Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」

2015年04月18日 22時41分42秒 | 映画(2015)
頭の中でドラムが止まらなくなったら要注意。


都会の中の小さく薄汚い小部屋で、たるみきった中年男性の体が宙に浮いている不思議なオープニング。

男の声が聞こえる。話の語り部か、主人公の独白かはっきり分からない。実際と虚構が入り混じる半次元の物語の始まりだ。

薄汚い部屋は劇場の控室だった。かつてヒーローもので人気を博した俳優・リーガンは、栄光から取り残され、再起のチャンスを自らが企画・演出する舞台に賭けていた。

開演まで数日の慌ただしい舞台準備。狭い建物の中をカメラが長回し風で追っていく。バックには不規則に鳴り続けるドラムの音。

場面に切れ目がなく、落ち着く暇がない。人生を打開しようともがき続けるリーガンの心情が直接叩き込まれてくるようだ。

本作の演出の特徴は、話の中心となるリーガンの苦悩が超能力に転化して描かれる点にある。

能力のない俳優が勝手にぶちのめされ、手を触れることなく部屋の中がめちゃくちゃになる。やがて苦悩の度合いは部屋を飛び出し、リーガンは過去のヒーロー・バードマンのように市街を浮遊する。

異次元へ迷い込んだリーガンの苦悩が行き着く先はどこなのか。救いとも言うべき家族の愛に手が届きそうになったタイミングで懐に忍ばせられる拳銃。

初めて完全に場面が途切れ、太陽の眩しい光が病室へ射し込む。もうドラムが鳴ることもない。

たくさんの物を失ってようやく得られた安住の地なのか。洗面所の鏡に映された姿は果たして…。

とにかく脚色と演出のキレに感嘆する。百聞は一見にしかずと言うが、映像と音を更に深化させて比類するもののない苦悩の世界を作り出している。

オスカーには手が届かなかったものの、M.キートンのぼろぼろに寂れた演技は印象深い。これで逆に往年俳優のレッテルを貼られないか心配になるくらいである。

(90点)
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「エイプリルフールズ」

2015年04月18日 22時21分11秒 | 映画(2015)
全員が蜂谷メチャ夫。


ドラマ「リーガルハイ」に携わったスタッフが集結して作った作品とのこと。ドラマを見たことはないが、評判が良かったことは知っている。

製作は、こちらも「リーガルハイ」繋がりのフジテレビが名前を連ねる。かつての勢いをまったく失ってしまった中で、数少ない鉱脈をヒットに結び付けられるかどうか。

文字通りエイプリルフール=4月1日の一日に焦点を当てて、嘘を軸とした7つの物語を群像劇スタイルで描く、「バレンタインデー」「ニューイヤーズイブ」調の作品である。

こう説明すると目新しさがないように思えるが、嘘というテーマが貫いている点で、脚本の小技が冴える。

特に、ニセ医者と対人恐怖症の女性のエピソードでは、ニセ医者がついた救いようのない愚かな嘘からとんでもない展開になるが、最後は展開に巻き込まれた大勢の人の温かい嘘で逆にニセ医者が救われるという、思わずポンと手を打ちたくなるような練られた筋書き。

そして群像劇に欠かせない、各エピソードを橋渡しする仕掛けづくり。脚本を書くのがさぞ楽しかったことだろうと想像する。

その一方で、雑さが目立ったのが基礎となる舞台設定だ。

ニセ医者が白衣を着て病院内をうろうろするなんてことができるのか。いくらテレビ局が常識欠如とはいえ、あからさまな嘘を確信的に放送できるのか。宇宙船との交信を真に受ける中学生がいるのか。

エピソードによってはとってつけた完全に脇扱いのものがあったり、登場人物のデフォルメが過ぎたりしている部分も多く見られた。

まあ、基本コメディーということと、名の通った著名俳優陣が次々に出てくるだけでお祭り気分に浸って軽く観られるようにできており、それほど悪い印象を持つことはなかった。

(60点)
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