略

 賃上げと社会保障が日本を救う。最低賃金の引上げで、経済の好循環を生み出す。有働正治氏の産業連関表を使った試算(「経済」20.12)によれば、社会保障の経済波及効果は公共事業より高い。

気候危機打開のとりくみは経済成長にも貢献する。環境か雇用かの二者択一の必要性はない。再生可能エネルギー部門の雇用潜在力が開花するか否かは、今後十数年間のエネルギー移行をけん引する野心的な政策にかかっている。(岸田政権は原発再稼働、石炭火力推進で再エネには消極的である。)

人を大事に育ててこそ日本経済の未来がある。新自由主義教育改革にストップをかけ、学問の自由を保障する。教育の無償化、学費の半減、奨学金制度の拡充をする。日本の大学関係予算はGDP比で欧米諸国の半分である。(政府の学術会議委員の任命拒否をやめる)

日本の大企業はリストラを繰り返し、賃金を切り下げてきた。有能な人材を海外へ流出させ、競争力も失った。生産現場においても品質劣化の問題が生じている可能性が高い。労働者派遣法や労働契約法を抜本改正して、正社員が原則であることを明記させる。

中小企業の生産性が問題でなく、大企業など優越的地位を濫用した下請単価の改善が問題である。(企業の政治献金を廃止する)


大門「やさしく強い経済」①

2023-06-30 | 気になる本

大門実紀史(2022)『やさしく強い経済』新日本出版社

 内容は良いがタイトルに賛同できない。経済は経世済民であるから、主語を入れて「国民にやさしい経済」の方が良いと思う。この次ではアベノミクスの中心的矢、異次元の金融緩和について日銀、財政ファイナンスの危機的状況の解明を、期待したい。再読である。以下要旨のメモ書きである。(  )書きは私のコメント。

 新自由主義とは何か

 岸田首相は新自由主義の弊害を口にしたが、具体的是正策は何もない。(「新しい資本主義」を打ち出したが、具体策はない。)

 新自由主義の目的は、大企業のもうけを最大化すること。①賃金の抑え込み、非正規の拡大、②社会保障の改悪、③国家による所得再分配機能の否定、消費税増税で大企業・金持ち減税、④民営化で公的責任の放棄、住民サービスの低下、台記号優遇措置、➄マネー資本主義。企業利益は内部留保され、投資へと回らない。

 ウソの1つ、成長から分配へ。2つ、市場原理主義、市民には自己責任で大企業には国家資本主義で優遇。(政治献金、トリクルダウンがない)3つ、累進税からフラット化へ。4つ、多様な働き方、労働法制改悪。

 成長できない日本、GDPが伸びない。半導体、テレビが衰退。研究者・技術者が韓国、台湾、中国に移動。

 岸田首相の「新しい資本主義」は、アベノミクスの延長。(「成長より分配」が消えた)

 まず分配せよ。内部留保に課税せよ。資本金10億円以上の大企業に、2012年以降の設備投資を除いた「余剰資金」に課税を。

 富裕層に課税せよ。株式などマネーゲームに投資し蓄財するだけで、実態経済に回らない。

1億円の壁、不公平税制の是正。消費税は社会保障や財政再建に使われず、法人税の減税に使われた。世界の流れ、消費税を減税せよ。インボイスは不要。


有田、内田他「希望の共産党」②

2023-06-29 | 気になる本

 浜矩子

共産党と距離が縮まったのは、「アホノミクス」の登場からである。

ロシアのウクライナ侵攻と「台湾有事」を口実に、日本では防衛費をGDP比1%から2%にするのはけしからん。

自民党の経済対策は支離滅裂、日銀の財政ファイナンスをやめられず、世界の潮目が変わっても、日本だけが金融緩和状態を続けている。それが円安をもたらし、インフレ圧力が国民生活を追い詰めている。

日本の賃金が10数年上がっていない。岸田政権は企業に賃上げを要請している。弱者救済という観点から労働分配率が低い状況の中で、所得再分配を政策面から実現すべきだ。

消費税減税に異論。日本の財政をなんとかしないといけない。弱者救済の政策に必要な財源、軽減税率にもインボイスは必要。(消費税を上げても法人税の減税に使われている。消費税増税は低所得者の購買力を低下させ、逆累進税になっているから問題。)

