「美しい村」の議員日記

南アルプス山麓・大鹿村在住。自給自足農業、在宅ワーカー、2011年春より村議会議員。

高尾山のお話

2011年02月04日 | 自然・環境
 厳しい寒さが続いた後、今度は急に暖かくなり、今週の朝の気温は月曜日のマイナス13度から、マイナス10度、マイナス8度、マイナス6度、そして今朝はマイナス1度。日中もかなり暖かく、日当たりのよい部屋では暖房を切っても大丈夫なくらい。しかし、日陰の雪はそのままだし、地中の氷が解けているとも思えないので、相変わらず水道は出しっぱなしにしている。 

 だいぶ時間がたってしまったけれど、飯田市議の方との懇談の後にお聞きした、高尾山の虔十の会代表、坂田昌子さんのお話をようやく文字起こしして、100年先を育む会のみんなにシェアした。東京出身の私にとっては、高尾山は子どものときに遠足か何かで登った親しみがある山。新宿から1時間くらいでいけてしまう、都心から近い山で、最近はミシュランの三つ星に選ばれて、登山客がすごく多いという話は新聞か何かで読んで知っていたけれど、実は植物が1300種、昆虫は5000種もいて、日本三大生息地の一つになっていることなど、生物多様性の宝庫であることを、坂田さんのお話を聞いて初めて知った。その高尾山に圏央道建設のためにトンネルが掘られようとしていて、地元では多くの人たちが反対して、裁判なども起こしている。
 地元の多くの人たちが反対しているのは、この地域では、山に大きなトンネルが掘られるとどういうことが起こるのかということを、かつて中央道の小仏トンネルが掘られたときに実際に体験したからだという。高尾山はとても水の豊かな山で、山の中の至るところに水道(みずみち)があり、山の中を水が巡っている。トンネルを掘ると、その水道が変わってしまい、今まで水が湧いていなかったところから湧き出したり、湧いていたところがかれたりする。そうすると、当然その水に依拠していた人々の暮らしはもちろん、そこに生息する生物も甚大な影響を受ける。わずかしかない植物はなくなってしまったり、それに依存していた昆虫やら、生態系はいろいろなものが関連し合っているから、どれだけの影響が出るかは計り知れない。あるいは、高尾山では海底トンネルと同じシールド工法という、セメントで固めてから掘る工法を用いているそうだ。そのためにセメントミルクを注入する。ある日突然、小仏川が真っ白になって、魚も蛍もみんなやられてしまったという。あるいは、動物たちは一斉に移動を始めた。また高速道路なので、騒音や排ガス等々、いろいろな影響を地域の方々は身をもって実感することになったのだという。
 しかし、現実には、高尾山の問題は二十数年前から始まっているので、世代交代もあり、次の世代の人がもう農業をしないからと土地を売ってしまったり、こうした現場の各地で見られるようにコミュニティが分断されたり、いろいろ大変なことが起こっている中で、周りで圏央道自体の工事はどんどん進んでいる。トンネルも少し掘られ始めていて、戦国時代からかれたことのない井戸がかれるとか、いろいろな影響が出始めているという。
 
 今のリニア新幹線の計画は、東京から大阪までほとんどトンネルだから、実は南アルプスに限らず、至るところでこうした水の問題が起こるのだろうと想像できる。実際、山梨の実験線でも水がれの問題は起こっている。大阪の箕面では、やはり道路のトンネル工事の影響で有名な滝の水が減ってしまい、ポンプアップして人工的に滝を維持しているという。審議会では国交省の方が、こうした問題の指摘に対して、水環境のアセスはやるが、100%予想できない、その場合は一定の基準に基づいて補償することになると思うと言っていた。坂田さんのお話の後、みんなで話をしていた中で、松島先生が山梨での事例を挙げて、では、その補償を果たしてJR東海が全部やってくれるのだろうかという疑問を呈しておられた。当然、5.1兆円の工事費の中には含まれているとは思えない。
 リニア新幹線の話は、今のところあまりに具体的な情報が少なすぎるけれども、これからは本当にもっと具体的、現実的なところを、きちんと見ていかないといけないと思う。