病院に行くと、30分はなんやかんやで待ち時間があるので、その間は持参した文庫本を読んでいる。短い時間だと思っていても、すでに2冊を読み終えた。今日から別の本を持って行くため、本棚を物色して「セミたちと温暖化」(日高敏隆著)を選んだ。
動物行動学の権威である日高さんの本は、何冊も読んでいる。この本のことも一度このブログに書いたことがある。それは「動物たちの自意識」について書かれた文章で、あるチンパンジーの実験のことが紹介されていて興味深い。飼育員さんが来ると、チンパンジーはふたつある箱のどちらかを指差す。片方にバナナが入っていて、良い飼育員さんだとチンパンジーがバナナの箱のほうを指差すと、蓋を開けてチンパンジーにバナナをあげる。悪い飼育員さんだと、バナナが入っていたら自分で食べてしまう。すると、チンパンジーは悪い飼育員さんには、からの箱のほうを指差すようになったという。つまり、嘘をついているということであり、自分と他人の存在を意識しているということでもある。
「人は実物が見えるか?」という話では、小学生たちが描いたアリの絵のことに触れられている。まず、先生が何も言わずに子供たちにアリの絵を描かせる。と、ほとんどの子供が体が頭と胴体のふたつ、足は4本で、頭から後ろになびくヒゲのようなものを描いた。次にシャーレに入れた実物のアリを用意し、それを見ながら絵を描かせたのだが、やはり空想で描いたときと同じような絵を描いた。そこで先生が初めて、アリは頭、胸、胴体があり、足は胸から6本生え、触角は前を探るために頭に前向きについているという説明を加えると、ほとんどの子供が正確なアリの姿を描くことができたという。
絵が描けないという人に限って、誰を描いても同じ顔になってしまうのは、シャーレのアリを眼の前にしながらも、空想で描いてしまう子供と同じなのである。
「野生の健康」という話では、SARSのような病気について語られている。地球上に植物や動物が誕生すると、それに取り付いて栄養を得ようとする他の生物が現れた。細菌やカビやウイルスや寄生虫である。伝染病に悩まされているのは人間だけではなく、動植物も同じなのである。野生のチンパンジーなどは、どの病気にどの草が効くのかを知っていて、わざわざ遠回りしてでも摂取しに行くことがあるという。オオカミも寄生虫を抑える効果がある果実を知っていて、大好物だというから自然の力というか、遺伝子の力というか、生物の進化の仕組みというのは、人間には計り知れないものがあるなあと感じてしまう。
新型コロナウイルスのニュースばかり見ていると、地球上には人間だけしか存在していないような気がしてくる。家から出るな、電車に乗るな、飲み屋に行くな、イベントに参加するなという大号令を聞いていると、地球上から人間だけが排除されようとしているのではないかと危惧してしまう。まるで、人間が地球に寄生しているウイルスで、地球がCOVID-19というワクチンを使って正常な状態に戻そうとしているかのようにも見える。
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