木戸衛一

日本では、決して強権政治への志向性は強くない。しかし、代表制民主主義への基盤が揺らいでいる。経済、社会の停滞にもかかわらぬ政治への無関心・無思考は安倍殺害のように、暴力のみに変化のきっかけを求める態度に繋がりかねない。

90年代の「カネのかからない政治」も実現していない。企業・団体献金の制限の代わりに、政党助成金は国民一人当たり250円、年間320億円もの税金が使われ、自民党や維新は助成金をため込んでいる。ドイツでは政党系の財団が活躍している。

ソ連が崩壊し、中国共産党の支配体制が社会主義の理念と乖離している状況で、日本の左翼の政治的存在は、日米軍事同盟体制を克服する道を示すことにある。


有田他「希望の共産党」①

2023-06-29 | 気になる本

有田、池田、内田他(2023)『希望の共産党』あけび書房と

 小選挙区制度の下、金があり知名度のある現職が有利であり、国政選挙では自民党が多数の議席を取っている。しかも公明党の連立であり、野党が連立しなければ政権交代はない。ましてや維新、国民が政策的に与党に近い。予算案、防衛費財源確保、保険証廃止とマイナンバー、入管改悪、LGBTQ、原発推進など、悪政のオンパレードである。物価高、円安で岸田政権の支持も下がりだしたが、今年秋には総選挙の可能性が高い。立憲主義を柱にした市民と野党は、まず政策の一致を早急に議論すべきである。

 21年総選挙、22年参院選挙で野党共闘を進めてきたが、政権交代は出来なかった。その後、安倍国葬、統一協会、物価高、G7などあったが、岸田政権の支持率は流動的で、野党の支持率も低迷である。立民代表は野党共闘に後ろ向きである。立憲野党の1つ共産党に何を期待し改善を望むのか、各氏の提言である。以下、本書より抜き書きである。

 佐々木 寛

 日本共産党について語る意味がどこにあるのか。注意しなければならないのは、共産党が一方的に有微化され「糾弾」されるような時代は、ファッシズムや戦争が近い兆しではないか。

先の選挙前に、「閣外協力」でハレーションを起こした。政党自体の字句を曖昧模糊にするのではなく、計画な理念で一貫している個々の多様な政党が、時の世界情勢を歴史的要請に照らし合わせて、協力して政策を譲り合い、政府を構成するという、もっと成熟した政治のイメージを学ぶべきだと思う。

ウクライナ戦争を機に、東アジアで起こっている国際政治の対立構造を、イデオロギーや体制原理の違いを前提にした古い「冷戦」の論理で考えるべきない。

日本の未来は明るいと考える学生は皆無である、若者の死因の第1位が自殺である。消費税や財政出動のありかたをめぐる問題など、野党間にも考え方の違いがある。与党がこれまで通りの「新自由主義的資本主義」の道をゆくならば、野党は「人間の顔をした資本主義」の道を、先ずは共通の目標にして共闘することは可能である。

中北浩爾

立憲民主党は綱領で日米同盟を日本の外交の基軸とし、基本政策でも抑止力の維持を説いている。共産党は戦後日本国憲法の制定に反対した理由は、自衛戦争を肯定していた。「中立自衛」を掲げていた。「非武装中立」論に転換したのは、冷戦の終結後、94年の20回大会である。野党共闘で障害になっているもう一つは、「建設的」(労使協調)な連合の反共主義である。

国政で議席後退でも、志位委員長は退任を表明しなかった。党大会を1年、地方選を理由に延長した。委員長は辞任を決断しない限り、地位を保てる。最高指導者の長期在任を擁護し、分派を禁止している。党内の多様性が損なわれ、活力が高まらない。党勢の衰退は進んでいる。新聞の配達制の維持が困難になるだろう。私への批判は「反共」というレッテルでなく、事実を示して欲しい。


猿田「自発的対米従属」その②

2023-06-27 | 気になる本

4章 今後の日米関係

2016年10月 安倍政権は衆参両院でTPPの批准を強行採決した。17年1月 ホワイトハウスでTPPの離脱に署名した。

2017年1月「世界平和研究所」は日本の防衛費を、GDPの1.2%へと主張(2023年岸田政権で、物価高騰と財政危機の中で、「GDP2%」・5年間で43兆円の軍事費とその財源確保法が決まった)。アメリカ政府は条件闘争で、自衛隊の海外派遣も要求し実現した。大統領選後、既存の日米関係を強化する立場から、日本の軍事的役割の増加、オーストラリア、インド、東南アジア諸国と連携してさらなる軍事的に協力関係を築く。(「自由で開かれたインド・太平洋」(FOIP)、「台湾有事」)

トランプの指先介入で、大企業が経営方針を転換した。メキシコに工場を造る予定のトヨタは慌てふためいた。大村知事がトランプの就任式に飛んで行く。(日経20.2.7 トヨタはメキシコに工場建設10億$を7億ドルに縮小、カローラ生産をピックアップに変更した。日経23.4.18米EV税優遇は米3社11車種のみ、日欧韓0。)

6章 私たちがなすべきこと

対米追従で利益を得てきた層が、それを維持するためにアメリカに働きかけることに論理一貫性(?)はある。大前研一は、日米駐留経費を全額日本が持ち、米中ロとの等距離外交を打ち出す議論は、新しい視点である。

NDでは、市民が政策形成に関われるよう、「外交」に日本の多様な声を反映できるよう、努力を続けていきたい。

*コメント 日本はアメリカの実質的な従属国であるが形式的には見えにくい。その手法が米の「知日派」やシンクタンクに言わせ、利益を得ている層がやむなしとさせることである。                      


河合「日本銀行 我が国に迫る危機」④

2023-06-25 | 気になる本

7章 変動相場制下での財政破綻―欧州の経験

通貨が流通するのは価値が安定しているから。資金流出が止まらなくなった時、ドルなどやピットコインに変換する。我が国の財政事情は、アイスランドが危機に突入した2008年当時より相当悪い。何も起こってないからとして、放漫財政をこのままにして良いのか。円安が物価高騰につながるだけでなく、通貨安が金融危機になりかねない。1ドル150円を超えた時、円買いをし、10年国債の金利を0.5%まで許容した。外貨準備があるが、換金可能な資産だろうか。

8章 我が国の再生に向けて

わが国では、高所得者層ほど負担率は低下している。1億円の壁である。「経済成長なしで財政再建なし」で税制も十分議論されず、与党の税調で決まってしまう。1964年東京五輪から「60年償還ルール」ができた。1975年石油危機後から、建設国債から赤字国債が「特例国債」として制定された。60年償還ルールが放漫財政の主犯でないか

真に独立した中央銀行としての抜本的な立て直しを。市場メカニズムの回復として、10年国債の金利の許容範囲(現在0.5%)の拡大、0%設定している10年国債金利を徐々に引き上げる。財政再建に向けて本腰を入れる。慶応大学深尾教授が「量的緩和、マイナス金利政策の財政コストと処理方法」を書いている。

日銀が、他の中央銀行が決して採用しないYCC政策を実施した結果、短期金利を0.2%上げただけで、あっという間に「逆ザヤ」に転落する。しかもETFを買い入れている。これ以上、財務の過度な悪化を招かないよう、日銀に段階的な正常化を取り組むことを促す。(植田総裁は、金融緩和を継続し、「物価目標2%」評価を1~1.5年でやる、と表明し危機意識が感じられない。)

政府も財政運営を見直すこと。国債発行額を減らす(軍事費倍加の岸田政権、緩和継続の植田総裁ではそれらの姿勢は見られない)。内閣府は26年度までプライマリーバランスの黒字化はできない、つまり国債発行は続けるとしている。自民党内では60年償還ルールを80年にするなどの議論がある。国債の元本も償還する気もないのか市場の信用を失う。国債金利が急上昇するか、円安が一段と進展するかして、財政運営が行き詰まる。(いつか?)米国では国債は財源として考えられていなく、10年単位で償還を設計する。米政府もコロナ化で財政出動をやり過ぎたと認めた。政府、日銀に場当たり的でなく問題の所在を明らかにさせ、国民も甘えや無責任から脱却しなければならない